千冬に寮の部屋を案内されたアムロとシャアは意外にも互いにくつろいでいた。
「シャア...まさか貴様とこうして同じ部屋で寝泊まりする事になるとはな...」
「仕方の無い事だろう。明日も早い。もう私は寝るぞ」
そう言い残し、シャアは自分のベッドへと入っていった。
「...シャア、まだ貴様を信頼した訳ではないからな...。」
「...フッ、別に構わんよ。だが信じてほしいのは、私は一度人の心の光を見た者だという事だ。」
「シャア...」
アムロは無言で、部屋の電気を消した。
翌日
「今日が初めての学園だな、アムロ」
「あぁ...変な真似はするなよ?」
「それはお互い様だろう」
二人は苦笑しながら、自分達の組の担任を勤める織斑千冬の後ろに続いていた。
「ここがお前達のクラスだ。...少し待っていろ」
そう言い残し、真っ直ぐにクラスへと入っていった。
その後、謎の歓声や机を叩く音が聞こえた気がしたが、アムロとシャアは聞かなかった事にした。
「シャア、アムロ。入ってこい」
その呼び声に応え、二人は教室の中へと入る。
「失礼させてもらう」
「失礼します」
「簡単な自己紹介をしろ」
「...私の名前はシャア・アズナブル。好きなカラーは赤だ。よろしく頼む。」
「僕はアムロ・レイです。趣味は機械いじり。どうぞよろしくお願いします。」
...辺りが静まり返った。嵐の前の静けさかの様に。
「(おい、アムロ!私は何も間違えてなかっただろうな!?)」
「(俺もお前も、大丈夫だったはずだがっ...)」
その、瞬間
『きゃああああああぁあっ!!』
「ぐぉっ!」
「新手のサイコ兵器か!?」
いきなり叫びだした女子生徒を前にアムロとシャアは混乱してしまった。
「男子!しかも二人も!」
「金髪の子の方、威厳が凄い!」
「天然パーマの子もカッコ良いよ!」
まさか、男と言うだけでここまで大きな声が出せるとは...アムロとシャアほ更に混乱した。
「お前達!少しは静かにしろっ!」
その一言で教室は静寂に包まれた。
「シャア、お前は織斑の後ろ。アムロはシャアの後ろだ。」
「了解した。」
HRも終わり、少しまた騒ぎ始めた頃...
「俺、織斑一夏。男は俺一人かと思ってたから少し安心したぜ!」
「初めまして...だな。私の名はシャア・アズナブル。以後よろしく頼む。そしてこっちが...」
「アムロ・レイだ。一夏、よろしく。」
二人にとっての一夏への印象は好印象であった。
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授業も終わり、三人で少し平穏な時間を過ごしていると
「少し、よろしくて?」
「ん?」
「何か用だろうか?」
声を掛けられた方を向くと、
ヨーロッパ...イギリス系の顔の、傲慢な表情を浮かべた女子生徒が立っていた。
「まぁ、なんですのその態度! このセシリア・オルコットに話しかけられるだけでも光栄な事なんですのよ?」
「それは失礼をした。セシリア・オルコット...代表候補生のいわばエリートと言った所か。」
「代表候補生だったのか...」
アムロとシャアが少しうなづいていると、
「シャア、アムロ...」
「どうした?一夏」
「代表候補生って、何?」
その言葉にセシリア含めたアムロ、シャアの三人がずっこける。
「まぁ、一夏...ISのエリートみたいなもんだよ。」
「へぇ、詳しいんだな、アムロ」
「流石にこれは常識だと思うが...」
シャアが苦笑していると、
「まぁ本来エリートであるこの私があなた達と釣り合うなんて事はありえませんし、クラスが同じという事だけでも奇跡なのですわよ?」
「......」
「まぁ、私はエリートであり優秀であるからISの事で困った事があれな泣いて許しをこえば...教えてあげない事も、ないですわ」
「(女尊男卑に染められてしまったのだろうな...アムロ)」
「(仕方ない、と思うことにするしか...)」
「唯一試験で教官を倒したのもこの私......」
「ん、...?試験官なら俺も倒したぞ。」
「は...?」
「そ、そんな訳が...」
セシリアは少し狼狽える。
「女子生徒の中では、って事じゃないのか?」
「おい、一夏よせ!」
「アムロ、お前も急に立ち上がるな!」
怒りで震えているように見えるセシリアに割り込むかの様に
休憩時間終了のチャイムが鳴る。
「...っ!また、後で来ますわっ...!逃げない事!よろしくて!?」
セシリアが去り、着席したのと同時に千冬が入ってくる。
「(一体何だったんだ、あいつは...)」
「では、授業を始める...だが、その前に決めねばならん事がある。」
「再来週にあるクラス対抗戦に向けてクラス代表を決めなければならない。自推でも構わんが、誰かを推薦する者はいないだろうか。」
「クラス代表か...どうする?シャア...おい、シャア?」
シャアはチャンスを感じていた。なぜならネオ・ジオン総帥時代に学んだ事やカリスマ性を、フル活用できると考えたからだ。
「クラス代表...。フフフ、指導者であるこの私の出番だという事だな。」
シャアは小声で、だが大きく神に感謝しつつ呟いた。