プロの暗殺者は学生?   作:☆麒麟☆

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今回、台詞の所を少し変えてみました。
今までは句点の後も書いていたのですが、改行してみました。
どちらが読みやすいか宜しければ感想にでも報告してください。
前の方が良いと言う方が多ければ元に戻しますし、このままで良いと言う方が多ければこのままで行こうと思います!


渚の時間

「殺し……てやる」

 

ナイフを持ちながら渚は殺気を放ちながらそう言う。

 

「ははははははその意気だ!!殺しに来なさい渚君!!」

 

鷹岡は笑いながら渚を煽っていた。

 

「渚……キレてる」

 

「俺等だって殺してぇよ、あのゴミ野郎。けど、なの奴マジでやる気か!?」

 

片岡と吉田がそう言ってる中、近くにもう1人キレてる人がいた。

 

ガシッ!

 

「えっと……磯貝に千葉、桐は何で俺を押さえてんの?」

 

「楓なら問答無用で鷹岡を殺しに行きそうなので」

 

「……大丈夫。キレてるけど何でか非情に冷静でいられる」

 

楓は沸々と心の中で殺意を煮えさせているのを悟られたのか磯貝達に腕などをホールドされていた。

 

「それより、先ず渚の頭を冷やさないとならないだろ」

 

「そうですね。渚君の頭を冷やしてください」

 

殺せんせーは楓に頼もうとしたが、寺坂が先に行動していた。

寺坂は渚の後頭部目掛けてスタンガンを投げ込んでいた。

 

「チョーシこいてんじゃねーぞ渚!!テメー薬が爆破された時、俺を哀れむような目で見ただろ。

いっちょ前に他人の気遣いしてんじゃねーぞ!!ウィルスなんざ寝てりゃ余裕で治せんだよ!!そんなクズでも息の根止めりゃ殺人罪だ。

テメーはキレるのに任せて100億のチャンス手放すのか?」

 

「渚、お前はブタゴリラを殺すって言ってるけどその意味が解ってるのか?寺坂の言った殺人罪だけじゃない、殺した奴の十字架を背負わなきゃならないんだ。

そして、お前は仮にブタゴリラを殺したとしてクラスの皆に何時も通りの表情でいられるのか?俺や桐は数え切れない位の人を殺めて馴れちまった。

だけどお前は違う、お前は優しいんだ……絶対に後悔の念で押し潰される。

俺や桐のようになっちゃいけないんだ。

…………それでも殺したいと言うなら俺達に依頼しろ!その時は報酬無しでも殺ってやるから!」

 

「寺坂君や九重君の言う通りです渚君。

その男を殺しても何の価値も無いし逆上しても不利になるだけです。

そもそも彼には治療薬に関する知識など無い。

したにいた毒使いの男に聞きましょう。

こんな男は気絶程度で充分です」

 

寺坂、楓、殺せんせーの順に言っていた。

 

「おいおい余計な水差すんじゃねぇ。このチビの本気の殺意を屈辱的に返り討ちにして……はじめて俺の恥は消しさ「渚君、寺坂くんのスタンガンを拾いなさい。その男の命と先生の命。その男の言葉と寺坂くん達の言葉。それぞれどちらに価値があるのか考えるのです」」

 

鷹岡の言葉を遮り、殺せんせーはそう言った。

そんな中、寺坂の体力が限界に来てしまい地面に倒れており木村や吉田に支えられていた。

 

「……やれ渚。死なねぇ範囲でブッ殺せ」

 

寺坂の言葉に渚は手に取り腰に装備して、上着を脱ぎ捨てていた。

楓は血が出た所を止血して兜角を持っていて、何時でも行ける準備をしていた。

 

「華蟷螂、渚がヤバくなったら直ぐに行くぞ」

 

「わかりました」

 

華鎌も鎌を両手に展開させて何時でも行けるようにしていた。

 

「(烏間先生、もし渚君が生命の危機と判断したら迷わず鷹岡先生を撃ってください)」

 

殺せんせーの言葉に烏間先生は静かに頷き、渚を見ていた。

 

渚はナイフを持ちながら鷹岡に近付いて行ったが鷹岡は容赦無く渚の腹を蹴り抜いていた。

渚はあまりの強さに勢いよく地面に倒され咳き込んでいた。

 

「おらどうした?ころすんじゃ無かったのか」

 

鷹岡の言葉に渚はナイフを振るが意図も簡単にかわされて渚の顔に裏拳を喰らわしていた。

今の鷹岡は前とは別で油断も隙も無く最初っから戦闘モードだった。

どんなにクズでも精鋭軍人。

体格や技術、経験……どれを取っても渚とは月とスッポンの差もある。

その後も殴る、蹴る、肘内をするなど……渚をサンドバッグのようにいたぶっていた。

 

「さぁて、そろそろ俺もこいつを使うか」

 

鷹岡はそう言うと地面に置いてあったもう1本のナイフを手に取っていた。

それを見ていた皆は焦りの色を隠せず、茅野は烏間先生に撃つよう頼んでいた。

 

そんな中、渚は冷静に鷹岡を見ながらロヴロの言葉を思い出していた。

 

『この技の発動条件は大きく分けて3つある!1つ、武器を2つ以上持ってること。2つ、敵が手練れであること。そして3つ、敵が殺される恐怖を知っていること!』

 

(良かった、全部揃ってる…………鷹岡先生、実験台になって下さい)

 

渚は目を瞑って1回大きく深呼吸してから再度、鷹岡を見て笑顔になっていた。

対する鷹岡は渚の雰囲気が変わったのを本能的に悟ってゾクッと背筋を冷やしていた。

 

 

 

『必殺技と言っても“必ず殺す技”ではない』

 

『え?』

 

『そもそも訓練を受けた暗殺者なら……理想的な状況なら必ず殺すのは当たり前だ。

だがターゲットが隙の無い手練れの時は暗殺者に有利な状況を決して作らず“暗殺”から“戦闘”へ引きずり込まれる。

蟲や華蟷螂等と言った一部の暗殺者は戦闘のスキルも持ち合わせているが大半の暗殺者は戦闘のスキルは持ち合わせていない。

だが、一流のプロならそんなピンチでも“必ず殺せる”理想的な技というのを持ち合わせている。

少年よ、君に教える技はその内の1つだ。

戦闘の常識から外れた行動を取ることで、場を再び“戦闘”から“暗殺”へと引き戻す。言うなれば“必ず殺すための技”だ』

 

渚は再びロヴロの教わった事を思い出しながら鷹岡に向かって歩いていった。

その光景に先程まで慌てていた皆は渚に釘付けになって見ていた。

以前、鷹岡にやったのと同じように見えるけど何処か違う……そんな様子があった。

鷹岡は心臓の鼓動が早くなるのを感じながら渚を警戒しながら見ていた。

 

(以前は同じように歩いて目前まで来たらナイフを振るって来た。

恐らくまた同じようにするはずだ!)

 

渚が接近するほど鷹岡はナイフに意識を集めていた。

ナイフで刺してくる、スタンガンは使うことは先ず無い、ナイフだけ警戒してれば大丈夫!それに合わせてカウンターで俺がナイフを振ればいい!と鷹岡の思考はそれで一杯になっていた。

渚は攻撃圏内にまで近付いて来て、ナイフを持つ右手を上げてきた…………瞬間、ナイフを手放していた。

 

「え?」

 

鷹岡は渚の手放したナイフに視線が釘付けになっていた。

渚はそのまま勢いよく鷹岡の視線の目の前で両手をノーモーションで最速かつ最大の音量で音を鳴らした。

 

パァン!

 

端から聞いていたら唯の大きい音、しかし鷹岡にとってはまるで爆弾が爆発したような音に聞こえて大きく仰け反っていた。

渚は踏み込みながら流れるように腰に装備していたスタンガンを抜き鷹岡の脇に電流を流し、鷹岡は力無く地面に座り込んでいた。

渚の一連の動きに烏間先生や殺せんせー達は唖然として見ていた。

 

「楓、彼はもしかして」

 

「凄いよなぁ、あいつ……殺気を隠し、自然な体運びで対象に近付く才能、殺気で相手を怯ませる才能、本番に物怖じしない才能…………暗殺者としての才能を持ってるんだもの」

 

「正直、羨ましいですね。彼は暗殺者の道に進むのなら確実に名を馳せますよ」

 

楓と華鎌は渚の才能に軽く嫉妬しながらも、素直に凄いと感じていた。

 

 

「とどめ刺せ渚。首辺りにたっぷり流しゃ気絶する」

 

そんな中、寺坂はそう口にしていた。

その言葉は小さかったが、ハッキリと聞こえており渚は小さく頷いていた。

スタンガンを使い、俯いている鷹岡の顔をツイッと上げさせていた。

 

(殺意を教わった…………抱いちゃいけない種類の殺意があるって事、その殺意から引き戻してくれる友達の大事さも。

殴られる痛みを……実践の恐怖を……この人から沢山の事を教わった。

酷いことをした人だけど、それとは別に授業への感謝はちゃんと言わなきゃいけないよね。

感謝を伝えるなら“こういう”顔をするべきだよね?)

 

その時、鷹岡の顔はハッとした表情になった。

 

(やめろ…………“その顔”で終わらせるのだけはやめてくれ!

もう一生、“その顔”が悪夢の中から離れなくなる…………)

 

鷹岡は逃げたくても体中、痺れており立ち上がることさえ出来ない状態だった。

渚の口角が徐々に上がる度に鷹岡はどんどん体がガクガクと震えてきた。

目を閉じたくても何故か瞼が下がらない……手で覆い隠したいけど、その手が動かない。

心の中で必死にやめろ!やめろ!やめてくれ!と叫んでも渚には伝わらない。

 

「鷹岡先生、ありがとうございました」

 

爽やかな笑顔でそう言った渚。

しかし、鷹岡には無情にもそれが死刑宣告の用に聞こえていた。

その言葉と共にバチッ!!と首元から強力な電流を流されて鷹岡の意識はブラックアウトし、ドシャっと地面に倒れていた。

 

「よっしゃああ!!元凶撃破!!」

 

それを見ていた人達はそう叫び渚の無事に安堵していた。

鷹岡が倒したハシゴをかけ直して渚は降りて、皆から称賛の言葉を浴びワシャワシャとされていた。

皆の称賛を浴びていた渚の手には鷹岡が予備に持っていたウィルス薬を3本持っていた。

楓は鷹岡をスレッドで巻き付け担ぎながら皆の所に行き、渚に聞いてきた。

 

「さて、渚。お前はこいつを凄く殺したがっていた。

勿論、皆も殺したいぐらい憎い筈だ。

どうする?このまま俺に依頼して殺るか?」

 

楓は真剣な表情で聞いてきたが、渚は笑顔で首を横に振っていた。

 

「ううん……依頼はしないよ。

楓君が態々、手を出す事も無いよ。

鷹岡先生にはそれ相応の罰を受けてもらいたい………死んで楽になるのは……それこそ許せないと思う」

 

渚の回答に楓は頷くと鷹岡をドサッと雑に置いていた。

 

「でも……どうしよう、皆への薬が……鷹岡先生から奪った分じゃ全然足りない」

 

「「「「…………」」」」

 

現実に戻されたように皆は静かになった。

元凶の鷹岡を倒せたけど、ウィルス薬が爆破されて皆を助ける事は出来なくなった。

 

「だ、大丈夫だ!これから俺と華蟷螂でスモッグって言う男を問いただして薬を速急に用意させるさ!」

 

「そ、そうですよ!皆、そう落ち込まないで下さい!あの人はウィルスを開発させた人です!薬の開発方も知ってますし大丈夫ですよ!」

 

楓と華鎌は慌てながらも皆を説得していたが背後から聞こえた声に、直ぐに反応して臨戦態勢に入った。

 

「フン、テメー等に薬なんぞ必要ねぇ。

ガキ共、このまま生きて帰れると思ったかい?」

 

そこには頬を大きく腫らして、ぎこちなく歩くスモッグ。

鱈子唇みたいに腫れ、指をゴキゴキ鳴らしながら如何にも怒ってますってアピールしているグリップ。

フラフラとしながらも殺気を放ちながら刀を構えているギロチン。

銃を口に咥えながら、首を擦っているガストロ。

ここに来るまでに戦った殺し屋達が立ち塞がっていた。

クラスの皆も殺し屋達を見た瞬間、各々が武器をもって構えていた。

 

「はっ!毒で満足に動けない3人に、さっきのダメージが抜けてない奴が1人。次は容赦しないぞ?」

 

楓は兜角を構えながら殺気を止め処なく放ちながらそう喋っていた。

そんな楓の前に烏間先生が立ち、手で制していた。

 

「お前達の雇い主は既に倒した。

戦う理由はもう無い筈だ。

俺は充分に回復したし、生徒達も充分に強い。

これ以上、互いに被害が出ることはやめにしないか?」

 

「ん、いーよ」

 

「「「「え?」」」」

 

烏間先生の停戦の申し出にガストロは速攻でOKを出していた。

あまりの速さに楓や華鎌は勿論、生徒達も呆気に取られていた。

 

「ボスの敵討ちは俺等の契約にゃ含まれてねぇ。

それに今いったろガキ共……そもそもお前等に薬なんぞ必要ねーってな」

 

ガストロの言葉に皆の頭の上は?で一杯になっていた。

そんな様子に面白かったのかスモッグはクククと笑いながらポケットから2つのビンを取り出していた。

 

「お前らの友達に盛ったのは食中毒菌を改良したものだ。

あと3時間くらいは猛威を振るうがその後、急速に活性を失って無毒になる。

そしてボスが使えと指示したのはこっち……これ使えばお前らマジでヤバかったがな」

 

スモッグの言葉に楓はハッと何か気が付いた表情をしていた。

 

「もしかしてお前らは始めから俺等を殺すつもりなんて無かったのか。

だから、敢えてバレるように気配を出したり態と俺達の前に出たりしたのか」

 

楓の言葉にグリップは頷いていた。

 

「使う直前にこの4人で話し合ったぬ。

ボスの設定した交渉期限は1時間……だったら、態々、殺すウィルスじゃなくても取引は出来ると」

 

「交渉に合わせて多種多様な毒を持っているからな。

お前らが命の危険を感じるには充分だったろ?」

 

グリップとスモッグの説明に岡野は1つ疑問ができた。

 

「……でもそれって、鷹岡の命令に逆らったって事だよね。

金をもらってるのにそんな事していいの?」

 

「…………何も金で動くだけでは無いです。

勿論、依頼人の意に沿うようにはしますが、あの人は最初っから薬を渡すつもりはありませんでした。

堅気の中学生を大量に殺して実行犯となるか、命令違反をしてプロの評価を落とすか…………」

 

「どちらが俺達にとって今後に響くのか……冷静に秤にかけただけだよ」

 

「ま、この栄養剤を飲ませてやりな」

 

ギロチン、ガストロ、スモッグがそう言うと上空からヘリが来た。

 

「…………信用するかは生徒達が回復したのを見てからだ。

事情も聞くし、暫く拘束させてもらうぞ」

 

「来週には次の仕事があるから程々にな」

 

ヘリが地上に降りて中から防衛省の人達が降りてきて鷹岡や見張りの男達、ギロチン達を拘束していた。

楓の側にギロチンが近づいて耳打ちをしてきた。

 

「(今回は私の負けですね…………次は負けません)」

 

「次も返り討ちにしてやるよ」

 

楓の言葉にギロチンはクスッと笑い不意打ちで唇にキスをしていた。

 

「「「「!?」」」」

 

「テメっ!?」

 

「ゆーあーないすがい」

 

ギロチンはそう言うと素早くヘリに乗っていった。

楓は仕方ないとため息を吐くとキッと皆を見た。

 

「この事は他言無用!良いな!?」

 

有無を言わさない圧力で言うと渚達はコクコクと頷いていた。

 

「えぇー、どうしようかなぁ~?この事を皆に言ったら確実に話題になるのになぁ~」

 

カルマがニヤニヤしながら言ってくるのに対して楓は……

 

「黙るよな?ん?」

 

ディノスパインの針をカルマに見せながらそう言っていた。

針の痛みはギロチン戦で嫌と見たカルマはしょうがないと呟き縦に振った。

 

「勿論、殺せんせーも黙るよな?」

 

「ヌルフフフ、先生にはそんな脅しは聞きませんよ」

 

「へー、そうなんだ…………(アイドルのファンレターの事、この場で言って良いんだ。カルマがこの場にいるから直ぐに拡散するぞ?)そう言えば殺せん「わかりました。この事は、ここにいる皆の胸の内に秘めておきましょうか」それは良かった」

 

「「「「「殺せんせーが素直に応じた!?」」」」」

 

楓はボソッと殺せんせーにだけ聞こえるように言っていた。

すると殺せんせーは掌を返すようにして言い皆は突っ込みをしていた。

その後みんなもヘリに乗りホテルを後にし、皆のいるところに戻っていった。

 

「寺坂君、楓君ありがとう。あの時、声をかけてくれて……間違う所だった」

 

「……ケッ、テメーのために言ったんじゃねぇ。1人欠けたらタコ殺す難易度あがんだろーが」

 

「それに、あの時の渚は冷静じゃ無かったしな……確実に鷹岡に殺られてただろうな。

それに友達を間違った道から正すのは当然だろ?」

 

「それでもありがとう」

 

渚の言葉に楓は手をひらひらと返して返事をしていた。

コテージにたどり着いた楓達はスモッグから受け取った錠剤を皆に飲ませて、事の顛末を全て報告をした。

その後は皆、ドッと疲れが来たのか皆はホテルの部屋ではなくコテージで泥のように眠るのであった。


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