プロの暗殺者は学生?   作:☆麒麟☆

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拘りの時間

寺坂と吉田がスモッグをテープで縛った後、机やイスを使って隠してるなか磯貝は肩をかして烏間先生を支えていた。

 

「……ダメだ。普通に歩くフリをするので精一杯だ。戦闘できる状態まで30分で戻るかどうか」

 

「像をも倒すガス浴びて歩ける方がおかしいって」

 

「あの人も充分、化け物だよね」

 

烏間先生の言葉に菅谷と岡野がボソッと呟いていた。

烏間先生の離脱……標的のいる10階までまだまだ先なのに、烏間先生やビッチ先生に頼る事はもうできない。

経験と知識を重ねたプロの凄さとそんなプロがこの先も待ち構えてることに皆は不安になっていた。

 

「いやぁ、いよいよ夏休みって感じですねぇ」

 

「何を気楽な!!」

 

「一人だけ絶対安全な形態だからって!」

 

「渚、振り回して酔わしてやれ!」

 

殺せんせーの言葉にイラッときた一同は殺せんせーにブーイングをしていて、渚は要望通り殺せんせーを振り回していた。

 

「まぁ、待て……」

 

そんな中、楓は振り回していた渚を止めていた。

殺せんせーも助かったと思って安堵の息を吐いていたが、楓の行動に疑問を覚えた。

 

「九重君、一体何をしているのですか?」

 

「ん?あぁ、どうせなら殺せんせーにさっきの上映をもう一回見てもらおうと思ってね」

 

楓はスレッドを使って殺せんせーとスマホを固定させながら録画していた上映会の映像を再生させていた。

 

「ほらもう一回、羞恥死してきなよ。あぁ、ごめん渚。振り回していいよ」

 

楓はそう言うと手を離してヒュンヒュンと振り回すのを再開させた。

殺せんせーは「にゅやーッ!」とか「ひーっ!」「にゅーーやーーー!」等とまるで絶叫アトラクションに乗ってるかのような悲鳴を一人であげていた。

 

「よし寺坂、これねじ込むからパンツ下ろしてケツ開いて」

 

「死ぬわ!!」

 

等と人通り殺せんせーを弄った後、渚は殺せんせーに聞いていた。

 

「殺せんせー何でこれが夏休みなの?」

 

「先生と生徒は馴れ合いではありません。そして夏休みとは、先生の保護が及ばない所で自立性を養う場でもあります。大丈夫、普段の体育で学んだ事をしっかりやれば…………そうそう恐れる敵はいない。君達ならクリアできます。この暗殺夏休みを」

 

 

その頃、最上階…………

 

「濃厚な魚介出汁に、たっぷりのネギと人匙のニンニク…………そして銃!!あぁ……つけ銃うめぇ…ライフリングに絡むスープがたまらねぇ」

 

男は銃をスープに浸けてチュパチュパと上手そうに舐めていた。

 

「ククク……見てるこっちがヒヤヒヤするぞガストロ。その銃、実弾入りだろ?」

 

ガストロの異常な食事の仕方に雇い主の男はタバコを吹かしながら愉快そうに笑っていた。

 

「ヘマはしねっす。撃つ時にも何の支障もありませんし、ちゃんと毎晩我が子のように手入れしてます。その日、一番美味いが……その日、一番手に馴染む……経験則ってやつっす俺の」

 

「奇特な奴だ。他の奴等もそんなか?」

 

「ええまぁ。使い捨ての鉄砲玉ならいざ知らず、俺等みたいな技術を身につけて何度も仕事をしてきた連中は何かしら拘りが出てくるもんです。例えばスモッグの毒は全て自作……更に洗練された実用性に拘るあまり……研究室まで作る始末ですからね」

 

「……ほうでは他の3人もか?」

 

「……ええ。グリップも含めてアイツ等はちょっと変わった拘りですね」

 

 

 

 

 

 

E組の皆は5階の展望回廊まで移動していた。

烏間先生が満足に動けないと言うことで楓と華鎌が前に出て皆を先導していた。

 

「!」

 

楓は何かに気づいたのか立ち止まり、後続の皆に止まるように手で制していた。

皆はそーっと覗いてみると1人の男……グリップが窓に寄り掛かっていた。

 

「(……あの雰囲気って)」

 

「(……あぁ、俺でもいい加減見分けつくようになったわ。どう見ても殺るがわの人間だ)」

 

矢田と吉田がグリップを見て呟いてるなか楓と華鎌は相談していた。

 

「(狭くて見通しが良すぎる……)」

 

「(奇襲も数の利も活かせませんね…………私が前に出ますので楓はサポートをお願いします)」

 

楓と華鎌は先頭が避けられないと考えて目の前の男を倒そうと話しているとグリップはガラスに手を当てていると皹を入れていた。

 

「つまらぬ。足音を聞く限り……手強いと思えるものが1人も居らぬ。精鋭部隊出身の引率の教師と蟲と呼ばれる殺し屋もいるはずなのぬだ。どうやら……スモッグのガスにやられたのか大した事ないようだぬ。半ば相討ちみたいなものか……出てこい」

 

「(ちょっと待て聞き捨てならないぞ!?)」

 

楓はブツブツと小声で文句を言いながらグリップの言う通り出てきた。

楓の文句を皆はスルーして別の事を考えていた。

 

「“ぬ”多くねおじさん?」

 

(((((言った!!良かったカルマがいて!!)))))

 

カルマのあっけらかんとした言葉に皆はそう心の中でハモっていた。

 

「ぬをつけるとサムライっぽい口調になると小耳に挟んだ。カッコ良さそうだから試してみたぬ。間違ってるならそれでも良いぬ。全員を殺してからぬを取れば恥にもならぬ」

 

グリップはそう言うと手をゴキゴキ鳴らしていた。

 

「素手……それがあなたの暗殺道具ですか」

 

「こう見えても需要があるぬ。身体検査に引っ掛からぬ利点は大きい。近づきざま脛椎を一捻り、その気になれば頭蓋骨も握りつぶせる」

 

グリップの言葉を想像したのか岡野は体を震わせながら頭を押さえていた。

 

「だが面白いものでぬ、人殺しのための力を鍛えるほど……暗殺以外にも試したくなる。すなわち闘い、強い敵との殺しあいだ」

 

「じゃあ俺が相手してやろうか?」

 

スモッグの言葉に楓はニコッと笑いながら前に出ていた。

 

「お前は?」

 

「蟲……おじさんぬが大した事無いって言う殺し屋だよ。あっ!みんなちょっと待ってて!おじさんぬをちょっとボコって排除してくるから」

 

「お前は明らかに対した事無いって言われて腹立ってるだけだろう!」

 

楓の発言に寺坂はガンと拳骨をお見舞いしている中、グリップはケータイを取り出していた。

 

「お前みたいなぬが殺し屋だとぬ?如何にも弱そうだぬ。お目当ての教師もこのザマでは試す気も失せた。雑魚ばかり1人で殺るのも面倒だ……ボスと仲間呼んで皆殺しぬ」

 

グリップはボスに報告しようとしたらカルマは観葉植物を持ってグリップのケータイ目掛けて振り、窓に当てると皹を入れていた。

 

「ねぇ、おじさんぬ。意外とプロって対した事無いんだね。ガラスとか頭蓋骨なら俺でも割れるよ。て言うか即効仲間呼んじゃうあたり、殺し屋ってのは中坊ともタイマン張れないぐらいショボいの?」

 

「全ての殺し屋をおじさんぬと一緒にするな。おじさんぬがショボすぎるだけだ」

 

カルマはチラッと楓の方も覗いたのを気付いた楓はジト目でカルマを見ながら呟いていた。

 

「てかカルマ退きなよ。コイツは俺が速攻でブッ飛ばすから」

 

「俺に任せなよ。九重はさおじさんぬ大した事ないんだろ?それなら九重が出るまでも無いし、俺にも取って置きがあるからちょっと殺らせてよ」

 

カルマはニコッと笑いながらそう言うと楓は溜め息を吐いていた。

 

「ヤバくなったらしゃしゃり出るから」

 

楓の言葉にご自由にとカルマは言うとグリップの方を見ていた。

 

「よせ、無謀だ!」

 

「ストップです。烏間先生。九重君、ピンチになったら何時でも行ける準備だけしてください」

 

殺せんせーの言葉に楓は頷いた後、巫山戯た態度を辞めて真剣に見ていた。

 

(顎が引けてますね。今までの彼なら余裕をひけらかして顎を突き出し、見下す構えをしていた。でも今は目を真っ直ぐ油断なく正面から相手の姿を観察している。テスト以来、少々鳴りを潜めてましたが敗北をしっかり学んだようですね。存分にぶつけなさい……高い大人の壁を相手に!!)

 

 


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