コードギアス オールハイルブリタニア!   作:倒錯した愛

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中華連邦滅亡へ向けたカウントダウンの始まり始まり。

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終に、『瞳』は授けられた

 

彼の武器は何か?

 

それは戦神すら魅せる剣技であろう、と誰もが答える。

 

それは巧みな手練手管で勝利を掴みとる道を探る戦術眼であろう、と誰もが答える。

 

それはかの美の女神すら霞むような美しさであろう、と誰もが答える。

 

確かにそうであろう、彼は神に愛されたと言っても過言ではない完璧さだ。

 

だが、彼は自分を強いなどと思わない、なぜなら、彼は挑戦者であるからだ。

 

彼は自分を優れた軍師とは思わない、なぜなら、彼は戦士であるからだ。

 

彼は自分を魔性を孕むヒトとは思わない、なぜなら、彼は人間だからである。

 

彼は自らが持つ多くの力が、この小さく狭苦しい世界において1、2を争うモノだと理解こそすれど、それが通用するほど生半可な世界ではないと自覚している。

 

自分の力は、世界を相手取って勝利を掴み取れるほどのものではない、と。

 

しかし、ある二点に関しては、その限りではなかった。

 

一つは、ルルーシュとナナリーへの愛情だ。

 

2人は彼にとって実妹であるアーニャと同等の、主従を超えた家族として認識しているほどだ。

 

そんな2人に向ける愛情は、親のソレには及ばないかもしれないが、非常に大きく重いものであると自信を持っている。

 

そしてもう一つ、それは彼の持つ力の一つでもある。

 

それは、『扇動』の力であった。

 

『世界に冠たるブリタニア臣民が諸君、我が声が聞こえているか?』

 

帝都ペンドラゴンから大小様々な自治区・エリアにマイク越しのツキトの声が響く。

 

家のテレビ、パソコン、ケータイ、街中に設置された巨大モニターや家電量販店のテレビまで、ツキトの姿が映し出されていた。

 

豪奢なローブを羽織った姿は祭司長のような神秘さを帯びており、幼さも相まって危うさと妖艶さも醸し出していた。

 

ツキトの声を認識した民衆は、まるでセンサーが反応した自動ドアのように顔を近くのモニターやテレビに向け、皆一様に次の言葉を食い入るように待った。

 

『皇帝陛下が敷いた法の元、日常を謳歌するブリタニア臣民諸君に、私は伝えねばならない、その来るべき厄災を』

 

マイクを手に持ったと思えば、壇上を左に右に歩きながら話し出す。

 

『すでに発表があり多くの臣民が知るところであろう我が帝国によるユーロピア自治区復興支援、多くの義心溢れる臣民諸君のボランティア参加には、敬服の念が絶えない』

 

壇上を練り歩きつつ徐々に階段を降りていく。

 

『参加者をユーロピアへと導くための飛行機を貸してくれたブリタニア空軍、民間企業へ協力を取り付けてくれたアッシュフォード財閥、有志諸君には非常に感謝している』

 

壇上に戻ると歩くのをやめ、目の前に立ち並ぶ群衆に向き直る。

 

『しかし、しかしだ!そんな勇き志しを胸に持つ諸君の誇りを!仁徳を!悪意を以って嘲笑とともに踏み躙らんとした、外道どもが現れた!!』

 

言い切ると同時に、マイクを手に空いた方の手で演説台をバンッ!と大きく叩く。

 

マイクを通してスピーカーからツキトの荒い呼吸音すら聞こえそうなほどの静寂が訪れる。

 

その静寂を齎したのがツキトなら、切り裂くのもツキトだろう。

 

本国に住まう臣民はその目の前で、本国の外の民衆はモニター越しにツキトの怒りの熱を感じながら次の言葉を待った。

 

『……我らが祖、真なるブリテン人の血脈が途絶えて早く数十年、今やブリタニアは純血絶対主義からの脱却と、混成平和主義への転換期にある!全世界を統一し、言語と宗教などの統一による国家の統一こそが!皇帝陛下の指標であり、永らく待ち続けている悲願なのだ!!』

 

『それを理解せず、他民族や他種族、言語の違いや肌の色の違い程度で差別し!暴力を振るう愚かしい下種は大勢居た!…………しかし、それもほんの数週間前までのこと、今や愚者どもの下種な勘繰りは皇帝陛下の正義の鉄槌により悉く粉砕され、塵芥も残らぬよう滅却せしめた!これは皇帝陛下が即位してより、ブリテン島奪還に次ぐ偉業と言えるのではないだろうか!?』

 

「「「「「うおおおおぉぉぉ!!!!」」」」」

 

民衆が湧く。

 

偉業であると、偉大であると、そう示すツキトに賛同するように。

 

『だが!!』

 

それもほんの数秒で静寂へと戻される。

 

興奮の熱も冷め止まぬうちに待てを食わされた民衆はやや不満げな雰囲気が出ているが、それを切り捨てんとばかりに厳格な表情をしているツキトがいた。

 

『そんな偉業を、民族の団結を、世界平和を阻まんとする下郎が現れたのだ!先も言ったが、今一度言おう…………国家の統一!言語の統一!差別なき多民族国家の形成による、真なる世界平和実現を掲げる皇帝陛下の偉業を!諸君が望んだ【|恒久的かつ永久的かつ絶対的かつ革新的な世界平和《アラソイナキセカイ》】を!暴力と悪意で阻まんとする者が現れたのだ!!』

 

ツキトは力の限り……可能な限り手加減されてはいるが……振り上げた拳を演説台に叩きつけた。

 

演説台は手加減された打撃にすら耐えきれず、その木製のボディに深いヒビが入った。

 

入ってしまったヒビは落雷の如く演説台を秒速で縦断すると、支えを失った家屋が倒壊するように崩れ、砕け、散ってしまった。

 

これには殴った本人も一瞬唖然とするも、表情に怒りを満たさせて、演出のひとつであるように見せる。

 

叩きつけた拳をワナワナと震わせ、ぶつけてなお行き場の無い怒りに震えているように見せる。

 

『私の、この怒りが分かるか!?理解できるか!?私は!我々は!【奪われた】のだ!皇帝陛下が目指す世界平和への道を!………我が主が望んだ、完全なる平和を……………可能性を、摘み取られたのだ……』

 

悲壮な別れの時のような、憎しみに溢れた仇敵を目の前にしたような、苦渋の決断を行う時のような………どのようにも取れる表情で、それまでの激情に身を任せた身振り手振りや口調を少しずつ下げていった。

 

だがどの表情にも悔しさが表れており、民衆も悔しさを感じた。

 

悔しい………ただ悔しい、ようやく叶いそうに見えた夢が、突然何者かによって閉ざされ、奪われたのだ。

 

悔しさは怒りへと変換され、怒りは熱気となり民衆を包み込む。

 

雰囲気に呑まれた民衆は口々に叫ぶ。

 

【それは誰なんだ?】、【奴らだ、中華連邦だ】、【テロ国家の屑どものせいだ】

 

【中華連邦を倒せ】、【中華連邦を滅ぼせ】

 

【中華連邦の愚か者に裁きの鉄槌を!】

 

【【【鉄槌を!鉄槌を!】】】

 

【【【裁きを!裁きを!】】】

 

【【【誅戮を!誅戮を!】】】

 

熱病に浮かされるように、民衆の声が、心が重なりひとつになる。

 

世界平和への道を取り戻せ、と民は叫ぶ。

 

仇敵たる中華連邦を討て、と民は叫ぶ。

 

熱狂、狂乱、狂ったように叫び続ける民衆を前にしてツキトは…………無言。

 

無言のままに手を差し出し、民衆の声を抑えるようなポーズをとり、静寂を待った。

 

揃った掛け声はまばらに、それも散り散りになりやがて、再びとなる静寂が訪れた。

 

『…………臣民諸君、戦争反対を唱える帝国臣民諸君、諸君に私は今こそ問おう…………その反旗は正義であるのか?その反意は平和へと繋がっているのか?私は否と思う、なぜか?………長い、長い歴史が、世界の移り変わりがそれを示しているからだ』

 

『長きに渡り人々は平穏を求めた!かつては戦うことを拒絶するために民衆は団結し、その力で自らの故郷をも滅ぼした!それを我々は【革命】と呼び、忌避されるべきものとして本能に刻み込まれた!』

 

『忌避されるべき革命を、血で血を洗う汚れた醜い同族殺しを、誰も望みはしない!望むことは決してしなかっただろう!だが!戦うことを諦め、武器を捨てたかつての諸君が、どのような道を辿ったかは言うまでも無いだろう!』

 

『凄惨な戦いの果てに降伏し滅びた国があった……占領され、奴隷として凌辱され続けた国があった……()と民が対立し、語るも悍ましい内戦の末に、血みどろの革命を成した国があった』

 

『しかし!どの国も!その全てが!行動が!間違いであったことをブリタニアは証明してみせた!』

 

『なればこそ!故にこそ!我々に残された道はただのひとつのみ!戦いを放棄することでも、同族で争う事でもなく、目の前にいる敵と、勇気を持って戦うべき道だ!』

 

『生への前進!即ち、勝利こそがブリタニアの、帝国臣民諸君の未来の平和を、世界平和を創造する唯一の【道】だ!』

 

『理想も持たぬ惰弱極まる下劣畜生共に、諸君の家族が、友が、愛する者が脅かされる世界で良いのか!?』

 

『下水道の隅で、天敵に怯えながら暮らすドブネズミのような人生を送りたいのか!?』

 

『否だ!断じて否だ!我々はドブネズミなどではない!怯えながら逃げるような軟弱では無いはずだ!我々は戦える!武器を持ち、眼前の敵を討ち果たすことができるのだ!』

 

『いつまでそこで眠っているつもりなのだ!?いい加減に目を覚ませ!もう分かっているだろう!今だ!今なのだ!今こそが、立ち上がるべき時なのだ!』

 

『立て!立つのだ!臣民よ、立て!!!……ブリタニアは、諸君の力を欲しているのだ!』

 

『オール・ハイル・ブリタニア!!!』

 

狂気が民衆を支配する。

 

もはや誰も正常な判断がつかない。

 

誰も彼も、ツキト・カーライルから目を離せない。

 

瞬きすら忘れて、ただツキト・カーライルに向けて何かを叫ぶ民衆。

 

砕け散り、演説台だったものが転がる壇上でツキトは笑う。

 

あぁ、なんてことだ、私はどこまで罪深いのだ、と。

 

正気の失せた目で虚空を見つめながら、民衆の歓声に包まれながら、ただただ、笑った。

 

虚空の先には何も存在していない、だがツキトにはわかっていた、そこに確かにあるのだと。

 

それは何か?あの晴れ渡る青空に何があると言うのか?

 

「おぉ…………そこか、そこで観ていたのか………白き神よ」

 

その呟きは歓声に飲み込まれ搔き消える。

 

仮に届いたとしても、誰にも理解はできないだろう。

 

「はははっ…………なるほど、これは……あぁ………………素晴らしい……」

 

「これが、外側の力……ふふっ、ふふふふ……ははは!はははははははははははははははははは!」

 

瞳と瞳を交わらせ、ツキト・カーライルは笑った。

 

後に、戦争へ向けた大演説として歴史に残るこの日は、皮肉にも世界平和を目指した人々の記念日として認識されるようになった。




瞳も啓蒙もでけえなオイ……(戦慄)

上位者との交流でミコラーシュ君みたいになってますねえ…………そのうちメンシスの檻を被りそう。

もっともっと主人公のチートっぷりを発揮させたい……でも露骨な主人公持ち上げは正直好きじゃないんですよねえ。

ルルーシュとスザクのダブル主人公の邪魔をしないような感じで活躍させる…………ていうのが目標ですね。

まあやりたい放題やっちゃったのでもう自重とか考えませんが(開き直り)

これからも亀更新でやっていきますんで、パンプキンシザーズやからくりサーカスを読みながらお待ちください。

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