「ゴホッゴホッ!」
律がクラスに来て数日が経ったある日、楓は怠そうにしながら咳をしていた。
PPPP!
体温計が鳴り、脇から抜くと体温は38.9°と見事に風邪を引いていた。
「これも全てはあの人のせいだ!」
楓は唸りながらそう言い、昨日の事を思い出していた。
~「ふぅ、満足だったぜ!」
「ソイツは何よりだ」
この間の律の件で唯に報酬を払うために楓は唯と一緒にファミレスに向かった。
今回の報酬はヘブンタワーパフェ、50㎝と言う高さでお値段は2800円。
其を小学生の唯に報酬として御馳走したのだ。
1人でむしゃむしゃと食べてる姿に店員も客も驚いていたのが印象的だった。
「にしても最新鋭のイージス艦の戦闘AIを持っていて自己進化も出来るプログラムが転校生とかお前の所はほんと面白そうだよな…………。まぁ、私の新しい遊び相手として楽しんでんだけどな」
唯はクックッと笑いながらそのような事を言っていた。
何でも唯は律と一緒に色んなネットゲームの上位ランク入りするという野望を抱いているらしい。
「あぁー!唯ちゃんに楓君だ!」
唯と楓が話している中、大声で2人を呼ぶ声が聞こえてきた。
「私は何も聞こえていない」
「俺もだ。さっさと行こう」
2人は聞こえない振りをしその場を離れようとしたら声の主は楓の後ろに抱きついてきた。
「無視しないでよー!?」
「だぁー!寒い!抱きついてくんな!凍える!」
振りほどいて後ろを振り向くと喫茶店、九条で働いており、尚且つ楓と同じ殺し屋の岩倉ニナミがいた。
「やっぱりあんたか…………」
楓は溜め息を吐きながら呟いているがニナミはそんなことお構いなしにまたもや抱きついてきた。
「この間はお土産ありがとうねー!」
「だから寒いんだって!見ろよあんたの下!薄く氷が出来てんだろ!」
ニナミのお礼の言葉を無視しながら楓は指を指して言うと下には薄く氷が張っていた。
彼女、岩倉ニナミはとある研究所で体を弄くられてしまい、その結果じっとしていると体温が-200°まで下がってしまう体になってしまった。
同じく、喫茶店の九条で働いている石刀ユウは感情が高ぶると体温が急激に上昇して1000°にもなってしまう体になっている。
そこら辺の詳しい話は少年サンデーで連載されていたイフリート~断罪の炎人~を読んで見てくださいm(_ _)m
「作者のやつ説明省きやがったな」
「唯ちゃん、作者の文才はたかが知れてるんだ。そっとしておけ」
…………まぁ、そう言う訳でE組で教師をやっている殺せんせーとはまた別の意味で化物の体を持っているのだ。
その後もニナミは楓に抱き付きながら喫茶店に向かったのだが喫茶店に着いたときの楓の顔は真っ青でブルブルと震えていたのだった…………~
「ふぅ、取り合えず烏間先生に休みの連絡入れて横になろう…………」
楓はスマホを手に取り烏間先生に連絡をいれた後に再びベットに入り眠りにつくのだった。
あれから数時間が経ち、今はちょうどお昼時だった。
楓は目を覚まし、起き上がるが何もする気になれなくて三度ベットに入り込むのだった。
「具合は如何ですか?」
ふと声が聞こえてきたで辺りを見渡すが誰も居ない。
「此方ですよ」
不意にスマホから聞こえてきたのでスマホを見ると其処には律がいた。
「何でスマホに入ってんの?」
「皆さんとの情報共有を円滑するため全員の携帯に私の端末をダウンロードしてみました」
「お前も大概何でもありだな」
楓は頭を押さえながら苦笑いしていた。
「それで最初の質問なのですが、お体の具合は如何ですか?」
「朝に比べたら少し良くなったかな?」
「そうですか。今日の放課後、殺せんせー含めて何名かが九重さんのお見舞いに来るそうですよ」
「…………因みに誰が来るんだ?」
「其を今、決めてる最中です」
「マジか…………。まぁ、わかった。それまでもうちょい寝てるわ」
「わかりました!それではまた後ほど」
律はそう言って画面から消えてった。
楓はベットに潜ってもう一眠りしようとしていた。
(頼むから、真面な奴来てくれ!)
楓はそう懇願するように祈り眠りについた。
時は同じく、現在は昼休み。
皆はいつも通り、各々が自由に過ごしていた。
「ただいま戻りました!」
本体のディスプレイに明かりがつき律が出てきた。
「律、楓君の様子はどうだった?」
「そうですね……少し良くなったとは言ってましたが顔色は優れてませんでした。皆さんが来るまで寝てるとのことです」
渚の質問に律はそう答えた。
「そしたら皆でお見舞いに行って元気つけないと行けないねー」
「カルマ君、本音は?」
「九重の家を物色して楽しむ!」
カルマはそう言うと中村と岡島もそれに賛同していた。
「ダメだわ……あの3人を好き放題させたら九重も落ち着けないだろうから私も行くわ」
片岡は3人を見てストッパーが必要とのことでお見舞いに行くことを決めた。
「え~と……今のところ、片岡さんにカルマ君、磯貝君、中村さん、岡島くんかな?杉野と茅野はどうする?」
「悪い、今日は野球のクラブの日だから行けないや」
「私もゴメン。今日はちょっと用事があるから行けない」
杉野と茅野はばつが悪い表情をし言ってきた。
渚はそれに対して仕方無いよと言い2人を宥めていた。
「あっ、メグ・渚君私達も行って見たいんだけど言いかな?」
矢田は倉橋を連れ、自分達もお見舞いに行きたいと申し入れしていた。
「うん、解ったよ」
渚はそれに了承していた。
こうして殺せんせーを含め、渚・片岡・カルマ・中村・岡島・矢田・倉橋のメンバーが楓の見舞いに行くのだった。
◆◇◆◇
とある古びたアパートに楓は立っていてある光景を見ていた。
「お父さん、お母さんこの人達誰?」
「…………」
「…………」
其処には黒いスーツを着た、がたいの大きい男が2人とその反対に一組の家族が玄関で相対していた。
小さな男の子が見知らぬ人が家にいることに困惑しており親に聞いていた。
しかし、親は子供の言葉を無視をしており、目も会わせていなかった。
「約束通り、その子を引き取らせて貰おう」
「その前に金が先よ。それを確認してからこいつを渡すわ」
子供は今の言葉で益々、困惑していた。
金?引き取る?何を言ってるの?幼い子供では理解の範疇を越えており頭がぐるぐるしているのを他所に、1人の男がトランクケースを差し出してきた。
父親とおぼしい人はトランクケースを引っ手繰り中身を確認していた。
「アハハ!金だ!金がこんなに!」
「これで借金を返済して普通の暮らしに戻れるわ!」
子供の目の前で取り憑かれた用に金にありつく親を見て子供は親に寄っていった。
「ねぇ、お父さん、お母さん。そのお金どうしたの?何か変だよ?ねぇ、聞いてってば!」
子供の言葉に鬱陶しいく思ったのか父親は子供を突き飛ばした。
「耳障りなんだよ!お前はもう俺達の子じゃ無いんだ!黙ってろ!!」
「あぁ、そいつ連れてって良いわよ」
母親は子供に目もくれず、そう言い放つとがたいの大きい男は子供の腕を引っ張った。
「嫌だよ!!助けて!ねぇ、助けてよ!お父さん、お母さん!!」
子供は必死に抵抗するが大人の力には敵わず家の外に出てしまう。
扉が閉じる際、子供が見たものは金にしか興味を示しておらず子供の嘆きは耳にも入っていない親の姿だった。
◆◇◆◇◆◇
「!?」
楓はバッとベットから起きやがり、辺りを見渡した。
「夢か…………」
夢であったことに安堵した楓はふぅと息を吐いていた。
ピンポーン!
すると誰か来たらしくインターホンが鳴り響いていた。
「お目覚めだった用ですね。皆さんがお越しになりましたよ」
スマホから律が出てそう言うと楓は時間を見た。
時刻はもう夕方の5時になっており、放課後見舞いに来ると言うのをふと思い出した。
楓は玄関の鍵を開けてドアを開くと渚達がいた。
「楓君大丈夫?汗すごいけど」
楓は渚に言われて始めて汗をかいてることに気付いた。
「あ、あぁ。ちょっと悪夢を見ただけだから気にすんな。それよりも中に入って」
楓はそう言って皆を中にいれた。
皆はバラバラに「お邪魔しまーす」等といって中に入っていった。
皆をリビングに向かわせて楓は冷蔵庫から冷たいお茶を皆に差し出した。
「これはこれは、お気遣いありがとうございます。律さんからは顔色が優れないと伺っていましたが、見たところ良さそうですねぇ」
「お陰様で、今まで寝てたから大分良くなったよ」
「それは良かったです。これは休んでいた九重君の今日の課題です。有りがたいことにイリーナ先生の課題つきです」
楓は有り難くねぇーよと言い課題の束を受け取った。
それを他所にカルマ・中村・岡島の3人は部屋を物色しようとしていた。
「あれ?何にも無いな?」
「ここの扉開かないぞ」
「何としても探すのよ!九重の弱みを掴むチャンスなんだから」
そんなことを言いながら物色している3人を見ていた楓は腰から銃を取りだした。
「おい、お前ら。俺は今、凄く体調がよろしくないんだ。威嚇ですませるつもりだが下手をすれば撃ち抜いちゃうかもしれない。それでも良いなら遠慮なく物色していってくれ」
楓はマガジンを確認しセーフティーを解除しながら3人にそう告げていた。
3人は冗談だろうと高を括っていたのだが楓の目が据わっていたことに気付き何事も無かったかのように皆のところに戻ってきた。
楓もそれを見て頷き、セーフティーをロックしたあと腰にしまいこんだ。
「凄い…………あのカルマ君が素直に従った」
「俺も一瞬身震いしたよ」
渚と磯貝がこそこそ話してるなか片岡は3人を叱っていた。
グゥー
突如、誰かの腹が鳴り皆は誰だ?と見回していた。
「そう言えば朝から何も食って無いんだった。皆も食ってく?」
腹が鳴ったのはどうやら楓の用で、楓は皆に食うか聞いてきた。
「では是非頂きましょうかねぇ」
殺せんせーがそう言うと皆は縦に頷いたのを確認すると楓はキッチンから徐に段ボールの箱を持ってきた。
「九重君、これなに?」
「ん?カップ麺とか缶詰め」
矢田の質問にそう答えると楓は段ボールの中身を机の上に出していった。
豚骨ラーメン、チキンラーメン、日清のカップ麺(塩、シーフード、カレー)や桃缶、パイン缶詰め、サバ缶、イワシ缶、焼き鳥の缶詰め等々色々出てきた。
「晩飯ってこれかよ!?俺はてっきり手料理食えるかと期待したのに」
岡島は叫びながら突っ込んでいた。
「いやぁ~。俺、料理苦手でさ毎日、コンビニ弁か外食、又はこう言うインスタント何だよね」
「そう言えば楓君は何時も買い弁だったね」
渚は呆れ果てながらそう言っていた。
「これは食生活が偏りがちですねぇ。冷蔵庫の中も飲み物しかありませんし」
殺せんせーは勝手に冷蔵庫の中を覗いてそう呟いていた。
「あっ、じゃあさ私達で作ってあげようよ!」
突如、倉橋の言葉に女子達は賛同し買い出しに行った。
残った男子達は缶詰めを食べなから今日出された課題をするのだった。
「そう言えば九重って1人でこの家に暮らしてんの?」
ふとカルマは思い付いたかの用に聞いてきた。
「いや、俺に殺しの技術を教えてくれた人達と暮らしてる。ただ、その人達は殺し屋として各地を転々としてるからあまり此処には帰って来ないから実質、1人暮らしだな」
「親はいないのか?」
磯貝の質問に一瞬固まったが直ぐに平常心に戻った。
「まぁな。ちょっと色々あっていないんだ」
「……そっか」
磯貝はそれ以上は何も聞かないで課題に集中していた。
「では私も1つ質問を良いですか?」
殺せんせーが課題を教えながら聞いてきた。
楓はそれにどうぞと言うと殺せんせーは口を開いた。
「君は課題をしながら何をしてるのですか?」
それは渚達があえて聞かなかった事だ。
楓はナイフをつけたスレッドを壁に指しながら課題をしていたのだ。
「あぁ、これは一種の訓練ですよ。糸の振動のみで正確に外の世界を感知してるんですよ。例えば今、小さな子供達……3人が家の前を走り去ったり、ちょっと離れた所ではおばさん2人が喋っているとね」
楓はそう言うと皆はへぇと関心したように言っていた。
「成る程、まるで君は蜘蛛見たいですねぇ。蜘蛛は糸の振動を感知して捕食したりする生き物ですからねぇ」
「まぁ、師匠の1人が“蜘蛛”と言うコードネームで糸の使い方を伝授してくれたんだよ。…………おっ、女子達が帰って来た」
楓の言葉に岡島は窓から確認していたらほんとだと言い皆は急いで机の上の課題を片付けていた。
「戻ったよー!」
楓のいった通り女子達が帰って来て食材を買ってきてくれた。
「何か買い出ししてもらって申し訳ない。何れぐらいかかった?」
「気にしないで!九ちゃんは風邪引いてるんだし。レシートは誰持ってたっけ?」
倉橋は天真爛漫に振舞い、楓を気を遣っていた。
「ジャスト9000円よ」
レシートを持っていたのは中村だったようで楓に渡し言ってきた。
楓はレシートを持ちながら部屋に戻り、財布を手に取り戻ってきた。
その後、女子達にお金を返して女子達はキッチンで料理を始めた。
暫くして出来上がったのは定番のカレーが皆の手に渡り皆は口にした。
「おぉ!上手い!」
「確かに!」
「久しぶりに手料理食ったよ!」
「うん、悪くないね」
磯貝、渚、楓、カルマは其々、感想を言いカレーを口にした。
女子達は作った甲斐があったようで感想を聞くたびに笑顔になっていった。
だが…………
「かっらー!!」
「に、苦すぎます!!」
岡島と殺せんせーが悲鳴をあげ、岡島は辛いと言い殺せんせーは苦いと言いのたうち回っていた。
「あっ、ごめーん!岡島のは唐辛子入れすぎたわ。殺せんせーのは取り合えず苦いもの片っ端から入れてみちゃった。残すのも勿体ないから完食してね」
中村はあっけらかんと言い、2人はヒィヒィ言いながら食べていた。
食べ終わった2人は屍の用に横に倒れていた。
「九重君、何時もの調子に戻ってきたね」
倒れてる2人をほおっておいて、皆でトランプをしていたら不意に矢田からそんなことを言われた。
隣にいた渚が手を当てると…………
「あっ、熱引いたんじゃない?」
「確かに、体も朝よりは軽くなった気がする」
「その分だと明日は問題なさそうみたいだね」
カルマの言葉に頷く楓。
その後、夜の8時になったので皆は帰宅することになり、殺せんせーも復活して岡島を担ぎ上げ帰っていった。
楓も明日の準備をし速めに就寝するのだった。
「九重君、元気になって良かったね陽菜ちゃん」
「う、うん。そうだね」
矢田と倉橋は同じ帰り道とあって2人は一緒に帰宅していた。
2人の家は楓の家と近く、ちょっと歩けば着くような距離であることが解った。
「陽菜ちゃんこれから一緒に登校していけば?」
「えぇー、それはちょっと恥ずかしいよ」
「陽菜ちゃんのそのリアクション可愛いなぁー!」
矢田はウリウリと倉橋の頬を弄り、楽しげに帰宅するのだった。