プロの暗殺者は学生?   作:☆麒麟☆

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怖いの時間2

「えっ?莉桜ちゃん、ごめん上手く聞き取れなかったんだけど肝だめしって言った?」

 

陽菜乃は何かの間違いだと思って聞き直していたが中村は笑いながら答えていた。

 

「しっかり聞いてたんじゃん!まぁ、着いてきなよ!美樹さんもどうですか?」

 

「おっ、そしたら行くかな!」

 

帰るとは言えない雰囲気になり、怖いものがダメな人達は肩を落としながら渋々、着いていくことにした。

 

「にしてもまた肝だめしやるのか?」

 

「えぇ~、だってさ普久間じゃさ殺せんせーの邪な考えで全然恐く無かったじゃん。中村と昼間に話し合ってやるかって事にしたんだよ」

 

「と言っても私達もたいした準備出来なかったんだけど雰囲気はバッチリ怖い筈よ!」

 

楓の問いにカルマと中村はそう答えていると目の前にはお墓がズラっと並ばれてあった。

 

「じゃあ説明するよ。この先に使われていない古びた神社があってそこに対先生用のナイフを置いてるからそれを男女ペアーで取りに行って戻って来るって言う単純な物」

 

陽菜乃と矢田は楓の背中をぎゅっと掴みながらそぉっとお墓の方を覗いてみると何とも言えない不気味さが漂ってブルッと震えていた。

 

「メンバーは…………華鎌と美樹さん、九重と倉橋ちゃんは確定ね。今回はクジを作り忘れたから話し合って決めますか!」

 

中村がそう言うと杉野はいの一番に神崎を誘っていた。

神崎も快く了承してくれると杉野はガッツポーズをしていたり、奥田はオドオドとしながらカルマを誘っていた。

カルマは即決でいいよーと言って奥田もホッとしていた。

結果…………

 

楓・陽菜乃

 

華鎌・美樹

 

杉野・神崎

 

渚・茅野

 

カルマ・奥田

 

千葉・速水

 

磯貝・片岡

 

岡島・矢田

 

中村・不破

 

前原・岡野

 

原・律

 

と言う面子になった。

今回は男子が少ないと言うことで女子ペアーが2組も出来てしまった。

なので女子ペアーの時は誰か男子を拝借する事で了承し肝試しが始まるのだった。

 

「あっ!これ皆に渡すよ」

 

カルマはそういって皆に未開封の懐中電灯を渡していた。

今回は急な決定だったため、急いで買い揃えたらしい。

 

 

トップバッターはじゃん拳に負けた楓と陽菜乃ペアーが行くことになった。

 

「磯貝、渚、カルマと中村がいなくならないように見張っとけよ?」

 

楓はこの2人が先回りして驚かそうと考えていたので見張るように頼んでいた。

 

「だから驚かすにも何も準備してないってば」

 

「疑り深いなぁ」

 

中村とカルマの呆れた口調を聞きながら楓は陽菜乃と一緒に歩いていった。

数メートル歩いていくと楓と陽菜乃の背中は暗闇に飲み込まれていき渚達は見えなくなっていた。

お墓を歩いていくと何とも言えない雰囲気が漂っていて、楓もブルッと震わせていた。

陽菜乃はと言うと完全に怖がっていて、楓の左腕をこれでもかと言う程の力を入れていた。

 

チカッ……チカッ

 

突如、懐中電灯が電池切れかのような感じで点滅をしていた。

 

「まじかよ……これ未開封だぞ?運が悪いな……」

 

楓は懐中電灯を振ったり軽く叩いてみると灯りはパッと灯って2人はホッと息を吐いていた。

これで灯りが消えてしまったら陽菜乃は絶叫して、皆のところに走って戻ってしまうだろう。

 

“クスクス”

 

ビクッ!

突如、子供の笑い声のようなものが聞こえた楓と陽菜乃は驚いて辺りを見渡して見たが辺りには何の気配も感じることは無かった。

 

「き、き、気のせいだよね」

 

「そうだな、何かの聞き間違えだろう。さっさと行って戻ってしまおうぜ」

 

楓は陽菜乃の頭をよしよしと撫でていると陽菜乃は顔を赤らめながらぎゅっと腕を掴んでいて再び歩き始めるのだった。

暫く歩いていくと後ろからも悲鳴のようなものが聞こえてきた。

その度に「ヒッ!」とか「きゃ!」と陽菜乃も可愛らしく悲鳴を漏らしていて楓は苦笑いするのであった。

 

「そう言えば今日は遊園地の時よりも歩いてるけど無理してないか?」

 

「え!?う、うん。こ、怖いけどまだ大丈夫だよ!…………もしヤバかったらまた背負ってもらっても良い?」

 

陽菜乃は上目遣いをしながらそう頼み込んでいた。

 

「何時でもどうぞ(…………その上目遣いは反則だろ)」

 

楓はドキリとしたが平静を装いながらそう言って歩き出そうとした時、懐中電灯の灯りが完全に消えてしまった。

振っても叩いてもピクリともせず陽菜乃だけではなく楓も焦っていた。

楓はスマホを使えばいいと考えスマホを取り出して灯りをつけようとしたが…………

 

「あれ?スマホが起動しない…………」

 

「え!?そしたら私の…………あれ!?私のも起動しない!?」

 

電子機器類の突然の使用不能…………これには楓も嫌な汗が止まらなかった。

 

「…………そう言えばさっきまで後ろから聞こえていた声もしなくなったよね?」

 

そう言えばと楓は後ろを振り向いた。

今、聞こえるのは風の音とそれに揺れる木の枝と雑草の揺れ動く音しか聞こえない。

加えて、今いるのはお墓がズラリと並ばれている場所……

楓の六感が危険だと言っていて陽菜乃の方を向いて戻ろうと言おうとしたが、陽菜乃は顔を真っ青にしながらガクガク震えていた。

楓は何事だと思い陽菜乃の方を見てみると其処にはボロボロの服を着て首の無い体がこちらに向かって走り出してきていた。

 

楓は陽菜乃を無理矢理、お姫様抱っこしてもうスピードで元の場所に戻って行った。

ホラーには耐性がある楓でも恐怖からか目元には涙が出ていていた。

5分程、全力で走っていると渚達がいるスタート地点に戻ってきており、それと同時に懐中電灯の灯りが灯りスマホも起動しているのだった。

 

「良かった!連絡がつかないから心配してたんだよ!」

 

「俺達の懐中電灯が途中で灯りつかなくなってさ、一旦中止して戻ってきてたんだよ」

 

「にしてもお姫様抱っことか大胆だねぇ~」

 

渚と磯貝が心配した素振りで言ったりカルマのおちょくる発言も楓や陽菜乃には耳に入っていなかった。

 

「ハァーハァー…………おい、渚……カルマと中村は……ハァー……最初っからここにいたのか?」

 

「?うん。いたけど……」

 

「そしてら律で悪戯してないか?」

 

「うん、それどころか連絡とるのに必死だったよ。どうかしたの?」

 

楓は先程の出来事……懐中電灯が急に切れた事、スマホが起動しなくなったこと、ボロボロの服を着た首なしに追いかけられた事を話していた。

陽菜乃は恐怖からか泣きじゃくっていて楓はカルマと中村の仕業だと考えていることを言うと、皆はそれをキッパリ否定していた。

皆が口裏を合わせているのかとも思ったが、人害無畜な奥田や原までもが否定していたので違うと判断していた。

 

「うーん。でも、置いてきたナイフは回収したいからなぁ…………でも1人じゃ行きたくないし」

 

「じゃあ、皆で行こっか!」

 

中村は楓の話を聞いて半信半疑だが1人でナイフを回収するのは恐くて悩んでいるとカルマの発言にそれだ!と指を鳴らしながら答えていた。

陽菜乃は嫌だ嫌だと言っていたが矢田と岡野、片岡が「私達も行くから」と言い「そしたら楓くん負ぶってくれるなら行く」と陽菜乃は言ったので、皆でナイフを回収しに古びた神社に向かうのだった。

楓は後ろの方で陽菜乃を負ぶりながら皆の後に着いていった。

 

“クスクス”

 

再び聞こえた笑い声……

それを聞いた楓と陽菜乃はビクッ!再び震わせていた。

皆も驚いていて、茅野は渚に、速水は千葉に矢田と不破は楓の服を掴んでいた。

 

「あれ?」

 

突如、杉野は懐中電灯の灯りが切れたのに気付いていた。

それを切っ掛けに皆の懐中電灯も突然、切れてしまいパニックになっていた。

更に…………

 

カランコロン……

 

突如、下駄音が聞こえて皆は凝視してみると其処には浴衣が開けて顔面が蒼白の少女がいた。

こちらをニッコリと微笑んでいるのだが、雰囲気があまりにも恐くてお世辞にも可愛いとは言えなかった。

大人の美樹もこれには少々驚いていてカルマや中村も顔が引き攣っていた。

そんなのお構いなしに少女はこちらに歩いて来ると皆は顔を見合って頷くと踵を返して全速力でその場を後にした。

 

再び元の場所に戻ると焦ったかのような感じで律が皆に話しかけてきた。

 

「皆さん!急にスマホの電源を切らないでください!流石の私も焦りましたよ!」

 

皆はえ?と声を揃えて言っていた。

あの場で誰もスマホには触れていなかった……にもかかわらず勝手に電源が切れていた。

次第に皆の顔も蒼白になっていき、その場を後にして元の高台に戻って行った。

楓はふと陽菜乃があまりにも静かなので顔を見てみると我慢の限界だったのか気を失っていた。

カルマは適当な理由を殺せんせーに言ってナイフの回収を頼み、一同は無理を言ってお寺の住職に浄めをしてもらい家に帰るのだった。

 

 

 

一方…………お墓では5人の女子達が笑いあっていた。

1人年端もいかない小学生がパソコンを弄りながらけらけらと笑っていた。

 

「いやぁ~傑作、傑作。まさかあんなに驚くとはな…………兜蟲や巨針蟻から最初に頼まれた時はめんどくせぇなぁーって思ったけど彼奴等の驚いた顔見れたからやったかいがあったぜ!」

 

「唯ちゃんにハッキングでスマホの電源を落としてもらって沖さんと私でクスクスと笑って驚かしただけですけどね」

 

「良いよねぇ~アリス達は役割あって……みんな途中でリタイアしたから私と兜蟲なんて仕事回んなかったし」

 

そう、楓たちが肝試しをしていたところで笑っていたのは唯やアリス達だった。

偶然、カルマと中村がこの先の神社にナイフを置いて肝だめしの話をしていたのを聞いていた彼女たちは驚かしてやろうと決めて決行していたのだ。

 

「にしても懐中電灯まで切らせるとは思いもしなかったは……芋蟲のあの顔は暫く忘れられないわね」

 

兜蟲はクククと思い出し笑いをしていると唯は妙な顔をしていた。

 

「それなんだよ。誰が懐中電灯の灯りを切れさせたんだ?」

 

「え?唯ちゃんじゃ無いんですか?」

 

「いくら私でも懐中電灯はハッキングして操るなんて無理だ。あれはコンピューター何かじゃ無いんだし。それに首なしや少女の変装なんて当初の予定には無かっただろ?」

 

「私はてっきり兜蟲達がやってたのかと思いましたわ」

 

「違うわよゴキちゃん。私達は当初の予定通り火の玉を見せる準備をしてただけだし」

 

そんな事を話しているとカランコロンと下駄音が聞こえていた。

皆はギギギと錆びたブリキのように首を動かして見てみると、先程楓たちが見た少女が此方に向かって歩いていた。

 

「あ、あれは誰が変装してるんだよな?な?」

 

唯はブルブルと震えながら聞くが皆の顔色はどんどん蒼白になっていった。

 

「あんなにハッキリと見えるのに気配が感じません。あんなの人間じゃ出来ませんよ」

 

「それどころか生気すら感じられませんわよ…………」

 

「「「「「キャアァァァァアアアアア!!!!」」」」」

 

アリス達は悲鳴をあげながら一目散にその場から逃げ出すのであった。

 

 

この世には遊び半分で行ってはいけない場所もある…………

楓やアリス達はそれを嫌って言う程、身をもって体験するのであった…………

 

 

余談だがこの日を境に楓はホラー耐性◎が無くなりホラー耐性×と言うバッドスキルを手に入れるのであった。




殺せんせー「全く……カルマ君ときたら」

殺せんせーは対先生用のナイフをビニール袋に入れてブツブツと文句を言いながら歩いていたが、懐からお金を取り出してヌルフフフと笑っていた。

殺せんせー「それにしても沢山稼ぎました。これで当面の生活には困りませんね」

そんな時に、E組のある人が殺せんせーの前に現れていた。

殺せんせー「おや、―――君どうかしましたか」

???「………………ます」

その人の発言に殺せんせーは驚いていて聞き返していた。

殺せんせー「E組を…………抜ける?」

2学期もどうやら波乱の学校生活が始まるようだ…………

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