コードギアス オールハイルブリタニア!   作:倒錯した愛

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大変長らくお待たせいたしました。

2話連続投稿になります。

作風が変わっているかも(?)知れませんが、一貫して変わらないものは確かにあります。

それは、ツキトは狂人ということです(ゲス顔)


その『再開』に『祝福』を!『下郎』には『呪詛』を!

なぜこうも面倒なのか。

 

……とは死んでも口に出すまい、特に今の状況では。

 

コーネリアの説得には難儀した、答えを聞こうとすればなぜか異様に警戒され、KMFの量産計画についての話にずらされた挙句、秘蔵の調査書類まで出さざるを得なかったのだから。

 

あの調査書類は今後の切り札の1枚として中華連邦との交渉、もしくは戦争の口実としてとっておきたかったものなのだ。

 

それを、コーネリアが勘の良さか経験則かは知らんが、私の提案に妙に警戒心を抱かれてしまったゆえに晒さなければならなかったのは実に不愉快だ。

 

だが………私にとって姉代わりであるコーネリアが、信頼を得ていると思っていたコーネリアが、私を怪しく思い警戒して私を敵になる者かどうかを試そうとしたことに関しては、何やら父性的な感情から嬉しさがこみ上げてきたな。

 

しかし、ユーロピアのKMFの残骸、この切り札が使いにくくなったのは変わらない、また別の機会を伺うとしよう。

 

さて、私の失態についてはここまでにして、現状を説明しよう。

 

会議から1週間、約束通りコーネリアにのみ秘密を教えるため、厳重な護衛車両を引き連れてとある場所に来ていた。

 

コーネリアと私の2人でその場所…………アッシュフォード学園正門の前に立った。

 

「コーネリア様、ここで護衛を待機させていただきたいのですが、よろしいですか?」

 

「……わかった、お前たちはここで待機だ、くれぐれも学生を怖がらせるなよ、ギルフォード」

 

「はっ!」

 

隣に立つギルフォードにコーネリアはそう声をかけた。

 

同じように私も後ろで整列している猟犬部隊に声をかける。

 

「祝日とはいえ部活動中の生徒も多い、最近は不審者も増えていると聞く、警戒を怠るな」

 

「「「「はっ!お任せくださいカーライル様!」」」」

 

「う、うむ……」

 

なぜだろうか?アンドロイドの暴走事件以来、彼らのオーラというか気というか、そういうものを強く感じるようになった。

 

やる気を出してくれているのだろうか?だとしたらこの上なく嬉しいことだ、士気が高いと動かしやすくて良い。

 

先も言ったように今日は祝日、ブリタニアの建国云々とはカスリもしないため式典も何もない、日々働く臣民のための休日だ。

 

ゆえに、学園内に生徒の姿は少なく、水泳部や陸上部、ナナリーの属する高等部フェンシング部と中等部フェンシング部の部員がいると言う程度だ。

 

そんな彼らもグラウンドやプール、体育館にて練習を行うため、私とコーネリアは2人だけで堂々と校庭を歩くことができた。

 

コーネリアは私の隣で校庭を歩きながら遠くに見えるグラウンドのサッカー部の練習をボンヤリと眺めていた。

 

歩みを遅くしつつコーネリアに合わせ、同じようにサッカー部の練習に目をやる。

 

不意に、コーネリアが口を開いた。

 

「まさか学校とは思わなかったぞ」

 

「私の最も信頼する者が目を光らせている場所ですので、それに、秘密の集会には御誂え向きかと」

 

信頼する者とは、無論だが咲世子のことだ。

 

皇族や親友のスザクを除けば、最も信頼しているのは咲世子において他にいない。

 

背中の心配をしなくて良い、というのは実に良い、咲世子が本当に味方でよかった。

 

敵だったら詰んでた。

 

しばらく歩いて行くと、見慣れた建物が見えてきた。

 

ルルーシュとナナリーと咲世子、そして私……あと居候のC.C.が住む日本エリアの実家、クラブハウスだ。

 

一応、中に入る前に咲世子に確認を取るか。

 

「咲世子」

 

「はい」

 

「んな!?ど、どこから出た!?」

 

「ずっと背後から見ていましたよ?」

 

そう言って慌てるコーネリアを一瞥する、かなり狼狽えているのがわかる。

 

「ま、まったくわからんかった…………それなりに勘は鋭い方だと思っていたんだが……」

 

「咲世子がデタラメなだけでしょう、そう気にすることでもありません」

 

咲世子の完璧な尾行に気がつくことができず、少し気落ちするコーネリアだったが、すぐに持ち直し。

 

「だが、ツキトの情報網の広さと正確さの一端を知れた気がする、これほどの隠密が1人いれば、耳の早さにも合点がいく」

 

と、納得したようにそう呟くコーネリア。

 

しかし甘いぞコーネリア、今や私の情報網は『網』などという小さなモノに収まらん。

 

『網』は所詮、『網』でしかない、釣竿やモリより広い範囲、大きな情報を釣り上げることは出来よう。

 

だが、海にも等しい情報の中からわざわざバケツで掬うようでは、あまりに効率が悪い。

 

ゆえに…………いや、今更言うまでもないだろう。

 

私は世界の全てを見聞きできる、私の協力者たちが……言うなれば信者がいる限り、私は世界を見通せる。

 

まぁ、まだ信者も足りないし通信機材もまちまちだ、本格的な稼働はもっと先になるだろう。

 

「咲世子には助けられていますから…………私の秘密の漏えいを防ぐ役割として」

 

「それは…………」

 

「先に言っておきましょう」

 

クラブハウスの扉を開けつつ、咲世子に目配せをしながら話す。

 

「情報が漏れた時は、あなたとあなたの妹の命で償っていただきます」

 

「それほどか……それほどに隠しておきたいことなのか」

 

「これより晒すは秘中の秘、あなたにとっての深淵と言えましょう…………深淵を覗く行為は、つまり深淵に覗かれ正気を失する覚悟が…………それがお有りだと言うのなら、扉の先へどうぞ」

 

今更何を……そんな気持ちで答えつつ、右手はそっと剣に触れる。

 

もしもの場合は…………肥料にでもなってもらおうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ツキトに案内されたクラブハウスなる建物、その入り口の扉に手をかける。

 

生まれてこのかた感じたことのない濃厚な殺意……いや、もはや鯉口をカチカチと鳴らす音を背中越しに感じる。

 

ツキトがこれほどまでに私に対し警戒心を露わにしているのは、これまでの人生で初めてだ。

 

嬉しくない初めてなどあったのだな、などと考えながらもう一方の女に注意を向ける。

 

篠崎咲世子という女…………私もそれなりに隠密に対しての知識はあったし、派閥争い絡みで私やユフィを狙ってきた刺客は一人で返り討ちにしてきた。

 

ツキトほどではない、マリアンヌ様などもってのほかではあるが、私にも剣の覚えはある。

 

完全にツキトの真似事でしかなかった稚拙な剣術だが、それでも刺客たちには有効だった。

 

まだ浅いにしろ実戦の経験は十分にあると思っているし、剣の腕も刺客程度ならスポンジもかくやと言うくらいに穴だらけにできると自負している。

 

そんな私の脳が警鐘を鳴らしている。

 

篠崎咲世子は、マズイ、と。

 

他の刺客のように闇に紛れ急所を狙うやつらは、暗殺に失敗しその姿が暴露すればたちまち動揺して斬り殺される憐れな連中だ……が、あの女は違う。

 

最初こそ姿を隠していたが、それは正面切っての戦闘が苦手だからではなく、ただ監視に徹していただけ、ツキトが呼べば瞬きの間をおいて隣に現れたのがその証拠。

 

姿を隠す必要がなく、必要があれば姿を晒した状態でもお前を殺せる、と言わんばかりの態度と、何ひとつ疑問を抱かないツキトの様子に、私は心臓が1/2になりそうだ。

 

だってそうだろう?明らかに私より上の実力者が確実に仕留められる距離にいる。

 

しかも、私は背を向けている…………どうあがいても勝ち目は薄い。

 

とりあえず、このドアを開けよう。

 

篠崎咲世子がどういう人間かは全く知らんが、ツキトは短気な性格をしている、ツキトが殺害命令を出せば篠崎咲世子はすぐに動くだろう。

 

汗が染み込んで背中に服が張り付いている感覚を覚えながら、意を決してドアを開く。

 

「あっ、コーネリア様が来たよ、ルルーシュ」

 

「え!?……そんな……予定より早いぞ!?」

 

「まずはお湯でカップを温めて………」

 

そして私は10年越しに異母兄妹たちと再会する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………」

 

入るや否や、亡き妹の面影を感じる少女に手を引かれイスに座らせられた。

 

かと思うと、亡き弟が紅茶を運んできた…………良い香りだ、きっと高い茶葉を使っているのだろう。

 

いやそうじゃない、そうじゃないぞ私……混乱を極める脳を落ち着かせるため、こめかみを軽くマッサージしていると、私服姿の枢木がクッキーが盛り付けられた大皿をテーブルに運んできた。

 

…………枢木の意外な一面を知った気分だ。

 

いや違う、違わないがとにかく今は違うんだ。

 

「ど、どうされたのでしょうか?」

 

「わからん……紅茶はうまく淹れられたと思うのだが………」

 

「僕が作ったクッキーの形がいびつだったのかな?」

 

「動物クッキーを作ったのは驚いたが、それはないと思うぞスザク」

 

「驚きで反応が追いついていないだけでは?」

 

いつのまにか席についていた篠崎咲世子の言う通り、驚き過ぎて最早何から突っ込めば良いのか……。

 

「ふむ、咲世子の言うことが当たってそうだな…………では、そうですね、まずは軽く自己紹介からいきましょうか」

 

混乱から回復しそうになった時、ツキトがそう提案し、静かにうなづいた亡き弟の面影を感じる少年が私を見て。

 

「俺はルルーシュ、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア、母の名はマリアンヌ・ヴィ・ブリタニアです」

 

「は、はぁ…………はぁぁああ!?」

 

なn、なん!?なに!?え?え?んぇ!?

 

「る、ルルーシュ?……ルルーシュ!?あの!?」

 

「はい、お久しぶりです姉上、お会いできて嬉しい限りです」

 

「い、いや、でも……ツキト!これは、これはどう言うことだ!?なんだ!?ドッキリ的なあれか?」

 

「私がドッキリでこんな悪趣味なことをすると少しでも思っているなら…………庭に植えたジャガイモの肥料になっていただきますが……」

 

生まれてから一度も見たことない表情で脅された!?

 

「なんかすまん!……いや、いやいや、ツキト?その……どういうことなんだこれは?」

 

「率直に申しまして……ルルーシュ様がお亡くなりになられたと言うのは…………嘘でございます」

 

「う、嘘!?嘘だったのか!?」

 

「はい、真っ赤な嘘でございます」

 

「な、な、な……」

 

じゃ、じゃあ、ルルーシュが死んだのが嘘で、本当は生きていて……ん?

 

「まさか…………まさか!そっちのツキトの婚約者の少女が!?」

 

「はい、ツキトさんの未来のお嫁さん、ナナリー・ヴィ・ブリタニアです……こうして姉妹としてお姉様と再開できて嬉しいです」

 

「あ、あぁ、私も嬉しい……というか驚き過ぎてもう何が何やら…………」

 

あっ!こんなことならナナリーのフェンシングの試合、録画しておくべきだった!くっ……もっと早くに気がついていれば!

 

「疑問に簡単に答えますと…………戦争に乗じて暗殺されかけたので身を隠すために、ブリタニア軍の爆撃に巻き込まれ死んだように偽装していたんです」

 

「暗殺………そうだったな、ルルーシュとナナリーは…………む?おいツキト、ここに枢木がいるということは……」

 

「スザクはルルーシュ様の親友で、義理堅く頼りになる男です、なので事情は最初から知っています」

 

む、むぅ…………枢木やユフィのほうが私より先に知らされていたとは……少し複雑だぞ。

 

「さて……それではルルーシュ様、私はこの辺りで……」

 

「もう行くのか?」

 

「時間が近いものでして」

 

立ち上がるツキトにルルーシュは少し心配そうに聞く、それに対しツキトは何でもないように普通に応える。

 

ルルーシュは「そうか」と言うとそれ以上の追求をやめた。

 

「お、おいツキト、どこに行くんだ?」

 

「実はとある人物と電話会談を予定しておりまして、総督府でその準備をと」

 

「私はどうすればいいんだ?さすがにここまで迎えは呼べぬし……」

 

「お帰りの際は咲世子に申しつけください、そこいらの騎士やテロリスト集団が可哀想になるくらい強いので、護衛としても非常に優秀です」

 

「いいのか?そうするとルルーシュとナナリーが無防備にならんか?」

 

「ここアッシュフォード学園は言ってしまえば私の『庭』です、すでに手は回してありますのでご心配なさらず」

 

そういえばそうだった、ルルーシュとナナリーが今まで通学していて無事だったのだから、当然か。

 

まあ、私がグラウンドで敵対行動を取っていた場合、隠れ潜んでいるツキトの手の者に四方八方から攻撃を受けていたのだろうな………まんまとキルゾーンに誘導されてたわけだ。

 

しかし事情が事情だ、ツキトとしては警戒し過ぎるほどでもまだ足りなかったのだろう。

 

「せっかくの再会なのです、お楽しみください」

 

「ツキトがいなくなるのは寂しいが、仕事なら仕方ないか」

 

「気をつけてくださいね?ツキトさん」

 

「心得ております、ナナリー様」

 

寂しそうな表情を浮かべ心配そうに声を掛けるナナリーにしっかりと笑顔で返事を返すツキト。

 

この光景はどこかで…………そうだ、後宮で見たことがある光景だ。

 

ツキトがアールストレイムだった頃、家の用事で一旦後宮を、ルルーシュとナナリーの元から離れなければならなかった時だったか。

 

私とユフィも遊びにきていた時だったから、よく覚えているな。

 

涙を浮かべてツキトの腰にしがみつき、「イヤイヤ」と離れるのを嫌がるナナリーの姿、あそこまでワガママを言うのは初めて見たから子供ながらあの光景は衝撃だったなぁ。

 

困ったようにオロオロしだすアールストレイム家の迎えの使用人、数人で固まり口に手を当てて「あらあら^〜」なんて言ってツキトとナナリーを微笑ましく見守るヴィ家のメイド達、愉快そうにクスクスと笑うマリアンヌ様、泣いているナナリーをなんかとしろ!とジェスチャーをツキトに送るルルーシュ…………オーガのような表情のツキトの妹。

 

しばらくして……たぶん数十秒ほど経ってからだと思うが……ツキトがゆっくりと(ガッチリホールドされていたため、ナマケモノのように本当にゆっくり)ナナリーの腕を解き、泣きじゃくるナナリーにひざまづいて手を取って笑みを浮かべ、何かを話した。

 

と思ったらナナリーは泣き止み、逆に笑顔を見せてツキトの首回りに手を回して抱き着いた、眉をひそめ「間違えたか?」というようなツキトだったが、すぐにナナリーの背に手を回して優しく抱擁した。

 

子供ながら、自分より12か13ほど下のナナリーに嫉妬心のようなものを抱いたものだ。

 

しばらく抱擁し合っていた2人は次第にツキトの方から腕を解いていき、何かナナリーに話すと一礼をしてアールストレイム家の迎えの使用人と共に後宮を後にした。

 

その時何を言われたのかナナリーに聞いたが、教えてくれなかったな……。

 

「姉上、どうかしましたか?」

 

「ん?あぁすまん……あまりにいきなりの事で少し混乱してしまってな」

 

イケメンに成長したルルーシュが心配そうに話しかけてきた。

 

ホストクラブも鼻で笑う顔の良さに、服の上からでも分かる意外とがっしりした体…………子供の頃とは比較にならん成長っぷりだ。

 

「なら、まずは落ち着きましょう、紅茶を飲んで、クッキーを食べて、落ち着いてきたら、話をしましょう」

 

とナナリーが言う。

 

 

ナナリーは…………もう驚くほど可愛くなっていた、ユフィとどっちが可愛いか?と聞かれたら迷ってしまうほどだ。

 

こんな太陽のような美少女が、日本エリアフェンシング大会優勝の実績を持っているなんて誰が思うだろうか?

 

マリアンヌ様の血なんだろうが………どこか『凄み』のようなものを感じるのは、きっと気のせいだと思いたい。

 

紅茶を飲みつつ、頭を冷静にしながら話す内容を考えた。

 

あっ、この紅茶美味しい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とある施設、堅牢な要塞とも言えるその場所。

 

廊下、各部屋に数多の監視カメラが死角を無くすように取り付けられ、不審人物や脱走者がいないか見張っている。

 

そこは、研究施設だ。

 

いや、研究施設だった(・・・)、と言った方が正しいのか。

 

巨大な地下シェルター兼秘密の要塞として旧日本軍が建築したそれは、ブリタニアの侵略後に拡張して作られた。

 

本国では行えない研究を行うための施設だった。

 

『久しぶりだね、ツキト』

 

「お久しぶりでございます」

 

その最奥に位置する、他と比べ豪華な装飾が目立つ部屋、おそらく施設の所長の部屋であろう場所。

 

そこでツキトは巨大なモニターに映った人物と会話していた。

 

ツキトは跪き、モニターの人物を見上げるようにして言葉を待つ。

 

『驚いたよ、君から手紙が送られてくるなんて思ってもみなかったからね……それに、その後すぐにコンテナまで届いたのだから、もう笑ってしまったよ』

 

「本来ならもっと早くにお届けする手筈でした、データの復元に時間がかかり、このような結果となってしまったこと、深くお詫びいたします………」

 

『いやいや、そんなに小さくなることはないよ、むしろ感謝してるくらいさ……確かに、コンテナ一杯に資料を入れて送られてくるとは思っていなかったけど』

 

謝罪するツキトに『気にしないでくれ』と笑みを浮かべて話すモニターの先にいる男。

 

『手紙に書いてあることをわざわざ聞くのは、君に対して失礼だと思うけれど、あえて聞かせてもらうよ…………資料は、これで全部なのかな?』

 

「はっ、施設から復元できたデータは全て、お送り致しました」

 

『そうかい?すまないね、その施設は長い間使われていたものだから、本当に残っている資料がコンテナ3つ分程度なのかどうか気になってしまってね?失礼なことをした、無知な私を許してほしい』

 

「滅相もございません、あなた様の疑いもごもっとも、真に悪しきはあなた様の信を得られぬ私自身……あなた様に間違いなどございません」

 

男の謝罪を否定しつつ自分に非があると主張するツキト。

 

男は何やら位の高い人物、それも、『自分の所有する建物が破壊されても笑って許せる』ほどの寛容な人物。

 

『あまり自分を責めないでほしい、ルルーシュとナナリーの事は気の毒だが、それ以上に君が心配だ……あの後宮で出会った時とはまるで違う、自棄になっているような気がする』

 

「…………私はただ、あの方々の従者として、ただ贖罪を求めているだけの愚物でございます………あなた様のお心遣いが何よりも嬉しく、しかしどこか申し訳なく感じてしまう私を、お許しください……」

 

こうべを垂れるツキトの姿に、肩をすくめるようにして男はため息をついた。

 

それはツキトを心の底から心配しているという現れに見えた、しかしツキトはそれは違うと知っている。

 

この男が、自分のことなど頭の片隅にさえ置いていないことを。

 

そして、ルルーシュとナナリーの名が出たことにツキトは然程驚きもしていなかった。

 

精々、自分の感情を揺さぶるためにわざと口に出したのだろう、と、そう考えた。

 

『私は君を責めてはいない、むしろ、ルルーシュとナナリーのために、日本まで一緒について行ってくれた君に、私は感謝しているんだ……大切な弟と妹だからね』

 

それを聞いたツキトは、『心にも思っていない戯言を吐くな、下種がッ』と吐き捨てたい気持ちになる。

 

だが抑えろ、私はクールだ、クールなツキト・カーライルなのだ……そう、自分に言い聞かせ、止めどない憤りに震える身体を必死に抑え込んだ。

 

この一瞬で、ツキトの中の理性軍と感情軍の死傷者合計が1億を突破した。

 

前世を含めても、ツキトの長い人生でこれほどの数はおそらく新記録であろう。

 

激しい、烈しい、怒りの焔が内に燃える。

 

烈火か?それとも業火か?否、逆だ。

 

氷のように、凍てついた怒り、冷たく暗い、滾るような殺人衝動。

 

ツキトはそんな熱くて冷たい、奇妙な焔を燃やしていた。

 

必ず殺してやる…………その思いをモニターに映る男に、悟られぬように。

 

『では、そろそろ切るよ、君と話せてよかった』

 

「はっ、それでは」

 

立ち上がったツキトは会釈してからモニターの電源を落とし、会話を終了させる。

 

所長室の出口のドアを開け、外で待機していた護衛の兵と共に地上へ繋がる出口へと向かった。

 

のちにこの時の護衛の兵は言った。

 

帰り道のツキトの表情は、昔話に聞く地獄の大王の閻魔か、それか冥府の王ハーデスすら裸足で逃げ出すほど、怒りで満ちていたと言う。

 

そして時折、呟いていたのだと言う。

 

「……殺す、必ず殺す…………」

 

呪詛のように、怒りを言葉に乗せ吐き捨てていたと言う………。

 

「シュナイゼルッ……!」

 




ついに登場(?)したシュナイゼル君です!

彼には伝えたい言葉があるんですよ私!

皆さんも同じだと思います!ではみんなで言いましょう!

せーの!


「「「「死ね!!!!!」」」」


当たり前ですよねえ?こんな畜生生かしておいていいはずがない(断言

シュナイゼル君は最後に死んでもらうのでご安心ください!

えぇ!もちろんルルーシュが!主人公がぶっ殺してくれます!




なのでどうか3ヶ月近く間が空いてしまったことに関しては許してね?(ハート)

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