中間テストが終わり、土曜日。
この日は久しぶりに行きつけの喫茶店にいた。
その喫茶店の名前は“九条”と言う何か何処にでもある喫茶店だ。
「何だか面倒な仕事入ってるらしいな」
唐突に喫茶店のマスター、九条源三郎はコーヒーを入れながら言ってきた。
「…………他言無用って言われてるからノーコメントで」
俺はそう言うと源さんはふんと鼻をならしてコーヒーを差し出してきた。
「何でも地球を滅ぼす謎のタコ型生物らしいじゃねぇか」
「ゴホッ!!」
俺は受け取ったコーヒーを飲んでいると思わず吹き出しそうになった。
「何で知ってるんすか?」
「孫の唯から聞いた」
俺の質問に源さんは簡潔に答え俺達は溜め息を吐いた。
「おっちゃん、たっだいまー!!」
そんな中、バン!と勢い良く店のドアが開いたので振り替えると両手には買い物袋を持っている女性がいた。
「おっ、楓君じゃん!久しぶりだね!」
非常に五月蝿い…………
そして非常に寒い…………
「久しぶりっす、ニナミさん。源さん、急激に冷えてきたので暖房ガン焚きでお願いします」
俺はそう言うと源さんは何も言わずに部屋の温度を上げるためにリモコンでピッピッとあげていた。
その直ぐ後、再びドアが開く音がしたので振り向くと大柄で顔には無数の傷がある男の人と頭に機械の用な飾りをつけている女の子が一緒に入ってきた。
「…………マスター、頼まれた買い物だ」
「それとニナミのやつまた野菜を“冷凍”しちゃったぜ」
大柄の人は無表情で淡々と言い、逆に女の子の方はニヤニヤしながら源さんにチクっていた。
それを聞いた源さんは怒気を隠さずにニナミさんを説教していた。
「久しぶりっす、ユウさんに唯ちゃん」
大柄男の人が石刀ユウで女の子の方が九条唯、源さんに説教されているのが岩倉ニナミだ。
俺は挨拶をするとユウさんはうんと頷き、唯ちゃんおうと返事をしていた。
「そう言えばお前ってさ今、防衛省から大きな依頼来てるんだってな」
唯ちゃんは唐突にそんなことを言ってきた。
「チビッ子がそんなことに首突っ込まなくても良いんだよ」
俺は唯ちゃんの頭をペシペシとチョップをした。
「良く言うぜ時偶、わたしに情報聞きに来るくせに」
ぐっ!?痛いとこをついてくるなこのチビッ子は。
「それに防衛省のファイヤーウォールが雑すぎ何だよ。もっと強化させないとダメだな」
「10歳にしてIQ400越の唯ちゃんにしたら簡単だろうね」
俺は苦笑いしながら言った。
実際にハッキングや情報収集に関してこの子の右に出るものはいないだろう。
「で、実際どうなんだ?」
ユウさんがどうなのか聞いてきた。
どうせ、今ここにいる人たちは全部知ってそうだし別にいっか……
「ユウさん達とはまたベクトルの違う化け物ですよ」
俺はやれやれと言う感じで答えた。
「今はスレッドだけで試してるんですけど捕まえることさえ出来ないんですよね。オマケにマッハ20ってどう対処すればいいかちょっとお手上げですね」
「賞金って確か100億何だよね?おっちゃん!私達で殺ろうよ!」
ニナミさんバン!とテーブルを叩きそう聞くと源さんに暗殺しようとほのめかしていた。
「依頼がきたらな。それに、そう大っぴらに動く訳にもいかないんだから」
それを聞いたニナミさんはブーブーと文句を言っているが仕方がないだろう。
今のやり取りで何となく解ると思うがこの喫茶店の人達は裏では暗殺者をやっている。
源さんを除いてユウさんやニナミさん、唯ちゃんは殺せんせーとは別のベクトルで化け物みたいなのだ。
同業者達にも内緒にしており、偶々知ってしまった俺は他言無用と言うことで秘密扱いになっている。
「まぁ、来年の3月まで時間はありますから、其までに皆でやりますよ」
そう言うと俺はコーヒーを飲み干し、お金を置いて店を出ようとした。
「何だ?もういくのか?」
「えぇ。今度、修学旅行で京都に行くのでその準備をしないといけないんですよ」
俺はそう言うと源さんは学生は良いねぇとボヤいていた。
「お土産物よろしくね!」
案の定、ニナミさんは土産を要求してきて欲しいものをメモし渡してきた。
「まぁ、要望に答えられるか解りませんが」
「出来ればでいいから丈夫な木刀買ってきてくれ。コイツを叩いても壊れなさそうなやつ」
源さんはニナミさんを指しながら言ってきた。
「了解です。なるべく良いものを見つけてきます。そしたら」
そういって俺は喫茶店を後にした。
外に出てもニナミさんがギャーギャー言っており、源さんの雷が落ちたのが聞こえてきたのには思わず苦笑いしてしまった。
「さて、だいたいこれくらいか」
あれから修学旅行で必要な物を買い終わり、帰ろうとしたとき……
「あっ、そう言えば紅茶の葉切れてたんだ」
家に置いてある紅茶の葉が切れていることに気がつき商店街に向かった。
「―――!!」「――――!?」「――――!――!!」
何の騒ぎだ?
商店街につくなり商店街の人達と何か柄の悪そうな人達が揉め事をしていた。
「あれ?九ちゃんだ!」
揉め事を見ていたら俺を呼ぶ声が聞こえたのでそちらに振り向くと、倉橋に矢田、片岡がいた。
「3人ともこんなところでどうしたの?」
「修学旅行の買い物だよ。こんなに買ったんだぁ!」
俺の疑問に倉橋は袋を見せて言ってきた。
袋は、はち切れんとばかりに買った商品が沢山入っていた。
「九重君はこんな所でどうしたの?」
「俺も修学旅行の買い物。その次いでに紅茶の葉が切れたから行きつけの店で買おうと思ったんだけど……」
片岡の疑問に答え、顔を揉めてる人達の方に向けた。
「あぁ、あれ?この辺りの商店街を立ち退かせて駅前の再開発しようとしているらしくて最近、建設会社の人達と商店街の人達で揉めてるらしいのよ」
「何でも役人の人達を買収して無理矢理、押し切ろうとしているらしいよ」
「ここの商店街、あまり人は来ないけど私は好きだったのになぁ」
片岡に矢田、倉橋がそう言い苦笑いしていた。
全うなやり方ならいざ知らず、不正な土地の買収をして立ち退かせるか…………
「…………そんなことで俺の楽しみを潰されるとは」
何か徐々に怒りが込み上げてくるな…………
1度、調べてみて黒なら殺るか?
無報酬なのがいたいが、あの店を潰される位なら無報酬でも殺るべきだな。
「殺っちゃダメだからね!?」
「…………わかったよ。殺らない。でも黒ならそれ相応にやらせてもらう」
片岡に釘を刺され、渋々と俺は答えた。
「あっ、そう言えば九ちゃんって修学旅行の班もう決めた?」
唐突に倉橋からそんなことを聞かれた。
そう言えば、まだ何処の班に入るか決めて等でったな。
「いや……まだ決めてないけど、どうかした?」
「私達の班、男子が1人足りないんだ。もしよかったら私達の班に入らない?」
「そっちの人達に聞かなくて良いのか?」
「特に問題無いと思うよ。ね?メグちゃん、桃花ちゃん?」
何と他の班の人が既にいたのか。
2人は良いよと即決で言い、俺の班は決まった。
因みに他の班員は磯貝、岡野、前原らしい。
その後も少し、話をし解散した。
~夜~
とある料亭の一室で2人の男がいた。
「先生、どーぞどーぞ」
「お、悪いね」
1人は年配の年寄りで、もう1人の中年の男性にビールを注いでいた。
「で?どうなんだ工事の方は?」
「問題ありませんよ。反対している奴らの半数近くは、金で出て行かせられるでしょう。そうすれば奴らの連帯は崩れます。それでも残る奴には……ウチの若い奴らのストレス発散にでもさせます」
「そうか……その時はこっちも隠蔽に手を貸そう。それよりも、今回の事が上手く行ったら…………わかってるな?」
「いつも通り、利益の20%を先生に。バレないように子会社から少しずつ献金させて貰います」
年配の男がそう言うと中年の男は1つ頷いてビールをグイっと飲み干していた。
「おつぎになります…………ってあれ?空か。おい!」
年配はビールを注ごうとしたが空になった事に気付き、店員を呼び出した。
「失礼します。お呼びでしょうか?」
呼ばれて来たのは幼い顔立ちの小柄な店員だった。
「すまんがビールを1本頼む」
店員は畏まりましたと一礼すると襖を閉め、部屋を後にした。
「あんな娘、今したっけ?」
「恐らく、初めての娘だろう。私も初めて見る顔だ」
中年も年配もそんなことを言いながら刺身を食べていた。
2人は良く、この料亭に来ているらしく店員の顔を把握していたのだ。
「失礼します」
再び襖が開き店員がビールを持ってやって来た。
2人は待ってましたと言わんばかりの顔をしていた。
「お待たせいたしました。ビールをお注ぎになりますか?」
店員はそう言うと2人はおぉ、スマンなぁと言いコップを出してきた。
「見ない顔だが新人なのかね?」
「はい。今日からこのお店で働いてます高槻七海って言います。どうかご贔屓に」
店員……高槻はそう言うとニコッと笑顔をした。
「おぉ、そうかそうか。私達は良く、この店に来るからこれからも……よろ…し……スゥスゥ」
2人の男はビールを飲むと直ぐに眠ってしまい床に伏せていた
「うーん。薬聞くの速すぎじゃね?…………まぁいっか。と言うか久しぶりに女装したけど上手くいったな」
七海は…………いや七海と名乗っていた楓はそんなことを言いながら2人の男の首根っこを掴みながら料亭を後にするのだった。
翌日のニュースで1人の建設会社の社長と1人の議員が警察署の前でロープでぐるぐる巻きになっているのを発見された。更に不正買収等を行ったとされる書類などを持っていたことにより2人は逮捕され、駅前の再開発は白紙に戻された。
「ふぅ、待ちに待った紅茶の時間♪」
そんな中、1人の少年はそんな事件があったことも忘れ、楽しみの紅茶を味わっていた。