プロの暗殺者は学生?   作:☆麒麟☆

77 / 99
執着の時間

「イトナ君!!」

 

シロに連れ去られたイトナを追ってきた殺せんせー。

トラックが止まっているので今の内に網を破ろうと触手を触れようとしたときピタッと止まった。

 

(触手が溶けてる!?このネットも対先生繊維か!!)

 

イトナの触手が溶けてるのに気付いた殺せんせーは早く助け出さねば!と言って網を破ろうとしたとき、周囲がライトで照らされていた。

そのライトの光は以前シロが使っていた殺せんせーの動きを止める圧力光線。

それを浴びてしまった殺せんせーは硬直してしまった。

 

「ここが君達の墓場だ。狙いはイトナだ……」

 

周囲にはシロと同じように全身白ずくめの人が銃を構えていた。

撃てとシロが命令使用とした時、突然1人の人間がブッ飛ばされていた。

 

「いやぁ~……車にしがみつくなんて行為2度としねぇ」

 

楓は怠そうに右手をプラプラと振って左手で兜角を構えていた。

 

「九重君!!どうしてここに!?」

 

「うん、そう言うのは後にして殺せんせーはさっさとイトナを助けてあげなよ。俺はコイツらブッ飛ばしとくから」

 

楓はニヤッと笑いながらそう言うともう1人兜角で吹き飛ばし、木に激突させていた。

 

「本当に忌々しい害虫だね……

この間言った筈だよ?痛い目を見るよって」

 

「じゃあ、今すぐ見せてみなよ。その間……コイツらで遊んでるからさぁ!!」

 

苛立たちげに言うシロに対して楓はヘラヘラした感じで言うと、空いている右手に銃を持ちシロの部下が持っている対先生弾が入っていると思われる銃を撃ち抜いていた。

 

「気配が駄々漏れ……」

 

「ふん、銃が使えなくなった奴は害虫の駆除をしろ。残った奴等はイトナに向けて撃て」

 

シロの命令に銃を持ってる奴等は一斉にイトナに向けて射撃を始めていた。

咄嗟に殺せんせーが風圧と風で防ぎ、必死に網を破ろうとしていた。

 

楓は銃を持ってる奴等を始末しようと考え動こうとしたが、楓が撃った奴等……5人がナイフなど持って楓に向かってきていた。

 

「君はさっき気配が駄々漏れと言っていたね、それは単純に君に敢えて狙わせる為に気配を漏らさせていたんだよ。それと気を付けた方が良いよ。彼等は少々肉体を弄くっていてね……君でも手こずるだろうな」

 

楓はシロの言葉に無視をして直ぐに潰そうと兜角を振るったが男の1人が軌道を見切ったかのように回避をして兜角は空を切っていた。

驚いている楓を他所にもう1人の男が楓にむけてナイフを振るっていたが楓はそれを簡単にかわし、その男にも兜角角を振るったが先程の男と同じように見切ったように回避していた。

 

(動体視力が良すぎだろ……)

 

楓は悪態をつきながら1回、深呼吸をすると集中していた。

男の1人が楓に向かってナイフを素早く振るっていたが、楓はそれをかわしカウンターで兜角を男の顔に直撃させていた。

 

「まぁ、普通にやって当たんないんならやり方を変えれば良いだけだしな」

 

楓は兜角を振り回しながらそう呟き、起き上がろうとした男に止めと言わんばかりに兜角を振り下ろしていた。

 

ドゴン!!

 

とてつもない音と共に男はピクピクと手を痙攣させた後、バタッと倒れ意識を失っていた。

 

「これで1人……安心しなよ、殺しはしない……でもそれ相応にさせてもらうけどね」

 

楓はそう言うとすかさずもう1人の男の正面に立ちディノスパインの針を両手、両足に無数に射し込む。

 

「ひぎぃあああ!?ぎゃああああ!!」

 

男はけたたましい悲鳴を暫くあげるとショックからか気絶してしまいピクリとも動かなかった。

 

「ディノスパインの毒は凄まじい痛みが襲うんだ死にはしないけど死にたくなるような痛みだから気を付けた方が良いよ」

 

残りの3人に楓はニッコリと笑いながらそう言う。

しかし、男達はその笑顔にヒッと恐怖しており最早戦意は喪失していた。

楓はそれを知っていても止めることはせず、男達の方に向かって歩いて行き、ディノスパインを数ヵ所に射し込んで気絶させていた。

 

(俺は無力だ……力が無かったから協力者にも見捨てられた……)

 

イトナはボォーっと辺りを見ていた。

自分が殺そうとしていた教師に助けられ、自分と同じように肉体を弄られたのにも関わらず確りと自分の意思で考え立ち向かって来る相手を打ち倒している……

 

(執念があったから細胞の激痛にも耐えられた……勝利への執念があったから何度も喰らいつけた……なのに執念は届かなくてしかも殺す相手に守られてる……俺は……こんな雑魚達に負けるのか?

あいつは難なく雑魚達を倒せているのに……)

 

イトナは悔しそうに楓を見ていた。

楓は兜角でシロの部下を完膚なき迄に殴り飛ばし意識を奪っている。

次に殺せんせーの方を見てみると殺せんせーは対先生弾がイトナに当たらないように防ぎ、少しづつだが網を千切っていた。

 

「ッチ!無駄に数多いな……」

 

楓は悪態をつきながら体を動かしていると突如、発砲音が聞こえ楓の頬を掠めていた。

 

「……全く、本当に忌々しい。…………おっと、動かない方が良いよ。

君の後ろにはイトナがいる。

あのモンスターは今、対先生弾を必死に防いでるから下手に君がかわしたらイトナに当たってしまうね」

 

「…………ッチ」

 

楓は忌々しそうに舌打ちをするとシロは引き金を引いて楓の腕を掠めていた。

 

「さて…………私は言ったよな?痛い目を見るよって。覚悟は出来てるね?」

 

シロはそう言うと楓に向けていた銃の引き金を引こうとしたがそれは叶わなかった。

突如、木にのぼっていたシロの部下が何者かに蹴られ地上に落下しており素早く簀巻きにされていたのだ。

 

「なっ!?」

 

それに驚いていたシロを楓は見逃さず素早く銃を取りだし、シロの持っていた銃を撃ち弾き飛ばしていた。

シロの部下を蹴り倒したのはE組の人達だった。

他の木にのぼっていた奴等もカルマや前原が手加減抜きで蹴り倒し、地上で待機していた他の奴等が布で包んでいた。

 

「この糞ガキどもが!!」

 

部下の3人がナイフを取りだし、E組の皆に切りかかろうとしていたが華鎌は鎌で防ぎ、逆に返り討ちにしていた。

 

「ったく対タコの服で完全防御しやがって……おかげで俺等がタコに代わってブッ飛ばさなきゃなんねーだろーが」

 

寺坂は口では文句を言ってるが、表情はとてもにこやかで景気よくシロの部下を地面に投げ落としていた。

 

数分後……シロの部下の大半は簀巻き状態になっておりシロは唖然としていた。

 

「ボォーっとしてていいの~シロ?撃ち続けて殺せんせー釘付けにしてたのに撃つのやめたら……ネットなんて根本から外されちゃうよ」

 

カルマの言葉で我に返ったシロはトラックの荷台に目をやると其処には既に殺せんせーがいて砲台のようなものを取り外していた。

 

「去りなさいシロさん。イトナ君はこちらで引き取ります。

あなたはいつも用意周到な計画を練りますが……生徒達を巻き込めばその計画は台無しになる。

当たり前の事に早く気付いた方がいい」

 

殺せんせーの言葉にシロは楓達、E組の生徒を見ると苛立を込めた感じで口を開いていた。

 

「モンスターに小蝿や害虫達が群がるクラスか……大層ウザったいね。

だが確かに私の計画は根本的な見直しが必要なのは認めよう。

その子はくれてやるよ。

どのみち2~3日の余命、皆で仲良く過ごすんだね」

 

シロはそう言うと部下達を乗せてトラックに乗り込みそのまま去っていった。

シロが去っていくのを見ていた皆は直ぐ様イトナの方に駆け寄った。

 

「触手は意思の強さで動かすものです。

イトナ君に力や勝利への執着がある限り、触手は強く癒着して離れません。

そうこうしている間に肉体は強い負荷を受け続けて衰弱していき最後は触手もろとも蒸発して死んでしまう」

 

殺せんせーは丁寧に網を破りながら触手の事を説明する。

 

「後天的に移植されたんだよね?なんとか切り離せないのかな?」

 

片岡の質問に殺せんせーは難しいと言う感じの表情をする。

 

「彼の力への執着を消さなければ……その為にはそうなった原因をもっと知らねばいけません」

 

「でもなー……この子心閉ざしてるから」

 

「身の上話なんて素直にするとは思えねーな」

 

中村と前原はそう言うと皆は腕を組考えていると不破が話しかけてきた。

 

「その事なんだけどさ。学校にいるときに九重君と律で彼について調べてたんだ……そしたらここの社長の子供だった」

 

不破がそう言うと律は皆のスマホにその情報を見せていた。

 

「堀部電子製作所……世界的にスマホの部品を提供してた町工場だ。

だけど一昨年、負債を抱え倒産……社長夫婦はイトナを残して雲隠れしたらしい」

 

楓は陽菜乃に手当てしてもらいながら皆に説明する。

皆は何となくだがイトナが力や勝利を欲しがるのをわかってきたようで居た堪れない雰囲気だった。

 

「ケッ、つまんねー。それでグレただけって話か」

 

その雰囲気を壊したのは寺坂だった。

 

「寺坂!」

 

磯貝は寺坂の言いように注意をしようとしていたが、寺坂は気にも止めず続ける。

 

「皆それぞれ悩みあんだ、違いは重い軽いってだけなんだよ。

……けどそんな悩みとか苦労とか割りとどーでもよくなったりするんだわ」

 

寺坂は1度そう区切ると吉田と村松の肩を叩いたあと、イトナの首根っこ掴んでいた。

 

「俺等んとこでこいつの面倒見させろや、それで死んだら其処までだろ」

 

寺坂はそう言って村松達を引き連れイトナを引き摺って行った。

残されたE組一同は不安を拭えずにいるのであった。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。