プロの暗殺者は学生?   作:☆麒麟☆

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何か書いてたら6000字越えちゃった……
取り合えず是非読んでください!


竹林の時間

翌日、E組の皆は相変わらず暗い雰囲気を漂わせているなか殺せんせーは全身真っ黒な状態で教室に入ってきていた。

 

「何でいきなり黒いんだよ殺せんせー」

 

「急遽アフリカに行って日焼けしてきました。

これで先生は完全に忍者!!人混みで行動しても目立ちません」

 

「「「「「恐ろしく目立つわ!!」」」」」

 

クラスの皆で突っ込みをいれた後、岡野が不思議そうに聞いてきた。

 

「そもそも何のために?」

 

「もちろん竹林君のアフターケアです。

自分の意思で出ていった彼を引き止めることは出来ません。

ですが、新しい環境に彼 が馴染めているかどうか…………先生にはしばし見守る義務があります。

もちろんこれは先生の仕事ですので君達はいつも通り過ごしてください」

 

殺せんせーの言葉に一同は黙り混り暫くすると前原は口を開いた。

 

「俺等もちょっと様子見に行ってやっか。

暗殺を含め危なっかしいんだよ、あのオタクは」

 

「なんだかんだ同じ相手を殺しに行ってた仲間だしな」

 

「抜けんのはしょーがないけど、竹ちゃんが理事長の洗脳でヤな奴になったらやだなー」

 

前原の後に杉野と陽菜乃もそう言うと周りからはだなと言ったり頷いたりして皆賛同していた。

その光景を見ていた殺せんせーはうんうんと頷いていま。

 

「殺意が結ぶ絆ですねぇ」

 

 

 

 

一方の竹林はA組で授業を受けようとしていた。

 

「授業の準備は出来てるか竹林?」

 

「E組の先生は適当だったと思うけど、A組の先生は進み早いから取り残されんなよ~」

 

「……はは緊張するな」

 

クラスの人達からそう言ってると竹林の元に浅野がやって来る。

 

「大丈夫だよ。折角表舞台に戻ってこれたんだ、竹林君ならついてこられるさ。

大変だろうが一緒に頑張ろう!」

 

心にもない応援の言葉と解りつつも竹林は「……ありがとう」と答え授業に望むのだった。

 

 

 

 

(…………これがA組の授業!?この範囲はE組じゃ一学期にやったとこだぞ。

しかもやたらと非効率的だ…………三角関数は要点を絞って覚えた方が分かりやすいのに。

早口で黒板に書いては消し書いては消しの繰り返しで生徒の都合は一切無視。

着いて来れない奴をふるい落とす為の授業だ)

 

竹林はA組の授業風景に唖然としながら殺せんせーとのマンツーマンでやった授業を思い出していた。

自分の苦手科目を楽しく出来るように、竹林一押しの好きなアニメのオープニングを替え歌にして一緒に歌って覚えたりと色々な工夫してくれる。

 

(…………まぁ、信じられないぐらい下手だったから、あれはあれで覚えづらかったけど)

 

竹林は苦笑いしながらも授業を聞くのだった。

 

 

 

 

「…なぁ放課後……どこかでお茶でもしてかないか?」

 

放課後、竹林はクラスの人達にそう言って誘っていたがクラスメイトの人達は急いでる感じで断っていた。

 

「え、あ……馴染もうとして気ぃ遣わなくてもいいぜ竹林!!」

 

「俺等すぐ塾だからよ……お前もそうだろ?」

 

じゃーな!とクラスメイトの人達は言うと急いで教室を去っていった。

本校舎の殆どの生徒達は放課後、遊びになんて行かずに塾に行く人達がいる。

 

(本校舎の人達はE組じゃない人間にはごく普通に接してくれる。

けど昔の僕みたいにいつも勉強に追われてる。

余裕なのは本当に出来る数人だけ……E組とえらい違いだ)

 

竹林はチラッと浅野のいない五英傑を見ていた。

彼等は明日、榊原の家でパーティをするらしくその話で盛り上がっていた。

 

竹林はE組にいた頃の事を思い出す。

色々文句を言いながらも一緒にメイド喫茶に行った寺坂。

誕生日にメイド喫茶の会員証を楓に渡したが、どうせ使わないだろうと思ったら逆に誘われて楽しんだこと。

 

 

(やたらと貪欲に生徒の事を知ろうとする先生……多分、彼等も彼等なりに僕の事を知ろうとしたのかな)

 

「どうだい竹林君、クラスには馴染めたかい?」

 

竹林が思考に更けていると浅野から唐突に声をかけられた。

 

「……!!ま、まぁ」

 

咄嗟の事で曖昧な感じで返答すると浅野はそっかと気にしない素振りで何か企みのある笑みを浮かべていた。

 

「突然だけど理事長が君を呼んでるよ。

逆行に勝ったヒーローの君を必要としているようだ」

 

 

 

 

一方、楓達は茂みに隠れながら竹林を観察していた。

 

「結構うまくやってるみたいじゃない」

 

「むしろ普段より愛想よくね?」

 

片岡と前原は安心したかのように呟いていた。

 

「ケッ、だから放っとけって言ったんだあんなメガネ」

 

寺坂は鼻くそをほじりながら悪態をついていたが、言葉には其処までトゲが感じられ無かった。

 

「良かった~!竹ちゃんA組でうまくやってけそうだね!」

 

「安心できんぞ。見ろ……浅野が竹林を連れてったぞ」

 

「口の動きから理事長がどうとか言ってるみたいですね」

 

「しかも見ろ、浅野のあの作り笑い……何か企んでるな」

 

陽菜乃は嬉しそうにしていたが楓と華鎌はそう言うと片岡達の顔が強張る。

 

「と言うか良く口パクで何言ってるか解るね」

 

「其ぐらい皆さん出来ますよ」

 

(((((出来ねーよ!!??)))))

 

渚の言葉に華鎌は何食わぬ顔でそう言うと一同は内心で突っ込みを上げていた。

 

「取り合えず理事長室が見えるところに行ってみるか」

 

磯貝の言葉に一同は頷くと即座に移動する。

その行動は端から見たらもはや変人集団としか見られないものだった。

 

 

 

 

 

理事長室の中に入室した竹林は理事長がいないと解り、理事長室に飾られている表彰や楯、トロフィーを眺めていた。

 

「そこら辺の物には触れない方がいい。

以前ここで理事長の私物を壊した奴がいた。

そいつは問答無用でE組送りになったらしいよ。」

 

「……君だったら少しぐらい大丈夫じゃ?」

 

「ははは、まさか。理事長はたとえ息子が相手でも容赦しないよ。

油断ならない毎日さ」

 

竹林は冗談混じりで言ってみたら浅野は顔を歪ませながらそう言って竹林はゴクリと唾を飲み込んでいた。

 

(浅野学秀……彼もよくわからない。

親子で同じ学校にいながら仲良く話すのを見たことがない。

僕が彼ぐらい出来たなら……うちの家族は喜んで認めてくれるだろうに)

 

そう思っていると理事長室のドアが開く音がして理事長が入室してきた。

 

「やぁ、お待たせしたね2人とも!

まぁ、かけなさい」

 

理事長はそう言うと竹林は席についた。

ふと、理事長は窓の所に移動してカーテンを閉めていた。

 

「くそ、カーテンで中が見えねぇ」

 

「と言うか理事長、僕達の所見てたの気のせいだよね?」

 

「いいえ、明らかにこちらを見てカーテンを閉めましたね」

 

楓は気配を消しながら理事長の窓の下に移動していたが直ぐに戻っていた。

 

「聞き耳を立てれば行けるかと思ったけど防音完備されてるな。

窓もしっかり閉められると何話してるか全然聞こえねぇ」

 

打つ手なしだと楓は言うと皆は落胆していた。

 

「しょうがありません。今日の所はこれぐらいにして解散しましょう」

 

殺せんせーの言葉に一同は渋々頷いて各々の家に帰宅していった。

殺せんせーは暫くジッと理事長室を見てその場を素早く去るのだった。

 

 

 

 

竹林が席について、その対面した感じで理事長も席について浅野はその後ろに立っていた。

 

「明日は……私がこの学校の前身である私塾を開いた日なんだ。

椚ヶ丘ではそれを創立記念として集会を行う。

君はそこでもう一度……全校の前でスピーチをして欲しいんだ」

 

「……スピーチ?」

 

「そう。私の教育の大きな成果として君を推したい。

きっとご家族もお喜びになるだろう」

 

家族……竹林はその言葉に反応したを理解した理事長は畳み掛けるように浅野から原稿を受け取り竹林に渡していた。

 

「スピーチの原稿だ。読んでみて竹林君」

 

(!!??…………これ……こんな内容を皆の前で?)

 

原稿に目を通していると戦慄をしていた…………

 

「君はまだ弱者から抜けきれてない。

これはそのステップアップの儀式だよ。強くなければご家族は見てくれないぞ」

 

理事長の言葉の一つ一つが竹林の体を纏わり付いていく。

原稿の内容は…………

 

『僕は……E組でクラスメイト達の腐敗ぶりを見てきました。

不特定多数との不純異性交遊に夢中な生徒・暴力生徒・食べることしか生き甲斐のない肥満生徒・変態行為に手を染める生徒・コミュニケーション能力に多大な問題を抱える生徒。

彼等には本校舎に戻る能力はありませんが同じ椚ヶ丘の生徒として少しでも彼等を更生させてあげたいと考えました。

そこで皆さんにお願いがあります。

僕が彼等の生活の全てを監視・再教育するために“E組管理委員会”を立ち上げる賛同を下さい』

 

と言う内容だった。

 

「これは君が強者に生まれ変わるための儀式だ。かつての友を支配することで強者としての振る舞いを身に付けるんだ」

 

竹林はふらっと立ち上がり原稿を折り畳んでいた。

 

「………………やります」

 

小さくだが理事長は確かに聞き取りニヤリと笑っていた。

 

「良く言った竹林君。帰って原稿を覚えなさい」

 

竹林は理事長に言われて動いていたが表彰やトロフィーの前で立ち止まると浅野に問いかけていた。

 

「……浅野君、これが君がいつも上から見ていた景色なんだね」

 

「…………まぁね(お前ごときが支配者を語るな。僕でさえ支配の頂点に立ててないのに)」

 

浅野は内心で苛立つもののそれを表に出さないように言うと竹林はそのまま理事長室を後にした。

塾が終わり、帰宅する竹林の目の前に真っ黒な殺せんせーが下手な隠れ方をしながら竹林を見ていた。

いくら竹林でもこれには直ぐに見つけて指摘していた。

 

「警察呼びますよ殺せんせー」

 

「にゅやっ!?な、なぜ闇に紛れた先生を!?」

 

見付けられたことに驚いてる殺せんせーに無視しながら竹林は言葉を続ける。

 

「何のようですか?殺しとはもう無縁のこの僕に…………!?」

 

用は無い筈ですよと言おうとした矢先、殺せんせーはマッハで竹林をメイクしてイケメン顔になっていた。

 

「ビジュアル系メイクです。君の個性のオタクキャラを殺してみました」

 

殺せんせーはそう言うと手鏡で竹林のメイク姿を見せてみると竹林は驚いていた。

 

「……こんなの僕じゃない」

 

竹林は自分の顔をまるで別人のように見てるなか殺せんせーはメイク落としなどを使って元の竹林に戻しながら口を開く。

 

「竹林君、先生を殺さないのは君の自由です。

でもね“殺す”とは日常に溢れる行為ですよ。

現に家族に認められるためだけに…君は自由な自分を殺そうとしている。

でも君ならいつか君の中の呪縛された君を殺せる日が必ず来ます。

それだけの力が君にはある。

焦らずじっくりと殺すチャンスを狙ってください。

相談があれば闇に紛れて何時でも来ます」

 

元の竹林に戻し言いたいことを言い終わるとそのまま殺せんせー踵を返して闇に紛れて消えていった。

殺せんせーの言葉を聞いた竹林はその場から動けず、殺せんせーに言われた事を考えていた。

 

 

 

 

 

翌日、創立記念日の集会で全校生徒が集まるなか壇上には再び竹林の姿があった。

狭間や中村は「また?」と驚いてるなか千葉は呟いた。

 

「胸騒ぎだ。…………竹林から殺気を感じる。

何か大事な物をメチャメチャに壊してしまいそうな」

 

と何やら具体的に言っており楓の前後にいる陽菜乃と渚も心配そうに見ていた。

 

「何か竹ちゃんの雰囲気が怖い…………」

 

「あいつ何をやらかす気だ…………」

 

陽菜乃と楓の心配を他所に竹林のスピーチは始まる。

 

『僕の……やりたい事を聞いてください。

僕のいたE組は弱い人達の集まりです。

学力と言う強さが無かったために本校舎の皆さんから差別待遇を受けています』

 

竹林の最初の発言はE組の誹謗みたいなものだった。

E組の大半の人達は冷や汗を掻いて聞いていて、天井に張り付いていた殺せんせーも竹林のスピーチを固唾を呑んで聞いていると…………

 

『でも僕はそんなE組がメイド喫茶の次ぐらいに居心地が良いです』

 

「「「「「「「!!??」」」」」」」

 

竹林の言葉にE組の皆だけではなく浅野は勿論、本校舎の生徒や教師・画面越しで見ている理事長も驚いていた。

 

『……僕は嘘をついていました。強くなりたくて、家族に認められたくて。

…………でも先生は僕のような要領の悪い生徒でもわかるように工夫して教えてくれた。

家族や皆さんが認めなかった僕の事をE組の皆は同じ目線で接してくれた』

 

竹林の本音にE組の皆は嬉しそうに笑っていた。

陽菜乃も後ろを向いて嬉しそうな顔をしていると楓はぽんぽんと楓は陽菜乃の頭を撫でて口角を上げていた。

…………しかし、その事を嬉しく思わない者もいる。

 

「彼を壇上から下ろしなさい」

 

苛立立ちながら言う理事長の言葉に教師が1人は、はい!と返事をすると直ぐに壇上に走っていった。

それでも竹林のスピーチは続く…………

 

『世間が認める明確な強者を目指す皆さんを……正しいと思いますし尊敬します。

でも、もう暫く僕は弱者でいい』

 

「……イカれたザコが!!」

 

我慢の限界だった浅野は壇上にずかずかと歩を進めて竹林に撤回し謝罪を求めようとしていると、竹林はあるものを皆にもわかるように見せていた。

それはガラスで出来た表彰の楯だった。

 

「……まさかあいつ」

 

楓は竹林の意図が解ったのか頬を引き攣らせながら別の意味で冷や汗を掻いていた。

 

「…………まさかだよね?」

 

渚も気付いたのか楓に問い掛けてきた。

 

「全校生徒の前であんな事言って更に表彰の楯を出すってことは1つしか無いだろ……」

 

「え?え?どういう事~?教えてよぉー!」

 

竹林の行動が解らないと言う陽菜乃に楓は見てればわかると言って壇上の光景を見ていた。

 

『理事長室からくすねて来ました。

私立学校のベスト経営者を表彰する楯みたいです。

……理事長は本当に合理的だ』

 

竹林はそう言い終わると腰から木で出来たナイフを取りだし皆の前で砕き始めた。

楯は見るも無惨に木っ端微塵になっていて、その光景を見ていた皆は開いた口が塞がらない状態になっていた。

 

『浅野君が言うには、過去これと同じことをした生徒がいたとか……前例から合理的に考えれば……E組行きですね僕も』

 

ポカーンとしている生徒達の前で竹林は健やかな表情でそう言うと壇上を後にしようとした時、浅野が竹林の肩を掴んでいた。

 

「救えないな君は……強者になる折角のチャンスを与えてやったのに」

 

「強者?怖がってるだけの人に見えてたけどね……君も皆も」

 

「っ……!」

 

竹林はそう言い終わると本当に壇上を後にしていたと。

 

 

 

 

 

 

 

 

集会が終わってE組の教室では竹林を歓迎していた。

寺坂達に揉みくちゃにされて鬱陶しいそうにしていたが、甘んじて受けていた。

その後、烏間先生もやって来て外で授業をすることになった。

 

「二学期からは火薬を用いた暗殺を組み込むことにする。

空気では出せないそのパワーは暗殺の上では魅力だがその分、大変危険だ。

そのためには火薬の安全な取り扱いを1名に完璧に覚えてもらう。

俺の許可とその1名の監督が火薬を使う時の条件だ。

さぁ誰か覚えてくれる人はいるか?」

 

皆は分厚い参考書やマニュアルをみて減なりしていた。

 

「桐……じゃんけんするぞ」

 

「そうですね」

 

ポン、ポンポンポンと呑気にじゃん拳をして負けた楓は立ち上がろうとすると1人の生徒に遮られていた。

 

「勉強の役に立たない知識ですが……まぁ、これもどこかで役に立つかもね」

 

そう言うとその人物は烏間先生から参考書やマニュアルを受け取っていて皆はその様子にいい顔をしていた。

烏間先生もその生徒をみてニヤリとしていた。

 

「暗記出来るか?竹林君」

 

烏間先生にそう聞かれた竹林はメガネをクイッとあげると……

 

「えぇ、二期のオープニングの替え歌にすればすぐですよ。

念のために九重や華鎌にも教えてもらうけど良いかい?」

 

竹林の言葉に2人はOKと即決で答えていた。

 

「やはり殺意が結ぶ絆とは良いですねぇ~」

 

そんな光景を窓越しから覗いていた殺せんせーは嬉しそうな表情をしながら授業風景を見ているのであった。


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