プロの暗殺者は学生?   作:☆麒麟☆

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風邪の時間 2

9月も中旬にはいり、大分暑さも和らいできた今日この頃…………

何時も通り、楓は陽菜乃と登校をしていたのだが陽菜乃の様子が少しおかしかった。

 

「…………」

 

陽菜乃の顔がほんのりと赤くボーっとしていた。

 

「……大丈夫か?」

 

「んー?大丈夫だよぉ~」

 

楓は思わず聞いてみると陽菜乃は何て事ない見たいに言っていたが心配な楓は陽菜乃の額に手を当てると溜め息を吐いていた。

 

「これのどこが大丈夫何だよ……風邪引いてるじゃん」

 

楓は呆れた感じで呟きながら陽菜乃を背負う。

 

「ほれ、今日はおとなしく家で安静にするぞ」

 

「ありがとう~」

 

陽菜乃はそう言うとグッタリと凭れ掛かる。

楓は陽菜乃の分のカバンも持ち、踵を返し学校とは反対方向の陽菜乃の家に向かった。

 

 

家にたどり着いたが生憎、人がいない見たいで鍵を陽菜乃から借り、開けて入ると楓は陽菜乃をベットに寝かして休ませていた。

楓は1階の洗面所で濡れタオルを用意してる合間に烏間先生に休みの連絡を入れ、陽菜乃の母親にも連絡を入れていた。

 

『あらぁ~……朝から顔色悪かったからもしかしたらと思ったら案の定だったのね……

今日、私も皆も帰りが遅いから面倒見てもらっても良いかしら?』

 

楓はその言葉に一言返事をすると『よろしくね~』と言い通話が切れた。

楓は洗面器とタオルを持ち、陽菜乃の部屋に向かい濡れタオルを額にピトッと貼っつけていた。

う~んと魘されながら寝ている陽菜乃に楓は頭を暫く撫でていると気息いい寝息をしながら眠りに着いていた。

楓は安堵の息を吐くとスマホが突如、鳴ったので画面を見てみるとLINEの知らせが来ていた。

 

 

グループ名…………ラブラブなリア充がサボった

 

矢田:陽菜ちゃん具合どう?

 

九重:今、寝付いた所。てかこのグループ名やめろや……誰だこのグループ名決めた奴

 

中村:呼ばれて飛び出てじゃじゃじゃじゃーん!!

 

九重:明日、兜角で吹き飛ばすから覚悟しろ

 

中村:いきなりの死刑宣告!?

 

速水:御愁傷様…………

 

矢田:後の事は私達に任せて……

 

中村:誰も助けてくれない!?

 

岡野:命が惜しい

 

速水:同じく

 

矢田:同じく

 

潮田:それはおいといて、倉橋さんが無事そうで良かったよ

 

岡野:如何わしい事しないように!

 

矢田:ハッ!陽菜ちゃんが危ない!!

 

速水:男は皆、狼だからね……風邪で寝込んでる倉橋が危ない……

 

中村:倉橋ちゃんが危険だ!

 

九重:よぉーし、お兄さん明日は張り切って兜角を君達に振るってあげよう……

今日のうちに確りと葬儀屋に連絡することをお薦めするよ

 

中村:蟲じゃくて危険な狼が襲ってくる!皆、逃げろーε=ε=(ノ≧∇≦)ノ

 

中村・潮田・岡野・矢田・速水さんが退出しました。

 

楓はイラッと来たものの、苛立ちを呑み込み平常を保っていた。

 

「ったく、アイツ等は俺を何だと思ってるんだ…………いくら家に俺と陽菜乃しかいないからって……」

 

そう呟くと突如、楓の頭上に悪魔の角を生やしたカルマが現れた…………ような気がした。

 

《そうだよ…………ここには今、2人っきりしかいないんだ。ここで次のステップに踏んじゃえよwww》

 

悪魔カルマの囁きに楓はゴクリと生唾を飲む。

すると今度は天使の格好をした渚が現れた…………気がした。

 

《そんなのダメだよ!!逸る気持ちを抑えなきゃ後悔しちゃうよ!!》

 

天使渚の囁きに楓はハッと我に返る。

 

《ッチ!余計な事言うなよなぁ~》

 

《い、痛いよ!君はどうしてそうやって暴力に走るのさ》

 

《まぁ、そんな天使の言うことなんざ無視して……ほらほら》

 

悪魔カルマは天使渚を殴って黙らせると楓に促す。

楓は恐る恐る手を伸ばすなか、天使渚は必死に辞めるよう声を出していたが悪魔カルマがコブラツイストを炸裂させた後、筋肉バスターをして完全に黙らせていた。

これで楓を止めるものが誰もいない……悪魔カルマがニヤニヤしながら倒れてる天使渚の上に座りながら光景を眺めていた。

しかし救世主が現れた。

 

ニャ~

 

倉橋家の飼い猫、モネが陽菜乃の部屋に入っていた。

モネの鳴き声にフラフラと手を伸ばしていたのがピタリと止まった。

 

「あ……危なかった。後少しでとんでもない過ちを犯す所だった」

 

楓はモネに感謝をしながら煩悩を退散させるために壁に頭をガンガンと打ち付けていた。

 

《ッチ…………ヘタレ》

 

これ以上、何も進展がないと悟った悪魔カルマはボソリと呟き、ポンっと音を経てて消えていった。

対する天使渚はヨロヨロと立ち上がりながら涙目を見せないようにそそくさと消えていった。

その後、ヒリヒリする頭を押さえながら楓は何か食べやすそうな物を買いに行こうと家を出て近くのスーパーに駆け出していった。

 

 

 

 

「う……」

 

楓がスーパーに買い出しに向かって数分後、陽菜乃は朧気に目を覚ましてベットから起き上がって辺りを見渡していた。

 

「楓君いない…………」

 

楓がいないことに寂しさを覚えてるなか、自分の服装が制服のままだと言うことに気づき、のそのそと寝巻きに着替えようとしていた。

普段なら何て事ない作業なのだが風邪で熱が酷く、体も思うように動かないことから作業がもたついていた。

すると玄関が開く音がしてそのままドタドタと階段をかけあがる音がして迷うことなく部屋の扉が開く音がした。

 

「おっ!もう起きてても……だ…………なっ!!」

 

そこには買い物袋をぶら下げていた楓の姿があったのだが彼はそのままピシッと固まってしまった。

それもその筈、今ちょうど陽菜乃が着替えをしようとしていて下着姿になっていたのだ。

熱で体が熱くなっていたのが更に熱くなった陽菜乃は反射的に目覚まし時計を楓の顔に投げ込んでいた。

楓はかわすことも出来ず、漫画のようにめり込むような感じで目覚まし時計が顔面に直撃しそのまま、床に倒れ込むのであった。

 

「大変……大変申し訳ありませんでした!」

 

寝巻きに着替え終わった陽菜乃に起き上がった楓はいの一番に土下座をして謝っていた。

 

「う、うん。こ、これからは気を付けてね」

 

陽菜乃は熱の熱さと羞恥の熱さがごっちゃになっていて、先程よりも顔が赤くなっていた。

 

「それよりどこ行ってたの?」

 

「あぁ、そこのスーパーで果物やゼリーとうどんを買ってきたんだ。これなら食べれるかなって思って……今、用意してくるから待ってて!」

 

楓はそう言うと袋を持って一目散に下に降り台所に向かうと作業を始めるのだった。

 

 

少年、料理中…………nowloading

 

 

数分後、楓は出来立ての市販の鍋焼きうどんを持って部屋にやって来た。

今度は失敗しないように確りとノックして確認も怠らないように。

 

「起きれるか?」

 

楓はそう言いながらウドンを机の上に置き、陽菜乃の額を触っていた。

 

「んー……まだ熱っぽいな。食事どうする?後にするか?」

 

「えーと……そのぉ……」

 

陽菜乃はもじもじしながら横目でチラチラと楓をみる。

 

「…………せて」

 

「ん?」

 

「えーと…………食べさせて欲しいなぁ。いい?」

 

陽菜乃の火照った顔に涙目の上目遣いに楓は……

 

「わ、わかった」

 

と言うしかなかった。

楓は四苦八苦しながらも陽菜乃にウドンを食べさせる。

10分程かかってウドンの中身は空になり容器をしまいに下に降りていった。

 

 

 

楓が下に降りていった後、陽菜乃はやることがなく布団にゴロンと横になっていると楓の鞄の上にはスレッドが置いてあることに気付いた。

スレッドを手にとってまじまじと見る。

普段から使い込んでいるにも関わらず新品のように綺麗なのは普段から手入れを欠かさずしているのがよく分かる。

陽菜乃はスレッドの柄を握り刃を壁に向けてると誤って柄のスイッチを押してしまい刃が壁に突き刺さってしまった。

 

(うわぁ~、外の様子が鮮明に分かる)

 

倉橋は風邪でボォーっとしながらスレッドの糸から伝わる外の情報を感じ取っていた。

雀が囀ずる音、近所のおばさん達の楽しげな会話、風で葉が擦れる音…………

まるで自分が外にいて直に聞いている錯覚に陥っていた。

すると階段を上る音が聞こえて来た。

テンポの良い足音で此方に向かってくる。

足音の主は分かるがスレッドから伝わる振動の情報を感じとるのが楽しいのかそのままじっとしていた。

 

「な!?」

 

部屋に戻って来た楓は陽菜乃がスレッドを使ってることに驚いていた。

対する陽菜乃は楓の声に驚いたのか我に返ってしまうと唐突に壁に突き刺さっていた刃が抜けて陽菜乃目掛けて刃が襲い掛かってきた。

陽菜乃は当たると思い目を閉じていたが一向に痛みが無く恐る恐る目を開けてみると楓が刃を掴んでいた。

 

「あっ!ご、ゴメンね。大丈夫?」

 

「俺は大丈夫だけど陽菜乃は怪我無いか?」

 

楓はそう聞くと陽菜乃はコクりと頷き楓はホッと胸を撫で下ろしていた。

 

「まさか陽菜乃がスレッド使うとは…………いや、普段から生物の観察で集中力が鍛えられてたのか…………風邪で何も考えないでいたからか?」

 

「えっと……ゴメンね勝手に使って」

 

何だか申し訳なさそうな表情で陽菜乃は楓に謝る。

 

「いや、それは良いんだけどコレを使うときは集中力を欠かさないで使わないといけないんだ。もし途中で集中を欠いちゃうと制御を失って操者自身に襲いかかるんだ」

 

楓は説明しながらスレッドを手に取り、糸を収納していく。

 

「どうだった?糸から伝わる情報は」

 

「部屋の中にいるのにまるで外に出て直接聞いていた感じだったよ~!」

 

興奮しながら言う陽菜乃に楓は苦笑いしながら落ち着かせる。

落ち着かせた後、楓は何か考える仕草をすると陽菜乃に聞いてみた。

 

「風邪が治ったらスレッドの使い方習ってみるか?」

 

「え!?良いの!?」

 

「勿論、俺がいるとき以外使用は禁止。それと使って良いのは俺ん家の地下か学校の裏山のみって言うのが条件」

 

楓の言葉に陽菜乃はウンウンと頷く。

 

「でもアリスさんに許可貰わなくても大丈夫かな?」

 

「後で俺が言っとくから良いよ。それにそんなにとやかく言わないと思うし」

 

楓はそう言うと陽菜乃の頭を撫でる。

 

「ほれ、先ずは風邪を早く治すためにゆっくり寝な。陽菜乃の母さんが帰ってくるまでここにいるから」

 

「うん。ありがとう~」

 

そう言うと陽菜乃は再度ベットに横になり暫くするとスゥスゥと寝息をたてていた。

 

「ふわぁ…………」

 

楓も少々眠たいのか欠伸をして少しだけと言い軽く昼寝をすることにした。

その後、陽菜乃の母親が帰ってきて部屋を覗いてみると2人の仲良く寝ている姿に微笑ましく見ており更にその後、中村達女子がお見舞いに来て2人の寝顔を写真に撮られ弄られるのであった。


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