プロの暗殺者は学生?   作:☆麒麟☆

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今後も頑張りますので是非読んでくださいm(_ _)m


夏の時間

「暑い…………」

 

鷹岡の件から数日後、夏も本格化してきて気温も25℃を越えておりE組の皆は授業に集中出来ずに、暑さに参っていた。

 

「この教室にクーラーぐらいつけとけよ…………」

 

楓は教科書を団扇がわりに扇ぎながら愚痴を漏らしていた。

 

「だらしない……夏の暑さは当然の事です!!温暖湿潤気候で暮らすのだから諦めなさい。因みに先生は放課後には寒帯に逃げます」

 

「「「「「ずりぃ!!」」」」」

 

暑いなかも皆は忘れずに突っ込みを入れていた。

 

「でも今日、プール開きだよね。体育の時間が待ち遠しい~」

 

倉橋は嬉しそうに言っており、皆の表情も少し明るくなった。

 

「いや……そのプールがE組にとっちゃ地獄なんだよ。プールは本校舎にしかないから、入るなら1㎞往復する必要がある。プール疲れした帰りの山登りは力尽きてカラスの餌になりかねねー」

 

木村がそう言うと皆の表情は再び暗くなった。

 

「テンション下げるような事言うなよ」

 

「す、すまん!殺せんせーナイフだからって投げつけんなって!!」

 

楓はイラッとしたあまり両手に大量のナイフを持ち木村に投げつけていた。

 

「仕方無い…………全員、水着に着替えて着いてきなさい。そばの裏山に小さな沢があったでしょう。そこで涼みに行きましょう」

 

その後、皆は水着に着替えて上にジャージを羽織って沢に向かっていた。

 

「てか岡島、何カメラなんてもって来てんだよ」

 

「何言ってんだ九重!皆の水着姿をカメラに納めるために決まってんだろ!女子達の水着姿…………ウフフフ」

 

岡島の言動を見ていた女子達はササッと岡島から離れていった。

 

「裁判長、判決は?」

 

「有罪」

 

「カメラを壊して」

 

楓は片岡に聞いてみると当たり前と言った感じで言っており、岡野は壊せと言って命令してきた。

 

「アハハ、了解」

 

楓は集中すると辺りが止まって瞬時にカメラを叩き壊した。

 

「あっ、何時の間に!?折角、新品のカメラがー!?」

 

岡島は無惨な状態に成り果てたカメラを見て放心状態になっていた。

 

「C.D.Fだったか?凄いなそのスキル。何時の間にか移動していて驚いた」

 

「C.D.Fで集中力を高めて早く動いたんだ。この状態は周囲が止まった感じになるんだ。……って言っも本当に止まった訳じゃ無いけどな」

 

「どういうこと?」

 

「巨針蟻……俺にこのC.D.Fの事をより詳しく教えてくれた人が言ってたんだが、ゾウとネズミの時間感覚が異なる…………この意味解る?」

 

「はーい!多分、心拍数が違うから~」

 

楓の疑問に倉橋は手を上げて答えていた。

楓はそれに対して正解!と答えて続きを言った。

 

「陽菜乃の言うとおり、生物は心拍数によって時間感覚が異なるんだ。ゾウの心拍数は遅いから時間の感覚も遅い。逆にネズミの心拍数は早いから時間感覚が早く感じるんだ」

 

「それは解ったけど、それと周囲が止まるのって何か関係あるの?」

 

「そう急かすなって岡野。俺は集中して意識的に興奮状態にして心拍数を早めたんだ。心拍数の高い生物達って世界が静止した感じになるらしいんだ」

 

「そしたら九重君は態と心拍数を早くして、その静止した状態にしてるって事?」

 

「まるで昆虫その物になってるよね~。蜘蛛みたいに糸を使って相手を捕らえてるし、この間の槍みたいなのもカブトムシみたいだったし」

 

「まるで虫になりきってるよな」

 

前原は笑いながら言っているのを楓は肯定していた。

 

「虫って俺の中では最強の暗殺集団だと思うんだよね。罠を巧みに張るやつや、気配を圧し殺して獲物を狙うやつ、上手く花や木葉、枝に擬態してるやつ、危険感知に長けてるやつ、強力な毒を持ってるやつ、強靭な肉体を持つやつ、どれをとっても人間の殺し屋より優れてる。もし昆虫達が俺達、人間と同じ位の大きさだったら、人間は虫達にとって格好の獲物になってたと思うんだよね。師匠たちもそれに気付いて、少しでも虫を真似て獲物を狙うようにしてるんだよ」

 

楓はそう言うと皆はへぇーと声を出していた。

 

「でもさ、芋虫とか弱そうに見えるけどな」

 

「馬鹿を言うな。確かに芋虫は攻撃面では劣っているけど、タフな肉体に環境に適応する力は凄いんだぞ?それにメカニズムはまだ謎だけど芋虫は毒が聞かないって言う話も聞く」

 

「流石に毒の聞かない人間は「いるよ」いんのかよ!?」

 

「芋蟲って言う殺し屋は一千万人に一人の確率で生まれる“適応性変異体(アダプティブミュータント)”って言う特異体質で毒や薬の類いは一切、効かないんだ」

 

そんな話をしているとふと水の流れる音が聞こえてきた。

楓たちは話を中断して走って見ると小さな沢なんて何処にもなく、代わりに25メートルコースが確保されている立派なプールがあった。

 

「小さな沢を塞き止めて水を溜めました。25メートルコースの幅も確保してますし、シーズンオフには水を抜けば元通り。水位を調整すれば魚も飼って観察出来ます。製作に1日、移動に1分。後は1秒あれば飛び込めますよ」

 

殺せんせーはそう言い終わると皆はジャージを脱ぎ水着になったら、勢いよくプールに飛び込んだ。

 

「あぁ~、気持ちいい…………」

 

楓はぷか~と浮きながら涼しそうに呟いていた。

 

「…………」

 

楓は唐突に暗殺の事を考えていた。

いくら楓の身体能力をフルに使っても殺せんせーに対向出来ない。

静止した世界はほんの数秒しか使えない。

何か決定的な弱点はないか考えていた。

 

「あっ、楓君もビーチボールやろーよ!」

 

ボーッと水面に浮かびながら考えてると倉橋が声をかけてきて有無を言わさず、そのまま引っ張って行った。

 

(後で考えるか……)

 

考えることを放棄した楓は倉橋達と一緒にビーチボールを楽しむのであった。

暫くビーチボールを楽しんだ楓はプールから上がり、休憩をとっていた頃、殺せんせーはホイッスルをならしながら注意をしていた。

曰く……「走ったら危ない」「長い間、潜水するな」「飛び込み禁止」「本ばかり読むな」「カメラ没収」等々だ。

皆は小うるさい!と突っ込んでいたが岡島はカメラを没収されてorz状態になっていた。

 

「堅いこと言わないで殺せんせーも遊ぼーよ!」

 

倉橋は笑顔でエイッ!と言って殺せんせーに水をかけていた。

 

「きゃん」

 

 

 

 

 

 

「「「「「…………は?」」」」」

 

クラスの皆はあり得ない声を聞いてその場に固まっていた。

唯一、カルマはゆっくりと泳いで近付き見張り台をぐらぐらと揺らしていた。

 

「やめて!!揺らさないで!!落ちる!!」

 

殺せんせーは必死に見張り台にしがみつき落ちないように抗っていた。

この光景を見ていた生徒たちは殺せんせーは泳げないという事に気付き、水殺というこの夏のテーマの1つになるんじゃないかと考えていた。

突然、茅野がバランスを崩し浮き輪から落ちて溺れていた。

殺せんせーはパニクりながら、ビート板の形をしたふ菓子を差し出すも短くて届いてはいなかった。

そんな中、1人の生徒が飛び込んで泳ぎ茅野を浅い所まで引っ張って行った。

 

「大丈夫だよ茅野さん。すぐ浅い所まで連れていくから」

 

「ありがとう片岡さん!」

 

「ふふ、水の中なら私の出番かもね」

 

片岡は笑いながら静かにそう呟いていた。

 

 

 

昼休み、何人かでプールに集まり昼食を取りながら話をしていた。

 

「まず問題は殺せんせーが本当に泳げないのかだな」

 

「湿気が多いとふやけるのは見たことあるけど……」

 

岡野が思い出すように発言していた。

 

「あぁ、さっきも倉橋が水をかけたとこだけふやけてた。もし仮に全身が水でふやけたら…………死ぬまではいかなくても極端に動きが悪くなる可能性はかなり高い」

 

磯貝は岡野の発言を肯定しそう言っていた。

それを聞いた片岡は立ち上がり、口を開いた。

 

「私の考えた計画なんだけど、この夏の間、どこかのタイミングで殺せんせーを水中に引き込む。それ自体は殺す行為じゃないから……ナイフや銃よりは反応が遅れる筈。そしてふやけて動きが悪くなった所を水中で構えてた人がグサリ!水中にいるのが私だったらいつでも任せて、バレッタに仕込んだナイフで何時でも殺れる準備はしてる」

 

「おお~、昨年度の水泳部クロール学年代表、片岡メグ選手の出番ってわけだ」

 

前原は茶化しながらも期待した感じで呟いていた。

 

「九重の言う静止した世界って奴を使って落とせないか?」

 

「うーん、こればかりはやってみないとわかんねぇなぁ~。C.D.Fからの静止した世界は数秒しか使えない。殺せんせーが完全に油断してる時じゃないと水に落とせないな」

 

「たった数秒だけなのか?」

 

「1回に使えるのは数秒だ。何回も出来るけどかなり疲れるから頻繁にはしたくないんだよなぁ」

 

磯貝の驚きに楓は頭を掻きながら答えていた。

 

「大丈夫よ。まず大事なのは殺せんせーに水場の近くで警戒心を起こさせないこと。夏は長いわ、じっくりチャンスを狙ってこう」

 

片岡がそう言うと皆はおうっ!と言って暗殺の士気をあげていた。

 

「さすがはイケメグ!」

 

「イケメグ?」

 

三村の呟きに楓は聞いた。

 

「あぁ、文武両道で面倒見が良くて颯爽として凛々しいからイケメグってアダ名がついたんだよ」

 

「そんな片岡が何でE組に来たんだ?」

 

「流石にそこまではわかんねぇよ」

 

楓はそれもそっかと呟き、教室に戻っていった。

 

 

 

放課後、楓は校舎の裏山で1人自主練していた。

兜角を縦横無尽、無造作に振っていた。

 

「よくあんなに振れるねぇ」

 

「うん、あの槍ってかなり重いから片手であんなにブンブン振り回せないよ」

 

楓が振っているのを離れた所で矢田と倉橋が眺めていた。

楓が振っている兜角は重量10㎏もある。

それを自由に振り回し、更には鷹岡ごと持ち上げた楓の腕力に2人は呆れていた。

 

「ほんとカブトムシを真似てやってるんだぁ」

 

「カブトムシってそんなに力強いの?」

 

矢田の問いに倉橋はうんと言っていた。

 

「カブトムシって筋肉の発達が凄くて、同じ甲虫のクワガタと比べても筋量の差は歴然なんだよ。その特性を活かして自重の20倍の物を引くことが出来るんだよ。それだけでもかなり望むと力なんだけど角で敵を跳ね飛ばす力は自重のおよそ100倍らしいんだ」

 

倉橋の説明に矢田はへぇと声を漏らしていた。

 

「でも、楓君のあの武器って暗殺には向いてないよね?」

 

「これはあくまでも対人および対集団戦用の武器なんだよ」

 

楓は兜角を担ぎながら来て答えていた。

 

「対人?暗殺者にとって対人って必要ないんじゃないの?」

 

「そうでもないさ。俺の師匠の1人、兜蟲は周りの損害関係なくこれで殺ってるけどって今は関係ないか…………俺は基本的に対象者以外は殺らないことにしてるんだ。時には対象者が守り屋を雇って護衛したりする。そう言うときに戦闘になったり集団で襲われた時、俺はこの兜角を使うんだ」

 

楓がそう説明すると2人はへぇと言っていた。

 

「さて暑いし、どこか冷たいもの食べにいかね?」

 

楓は汗を拭いながら言うとさんせーと2人は言ってファミレスに行くことにした。

 

「あれメグちゃんだ。何か暗い顔してる」

 

「あっ、ほんとだ。気になるし、ちょっと後を追ってみない?」

 

矢田の提案に楓と倉橋は賛成し後をこっそりついていった。

 

 


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