問題児たちと地球の理が異世界から来るそうですよ? 作:鴉紋to零
黒ウサギは立ち上がり、隣に置いてあった水樹の苗を大事そうに抱き上げる
「そろそろ行きましょうか。本当は皆さんを歓迎するために素敵なお店を予約してセッティングしていたのですけれども…………不慮の事故続きで、今日はお流れとなってしまいました。また後日、きちんと歓迎を」
俺が言うより速く飛鳥が言いだした
なので俺は発言することを止めた
「いいわよ、無理しなくて。私達のコミュニティってそれはもう崖っぷちなんでしょう?」
その言葉を聞いたとたん黒ウサギは驚き、ジンの方へ向く
ジンはジンで申し訳なさそうな顔で下を向く
恥ずかしいのだろうかウサ耳を赤くさせたまま謝る
「も、申し訳ございません。皆さんを騙すのは気が引けたのですが……………黒ウサギ達も必死だったのです」
「もういいわ。私は組織の水準なんてどうでもよかったもの。春日部さんと甲君はどう?」
耀は無関心なままに首を振り、俺は首を鳴らせる
「私も怒ってない。そもそもコミュニティがどうの、というのは別にどうでも…………あ、けど」
思い出したように呟く耀
「どうぞ気兼ねなく聞いてください。僕らに出来ることなら最低限の用意はさせてもらいます」
「そ、そんな大それた物じゃないよ。ただ私は………毎日三食お風呂つきの寝床があればいいな、と思っただけだから」
「まあ、俺も水源はほしいな」
俺達の種族はもともと海で生まれた、だから海の中などの無重力空間の方が落ち着ける
俺が脳内解説をしている間に黒ウサギが嬉々とした表情で水樹を持ち上げている。なぜだろう?
「それなら大丈夫です!十六夜さんがこんな大きな水樹の苗を手に入れてくれましたからこれで水を買う必要も無くなりますし、水路も復活させることも出来ます♪」
黒ウサギは、表情を絶え間無く変える
「私達の国では水が豊富だったから毎日のように入れたけれど、場所が変われば文化も違うものね。
今日は理不尽に湖へ投げ出されたから、お風呂には絶対入りたかったところよ」
「それには同意だぜ。あんな手洗い招待は二度と御免だ」
「そうか?俺的には高いところから水の中に着水なんてなかなかないことだったから、良かったけど」
「「「それは甲(君)だけ(だ)(よ)」」」
俺はやはり思う。絶対コイツら仲がいいだろと
そんな思考をしていると、苦笑しながらジンが発言する
「あはは…………それじゃあ、今日はコミュニティへ帰る?」
「あ、ジン坊っちゃんは先にお帰りください。ギフトゲームが明日なら″サウザンドアイズ″に皆さんのギフト鑑定をお願いしないと。この水樹のこともありますし」
「″サウザンドアイズ″?コミュニティの名前か?」
「千の目ねぇ、特殊な瞳をもった人物でもいるのか?」
「Yes 。″サウザンドアイズ″は特殊な″瞳″のギフトを持つもの達の郡体コミュニティ。箱庭の東西南北・上層下層の全てに精通する超巨大商業コミュニティです。幸いこの近くに支店がありますし」
黒ウサギの発言が終わると疑問をもった飛鳥が一つ質問を投げる
「ギフト鑑定というのは?」
「勿論、ギフトの秘めた力や起源などを鑑定することです。自分の力の正しい形を把握していた方が、引き出せる力はより大きくなります。皆さんも自分の力の出処は気になるでしょう?」
黒ウサギがそう言うと、俺を除く三人が複雑そうな顔をする
俺はそんなことをしていなくても自身の力については完璧に知っているから問題ないのだが、他三人はそうもいかないらしい
そのような事を考えながら、歩いているとふと飛鳥が声を出す
「桜の木…………ではないわよね?花弁の形が違うし、真夏になっても咲き続けているはずがないもの」
「いや、まだ初夏になったばかりだぞ。気合いの入った桜が残っていてもおかしくないだろ」
「………?今は秋だったと思うけど」
この会話を聞いて、あることを思い出した俺は黒ウサギに尋ねる
「黒ウサギ、お前、全員違う世界から召喚したのか?」
黒ウサギの返事は予想通りだった
「Yes 。甲さんの言う通り異なる世界から召喚させて頂きました。元いた時間軸以外にも歴史や文化、生態系など所々違う箇所があるはずですよ」
「へぇ?パラレルワールドってやつか?」
「どっちかっていうと立体交差平行世界論な」
「甲さんは立体交差平行世界論に詳しいのですか?」
「まあ、少しな」
女性陣二人は頭にクエスチョンを挙げまくっていたが気にしないことにする
そうこうしているうちに店についたようだ
締まり始めた店に