休日の日曜日、天気は快晴と良く家にいるのも勿体ないということで楓はぶらぶらと外に出てた。
暫くほっつき歩いてると、突如女性達のの声が聞こえてきた。
「ちょっと止めてください!離してください!」
「ちょっとぐらい良いじゃんよぉ!俺達と楽しいことしようや」
「私達、これから用事で人と会うんです!」
「そんな用事なんてサボっちゃいなよ」
どうやらナンパされてるらしく4人くらいの男が取り囲み、女性を逃がすまいとしていた。
楓はどうしようか迷っていたが、明らかに女性達の声に聞き覚えがあったので助けに行くことにした。
「其処までにしときなよ。嫌がってんじゃん」
「あ ゛?何だこのガキ?」
「何こいつ、ナイトサマ気取りですか~?」
男達はギャハハと笑っていたが楓はそれを無視し女性達に声をかけた。
「ごめん矢田、倉橋!ちょっと遅れちゃった!」
「九ちゃん遅いよ!」
「罰として後で何か奢ってね!」
女性は矢田と倉橋で2人はアドリブで楓に合わせていた。
3人はそのまま何事もなく去ろうとしたが、そうは問屋が卸さなかった。
「悪いがお前はこの娘達との予定はキャンセルだ」
「だってお前はこれから病院に行くんだからな!」
「だけどここだと人目がつくからな…………着いて来い」
男達が楓を掴み路地裏に引っ張って行った。
「ど、どうしよう桃花ちゃん!?」
「とりあえず、警察にr「ガン!ゴン!ドンドン!!バキッ!ゲシッ!ボキッ!ガハッ!!」ッ!?」
矢田が警察に電話しようとしたら路地裏から、けたたましい音が鳴っていた。
すると1人の男が路地裏から逃げようとしたが直ぐに襟を捕まれ路地裏に戻されて行った。
「や、辞めろ!俺が…………俺達が悪かった!!頼む、見逃s……ギャアァアア!!」
男が懇請すると悲鳴のような声をあげていた。
暫くすると楓が何事も無かったかのように路地裏から戻ってきた。
「こ、九重君!大丈夫だったの!?と言うか、あの人達はどうしたの?」
「俺も向こうも大丈夫だよ。あの人達はちょっとお話し(物理的)をして眠ってもらった」
「うん、聞かなかったことにしとくよ」
倉橋がそう言い、矢田は苦笑いしていた。
「まぁ、無事みたいだな…………そしたら俺は行くわ」
楓はじゃあなと言いその場を後にしようとした時…………
「ちょっと待って!」
突如、矢田に呼び止められた。
「どうした?」
「この後って何か用事でもある?さっきのお礼したいんだけど、どうかな?それに……」
「それに?」
「この後、陽菜ちゃんと買い物するんだけど、さっきみたいにナンパされたくないからボディーガードとして付き添って欲しいな」
倉橋もそれを聞いて確かに~!と言っていた。
「ハァ、解ったよ」
楓はそう言うと2人はやったー!と喜びハイタッチをしていた。
その後、3人は移動した。
先に買い物がしたいとのことで向かったのは服屋だった。
「こんなのどうかな~?」
「こっちも捨てがたいよね」
「あぁー、確かにこれも可愛い!」
倉橋と矢田はキャッキャウフフと楽しげに服を選んでいた。
一方、楓は退屈そうにベンチに座りボーッとしていた。
一応、スレッドを床に指しといて変な奴が近寄って来ないか調べてるが恐らく問題ないだろう。
「あっ、これも良さそう!」
「私も良いの見つけた~!」
「………………まだまだかかりそうだ」
楓はそう呟きながら2人が来るのを待つのだった。
あれから1時間が経った頃、2人は買い物袋を持ってやって来た。
丁度、お昼時と言うこともあり3人はファミレスに寄ってランチにすることにした。
楓はハンバーグ定食、倉橋はオムライス+ヨーグルトベリーパフェ、矢田はパンケーキ+ガトーショコラを頼んだ。
料理が運ばれて来て食べてる最中、ふと倉橋が口を開いた。
「ねぇ……九ちゃんって元A組の時、私達E組の事どう思ってたの?」
「正直言うと余り興味は無かった。E組のヤジとかもどうでもよかったし言うつもりも無かった。集会とか殆んどサボってたから解んなかったけど、この間の集会時にあんなに酷いとは思いもしなかった…………」
楓は「今度から殺気を飛ばして集会、無茶苦茶にしようかな…………」等とぶつぶつと呟いているのに2人は苦笑いしながら止めていた。
「九重君は確か暗殺に専念してよく休んでたからE組に来たんだよね?暗殺の対象者ってどう決めてたの?まさか無差別「それは違う」」
楓は矢田の言葉を遮り、即座に否定した。
「俺が狙う相手は法で裁くことの出来ない犯罪者等を仲介人から請け負ってるんだ。決して無差別何かじゃない…………ごめん、ちょっと向きになった」
「ううん、私もごめん……」
その後、3人は楽しく他愛もない話をして時間を過ごしていた。
「ごめんね!御馳走しようと思ったんだけど…………」
「逆に私達が御馳走になっちゃった…………」
「いいよ、それぐらい。元々、自分で払うつもりだったし」
店を出るとき会計をするため財布を出した倉橋と矢田の顔は蒼白になった。
服でお金を使いすぎたのか、財布の中が殆んど空っぽで代わりに楓が払ったのだ。
店を出て暫く歩いてると楓のスマホにメールが来ていた。
「ごめん、ちょっと寄りたい所あるんだけど良い?」
「良いけどどうしたの?」
「俺の師匠の1人が帰って来たみたいで渡したい物があるから、ちょっと来てくれだって」
「私達が行っても大丈夫なの?」
「ちょっと待って…………おっ、返信速いな。…………問題ないって」
楓がそう言うと3人で指定された場所に向かった。
場所は普段、楓が行っている喫茶店“九条”だった。
「おう、来たか。向こうにいるぞ」
喫茶店のドアを開けるとマスターの九条源三郎が気付き、指を指した。
源三郎が指した場所には1人の女性が座っており何か飲んでいた。
楓は「どうも」と軽く源三郎に礼をすると、楓達は女性の所に向かった。
「久しぶり、アリス姉」
楓がそう言うとアリスと呼ばれた女性はゆっくりと振り向き、楓達の方を振り向いた。
「久しぶりですね楓。そして貴方達には始めまして、楓の師匠の藤井アリスです」
「は、始めまして!倉橋陽菜乃です!」
「わ、私は矢田桃花です!」
アリスが簡単に自己紹介すると2人は緊張した面持ちで自己紹介していた。
「立ち話も何ですし、座ってください」
アリスに促され、楓達は席についた。
それを見計らってなのか源三郎がコーヒーと紅茶を楓達に出していた。
「え?私達頼んでいませんよ!?」
矢田は慌てながら源三郎にそう言うと源三郎は笑いながら……
「気にするな。サービスで1杯御馳走だ。気が引けるってんならソイツに払ってもらえ」
源三郎はそう言って楓を指し、カウンターに戻っていった。
「先ずは楓にこれを渡しますね」
アリスはそう言うと足元からトランクケースを机の上に置いた。
「兜蟲に頼んでいたものが出来上がったとの事で持ってきました」
楓はトランクの中身を確認すると直ぐに閉じて足元に置いた。
「楓の……楓達が請け負っている相手はどうですか?」
「今までの常識が通用しなくて四苦八苦しているよ」
2人は何事も無いように話してるなか倉橋と矢田は驚いていた。
「藤井さんは殺せんせーの事知ってるんですか!?」
「まさか、九ちゃんが喋っちゃったの!?」
2人が慌て様を楓とアリスは苦笑いしていた。
「落ち着いてください。別に楓から聞いた訳ではありませんよ。私達の業界は独自の情報網があって、そこから仕入れてきた情報なんですよ。やり手の殺し屋なら貴方達が言う殺せんせーと言う存在も耳に入ってるんですよ」
「加えて言うなら、ここの喫茶店の店員も知ってるぜ」
倉橋と矢田は開いた口が塞がらなかった。
烏間先生から他言無用と言われ、E組の教室で極秘に扱ってる事が知れ渡ってる事に驚きを隠せなかったのだ。
「特に驚く事じゃないさ。今の情報社会、何処で情報を知られるか解らないし、やりようによっては簡単に情報を入手することも出来る。そして、知られた情報の拡散は完全に防ぐ手立てが無いんだから」
「藤井さんは殺せんせーの事を知って殺そうとは思わないんですか?」
「依頼が入れば動きますよ。依頼も受けてないのに対象者を殺すのは私の信条に反してしまいますからね」
「でも、驚きました。九ちゃん……九重君から技術を教えてもらった師匠さんに会うと聞いてましたが。想像と違ってちょっと半信半疑です」
倉橋曰く、先日会ったロヴロと違い威圧感や雰囲気がなく、何処にでもいる1人の女性みたいと言っていた。
「フフフ、ありがとうございます。暗殺者と言うのは何も殺しの技術だけ必要とは限らないんですよ。周囲と如何に溶け込むか……それが暗殺者にとって必要な技術ですね」
その後、この話はお仕舞い!とアリスは言い今度は楓の学校の日常を知りたいと言い、その話になった。
矢田、倉橋が楓の普段の学校生活の話をしており、それに耐えれなくなった楓は逃げようとするもアリスの糸に捕縛され延々と学校生活を暴露されていた。
「あっ、もうこんな時間!」
不意に矢田が時間を確認したら、夕方の6時を過ぎていた。
「残念ですが、今日はこれくらいでお開きですね」
アリスの言葉に楓は「羞恥から解放された~」と言っており、3人はそれを見てフフッと笑っていたのだった。
「これからも楓をよろしく頼みますね。後、何か相談事があったら何時でも連絡くださいね」
アリスはそう言うと自分の連絡先を書いたメモを2人に渡していた。
「今日はこのまま家に帰ってくるの?」
「残念ですが、これからまた仕事です」
楓の問にアリスはそう返すと「ん、了解」と一言言っていた。
「彼女達を確り送ってあげてくださいよ?それじゃあ、また今度会いましょう」
アリスはそう言って店を後にした。
楓達も荷物を持ち、源三郎に挨拶をし店を出て歩いていったけど
「今日は楽しかった~!」
「本当だね。九重君も今日は付き合ってもらってごめんね?」
「気にしなくて良いよ。俺も楽しかったし」
「あっ、私達ここまでで良いよ」
「おっ、そうか。じゃあな倉橋、矢田」
楓はそう言って手を上げ挨拶をしたが2人に反応は無かった。
「ねぇ、何で苗字で呼ぶの?」
「え?」
倉橋の問い掛けに楓は何かおかしかったか?と考えていた。
「苗字で呼ぶのおかしかったか?何時も通りに呼んだ筈なんだが…………」
楓は解らないという感じで倉橋に聞いてきた。
別段、普段と変わらず呼んでたんだがと考えていたろ倉橋が…………
「普段、学校で良く話してるのに苗字で呼ぶのって変だよ。ここは名前で呼び会わない?ね、桃花ちゃん?」
「良いね陽菜ちゃん!楓君もそうしようよ!」
矢田は倉橋の意見に賛同し、早速楓を名前で呼んでいた。
「これって絶対じゃないよな?」
「「絶対!」」
2人にキッパリと言われた楓は其ぐらいなら別に良いかと判断した。
「解ったよ陽菜乃、桃花これで良いか?」
実際、呼んでみて恥ずかしかったのか楓はそっぽ向きながら頬を掻いていた。
「うん!(何だろう、楓君の仕草……)」
「(物凄く、初々しい……もしかして)」
「「((楓君って意外と女性にたいして純情なタイプ?))」」
2人は知らないが楓は意外と女性と接するのが得意ではない。
クラスの女子達と普通に話したりは出来るがそれ以上となるとどうすれば良いのか解らなくなる節がある。
アリスとは長年、一緒にいて何とか周りよりもラフに接することが出来るのだ。
「2人ともどうした?」
「な、何でも無いよ!ね、陽菜ちゃん?」
「うん、そうだよ。そしたら私達はもう行くね!楓君またね~!」
2人はそう言って帰っていき、残された楓は訳が解らんと呟き帰宅するのだった。