やはり俺のネタは間違っている?   作:kue

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過去も現在も消えゆくボッチ

 俺の名は比企谷八幡・16歳。今年で高校2年生に上がる列記とした高校生だが今はゼロライナーという時間旅行みたいなものが出来る特殊な電車の車内に横になってボーっと天井を眺めている。

 イマジン……そんなものと戦い始めて1年近く経ったような気がする。自分の都合のいいように過去を改変して未来を手に入れようとする集団……そんなものどもと戦うために俺は過去の記憶・そして現在の記憶を犠牲にして戦っている。元々俺は小学生の頃からボッチだったので意味ないだろと思うのだがちょっと鬱陶しい契約イマジンのお蔭というか所為っていうか……まあ、そいつのお蔭で俺は戦い続けられているというか。

 

「八幡~。今日は高校の始業式! さ、学校に行こう!」

「行くか、バカ」

「ダメだ八幡。ちゃんと始業式に出て八幡のことを覚えてもらわないと!」

「もう十分覚えられてるっつうの」

 毎度毎度、奇抜な格好をさせられてるこっちとしては恥ずかしいったらありゃしない。

「小町ちゃんからも言われてるんだよ~! ささ! いざ学校へ!」

 

 そう言いながらグイグイ引っ張るのが俺が……実質は違うがまあ俺が契約したイマジン、デネブ。

 お節介なところが多いがこれでもかなり強い部類のイマジンで多対一でも余裕で渡り合えるくらいには強いからびっくりだ。

 

「わ~ったよ。わーったから腕引っ張るな」

「行ってくれるんだね!? よし! 元気が出る料理を作ろう!」

 

 やけにテンションを挙げていきながらデネブは俺の手を引っ張って停車したゼロライナーから降りると直接、俺の家のトイレのドアから出て一瞬で自宅に移動した。

 

「よーし! 作るぞー!」

「シイタケ入れんなよ」

「おっけー!」

 

 居間に入り、ソファに横になると飼い猫のカマクラが仏頂面でおはようの挨拶をしながら朝の一撃・fast猫パンチを俺の顔面に入れてくる。

 お前に覚えられていても嬉しかないんだがな……イマジンと戦う度に現在作った記憶か過去に作った記憶が消える……つまりたとえ友人を作ったとしても俺が変身するたびに消えていく。まあ元々ボッチだったせいで友人という形で記憶が消えた奴はおらず、ただ単にデネブが俺に憑依して好き勝手に関係を構築した奴らが消えていくだけだ。永遠のボッチってわけだ。まあ俺は本望だが。

 

「あ、お兄ちゃんおはよ~」

「小町ちゃん! おはよう!」

「オデブさんもおはよ~」

 妹よ。オデブではなくデネブだ。いい加減に覚えてやれよ。

「完成! 八幡~! 朝御飯できたよ~」

「すっごーい! 朝からこんな豪華な料理食べられるなんてー!」

 

 小町の嬉しそうな声が聞こえ、テーブルの方を見てみるとサンドイッチをはじめとしてソーセージと野菜のセット、そして炊き込みごはん……炊き込みごはん……だと。

 

「デネブ。シイタケ入れんなつったろ」

「お兄ちゃん好き嫌いはダメだよ~。とってもおいしいから一回食べてみなよ~」

 たとえ愛してやまない妹の頼みと言えどシイタケだけは絶対に食わん!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 シイタケを食う・食わないのデネブとの論争から30分ほど経ち、今俺は久しぶりに学生服を着てカバンを肩にかけてえっちらほっちら通学路を歩いているがさっきから周りの奴らの視線が痛い。

 デネブに今日の眼鏡はこれと言われてつけているのはやたらとでかいレンズが収まった眼鏡でさらに言えばレンズに何故かダーツの点数表が書かれているというおまけつきだ。

 

「デネブ、お前が憑依した方がよっぽどいいだろ」

「え~。八幡、俺が憑依すると毎回怒るから……それに1人でも多く八幡のことを覚えててもらいたいし」

 

 そう言いながらデネブはしょんぼりと肩を落とす。

 …………悪気があってやってるわけじゃないから怒るに怒れん……この感じ。

 

「デネブ、イマジンだ」

「え!? 嘘!? どこどこ!?」

「お前は少し同族を見つける力を鍛えろ」

 

 イマジンの気配を感じる方向へ足早へ向かうとあちこちで犬のリードを持った人たちが今にも泣きそうな表情で周囲を見渡しているのが見えた。

 …………何で犬のリード持って慌ててんだか。

 

「どうしたんすか」

「ジ、ジローが連れ去られたんです! へ、変な怪物に!」

「イマジンだ! どこへ行きましたか!?」

「あっち!」

 

 デネブの質問に主婦は向こうの方を指さしたのでそちらの方へ走って向かうと大量の犬を抱えたイカのような格好をしているイマジンがいた。

 

「行け、デネブ!」

「で、でもわんちゃんが!」

「そこは工夫していけ!」

 そうやすやすと変身できないのでデネブをイマジンへ向かわせる。

「ちょっと待った!」

「あ? 誰だお前」

「そのワンちゃんたちをどうするつもりだ!」

「契約者の望みの為だよ。たっく、犬と会いたいだなんて最高に簡単な契約をしたもんだ。まあ、おかげで簡単に過去へ飛べるからいいか」

「ワンちゃんたちを返せー!」

 

 デネブは指先を相手に向け、弾丸を放とうとするが相手のイマジンが両手に抱えている犬を楯にしたことで優しすぎるデネブは攻撃が出来なかった。

 ……優しすぎるところは玉に傷だな。工夫して充てればいいものを。

 

「ハッー!」

「っ! 八幡危ない!」

 相手の背中から触手のようなものが俺に向かって伸びてくるがデネブが楯となり、デネブの腕に巻き付く。

「悪いがお前たちと遊んでいる暇はないんだよ! はっ!」

「うわっ!」

「ごふっ!」

 

 触手が相手から切り離され、ゴムが伸縮するようにデネブの顔面に触手が直撃してそのまま後ろに倒れ込んできたデネブに押し倒された。

 

「だ、大丈夫!? 八幡!」

「……さっさと退け!」

「あたっ! ご、ごめん」

 たっく、なんで俺はイマジンに騎乗されなきゃいけないんだ。

「にしてもなんで犬に会いたいなんて」

「さあな……行くぞ」

「どこに?」

「イマジンを追いかけにだよ。お前と違ってちゃんとこっちはあいつの気配を感じれる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 イマジンの気配を追ってその地点へ向かっているとまた犬のリードを持っているが肝心の犬がいない呆然とした表情の女の子に遭遇した。

 

「おい、あんたも…………」

 そいつに後ろから話しかけようとした瞬間、彼女の足元に白い砂が落ちているのが見えた。

 ……そうか。こいつがあのイマジンとの契約者か。

 

「あ、あの何か」

「……あんた、変な怪物と契約しなかったか」

「変な怪物…………覚えてません」

 

 そう言うとその少女はやけに気落ちした様子で犬のリードを持ちながら悲しそうな雰囲気を全身から醸し出しながらゆっくりと歩いていく。

 …………イマジンが言っていたことと今のあいつの様子を合わせて考えてみたら……多分だがペットの犬が病気か事故で死んだか……それでペットに会いたいと呟いたときにイマジンがそれを聞き、契約したと……こんな感じか。

 

「あいつを追う。お前はあいつの情報集めてくれ」

「うん。分かった」

 

 デネブと分かれて寂しそうに歩いているその少女を尾行するとあるまっすぐな道路で立ち止まり、コンクリの地面をボーっと眺めはじめてその場から動かなくなってしまった。

 コンクリの地面には血の跡のようなものは全く見えないが……恐らくあそこが現場か。

 動かなくなってしまった少女の隣に立ってチラッとその表情を見ると今にも泣きそうな顔をして犬のリードを握りしめている。

 

「…………サブレェ」

 決まりだな……。

 

 少女はペットの名前を呟くと目からあふれ出てくる涙を裾で拭う。

 こいつはまたサブレとか言うペットに会いたい……それが契約の本来の内容か……イマジンも自分勝手に解釈するもんだな……。

 

「ようやく見つけたぞ」

「っっぐぁ!」

 そんな声が聞こえ、後ろを振り向いた瞬間、腹部に衝撃が走り、彼女から離されるように蹴り飛ばされた。

「な、なんですか」

「ほらよ。お前が言ってた犬どもだ」

 

 そう言うとイマジンは少女の前で犬を解放するが少女は目から大粒の涙を流して首を左右に振る。

「違う……あたしが言ったのはこんなことじゃない!」

「サブレとか言う犬に会いたいって言ったのはお前だろ。なんにせよこれで契約完了」

 イマジンがそう言った瞬間、少女が左右に分かれて扉ができ、そこにイマジンが入ってしまった。

「ちっ!」

 慌てて地面に座り込んだ彼女にチケットを翳すとちょうど去年の今日と同じ日付が浮かび上がる。

「この日付に見覚えは」

「…………サブレが……死んだ日……あたしがあの時、サブレのリードをしっかり持ってていれば……サブレは……」

 

 少女は無気力にそう言いながらまた目から涙を流すがそれが落ちる前に俺の指で拭われる。

「過去は変えられない。お前のペットが死んだという事は永遠に変わらない…………でもあいつらなんかに君の思い出は消させない」

「八幡ー!」

 

 後ろからデネブの声が聞こえ、振り返るとゼロライナーの入り口から手を伸ばしているのが見え、その手を掴むとゼロライナーの車内へと引き込まれる。

 チケットをパスへ挿入し、先頭車両にあるバイクへそれを差し込むとゼロライナーの行き先が去年の凶と同じ日付に設定される。

 過去が消えるのは……俺だけで十分だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヤッハー! うぉ!?」

 去年の今日と同じ日付の世界に到着し、暴れているイマジンをゼロライナーで吹き飛ばす。

 危な……危うく黒塗りのいかにも高そうな車を引くところだった。

「貴様! なんで過去に! まさか電王か!?」

「電王? あいつらと一緒にすんな。俺は俺だ」

 ベルトを装着し、サイドのホルダーからカードを取り出し、バックルを左へと押し込むと待機音声が鳴り響く。

「変身」

『アルタイルフォーム』

 カードを挿入すると俺の全身にスーツが装着され、その上から鎧が被せられる。

「やっぱり電王じゃないか!」

「だから違うつってんだろ」

 

 そう言いながらベルトのサイドにあるホルダーからパーツ2つを抜き取り、それらを接合すると大型の剣が完成する。

「ひゃぁ!」

「ふっ!」

 相手が伸ばしてきた触手を剣で切り裂くと同時にその場から駆け出す。

「ひぇぁぁ!」

「変な声出してんじゃねえよ」

「おうぅ!?」

「ほらよっ!」

「ぐぁぁ!」

 

 再び伸ばしてきた触手をさっきと同じように剣で切り裂き、隙だらけの相手に腹部に蹴りを入れて怯ませたところで剣を振り下ろし、相手を切り裂いて今度は顔面を殴り、軽く吹き飛ばす。

「舐めるなよぉ!」

「っ! はっ!」

 

 全身から触手が伸ばされ、俺に向かってくるが跳躍して近くの塀に上り、触手から離れるように走りながら大型の剣を一度分解して、今度はボウガンの形態に変化させ、塀から降りると同時に触手に銃口を向け、引き金を引くと銃口から黄色い光矢が連続で放たれ、触手を破壊しつつ、相手に直撃し、小さな爆発を上げる。

 

「ぬぉ!? アダダダダ! ギブギブ!」

「イマジンにギブはねえよ」

 そんなことを言いながら連続で光矢を放ってイマジンにぶつけていく。

「ま、参った……なんていうか!」

「その続きは寝てから言え。デネブ」

「とう!」

「なっ! は、離せ!」

 

 相手が不意打ち気味に触手を放ってくると同時に指をパチンと鳴らすと俺を飛び越えてデネブは現れ、その触手を掴んで相手の動きを止めた。

 

「そのまま掴んでろよ」

「な、何をする気だ!?」

「決まってんだろ……ひねくれタイムだよ」

「ぐぁぁ!」

 

 そう言いながらボウガンを分解して大型の剣に再び戻し、相手の背中を思いっきり切裂く。

 捻くれた戦法……略して捻戦。

 何度も切り裂き、ダメージを与えていくにつれて相手の足ががくがくし始め、膝を地面についてしまう。

 

「うぅぅぅ……やっぱり俺にはできない!」

「あぐぁ!」

「イタッ! はぁ……あのバカが……邪魔だ、退け」

「イダイ!」

「ハ、八幡! やっぱり俺にはこんな汚い戦い方はできない! 正々堂々と真正面から行くべきだ! アタッ!」

 

 

 イマジンを殴りつけ、目の前から退かしてデネブの元へ行くとそう言われたのでとりあえず一発頭を叩いてやった。

「じゃあ、お前がやれ」

「分かった!」

『ベガフォーム』

 

 そう言い、デネブを俺に後ろに来させ、カードを一度抜いて緑色が表だったのを裏返し、黄色を表にした状態でもう一度、バックルへ挿入するとそんな音声が鳴り響くとともに俺の両肩にデネブの手が置かれると同時に憑依し、姿が変化していく。

 背中には黒いマント、胸にはどっから移動してきたのかいつも思うデネブの顔。

 

「最初に言っておく」

「な、なんだよ」

「さっきはごめん。八幡も実は心の中でそう思ってる」

『思ってねえよ。ちゃちゃっと済ませるぜ』

「よし!」

「変な合体見せてんじゃねえ!」

 

 放たれてきた大量の触手を避けると同時に剣をボウガンへと形態を変化させる。

「そこかぁ!」

「ふん!」

 引き金を引いた瞬間、銃口から凄まじい速度で光矢が放たれ、一瞬で相手の触手を破壊し、ほとんどの光矢が相手に直撃した。

 

「ぐぇ!」

「止めだ!」

『フルチャージ』

 バックルの左上にあるスイッチを押すとそんな音声が流れ、カードが光りだす。

 その光っているカードをバックルから抜き取り、ボウガンへ挿入するとカードに溜められていたエネルギーがボウガンへと移動し、銃口から光が漏れだす。

 

「ひゃぁぁぁ!」

「はぁぁ!」

「うぐぁ! うぐぁぁぁぁぁ!」

 

 全身の触手が放たれた瞬間、引き金を引くと銃口からV字の黄色い光矢が放たれ、相手に直撃するとVの字に体が吹き飛び、そのまま背中から倒れ、大きな爆発を起こして消滅した。

「ふぅ。これにて終了」

 カードを抜き取った瞬間、蒸発するように消え、ベルトを取り外すと同時に変身が解除された。

 ……また数少ない人間から俺の記憶が消えたというわけか。


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