プロの暗殺者は学生?   作:☆麒麟☆

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エースの時間

翌日、学校内じゃ昨日のE組とA組のやり取りが学校中に知れ渡っていてどの学年もその話題に持ちきりだった。

A組では荒木達が申し訳なさそうに1人の生徒の前に立っていた。

 

「君等がE組と賭けをしたって噂になってるよ。5教科トップをより多くとれた方が負けたクラスにどんな事でも命令出来るってね」

 

「わ、悪い浅野。下らん賭けとは思ったけどよ、E組の奴等が突っかかって来るもんで」

 

瀬尾はおどおどした態度で浅野と言う生徒に話していた。

椚ヶ丘中の生徒会長、浅野学秀。

理事長の1人息子で中間テスト、全国模試1位と学年の頂点に君臨する生徒だ。

 

「…………良いんじゃないかな。そっちの方がA組にもきんちょうかんがでる」

 

浅野は少し、考える仕草をしてそう答えていた。

荒木達は浅野の言葉に安堵したのかホッと息をついていた。

 

「ただ、ルールは明確にした方が良い。勝った後でゴネられるのは面倒だからね。…………こうしよう。勝った方が下せる命令は1つだけで、その命令はテスト後に発表する。誰かE組にそう伝えてくれ」

 

浅野がそう言うとクラスの1人がケータイを取りだし、今云われた事を打ち込み送信していた。

 

「で、こちらの命令はどうするんだい?」

 

榊原は髪をかきあげながら浅野に聞いていた。

浅野は徐にノートパソコンを机の上に置き、開くと物凄い速さで文章を打ち込んでいた。

 

「この協定書に同意する。その1つだけだ」

 

打ち込み終わったパソコンを荒木達に見せると荒木達は驚いていた。

 

「全50項にわたってE組がA組に従属を誓い、その代わりA組はE組に正しい生徒像を指導してあげる。両者WIN-WINの地位協定だ」

 

「これ全部、今一瞬で閃いたのかい浅野くん?恐ろしいな……」

 

榊原の言葉に浅野は笑いながら答えた。

 

「恐ろしい?とんでもない。生徒同士の私的自治に収まる範囲の軽い遊びさ。民法は大体修めてるから……その気になれば人間を壊す契約だって作れるけどね」

 

浅野の言葉に荒木達は背筋をゾクッとさせるなか、浅野は立ち上がりクラスの人達の方を向いた。

 

「皆、僕がこれを通して言いたいのは、やるからには真剣勝負だってことだ。どんな相手にも本気を出して向き合おう!!それが皆を照らす僕らA組の義務なんだ!!」

 

浅野がそう言うとクラスの皆はそれに賛同するかの用に拍手をしてやる気に満ち溢れていた。

 

(浅野学秀。こいつが皆をまとめる言葉はキレイ事だ。爽やかな顔とキレイ事の裏には腹黒い戦略と支配欲がある。皆もそれをわかっててでも熱狂的についていく。実力とカリスマがある奴はキレイ事を正義に出来る。奴を信じて付いていけば勝てるんだ!!まさしく理事長の息子であり、A組の絶対的エース!!奴より強い生徒なんてこの学校にはいない)

 

瀬尾は浅野を見ていてそう、思っていた。

浅野は先日、理事長でもある父親と話してE組になにか隠し事があると直感していた。

それを何としても聞き出そうと考えてる矢先、荒木達がE組と賭け事をすることを耳にしてこの案が考え付いた。

実際、浅野が狙ってるのは50項目の中にある1つ、A組に隠し事せずに必ず真実を答えること、と言うのがあり、それを使ってE組の生徒を揺さぶって父親の弱味を握ると言う考えをしていた。

 

一方のE組も磯貝のケータイからメールがあり、勝負のルールが発表されてE組もやる気に溢れていた。

そんな中、唯一カルマだけが教室で居眠りをしていた。

 

「こらカルマ君。真面目に勉強をしなさい!!君なら充分、総合トップが狙えるでしょう!!」

 

「言われなくてもちゃんと取れるよ。あんたの教え方が良いせいでね。けどさぁ殺せんせー、あんた最近、トップを取れて言ってばっかりでフツーの先生みたいに安っぽくてつまらないね。それよりどーするの?そのA組が出した条件って、なーんか裏があって企んでる気がするよ」

 

カルマがそう言っているが岡島はそれを笑って一蹴した。

 

「心配ねーよカルマ。このE組がこれ以上失うもんありゃしないさ」

 

「勝ったら何でも1つかぁ~。学食の使用権とか欲しいなぁ~」

 

倉橋は命令の1つを学食に使いたいと言っており、一部の女子たちが確かに……と賛同していた。

そんな中、殺せんせーはヌルフフフと笑いながら提案をした。

 

「それについては先生に考えがあります。さっきこの学校のパンフレットを見てましたが、これを寄越せと命令するのはどうでしょう?」

 

殺せんせーはパンフレットを開き、皆に見えるようにした。

 

「「「「!?」」」」

 

皆はそのページを見て驚いてるなか殺せんせーは口を開く。

 

「君達は1度、どん底を経験しました。だから次はバチバチのトップ争いも経験してほしいのです。先生の触手、そしてコレ。ご褒美は充分に揃いました。暗殺者なら狙ってトップを殺るのです!!」

 

殺せんせーの言葉に皆は「殺るぞトップ!」と言いワイワイ賑わうなか、殺せんせーは楓の方を見ていた。

カルマを注意する前から……否、磯貝がメールを受け取り皆に言う前から楓は耳にイヤホンをしながら黙々と問題集を解いていた。

イヤホンからは英語のリスニングが聞こえており、楓は着々と期末に向けて刃を研いていた。

 

(彼はどうやら問題無さそうですねぇ。結果が大いに期待出来ますねぇ。周りの人達もやる気がある。触手を賭ける価値はありました)

 

殺せんせーは内心、そんなことを思いながら微笑むのであった。

 

 

A組、E組の皆が刃を研いでるその頃、職員室では3年担当の教員達がパソコンと睨めっこしながらテスト問題を作っていた。

そこに理事長がやって来て、3年担当の教員達に告げた。

 

「3年生。教科担任の皆さんには中間より遥かに高難易度の問題をお願いします。勿論、採点基準は公正明確にね。浅野くんがE組を利用して対決ムードを盛り上げています。これを我が校の偏差値向上に繋げない手は無いでしょう」

 

理事長がそう言うと英語担当の矢野が答えた。

 

「ご心配なく理事長。この問題で私を満足させる答えを出せる生徒はほぼいない。これはもはや問題ではない、問スターと呼ぶべきものだ」

 

矢野がそう言うとパソコンの画面にはなにか歪で禍々しい物が今か今かと待ち構えていた。

理事長はそれを見て口角を吊り上げていた。

 

「大いに結構。結果が楽しみです」

 

理事長がそう言うと教員は再び作業に没頭するのだった。

それぞれの利害が交錯する今回の期末テスト。

皆は刃を必死に研いで期末に向けたのである。

 

 

期末テスト当日……

楓はE組が受ける本校舎の教室に向かっていた。

 

「おはー!」

 

そんな中、後ろから声をかけられたので振り向くと倉橋が何時ものように屈託の無い笑顔で何時も通り挨拶をしていた。

 

「おはよう。相変わらず元気だねぇー」

 

「勿論!それが私の取り柄だもん!」

 

倉橋はえっへんと胸を張って言っていた。

 

「テスト行けそう?」

 

「問題ではない。今朝も軽く復習してきたし体調も万全!朝の占いも良かったし!」

 

「それ関係ある?」

 

「実際、全く無い!」

 

2人は笑いながら歩を進み、教室にたどりついてドアを開けたら見知らぬ人が座っていた。

 

「「ダレ?」」

 

2人は声を揃えて言い、その疑問に答えたのは後ろからやって来た烏間先生だった。

 

「律役だ。流石に理事長から人工知能の参加は許されなくてな、替え玉を使うことで何とか決着した。交渉の時の理事長に“大変だなコイツも”……と鼻で笑われ哀れみの目を向けられた俺の気持ちが君達にわかるか」

 

烏間先生は思い出してイラッと来たのか体を微妙に震わせながら、ぎこちない笑顔で楓と倉橋に言っていた。

 

 

「「いや、本当に頭が下がります!!」」

 

2人はすかさず頭を下げた後、烏間先生は何時も通りのキリッとした表情に戻っていた。

 

「律と合わせて俺からも伝えておこう…………頑張れよ」

 

「「はい!」」

 

2人はそう返事すると烏間先生は頷いてその場を離れたのであった。

 

「応援してくれた烏間先生や律、教えてくれた殺せんせーやビッチ先生の努力を無駄にしちゃ不味いよな……」

 

「うん!キッチリ結果を出すように頑張ろー!」

 

倉橋の言葉に楓は頷き、拳を合わせた後席に着くのだった。

その後、皆が続々と教室にやって来てチャイムと同時にテストが開始されるのだった。


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