ガイアメモリ……そんなものがこの町に出回っている。
コネクタというものを体のどこかに打ち込み、そこへ地球の記憶が封じ込められたガイアメモリを挿入することで超人的な力と肉体……つまりドーパントへと進化する。今、若者の間ではやっているたちの悪い商品だ。
大体は複数回使用すればメモリの力に飲み込まれて暴走し、人々を傷つける。
俺はそんなガイアメモリを絶対に許さない。この町から……いや、この世から全てのガイアメモリを消滅させるその時まで俺のエンジンは止まらない。
昼休みを告げるチャイムが鳴り響き、教室の連中が授業の疲れを体を伸ばしたりして取りながら友人たちと一緒に食堂へ行ったり、弁当を広げて食べ始める。
そんな中、俺は机に突っ伏したまま弁当を出すことすらしない。
…………馬鹿馬鹿しい。なんで食堂に友達と一緒に行く必要がある。1人で食えないのか。それとも2年も過ごしているのにまだ使い方が分からないのか……あんなものはただのなれ合いだ。友人なんかじゃない。
「じゃーん! 俺も手に入れちゃった!」
「あ、それ今はやってるやつだよね」
「戸部、あんたそんなもの手に入れるかねあったんだ」
「この時のためにバイトしまくって貯めまくったんだし!」
「でもそれ危ないんじゃないのか? それ使った奴がなんか変な奴に襲われたって話聞いたぞ」
「大丈夫だって隼人君。これ使ったらすんげぇ力出るんだべ」
不穏な会話を聞き、チラッとそちらの方を見ると戸部と呼ばれた軽い感じの男子が得意げにガイアメモリをみんなに見せびらかしていた。
Iのメモリ…………またバカがバイヤーからガイアメモリを買ったのか…………ガイアメモリは金さえ出せばより強い力が封入されているメモリを売ってくれるが学生が出せる金額で買えるガイアメモリは粗悪品が多いと聞く。
過去にメモリブレイクした際に排出されず、そのまま体内に残り続け、その結果、メモリに生命の全てを吸収し尽され、巨大な化け物になった奴がいたな……あいつも流行っているからとか言う理由で購入したバカだったな……とりあえず忠告はしておくか。
「今すぐそれ捨てろ」
立ち上がり、連中が集まっている近くへ寄ってメモリを持っている奴にそういう。
「えっと確かヒキタニ君だっけ」
「それを使えばお前は確実に死ぬぞ。死にたくなけりゃ今すぐそのメモリ捨てるか俺に渡せ」
「何言っちゃってんの~? 金ないからってそんなこと言うなよ~」
「つぅかあんた誰? あと何様なわけ?」
「俺に質問するな」
「はぁ!?」
「優美子! 落ち着いて、ね?」
「忠告はした。後悔するなよ」
自分の席に戻り、再び机に突っ伏すが連中の方からこれ見よがしに俺を蔑む声が聞こえてくるがそんなものは無視し、ポケットに入れているメモリを握りしめた。
俺は全てのメモリを潰す…………例えそれで使用者が死んだとしてもだ。
そいつに変化が現れたのは忠告してから1週間後のことだった。
友人たちが話しかけてもものけの殻のような返事しかせず、視線も合わず、時折幻覚でも見えるのか授業中に叫びだす始末。
だから言ったんだ。死にたくなけりゃ捨てるか俺に渡せと……忠告はしたんだけどな…………暴走する前にメモリブレイクするか。
その日の放課後、連中たちが一緒に帰っている後ろを俺は後ろをついていきながら監視していた。
「ぐあぁぁぁぁぁ!」
「戸部!? どうしたんだよ戸部!」
『アイスエイジ!』
突然叫びだしたかと思えばそいつがポケットからガイアメモリを取り出し、起動させて首筋に挿入すると周囲の地面を凍り付かせながら全身から白い棘のようなものをはやしたアイスエイジ・ドーパントへと姿を変え、周囲へ向けて手から冷凍ガスを吐き出し、凍り付かせていく。
「と、戸部っちが!」
「戸部! やめるんだ!」
葉山隼人がドーパントと化した戸部を止めようと後ろから飛びかかるが生身の人間で止められるはずもなく、あっという間に吹き飛ばされる。
だから捨てろと言ったんだ。
苦しみの叫びをあげながら走り去っていくやつを追いかけ、先回りして奴の前に立ちはだかった。
「うあぁぁぁぁ!」
「ちっ!」
俺めがけて冷凍ガスを吐き出してくるが後ろへ飛び退き、それを避ける。
もう既にガイアメモリに全てを飲み込まれたか…………忠告はした。
持っていたケースからバイクのハンドルのような形をしているドライバーを取り出し、腰につけるとベルト部分が俺の腰回りに射出され、一瞬で腰にドライバーが固定される。
『アクセル!』
「変身!」
『アクセル!』
メモリを起動させ、ドライバーの差込口に挿入し、アクセルドライバーの右グリップ部を2回、捻るとエンジンをふかすように音が響き、手を離すと一瞬にして仮面ライダーの鎧が俺に装着される。
「さあ、振り切るぜ」
「がぁぁあ!」
獣のような叫びをあげ、殴り掛かってくる奴に飛び蹴りをかまし、壁に激突させ、追撃としてさらに蹴りを入れて首を掴み、膝蹴りを加えた後、腕を横に振るって殴り飛ばす。
「うあぁぁぁ!」
奴の冷凍ガスが俺に直撃し、凍り付いて動けなくなってしまう。
「この程度の冷気で俺の復讐の炎は消せん」
ドライバーのグリップを部分を捻った瞬間、全身から熱が放出されて一瞬にして解凍する。
「戸部ー! どこだー!」
もう来たか…………そろそろ止めだ。
『アクセル! マキシマムドライブ!』
ドライバーにあるマキシマムクラッチレバーを引き、パワースロットルを捻るとそんな音声が響くと同時に全身からすさまじい炎が噴き出される。
「はぁぁぁぁ! えあぁぁぁ!」
突然のことに戸惑いの様子を見せている奴めがけて飛びかかり、後ろ飛び回し蹴りをぶち込むと奴の胸のあたりに車のブレーキの跡のような傷が浮かび上がる。
「絶望がお前のゴールだ」
「うあぁぁぁぁぁ!」
そんな叫びの直後、大爆発を起こした。
アクセルメモリを抜き、変身を解除しながら振り返ると顔面蒼白の状態で倒れている戸部の近くに粉々に砕け散ったアイスエイジメモリがあった。
それを確認した俺は奴らに見つからない様にその場を後にした。
アイスエイジメモリをメモリブレイクした後、俺は花を購入し、近くの病院へ向かい、とある病室へ入ると安らかな顔で眠りについている妹の小町がいた。
3年前のあの日、小町はガイアメモリを使用し、暴走したドーパントの能力に当てられ、永遠にも近い眠りについてしまっている。
この眠りから小町を解き放つには眠りの記憶を宿したガイアメモリであるスリープのメモリを見つけ出す必要がある。
あの日以来、俺はくる日も来る日もガイアメモリを使うやつらを片っ端からぶっ潰していき、スリープのメモリを探すが一向に見つからない。
「安心しろ、小町…………お前は必ず俺が目覚めさせる……俺の命を懸けても」
俺はガイアメモリを許さない。
この世からガイアメモリを消し去るその日まで、俺の復讐のエンジンは止まらない。
たとえこの命を投げ出したとしても小町を救う。
なんか自分的にイマイチな戦闘描写……やっぱり難しいっす。