問題児たちと地球の理が異世界から来るそうですよ? 作:鴉紋to零
今は絶賛商いをしていたようで、悠雷を除く俺達は白夜叉の私室へと通された
悠雷は酷く汚れていたので、本人ごと洗濯されている
悠雷が洗濯されている間に、この゙サウザンドアイズ゙について聞いたが、あまり興味はなかったのとちょっとした考察をしていた為、よく覚えていない
思考の海に沈んでいた俺の意識を覚醒させたのは白夜叉の煙管が灰吹きを叩く音だった
「本題の前にまず、一つ問いたい。゙フォレス・ガロ゙の一件以降、おんしらが魔王に関するトラブルを引き受けるとの噂があるそうだが………………真か?」
白夜叉は真面目な顔で問う
「ああ、その話?それなら本当よ」
飛鳥は礼儀正しく正座したまま肯定の返事を返す
その答えを聞くと、今度はジンの方へ視線を向ける
「ジンよ。それはコミュニティのトップとしての方針か?」
「はい。名と旗印を奪われたコミュニティの存在を手早く広めるには、これが一番いい方法だと思いました」
ジンの固い覚悟を試すように、白夜叉は視線に覇気を込めて再度確認する
「リスクは承知の上なのだな?そのような噂は、同時に魔王を引き付けることにもなるぞ」
「覚悟の上です。それに仇の魔王からシンボルを取り戻そうにも、今の組織力では上層に行けません。決闘に出向くことが出来ないなら、誘き出して迎え撃つしたありません」
さらに強く問う白夜叉。だが、ジンの瞳の炎は消えなかった
「無関係な魔王と敵対するかもしれん。それでもか?」
その問いにはジンの側で胡座をかいていた俺と十六夜が答えた
「それこそ望むところだ。倒した魔王を隷属させ、より強力な魔王に挑む゙打倒魔王゙を掲げたコミュニティ___どうだ?修羅神仏の集う箱庭の世界でも、こんなにカッコいいコミュニティは他にないだろ?」
「それに、今のままじゃジンが言った通り組織力が弱い。少数で対応仕切れる戦いは兎も角、こちらの倍の人数と一挙に相手とすると不利だからな。だからまずは強い奴を仲間にするっていうのにもうってつけなわけだ」
「ふむ………………」
白夜叉は静かに目を閉じ、深く考える
一秒、二秒、三秒………………
鳥の歌声もなく、なにも音のない世界が続いた
そして、白夜叉は目を開けると呆れた笑みを浮かべた
「そこまで考えてのことならば良い。これ以上の世話は老婆心というものだろう」
「だろうな。でだ、本題ってなんなんだ?」
全く、こいつは………
音もなく動くという下らない技術に磨きをかける悠雷に軽く呆れながらも、俺自身とても本題が気になっていた
「うむ。実はその゙打倒魔王゙を掲げたコミュニティに、東のフロアマスターから正式に頼みたいことがある。此度の共同祭典についてだ。よろしいかな、
「は、はい!慎んで承ります!」
急に対等な者を見る目に変えた白夜叉に、驚きながらも返事を返すジン
ジンは顔を緊張で固くしながらも、党首として認められたことの喜びで顔が少しばかり緩んでいた
「さて、では何処から話そうかの………………」
過去の思い出を呼び返すように遠い目をしながら、ふと思い出したかのように話を始める
「ああ、そうだ。北のフロアマスターの一角が世代交代をしたのを知っておるかの?」
「え?」
いきなりの話に心構えが追い付いていなかったジンは間の抜けた声をあげる
「急病で引退だとか。まあ亜龍にしては高齢だったからのう。寄る年波には勝てなかったと見える。此度の大祭は新たなフロアマスターである、火龍の誕生祭でな」
「「「龍?」」」
龍という単語に反応する三人
こいつら絶対に喧嘩売るなぁと諦めと確信をもって俺は言える
「五桁・五四五四五外門に本拠を構える゙サラマンドラ゙のコミュニティ______それが北のフロアマスターの一角だ。ところでおんしら、フロアマスターについてはどの程度知っておる? 」
軽いノリで白夜叉は尋ねる
「私は全く知らないわ」
「私は甲に少し教えてもらった」
「俺は少々だな」
「俺はそこそこ知ってる」
「他人に教えられる程度には調べたが。要約すると、下層の秩序と繁栄の守護者ってところだろ?」
深く説明すると面倒なのでざっくりと要約しながら俺は説明していく
対魔王戦では自ら進んで戦わなければならないことや、そうであるが故に
「しかし、北には複数のマスター達がいます。精霊に鬼種、それに悪魔と呼ばれる力ある種が混在した土地なので、それだけ治安もよくないですから………」
ジンは悲しそうな声でそれだけ話すと、少し表情は暗くなっていた
だが、ジンは自分を奮い立たせるように身震いをすると白夜叉に話しかける
「けど、そうですか。゙サラマンドラ゙とは親交があったのですけど………まさか頭首が変わっていたとは知りませんでした。それで、今はどなたが頭首を?やっぱり長女のサラ様か、次男のマンドラ様が」
「いや。頭首は末の娘____おんしと同い年のサンドラが火龍を襲名した」
この言葉が、ジンの様子を大きく変えたことは言うまでもない