俺の名前は比企谷八幡、今日総武高校に入学する新1年生であり、絶賛探偵稼業をしているんだがそっちの方はペット探しくらいしか来ないという悲しい状態だ。まあ、小遣い稼ぎにはなっているし、ハムスターからオウムまで自慢の推理で確実に見つけることが評判となり、動物がいなくなったらまずここに来いとまで言われている。
嬉しいような悲しいような……はぁ。
「キャー! サブレ!」
そんな叫びが聞こえ、そちらへ向かうとゴキブリを人型にしたような気味に悪い姿をしている怪物が今にも女の子に襲い掛かろうとしており、飼い主を護ろうと犬が怪物めがけて吠える。
ガイアメモリという地球の記憶が封じ込められたものを使い、怪物となった者をドーパントという。
最近、よく遭遇するな。いっちょ行きますか。
『ジョーカー!』
「変身」
『ジョーカー!』
ポケットから黒いUSBメモリを取り出すと同時にロストドライバーを腰に装着し、メモリを起動させてドライバーへ差し込み、90度押し倒すとメモリの名称がコールされ、俺という人間が仮面ライダージョーカーへと一瞬で変身する。
「おらぁ!」
「おぐぉあ!」
ゴキブリ野郎に飛び蹴りを食らわしながら少女から突き放す。
「逃げろ!」
少女にそう言い、蹴り飛ばしたゴキブリ野郎にさらにもう一発蹴りを入れ、怯んだところへ腹部にアッパーをぶち込み、上へ蹴り上げる。
やっぱり子のメモリが一番俺に適合している……ジョーカー、つまり切り札……ふっ。いつでも切り札は1人ってな……いかんいかん。中二病が入ってしまった。
「お、お前もドーパント!?」
「違う。俺はジョーカー……仮面ライダージョーカーだ!」
『ジョーカー! マキシマムドライブ!』
叫びながらメモリをドライバーから抜き取り、右腰にあるマキシマムスロットへジョーカーメモリを差し込むとそんな音声が響き、右足が黒く輝きだす。
「ライダーキック。うおらぁぁあ!」
「ぎゃぁぁぁぁ!」
黒輝いている足で敵へ蹴りを打ち込んだ瞬間、大爆発を起こしてドーパントが元の人間の姿へと戻り、その人間の手首からメモリが排出されて粉々に砕け散る。
ふぅ……今日もこの町の平和はボッチライダーこと俺に守られたわけだが…………最近妙にドーパントになる奴が多くなっている気がする。
マキシマムスロットルからメモリを抜くと変身が解除され、風が吹くとともに元の姿に戻った。
「ふぅ…………学校行こ」
校長先生の無駄に長い話も終わり、ようやく教室へと向かい、担任と初顔合わせをするわけだが平塚静という美人な女性教諭だった。
パンツスーツに白衣……何故白衣かはしらない。担当は国語科らしいけど……まあ、ボッチの俺には関係ありませんよ~っと。さっさと家に帰って小町の昼めし食って探偵稼業しようっと。
「比企谷」
「ひゃ、ひゃい」
「何をそんなに驚いているのかね。少し君に会わせたい奴がいる。ついてきたまえ」
どうやら拒否権がないことを目で訴えかけられたので仕方なく、俺はその先生についていくと本校舎から繋がっている渡り廊下を渡って普段使うことがないと聞いた特別棟へと入り、そこの3階にあるとある教室の前で立ち止まった。
「あ、あのなんで俺をこんなところに?」
「言っただろう。君に会わせたい人物がいると。雪乃、入るぞ」
扉が開かれ、そこに広がっていた光景は世にも奇妙な光景だった。
まずは教室の黒板から壁、床に至るまで全てがホワイトボードと同じものにされており、至る所にマジックペンで書かれた文章やら単語やらが残っている。
そして教室にはいくつかの机や椅子の他にも大きなテントがあり、上を見上げてみれば壁と壁に洗濯竿がかけられており、そこに服がかけられている。
そしてその教室の中央に本をもってホワイトボードに一心不乱に文字を書き続けている雪乃と呼ばれた少女がそこにいた。
「雪乃、検索中悪いが連れてきたぞ」
「静。悪いけれど今、私はたこ焼きについて調べているの。他のことはどうでも良いわ」
「君が連れて来いと言ったのだろう。相棒になる存在だと」
「相棒…………あぁ。彼を連れて来てくれたのね。そこへ置いておいてちょうだい」
俺は物か……にしても変な子もいるもんだな。
「はぁ……彼女は雪ノ下雪乃。訳合ってこの特別棟に住んでいる」
「はぁ…………で、何故俺をここに?」
「それはだなぁ」
「これを見せればわかるでしょう」
『サイクロン!』
「っっ! そのメモリ…………」
彼女の手には緑色のメモリが握られており、ドーパントたちが使うような禍々しさを感じるフォルムではなく、俺と同じ純正型のUSBに似た形をしているメモリだ。
なんで俺以外の人間が純正化されたガイアメモリを…………こいつはいったい何なんだ。
「私は雪乃。貴方の相棒となる存在よ」
「あ、相棒? うぉ!」
雪乃という少女は近くの椅子に置いてあるケースを開け、そこからドライバーを取り出して俺に向かって投げてきた。
こ、このドライバーは…………俺が使ってるロストドライバーと似ているけどメモリを差すところが二本……どういうことだ。
「も、もしかしてロストドライバーとジョーカーのメモリを送ったのってお前か」
「ええ。貴方はガイアメモリとの適合率が他の人間よりも高い。だから送ったのよ。貴方は私の想像通り、妹さんを護るためにジョーカーとなった。その後の活躍は全て見ていたわ」
そう言う彼女の手に窓から入ってきたクワガタムシのようなガジェットが飛来し、空中で携帯の形へ変形するとともに彼女の手に収まる。
「雪乃。例の件、受理されたぞ」
「そう。ありがとう、静。貴方の尽力に感謝するわ」
「何、そんな難しいことじゃない。ではな」
そう言い、先生は部屋から出て行った。
「早速で悪いのだけれど貴方の頭が必要よ」
「ちょ、ちょっと待ってくれ。お前はここで何をするんだ」
「……ここは奉仕部。ガイアメモリによる被害を相談・解決する場所よ」
それから数時間後、俺はドーパントが暴れたと思われる現場にいた。
ハァ、なんで俺こんなことしてんだろ……それに変なガジェット渡されるし。
周りにはクワガタムシの形をしたガジェット、クモの形をしたガジェットが待機している。
現場は総武高校から少し離れた場所にショッピングモールで建物ごとドロドロに解かされた影響で崩落したらしく、建物は見る影もない。
警察の目をかいくぐって現場へと入る。
「完全に崩れてるな……電話?」
クワガタムシから着信音が聞こえ、俺の手に携帯として収まったので普段通りに通話ボタンを押し、耳に当てるとあいつの声が聞こえてくる。
『で、どうかしら』
「どうかしらって凄い荒れようとしか言いようがない」
『はぁ……何がどういう形で荒れているのかしら』
なんで今こいつ呆れた? まあいいや。
「そうだな…………服屋が多いな」
『その店舗の名称は』
「キャピール千葉、シュシュ服、ガールズ千葉だけど…………そういや全部婦人服売ってる場所だな」
『正解。その店は全て1店舗の子会社よ』
子会社…………子会社ばかりが狙われたと言う事は親会社の方で恨みを持った奴がガイアメモリを入手して子会社に復讐をしたっていう感じか?
『その親会社では子会社を独立させるべきという派閥とこのままでいるべきという派閥が争っているらしいわ』
「じゃあどっちかの派閥の奴が自分の意見が通らなかったから」
『さあ、そこは貴方の出番よ』
何故、こいつがここまでの情報を得ているのかというと奴は地球の本棚と呼ばれるアカシックレコードに接続することができる特殊な力があるらしく、地球の全ての記憶を閲覧できるらしい。
しゃあねえ。本業探偵、副業高校生のボッチ探偵の力、見せてやる。
親会社の方へ出向き、探偵と言う事で何とか話を聞かせてもらったがどうやら二つの派閥の争いは一月前に決着がついたらしく、独立させるべきという派閥の奴らは全員、粛清として首になったらしい。
ヒデェ話しだ。そして最近、連絡取れないというやつを1人見つけ、俺は今そいつに会いに行っている。
「よう……須藤良太さん」
男性にそう話しかけると目の下に隈のようなものが出来ている男性がこちらへ振り返り、その手首にはガイアメモリのコネクタが見え、左手にはガイアメモリが握られている。
「誰だお前は……お前も邪魔をしに来たのか」
「そうだ。これ以上、罪の数を増やすな。あんたにだって大切なものはあるんだろう」
「知った風な口を利くなよガキ。俺はあの会社を許さない……俺の幸せを奪った奴を許さない!」
『マグマ!』
ガイアメモリを起動させ、コネクタに挿入した瞬間、奴の全身からマグマが放出され、真っ赤な姿をしたドーパントへと変貌を遂げ、その姿を見た連中たちは悲鳴を上げながら逃げていく。
「うおぉぉぉぉぉ!」
叫びだしたかと思えば周囲に向かってマグマを吐き散らす。
「っっ! やべぇ!」
降りかかってくる瓦礫を避けようとした瞬間、巨大な装甲車がドリフトしながら俺に向かって突進してきて巨大な瓦礫を吹き飛ばし、俺の近くで停車した。
「な、なんだこれってお前!」
「何故、すぐにジョーカーに変身して戦わないの? 死にたいの?」
「違う…………あの人にだって大事な人がいるんだ」
「呆れた。ガイアメモリに呑まれた人に話をしても無駄よ。それは貴方がよく知っているはず」
「…………行くぞ」
「ええ」
ロストドライバーではなく、ダブルドライバーを腰部に装着するとベルトが射出されて俺の腰にドライバーを固定した瞬間、雪乃の腰部に同じものが出現する。
『サイクロン!』
『ジョーカー!』
「「変身」」
『サイクロン・ジョーカー!』
雪乃がドライバーにサイクロンメモリを挿入した瞬間、彼女の意識が体から離れ、サイクロンメモリとして俺のドライバーへと転送され、そのメモリを押し込み、ジョーカーメモリも同様にしてドライバーへと挿入し、二つを開くようにして90度倒すと周囲に風が吹き荒れ、一瞬にして仮面ライダーへと姿を変える。
意識がなくなった雪乃の体は巨大な装甲車の中へと倒れ込む。
「っ! お、お前は!」
「そうだな……仮面ライダーWってのはどうだ」
『名前は貴方の好きにしなさい。戦闘は貴方に任せるわ』
「あぁ。仮面ライダーW! さあ、お前の罪を数えろ! はっ!」
風を纏いながら奴に向かって駆け出し、パンチを繰り出し、怯んだところへ風を纏った状態の蹴りを加えると軽く奴が吹き飛ぶ。
すげえ。ジョーカー以上の力だ!
『そんなことないわ。ただ単にサイクロンの力が貴方に纏っているだけ……来るわよ』
「よっよっ! はぁ!」
「ぐあぁ!」
彼女のその言葉の直後、奴からいくつもの巨大な火球が放たれれくるがその全てを避けていき、飛び上がってそのまま風を纏っている蹴りを加え、大きく吹き飛ばす。
なるほど。これがWの力か……でもいつもよりも体動きやすいのは確かだ。
『メモリブレイクよ』
「どうすりゃいいんだ?」
『このWでは貴方が主よ。貴方のボディメモリをマキシマムスロットへ』
「了解」
『ジョーカー! マキシマムドライブ!』
ジョーカーメモリを抜き、右腰にあるマキシマムスロットへ差し込んだ瞬間そんな音声が流れ、周囲に風が吹き荒れてWの体が浮かび上がる。
「行くぜ!」
「『ジョーカーエクストリーム!』」
「ぐあぁぁ!」
マキシマムスロットを叩いた瞬間、風に押されて両足を相手に向ける形で飛んでいき、サイクロンとジョーカーでボディが二つに分かれ、時間差で二発の蹴りを加えた。
「うあぁ…………うあぁぁぁぁぁぁぁ!」
巨大な爆発が起き、ドーパントが人間の姿へと戻ると同時にメモリが排出され、粉々に砕け散った。
「そんな感じでガイアメモリの相談・解決を行う。それが奉仕部。分かった?」
「あぁ。分かった……分かったんだが…………何で俺の探偵机があるわけ?」
奉仕部部室へ帰ってくるといつの間にか俺の家にあったはずの探偵稼業の書類が収まっている机がものの見事に綺麗に置かれていた。
お、おかしい……あれ程わっさーっとなっていた書類が綺麗に棚にしまわれている。
「静に頼んで貴方の探偵稼業をここで行うことにしたわ」
「うそん」
「本当よ……さて、私はこれからお好み焼きの検索を始めるから話しかけないでちょうだい」
そう言い、彼女は地球の本棚へ接続した。
「はぁ…………俺、これからどうなるんだ」