こんな感じでどうでしょうか!
御覧ください!
翌日、楓はボォっと烏間先生の作業を眺めていた。
感染した人達が無事とわかり楓達は泥のように眠りについたのだが、烏間先生は一睡もしないで殺せんせーを殺そうと不眠不休で指揮をとっていた。
鉄板の中に殺せんせーと対殺せんせー弾を敷き詰めて海に沈め、更にコンクリートの塊で固めていた。
そんな中、楓は烏間先生の作業を見ながらあることを考えていた。
それは昨日、岡野と華鎌に言われた事…………
(俺って陽菜乃の事好きなのか?)
倉橋の事について考えていた。
(話していると確かに楽しい気分になる……他の人達と話してるのとじゃ楽しさが少し違うって言うのはあるな…………それに、岡野の言う通り陽菜乃が感染したと知ったときにかなり怒りが沸き起こった。
と言うか何でだ?杉野や原、中村だって感染したのに…………)
楓は考えれば考えるほど解らず、頭からプスプスと煙が出てきていたように感じられた。
「あっ、楓君だー!」
楓は突然自身の名前を呼ばれてビクッと驚いていた。
振り向くとそこには、先程まで考えていた人物、倉橋がいた。
「よ、よう。もう大丈夫なのか?」
「うん!ぐっすり眠ったからバッチリだよ!」
倉橋の返答に楓はホッと安堵の息を吐いた。
その後、クラスの皆も続々と来て烏間先生の作業姿を見ていた。
「スゲーな烏間先生、ずっと動いてんのか」
「あと10年で俺等、あんな超人になれんのかな」
杉野と菅谷がポツリと漏らしていた。
「ビッチ先生もああ見えてすごい人だし」
「ホテルで会った殺し屋達もそうだった。長年の経験でスゲー技術身に付けてたり、仕事に対してしっかり考えがあったり」
「……と思えば鷹岡みたいに“ああはなりたくない”って奴もいて。
良いなと思った人は追いかけて、ダメだと思った奴は追い越して…………多分、それの繰り返しなんだろーな、大人になってくって」
クラスの人達がポツリと呟いてく中、楓は口を開いた。
「自分の出来ることをしっかりと理解して進んでいけば良いんだよ。
出来もしないのに欲張ってアレもこれもとしているとそのツケがいつか返ってきて最悪、今回の鷹岡のように痛い目をみるんだよ」
「何か実際に経験したような言い方だな?」
「そりゃあ、俺は大人に混じって仕事をしてるからな。
俺もそう言う痛い目を見たことがあるんだよ」
磯貝の言葉に楓は苦笑いしながら返答していた。
するとドドーン!!ととてつもない爆発音が聞こえてきて皆はそちらの方を見た。
コンクリート塊には中心から大きく穴を空いており、破片が海に降り落ちていた。
「爆発したぞ!!」
「殺ったか!?」
磯貝と前原はそう言いうが、皆は薄々わかっていた。
烏間先生も背後をチラッと目を配るとハァとため息をついていた。
「先生の不甲斐なさから苦労させてしまいました。
ですが皆さんは敵と戦い、ウィルスと戦い本当によく頑張りました!」
聞き覚えのある声を聞いて皆は笑顔になって振り返った。
そこには麦わら帽子にアロハシャツを着て無数の触手を生やしている殺せんせーの姿があった。
「おはようございます殺せんせー。
やっぱ先生は触手がなくちゃね」
「はい、おはようございます。
では、旅行の続きを楽しみましょうか」
「旅行の続きったってもう夜だぜ?明日は帰るだけだし」
「1日損した気分だよね~」
日が沈むのを横目で見ながら三村と中村が苦笑いしながら言うが、そんなのお構いなしに殺せんせーは口を開いた。
「ヌルフフフ、夜だから良いんですよ。
昨日の暗殺のお返しに……ちゃんとスペシャルなイベントを用意してます」
殺せんせーはそう言うとアロハシャツと麦わら帽子を脱ぎ捨ててマッハで白装束姿になり手にはプラカードを持っていた。
そこには“夏休み旅行特別企画・納涼!!ヌルヌル暗殺肝だめし”と書かれていた。
「「「「暗殺……肝だめし?」」」」
皆は訳がわからなそうに口を揃えながら言っていた。
「先生がお化け役を務めます。
久々にたっぷり分身して動きますよぉ
勿論、お化けは殺してもOK!!暗殺旅行の締め括りにはぴったりでしょう」
殺せんせーの言葉に一同は楽しそうに話していた。
楓や華鎌もこの時は年相応の子供のように楽しそうに渚達と話してワクワクしていた。
しかし殺せんせーの魂胆は別にあった。
“カップル成立!!”
殺せんせーの後頭部にはデカデカとそう書かれており下衆の計画が始まろうとしていた。
殺せんせーから男女ペアーでやりましょうと言う言葉に皆は何の疑問も持たないまま了承し、決めていた。
ペアーの決め方はくじ引きで決定し、番号のあった男子がペアーと行く順番が決定することになった。
楓は紙を引き確認しているなか華鎌がやって来た。
「楓は何番ですか?」
「俺は4番だな……桐は?」
「私は13番です」
そんな会話を聞いた倉橋は落胆していた。
チラッと引いた番号を見てみると12番……何度見直しても引っくり返しても上下逆さまにしてみてもその数字は変わらなかった。
倉橋はため息をついて今回は諦めて別のチャンスで頑張ろうと思っていた矢先、中村がポンポンと肩を叩いていた。
中村は素早く、倉橋の紙を奪って自分の紙を強引に渡してきた。
「ん?倉橋ちゃんは4番なんだ!」
中村はあからさまに大きめな声でそう言っていた。
倉橋は直ぐ様、紙を確認すると其処には確かに4と言う数字が書かれていた。
倉橋はバッと中村の方を見てみると中村は口パクで“頑張りなさい”と言いウインクをしていた。
普段、ムードメーカーで良くカルマと悪戯をしている中村が今だけは天使に見えていた倉橋であった。
こうしてペアーと順番は決まった。
因みに…………
1.竹林・律
2.杉野・神崎
3.吉田・原
4.楓・倉橋
5.磯貝・片岡
6.渚・茅野
7.千葉・速水
8.菅谷・不破
9.前原・岡野
10.カルマ・奥田
11.木村・矢田
12.岡島・中村
13.三村・華鎌
14.寺坂&村松・狭間
となった。
余談だがこの時、三村は神崎とペアーになれず更にペアーの相手が男子の華鎌と言うこともあり、かなりショックを受けたとか…………
斯くして、こうして開かれた暗殺肝だめし…………
場所はこの島に海底洞窟があり、300メートル先の出口まで男女で抜けるというシンプルなものだった。
竹林・律ペアー、杉野・神崎ペアー、吉田・原ペアーが行って楓・倉橋の番になった。
「いい、陽菜乃ちゃん?ここで1発、ストレートを投げ込むんだよ?間違っても変化球を投げちゃダメだからね?」
「う、うん」
出発前に矢田は倉橋にそう言っていた。
流石の倉橋もストレートと変化球の意味が解ったのか頷いていたが、矢田のあまりの迫力に若干弾き気味であった。
そしてスタートすることになり、楓は懐中電灯を持ち先頭を歩いていた。
洞窟ってこともあり足場が悪く、水苔で足が滑りそうなのでゆっくり歩いていた。
「足場滑るけど大丈夫か?」
「う、うん。だいじょ……きゃっ!」
大丈夫と言おうとした矢先、倉橋は足を滑らせて転びそうになったのを楓は倉橋の手を掴んで転ばないように支えていた。
「いった矢先に……怪我はない?」
「う、うん。ごめんね、助かったよー!」
倉橋はそのまま楓の腕を掴むと楓はギャーと悲鳴をあげていた。
倉橋がちょうど掴んでいる場所は昨日、ギロチンのナイフが刺さった場所だった。
「ご、ごめんね!大丈夫?」
「だ、大丈夫……先に行こうぜ」
楓はぎこちなく笑いながらそう言い先に進んだ。
暫く進むとペンペンと三線を引いてるような音が聞こえてきた。
するとボウッと妙に凝った衣装を着て三線を引いてる殺せんせーが現れた。
「ひっ!」
倉橋は殺せんせーの登場に驚いたのか小さく悲鳴をあげて楓の腕をギュッと掴んでいた。
「ここは地塗られた悲劇の洞窟。
琉球……かつての沖縄で戦いに敗れた王族達が非業の死を遂げた場所です。
決して2人離れぬよう…………1人になれば、さまよえる魂にとり殺されます」
殺せんせーはそう言うとスゥっと消えていって後ろの組にも同じ語りをしていた。
「い、意外と本格的だね……楓君は動じて無かったけどこう言うの平気なの」
「うーん、割りと平気だな。良く夏の心霊番組とか1人で見てたし。陽菜乃は…………ダメそうだな」
楓の問に倉橋はコクコクと頷いていた。
「私、遊園地のお化け屋敷とかもダメなんだよね~」
「遊園地……1度も行ったことないな」
楓の言葉に倉橋はえ!?と驚いていた。
「いやぁ~……小さい頃が色々あり過ぎたし、アリス姉と暮らしてからも修業してたりして行ってないんだよな
」
楓はアハハと笑っていると倉橋は口を開いた。
「それじゃあさ……今度、一緒に行ってみない?」
倉橋の言葉に楓はえ?と言う顔で倉橋を見ていた。
「勿論、嫌だったら良いんだよ!!」
「い、いや……良いのか?他の人達とじゃなくても」
「もちろんだよ!」
「そしたら今度、行くか」
楓の言葉に倉橋はウンと頷いて洞窟を進んでいた。
そこで、楓はふと気付いた事があった。
「そう言えば、これって肝だめしだよな?」
「そうだけど、どうしたの?」
「いや……その割りには殺せんせーの妨害が無いなって」
楓の言葉に確かに……と倉橋も肯定しながら辺りを見渡していた。
楓と倉橋は辺りを見渡しなら歩いていると襖のような物が見えてきて、襖の奥には殺せんせーのシルエットがあり正座をしながら包丁を研いでいた。
「血が見たい……同胞を殺されたこの恨み……血を見ねばおさまらぬ……血もしくは……イチャイチャするカップルが見たい……どっちか見れればワシ満足」
「意味が解らん!!」
楓はそう突っ込むと背中から兜角を瞬時に出して殺せんせーに向けて投げ込んでいた。
「に、にゅや!!」
しかし、殺せんせーはその場から素早く逃げて後続の人達の所に行った。
「…………何か急に怖くなくなってきたよ」
「絶対何か企んでるな……でもクラスで一番怖がりなのって…………「ぎゃーーーーっ!!化け物出たーーっ!!」……やっぱり」
楓達の後ろからは殺せんせーの悲鳴が絶えず聞こえてきた。
目がない!だの、日本人形だの、水木しげる大先生!!だのと叫んでいた。
「さっさと出るか」
「そだね」
楓の言葉に倉橋は頷き、そのままゴールを目指していった。
とは言ったものの、暗くて怖いのか倉橋は絶えず楓の腕を掴んで歩いていた。
楓は……
(考えちゃダメだ。心頭滅却しなきゃ!)
こう言う展開に慣れておらず必死に煩悩を退散させようとしていた。
すると、倉橋は急にピタッと立ち止まっていた。
「どうした?」
「桃花ちゃんから聞いたんだ……楓君、すっごく真剣に薬を取りに行こうとしてたって…………ありがとうね」
突然の感謝の言葉に楓は気恥ずかしそうにポリポリと頬を掻いていた。
「俺だけじゃ無いさ。
あの時、ホテルに乗り込んだ皆が真剣に薬を取りに行ってたんだ。
それに、俺は皆に謝んなきゃならないし」
「どうして?」
「ウィルス入りのドリンクを渡してきた従業員を俺と桐は何処か不思議に思っていた。
もっと速く気付いていたら感染を防げたかも知れないんだ「そんなに自分を責めちゃダメだよ」え?」
「だって楓君はどんなに凄い殺し屋って言われても私達と同い年なんだよ?まだまだ未熟な所もあるんだよ?たらればの話をしていてもしょうが無いよ。
それに、桃花ちゃんから楓君は凄く私の事を心配してたって言ってたよ。
私、すっごく嬉しかった!だからありがとうだよ!」
倉橋は満面の笑みで楓を見てそう言っていた。
「(あぁ、この屈託の無い笑顔…………眩しいなぁ……今なら桐や岡野、桃花にハッキリと言えるかも)それなら素直に受け取っとくよ。行こう?ゴールは直ぐだから」
楓は吹っ切れて、笑顔で倉橋にそう言って一緒に海底洞窟を出て行った。