プロの暗殺者は学生?   作:☆麒麟☆

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まさかの時間

昼休み、イトナの机の上にはお菓子やデザート等甘いものが山盛りに積んであった。

 

「すごい勢いで甘いもん食ってんな。甘党なところは殺せんせーと同じだ」

 

「表情が読みづらい所とかな」

 

前原と磯貝が飯を食べながらイトナを見て呟いていた。

 

「兄弟疑惑で皆やたら私と彼を比較してムズムズしますねぇ。ここは気分直しに今日買ったクラビア誌でも読みますか。これぞ大人のたしなみ」

 

殺せんせーは表情を弛めだらしない顔をしながらクラビア誌を取り出して読んでいた。

 

「「「(((巨乳好きまでおんなじだ!!)))」」」

 

イトナも殺せんせーと全く同じクラビア誌を読んでいてクラスの皆は突っ込んでいた。

 

「……これは俄然、信憑性が増してきたぞ」

 

「そうかな?岡島君」

 

興奮しながら言う岡島に渚は思わず聞いてきた。

 

「そうさ!!巨乳好きは皆兄弟だ!!な?九重」

 

「まさかの3人兄弟!?」

 

「然り気無く俺を巻き込むな!変態!!」

 

「ゴフッ!?」

 

楓は岡島の渠めがけて思いっきり殴り、岡島を地に沈めた。

その光景を見ていた一同は自業自得だと心のなかで突っ込んでいた。

その後も不破が2人の兄弟説で妄想に花を咲かせたりとしており、放課後を迎えるのだった。

 

放課後になり、イトナの宣言通り暗殺を始めるのだが今までの暗殺とは全く異なっていた。

 

「机のリング……!?」

 

「あぁ、まるで試合だ。こんな暗殺を仕掛ける奴は始めてだ」

 

ビッチ先生が驚いていたように殺せんせーとイトナを囲むように机が並ばれており、周りに生徒たちがいた。

 

「ただの暗殺は飽きてるでしょ殺せんせー。ここは1つルールを決めないかい?リングの外に足がついたらその場で死刑!!……どうかな?」

 

シロの言葉に杉野は困惑していた。

 

「なんだそりゃ?負けたって誰が守るんだよ、そんなルール」

 

「……いや、皆の前で決めたルールは……破れば“先生として”の信用が落ちる。殺せんせーには意外と聞くんだ、あの手の縛り」

 

杉野の疑問にカルマは答えており、そんな中殺せんせーはそのルールを受けた。

 

「……良いでしょう、受けますよ。ただしイトナ君、観客に危害を与えた場合も負けですよ」

 

殺せんせーの追加ルールにイトナは黙って頷いていた。

シロは2人のやり取りが終わったことを確認すると右手をあげた。

 

「では合図を始めようか。暗殺……開始!!」

 

シロの右手が下ろされたと同時に殺せんせーの左腕が切り落とされていた。

これにはクラスの皆が驚いていた。

ただ、驚いていたと言っても殺せんせーの腕が切り落とされたからじゃ無い。

寧ろ、殺せんせーの腕が切り落とされたのも気付いていない人もいる。

殺せんせーも含めて皆はある一点に釘付けになっていた。

 

「触手!?」

 

誰が叫んだか定かじゃ無いがその人の言う通り、イトナの髪が殺せんせーの触手の用にヒュンヒュンと動いていた。

この時、カルマと楓は朝、イトナが1滴も濡れてなかった理由がわかった。

恐らく、イトナはその触手で雨を弾いて歩いてきたのだろう。

 

ゾクッ!?

ふと楓の体が身震いした。

 

「………………こだ。どこでそれを手に入れたッ!!その触手を!!」

 

殺せんせーの顔は歯を剥き出しにしながら顔を真っ黒にしていた。

 

「あれが殺せんせーのド怒りの顔なのか?」

 

「そっか楓君はあの殺せんせーを見るのは始めてだったね」

 

楓は渚からメモを借りていたから情報としては知っているが、あそこまで雰囲気が変わるとは思ってもいなかった。

 

「君に言う義理は無いね殺せんせー。だがこれで納得したろう?両親も違う、育ちも違う、だが……この子と君は兄弟だ。しかし怖い顔をするねぇ、何か嫌な事でも思い出したかい?」

 

「……どうやらあなたにも話を聞かなきゃいけないようだ」

 

殺せんせーは一瞬、間があったが直ぐに触手を再生させ、この試合を終わらせようとした。

 

「聞けないよ、死ぬからね」

 

シロがそう言うと左手をあげると袖口から強烈な光が殺せんせーに照射していた。

 

「!?」

 

「この圧力光線を至近距離で照射すると君の細胞はダイラタント挙動を起こし、一瞬全身が硬直する。全部知ってるんだよ…………君の弱点は全部ね」

 

シロが合図をするとイトナは殺せんせー目掛けて触手で猛攻してきた。

しかし殺せんせーは脱皮で回避し天井に避難していた。

 

「脱皮か……そう言えばそんな手もあったっけか。でもね殺せんせー、その脱皮にも弱点があるのを知ってるよ。その脱皮は見た目よりもエネルギーを消耗する。よって直後は自慢のスピードも低下するのさ。常人から見ればまだ速い事には変わりないが触手同士の戦いでは影響はでかいよ。加えてイトナの最初の奇襲で腕を失い再生したね。その再生も結構体力を使うんだ。二重に落とした身体的パフォーマンス、私の計算ではこの時点でほぼ互角だ」

 

シロの言葉通り、殺せんせーのスピードは生徒たちが見ても解るぐらい遅くなっていた。

イトナは余裕がある感じはあるが殺せんせーの方は辛うじて回避する感じで見ている方がハラハラする感じだった。

 

「また、触手の扱いは精神状態に大きく左右される」

 

シロの言葉を聞いた生徒は思い出したかの表情をする人がいた。

渚のメモにもある殺せんせーの弱点、テンパるのが意外と速いのもそれに該当するのだろう。

 

「予想外の触手によるダメージでの動揺、加えて気持ちを立て直す隙も無い狭いリング。今現在どちらが優勢か生徒諸君にも一目瞭然だろうねー。更に献身的な保護者のサポート」

 

シロがそう言うと再び右手をあげ殺せんせーに光を照射していた。

それに当たった殺せんせーはまた全身が硬直してしまいピタッと止まってしまった。

イトナはそれを見逃さず触手による攻撃を加えた。

殺せんせーは何とか直撃を避けるも脚の触手2本が切り落とされてしまった。

 

「フッフッフ、これで脚も再生しなくてはならないね。なお一層、体力が落ちて殺りやすくなる」

 

シロは1人笑ってるなか多くの生徒は俯いていた。

後少し……殺せば地球を救えて報酬も貰える……だけどそれに喜べる人は居なく、寧ろ悔しがってる顔をしていた。

 

「E組で殺したいと思ってる?」

 

楓は倉橋と矢田に問いかけていた。

 

「うん」

 

「出来れば私達で殺したかったよ」

 

2人は楓の問いに俯きながら答えていた。

 

「なら行動に移さなきゃな」

 

「「?」」

 

楓の呟きに2人の頭は?マークがついていた。

そんな中、殺せんせーは口を開いていた。

 

「……ここまで追い込まれたのは初めてです。一見愚直な試合形式の暗殺ですが……実に周到に計算されている。あなた達に聞きたいことは多いですが……先ずは試合に勝たねば喋りそうに無いですね」

 

殺せんせーの発言にシロは笑っていたが殺せんせーは気にせず喋っていた。

 

「……シロさん。この暗殺方法を計画したのはあなたでしょうが、1つ計算に入れ忘れてる事があります」

 

「無いね。私の性能計算は完璧だから。…………殺れイトナ」

 

シロの宣言にイトナは再び触手による猛攻を仕掛けてきた。

パァン!

突如、教室内に響いた発砲音。

その犯人は楓だった。

楓は対殺せんせー用の銃でイトナの頭を狙った。

その結果、イトナの頭の触手を撃ち抜いていた。

 

「君は何をしている?」

 

シロが怒気を含んだ声で楓に聞いてきた。

 

「悪いねシロさん。俺も見てるだけって飽きてきたから外野からちょっかいかけて見ようかなって思って発泡したんだよ。別に問題無いだろ?ルールには外野は参加しては行けないとも言われてないし、あんただって参加してんだから」

 

「それでは何故イトナを狙った?」

 

「いやぁ~。俺って射撃の命中率は悪く無いんだけど今日に限って大きく外しちゃった」

 

楓は悪気が無い感じでシロに向かってヘラヘラと喋っていた。

 

「ダメですよ九重君。いくら対私用の銃でも人に向けては危ないじゃないですか。……それにしてもイトナ君は落とし物を踏んづけてしまったようですねぇ」

 

殺せんせーは何時もの口調で楓を注意し床に落とし物があると指摘していた。

床には対殺せんせーのナイフが落ちており、イトナの触手が溶けていた。

 

「え?あ!」

 

渚が手を見て慌ててるのを見てあのナイフは渚の物だったのだろう。

 

「まだこれがあるんだよ殺せんせー」

 

そう言ってシロは3度目の照射をしようとしたが、それは殺せんせーにではなくイトナに照射された。

 

「!?」

 

シロは驚いた表情をし右腕を見ると糸が巻かれていた。

 

「また君か!」

 

「悪いね。ぽっと出の奴にターゲットはあげないよ。それと献身的なサポートってやり過ぎると過保護になって周囲の人達にウザがられるよ」

 

楓はシロに近付き右腕の装置を握り潰しそう言っていた。

殺せんせーは動揺しているイトナに脱皮の皮を包み窓の外に投げ捨てた。

楓はシロに巻き付けた糸を解き、再びある所に糸を張った。

 

「老獪な先生の勝ちですねぇ。ルールに照らせば君は死刑。もう2度と先生を殺れませんねぇ」

 

殺せんせーのその一言にイトナは切れて勢いよく教室に入って来て殺せんせーを殺しに掛かろうとしたがピタッと止まってしまった。

 

「!?動か……な…い!?」

 

「おやおや九重君は手癖が悪いですねぇ」

 

イトナの体中には糸がぐるぐる巻きになっていて身動きが取れなくなっていた。

楓は殺せんせーが窓から投げ捨てた時を見計らって窓一面に糸を張っていた。

イトナが教室に入ってくると巻き付く仕組みになっていた。

 

「いやいや、ルール違反をしそうになった奴を捕まえただけですよ?」

 

あっけらかんと言う楓に殺せんせーは「まぁ、良いでしょう」と良い、シロの方を向いていた。

そんなシロは糸から脱け出そうと、もがいてるイトナを見てハァと息を漏らし麻酔銃でイトナを眠らせていた。

 

「すいませんね殺せんせーこの子はまだ登校できる状態じゃなかったようだ。転校初日で何ですが……暫く休学させてもらいます」

 

「待ちなさい!担任として、その生徒は放っておけません。1度E組に入ったからには卒業まで面倒を見ます。それにシロさん、あなたにも聞きたいことが山ほどある」

 

「嫌だね、帰るよ。それとも力ずくで止めてみるかい?」

 

殺せんせーは顔に青筋を立てながらシロの肩を掴んだ。

その瞬間、殺せんせーの手はドロッと溶けていた。

そんな中、楓は殺せんせーの前に出ていた。

 

「帰るって言うけど無理だよ。イトナを糸で縛ってる上に窓もドアもイトナが開けた穴にも糸を張ってある。帰るってんならそいつを置いて、殺せんせーの質問に答えな」

 

「嫌なこった。それにこんな蜘蛛の巣対処なんて簡単なんだよ。そうだね……この間、君のご両親に会ってきたよ」

 

シロがそう言った瞬間に楓は動揺していた。

それと同時にイトナを縛っていた糸が解け、教室一面に張っていた糸も床に落ちていった。

 

「ほらね?その対処法は使用者の集中力を途切れさせれば糸の制御は簡単に失われるんだよ」

 

楓は殺気を出しつつ怒りを露にしており、シロはそんなことお構いなしにイトナを担ぎ歩を進めていた。

 

「心配せずともまた直ぐに復学させるよ殺せんせー。3月まで時間は無いからね」

 

そう言ってシロはイトナが開けた穴から出ていった。

イトナが去った教室では後片付けをしていた。

イトナが開けた穴や壊れた窓は取り合えず、板で被せる感じにして皆は机を並ばせていた。

 

「ねぇ殺せんせー、あの2人との関係を説明してよ」

 

「先生の正体いつも適当にはぐらかされてたけど、あんなの見たら聞かずにいられないぜ」

 

「そうだよ私達生徒だよ?先生の事、知る権利があるはずでしょ」

 

生徒の口から次々とそのようなことを言っており、殺せんせーは少し考えた後、立ち上がった。

 

「仕方ない。真実を話さなくてはなりませんねぇ。……実は、実は先生……」

 

殺せんせーの話を聞いてる皆は息を呑みながら殺せんせーの次の言葉を待っていた。

 

「実は先生……人工的に作り出された生物なんです!!」

 

「……………………だよね、で?」

 

殺せんせーは人工的に作られた生物と衝撃な告白をしたにも関わらず生徒たちの反応は薄くて淡白だった。

 

「だって自然界にマッハ20のタコとかいないだろ」

 

「宇宙人でも無いのならそん位しか考えられない」

 

「で、あのイトナ君は弟だと言ってたから……先生の後に造られたと想像がつく」

 

生徒達は其々、自分達の推察を述べており、殺せんせーは察しが良すぎると畏怖していた。

そんな中、渚は殺せんせーに近付き口を開いた。

 

「知りたいのはその先だよ、殺せんせー。どうしてさっきイトナ君の触手を見て怒ったの?殺せんせーはどういう理由で生まれてきて、何を思ってE組に来たの?」

 

「残念ですが今それを話したところで無意味です。先生が地球を爆破すれば皆さんが何を知ろうが全て塵になりますからねぇ。もし君達が地球を救えば真実を知る機会がいくらでも得られます。知りたいのなら行動は1つです。殺してみなさい。暗殺者と対象者……それが先生と君達を結び付けた絆の筈です。先生の中の大事な答えを探すなら君達は暗殺で聞くしか無いのです。質問が無ければ今日はここまで、また明日!」

 

殺せんせーはそう言って教室を去っていった。

渚はその後、楓の方を向いて質問してきた。

 

「楓君にも1つ聞きたいんだけど何であんなに動揺して怒っていたの?何時もの楓君らしく無いけど親と何かあったの?」

 

「……悪い!その話は触れないでくれ。俺の家庭内の問題だからあまり話したく無いんだ」

 

楓は手を合わせスマンと謝りながら言っていた。

その後、教室の後片付けも終わって数人の人は帰り、残りの皆は烏間先生の元に向かった。

烏間先生は今後の訓練の為か部下の人達と何かを設計し組み立てていた。

 

「烏間先生!」

 

烏間先生は組み立てに集中しており、声をかけられるまで気が付いて居なかった。

 

「……君達か。どうした大人数で」

 

「もっと教えてくれませんか?暗殺の技術を」

 

「?今以上にか?」

 

烏間先生の疑問に矢田と前原が口を開いた。

 

「今までさ結局誰が殺るんだろって、どっか他人事だったけど」

 

「あぁ、今回のイトナ見て思ったんだ。誰でもない俺等の手で殺りたいって」

 

「もしも今後、強い殺し屋に先越されたら……俺等何のために頑張ってたのかわからなくなる」

 

「だから限られた時間、殺れる限り殺りたいんです。私達の担任を」

 

続けざまに三村と片岡がそう言っており最後に磯貝が答えた。

 

「殺して自分達の手で答えを見つけたい」

 

烏間先生は生徒達の目を見て意識が変わり良い目をしたことに気付いた。

 

「……わかった。では希望者は放課後に追加で訓練を行う。より厳しくなるからな」

 

「「「はい!!」」」

 

生徒達の返事により烏間先生による放課後の訓練が始まった。

皆は悲鳴をあげていたが、どこか笑顔で楽しく訓練をしていたのであった。


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