やはり俺のネタは間違っている?   作:kue

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八幡とゆきのんのカップリングはSweet LOVEで行いますのでこちらではしません。それでは


八幡×結衣

『青春とは嘘であり、悪である。自分にとってはマイナスなことでも青春というパレットの中ではいい思い出という色を上から塗りたくられ、青春の良い思い出だったという自己満足に浸る要素とするのだ。自己満足などこの世で最も必要ない考えであると思う。自己満足など自分の中では満足しても相手から見れば全然なことが多く、失敗の元でもある。だが俺は……青春は嫌いじゃない』

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………青春というものを批判しておきながら何故最後で認めているのかね」

 ため息をつきながら国語教師の平塚静先生は俺の方を見てくる。

 パンツスーツという女性ではなかなか見ない格好ながらそのスタイルの良さから我が総武高校人気ナンバーワン女教師と言っても過言ではないほどの人気を得ている。

 んで、その人気ナンバーワン美人女教師から何故呼ばれたのかと言えば国語の時間で高校生活を振り返ってという課題作文を出され、提出したんだがどうやら聊か問題作のようらしい。

 

「まぁ、最初は青春を悪と捉えて書いてたんですけど……最後の最後で思い出したというか」

「何をかね」

「……俺が青春してることっす」

「……それにしては目が腐った魚のような目だが?」

「そんなにDHA豊富そうっすか?」

 そんな冗談を言うと紙で頭を叩かれてしまった。

「君、友達いないだろ」

「俺は平等主義者なので誰かと親しくなんかしたりしません! みんな他人です!」

「顔をキラキラさせて目をドロドロしながら言うな……にしては彼女はいるんだな」

 

 …………あ、あれぇ? なんでこの人は生徒に彼女いるか否かを知ってるんですかねぇ……そりゃ俺だって女子とは喋る……事務的なあれだけどな。あれ……まあ一人だけ事務的じゃない会話をする子もいるが。

 

「な、何故それを」

「そして彼女の名は由比ヶ浜結衣。違うか?」

 

 そう言いながら先生はニヤニヤしながら俺に1枚の紙を見せてくる。

 その紙は俺が今さっき提出したばかりの高校生活を振り返ってという課題作文と同じ用紙であり、紙の一番上には由比ヶ浜結衣と書かれている。

 

「……それがなんでしょうか」

「ふむ。読んでやろう。こんなふざけた作文を書いた罰としてな……あたしの高校生活はヒッキーと出会ったときから始まりました。最初はなんか1人でいるな~って感じの男の子だったんですけどヒッキーがあたしのペットのサブレを助けてくれた人だって知った時からなんか気になるな~って人でクリスマスくらいにはもう好きになっていました。授業中、ヒッキーが寝てるのを見るとなんか温かい気持ちが出てきたりします。そこからちょっとずつヒッキーと話すようになって」

「すみませんでした! レポート提出し直すのでそれ以上読まないでください!」

 

 異様に恥ずかしい作文を大きな声で職員室で読まれ、俺は自分でもわかるくらいに顔を赤くし、平塚先生の足元で思いっきり土下座をする。

 ていうかあいつもなんでそんな恥ずかしい作文を書くんだよ……。

 

「良い青春をしているじゃないか……なぁ、こんなに想ってくれる彼女がいて……何で私にはこんなにも想ってくれる男性が現れないんだ」

「あ、あの先生?」

 

 顔を上げてみるとやたらと顔を陰らせた先生が机に頬杖をつき、ブツブツと何やら触れてはいけない部分まで闇に堕ちているようだったのでとりあえずそのまま放置して職員室を後にした。

 ハァ…………ちょっと前まで青春なんてくそ食らえみたいな勢いだった俺が……まさか青春の代名詞である彼女を作ってしまうとは……。

 その時、目に柔らかいものが被せられ、視界が真っ暗になる。

 

「だ~れだ」

「…………結衣だろ」

「ピンポーン!」

 

 呆れ気味にそう言うと満面の笑みを浮かべている結衣が俺の後ろからヒョコッと出てくる。

 

「職員室に呼ばれてたけどどったの?」

「…………てい」

「イタッ。ちょ、ちょっと何すんの~?」

 

 さっきの職員室での恥ずかしいシーンが甦り、結衣の頭に何度も軽く手刀を落としていく。

 

「別に……お前、三浦たちとは帰らなかったのか」

「だって今日はヒッキーと帰るって決めてたし。優美子たちとは明日一緒に帰る」

「あっそ……んじゃ帰るか」

 

 そう言うと結衣は笑みを浮かべながら俺の腕に抱き付いてくる。

 今でも青春はクソくらえだとは思っている。所詮、自分を騙すことで楽しかった、いい思い出だったと自己満足に浸るしか能がないシーズンなのだから……ただ結衣と一緒にいる日々はそう、悪くはないと思っている俺がいるのもまた事実だ。

 

「ヒッキー」

「あ?」

「今日駅前のゲーセンいこーよ」

「この前も行ったろ。もう金ねえよ」

「ん~。じゃあヒッキーの家行きたい!」

 

 ……こ、こいつは他人の視線がある中でそれを言いますか。

 結衣の言ったことに廊下にいたほぼ全員が反応し、俺の方へと視線を向けてきたのでその視線から逃れるために少し歩く速度を早くして下駄箱へと向かう。

 

「ちょっとヒッキー歩くのはや過ぎ!」

「うるせぇ」

 

 恥ずかし紛れにそう言いながらそそくさと外へ出て駐輪場へ向かっていると後ろから遅れて結衣が歩いてきて俺の隣に立って歩き出す。

 もちろん俺の腕に抱き付いた状態で。

 自分の自転車を見つけ、鍵を開けようとした時、裾を引っ張られた。

 

「なんだよ」

「そ、その…………キ、キスして」

「…………」

 思考停止……思考再開……キスとはなんであろうか……接吻……っっ!

「お、おま! な、何言って」

「だってヒッキー最近、してくれないから」

 

 そう言い、結衣は悲しそうな表情で俺を見てくる。

 確かに最近、用事があれだとか言ってごまかし、逃げてきているのが多いのは事実。まあ実際はただ単に俺が恥ずかしいだけなんだが。

 …………だ、誰もいないよな。

 いつも以上に挙動不審になりながら周囲を見渡し、誰もいないことを確認する。

 

「結衣」

「ん……」

 

 結衣の顎を軽く上げ、目を閉じた結依にキスをすると久しぶりの感触に心臓が高鳴る。

 あー…………やっぱり俺って結衣のこと好きなんだな……なんかもうこのまま一緒に居たい気分だ……。

 そんなことを思いながら顔を離すと物足りなさそうな表情で結依が俺のことを見てくる。

 

「…………きょ、今日お父さんもお母さんも仕事で帰ってこないんだって……だ、だから……」

 

 顔を真っ赤にしてそう言う結衣にもう一度、キスをして腰を抱いてこちらへと引き寄せると結衣の主張が結構激しめの胸が俺の胸板にあたり、柔らかい感触に思わず息子がピクッと反応してしまう。

 

「…………は、早く乗れよ。おいてくぞ」

「ヒッキー顔真っ赤」

「人のこと言えんのか」

 互いに顔を真っ赤にしながら自転車に乗り、結衣の家へと向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後、一日帰ってこなかったことを小町にニヤニヤしながら追及されたのは他でもない。


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