プロの暗殺者は学生?   作:☆麒麟☆

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ビジョンの時間

犬を拾ってから1週間経った。

あれから里親が決まり3匹が新しい飼い主の元でくらしてる。

現在、残ってるのは♂のゆずのみとなっており、E組で皆に可愛がられている。

朝は決まって楓か倉橋が餌をあげるのが日課となっており、今日は楓が餌を持ってやって来た。

小屋の中でグッスリ眠ってるゆずだが、足音が聞こえると耳がパタパタと動き、元気に小屋から飛び出してきた。

 

「おぉ、ゆずは朝から元気だなぁ。ほら、食べな」

 

楓はゆずの前に餌皿を置くとゆずはガツガツと食べていた。

その間に糞の処理をし、悪臭がしないように消臭剤を撒いた

 

楓が終わる同時にゆずも食べ終わり、柵の中を元気に走り回っていた。

楓は暫くゆずと遊んでいると、岡島が慌てた様子で走ってきた。

 

「九重、大変だ!プールが!」

 

楓は落ち着くように良い、岡島から話を聞いた。

何でもE組専用プールが荒らされてるらしく、見るも無惨な事になってるらしい。

岡島はクラスの皆にも行ってくると言い、教室に行って行ったのを楓が見るとゆずの頭を撫でたのちにプールの方に向かった。

 

 

「これは酷すぎるだろ…………」

 

楓はプールの所につくと唖然としていた。

飛び込み台は壊されており水面にはゴミが巻き散らかされていて水が汚く濁っていた。

 

「な!?」

 

「ひどい、誰がこんなこと……」

 

「ビッチ先生がセクシー水着を披露する機会を逃した!!」

 

「いや、それはどうでもいい」

 

「何ですって九重!?」

 

クラスの皆も来たようでプールの惨状に開いた口が塞がらないようだった。

 

クックックッ…………

 

楓は突然、笑い声が聞こえたので振り返って見ると寺坂がニヤニヤと笑っていた。

寺坂も楓が見てるのに気が付き、突っ掛かって胸ぐらを掴んできた。

 

「んだよ九重。まさか……俺らが犯人とか疑ってんじゃねーだろうな?くだらねーぞその考え」

 

「おいおい、何勝手に被害妄想してんだよ。俺が何時、お前らがやったって言ったよ?ん?言ってみろ」

 

寺坂と楓で一触即発の雰囲気があって周りはハラハラしていたが殺せんせーが止めに入った。

 

「寺坂君の言う通りです。犯人探しなんてくだらない。こんなの…………」

 

殺せんせーはマッハで壊れたプールを修復させて元に戻していた。

 

「はいこれで元通り!!いつも通り遊んで下さい」

 

殺せんせーは言うと皆ははーいと返事をしてプールで遊んでいた。

 

「っち!」

 

寺坂は舌打ちをして楓の胸ぐらを乱暴に離してその場を後にした。

プールが修復され、楓はゆずとじゃれていこうと思い移動していたらドン!と何かがぶつかる音が聞こえてきた。

何か気になると思った楓は音のした方に向かってみると其処には村松が倒れていて少し離れた所には寺坂が教室に向かって行っていた。

 

「大丈夫か?」

 

「あ、あぁすまねー」

 

楓はそういって手を差し出すと村松はそれに掴まり起き上がった。

そこに紙が落ちてたのを気が付いた楓は拾って見てみたら村松の全国模試の結果のだった。

 

「へぇ、成績良いじゃん」

 

「あぁ、タコの開いたヌルヌル強化学習を受けたら結構よくてよ」

 

「解るわぁ。何気に教えるの上手いよな」

 

何て話をしながら村松と教室に戻ると寺坂が木のバイクを蹴り壊していた。

 

「何て事すんだよ寺坂!!」

 

バイクを気に入ってたのか吉田は寺坂に怒鳴り付けており、クラスにいた人達も寺坂にブーイングしていた。

 

「……てめーらブンブンうるせーな虫みたいに。駆除してやるよ!」

 

寺坂は自分の机の中から殺虫剤を取りだし、地面に投げつけた。

すると殺虫剤の中身が漏れて教室内は煙で充満していた。

 

「おい!窓にいるやつ!直ぐに窓を全開させろ!」

 

楓は大声をあげながら言うと窓にいた人達は直ぐに行動に移して窓をあげていた。

煙が晴れて視界が良好になったが、何人か目が赤くなってたり咳をしている人がいた。

 

「寺坂君!!ヤンチャするにも限度ってものがありますよ!!」

 

殺せんせーは寺坂の肩を掴み説教をしようとしたが寺坂は肩を払っていた。

 

「さわんじゃねーよモンスター。気持ちわりーんだよ。テメーもモンスターに操られて仲良しこよしのテメーらも」

 

「お前……いい加減にしろよ。小さい子供みたいにピーピー喚きやがって。1度痛い思い出しないとわかんないか?」

 

楓は殺せんせーと寺坂の間に入り寺坂に言った。

楓は明らかにキレており微かに殺気が漏れていた。

 

「何だよ九重。テメー喧嘩売ってんのか。上等だよテメーの事は最初から…………!?」

 

寺坂の言葉を最後まで聞かず楓は足払いをし転ばせてバランスを崩した所に、寺坂の口の中に銃を入れた。

 

「…………黙れよ。2度と喋れないようにするぞ」

 

楓は銃のセーフティを解除し引き金の指に力を入れた。

 

「……ッ!離せ!!くだらねー!!」

 

寺坂は無理矢理、楓を引き離すとそのまま荷物を持って教室を後にした。

 

「あーあ、九重がでしゃばったから俺が殴れなかったじゃん」

 

「あー、そりゃあ悪かったな」

 

「って、寺坂の涎を俺に浸けるなよ!きたねーなー!」

 

楓は寺坂の涎がついた銃をカルマの制服で拭いてるとカルマは怒りながら殺せんせーナイフを振っていた。

 

「九重、カルマ今はじゃれるのは後にして今は具合の悪い人をビッチ先生の所に連れていこう」

 

磯貝がそう言うと2人は頷いて具合の悪そうな人の所に向かった。

 

「陽菜乃、大丈夫か?」

「ちょっと目が痛いかなぁ」

 

楓は倉橋の所に行き、具合を聞いてみた。

倉橋は目を押さえてちょっと赤くなっていた。

 

「念のため、ビッチ先生の所に行くぞ。桃花は大丈夫か?」

 

「うん。私は平気だから陽菜ちゃんをお願い」

 

楓は頷くと倉橋を支えてビッチ先生の所に向かった。

ビッチ先生の所に行き見てもらい、目薬を指して様子を見ることになった。

放課後、ゆずの世話を終えた楓は倉橋を家に送るために一緒に帰った。

「桃花が送れば良いんじゃないか?家も桃花の方が近いんだし」と言ったのだが矢田は「こう言うのは男子がしっかりエスコートするものなんだよ!だから楓君がしっかり家まで送ってあげてね」と言って帰ってしまった。

 

(そう言うものなのか?)

 

楓は頭を傾げながら倉橋と帰っていた。

 

「どうかしたのー?」

 

倉橋は不思議に思ったのか顔を覗かせて聞いてきた。

 

「何でもないよ。それよりも目は大丈夫か?」

 

「うん、だいぶ痛みも引いてきたよ!…………でもごめんね?楓君に迷惑かけちゃって」

 

楓は倉橋の額にパチン!とでこぴんをした。

 

「迷惑なんて思ってないよ。困ったときはお互い様だ。俺だって陽菜乃や皆に良く迷惑かけてるんだし」

 

楓はそう言うと倉橋の頭に手をおいた。

 

「ふわっ!」

 

「あ!ご、ごめん!」

 

楓はばっと手を離して謝っていた。

 

「だ、大丈夫だよ。ただ、ちょっとビックリしただけだから」

 

倉橋は顔を赤くさせて言っていた。

お互い、気まずくなり無言になって歩いていた。

 

 

そんな様子を離れた所から2人の人がこそこそと動いていた。

 

「なかなか進展しないなぁ~」

 

「見てるこっちがやきもきするよ」

 

矢田と中村が離れた所から双眼鏡を片手に覗いていた。

端から見たらもう、不審者のようだ。

 

「にしても九重のやつ何気無く倉橋ちゃんの頭撫でようとしてたわよね」

 

「そのあとの反応を見る限りじゃ無意識っぽいけどね」

 

「あーあ、倉橋ちゃんの顔が真っ赤だ」

 

「楓君の慌てっぷりも可愛いなー」

 

「でもさぁ、あの2人ってお互い脈アリよね」

 

「でも楓君がそれに気づいてないんだよね」

 

「あの鈍感め…………何で暗殺の技術とか勉強は出来んのにそっち方面はダメなのよ」

 

「そんな完璧人間なんて本のなかだけだよ」

 

こそこそと見ているのを子供はジーっと見ていた。

 

「…………ねぇママあの人達」

 

「ダメよ。あんな人達見ちゃ。ほら行きましょう」

 

子供の母親も矢田と中村を見て不審に思ったのか急いで子供を引っ張ってその場を後にしていた。

 

 

 

深夜…………

周囲が静まる中、寺坂は川に何かの薬剤を混入していた。

その作業を見ていたものが拍手をして寺坂に近付いていた。

 

「ご苦労様。プールの破壊、薬剤散布、薬剤混入。君のおかげで効率良く準備が出来た。ほら報酬の10万円。また次も頼むよ」

 

そう言っていたのはイトナの保護者と言っていたシロだった。

寺坂はそれを受け取り、にやっと笑っていた。

その後、イトナがやって来たのだが寺坂はイトナの変わったことに気付いた。

 

「……何か変わったな。……目と髪型か?」

 

「その通りさ、寺坂君。意外と繊細な所に目が行くね。前回の反省を活かして綿密な育成計画を立ててより強力に調整したんだ。安心しなさい私の計画通り動いてくれれば……直ぐに奴を殺し、奴が来る前のE組に戻して上げよう。その上、お小遣いも貰える、良い話だろ?」

 

シロが話を終えるとイトナが寺坂の所に近付いて寺坂の目をジーっと間近で見ていた。

 

「お前はあのクラスのチビや赤髪の奴より弱い。何故かわかるか?お前の目にはビジョンが無い。勝利への意思も手段も情熱も無い。目の前の草を漠然と喰ってるノロマな牛は……牛を殺すビジョンを持った狼には勝てない。…………ビジョンそれだけでいい」

 

イトナは言うだけ言うと踵を返してその場から離れた。

 

「なんなんだあの野郎、相変わらず!!脳ミソまで触手なんじゃねーのか!?」

 

怒鳴り込んでる寺坂にシロは平謝りをして落ち着くように言っていた。

 

「仲好くしてくれ、なんせ我々は戦略的、パートナーだ。クラスで浮きかけている今の君なら……不自然な行動も自然に出来る。我々の計画を実行するのに適任なんだ。決着は…………今日の放課後だ」

 

シロの言葉に寺坂は怒りを静めてニヤリと笑っていた。

これで奴を殺して元のE組に戻ると考えてる寺坂に対してシロはポツリと……

 

「…………単純な奴だ」

 

そう呟いていた。

寺坂のこの行動がとんでもないことになるとはこの時、寺坂は思いもよらなかった。


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