コードギアス オールハイルブリタニア!   作:倒錯した愛

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おひさ☆

みんな!ソドミー、しよう!ソドミーはいいぞ!




『会議』は『延期』

「では、最後に、国外への亡命した元国民の処遇についてですが…………」

 

ユーロピア連合の中心地域、フランスのパリにおいて、終戦時の和平条約を除けば、戦後初となる合同会議が今まさに行われていた。

 

そして、その長い長い会議もようやく最終課題たる亡命した国民の帰国問題へとたどり着いたのである。

 

この議題が来るまでの各地域代表たちの言い訳を聴くのはなかなかに酷であった。

 

なにせ、セリフがほとんど変わりがなく、ほぼ同じ言葉を紡ぐ機械のように感じられ苦痛でしかなかったのだ。

 

一番酷なのは言うまでもなく書記なのだろう………なにせ、言い回しは違うにしても本質的は変わらないのだから、面倒な事この上ないだろう。

 

会議後の彼の胃が少し心配だ、ここで出た発言をまとめようにも『以下同文』とは書けないのだから。

 

まあ、そんな可哀想な書記くんのことは置いておこう。

 

今は、目の前で起きている激論に目を移すべきだろう。

 

各地域代表が、互いに接近して唾がかかる距離で口論が始まっていた。

 

もう『席もテーブルもあったものじゃねえ!』というレベルではない、今すぐにでもブン殴る2秒前ほどの気迫が伝わってくる。

 

私?私はもちろん座って眺めている、参加などせんよ、実に愚かしい。

 

願いが叶わぬならば、我が通らぬならば拳を振るうなど蛮族でしかない。

 

暴力はたしかに我を通す場合に使うものではある、だが、それは対等な立場であることが最低の条件。

 

本気で通す気ならば、まず食ってかかるべきは私たちブリタニアのはずだ。

 

この会議において最大の権限を持っているのは言うまでもなくユーロピア人の議長である。

 

しかし、自治区化、という事実上の植民地やエリアと大差無い扱いであるため、最終的な権限は私たちブリタニアが握っている。

 

まあ、その辺も含めて私を派遣したのだろう。

 

ユーロピアからすれば、自国に飛び込んできた敵国の貴族なんて対して怖くなんてないのだから、いくらでも殴れるし、往来で殺すことも簡単だろう。

 

軍を付けても同じ、せいぜい一個中隊あるかないかの歩兵と7、8輌ていどの装甲車だ。

 

今のユーロピアは『治安維持』の名目で武器の所持を限定的に認めている状態で、兵に至っては掻き集めれば連隊規模の部隊が作れるほど存在する。

 

無論、KMFも非武装ではあるが数十機は現存する。

 

その気になれば、軍諸共に派遣されてきた貴族を嬲り殺すことも容易い。

 

だが、派遣されてきたのが私ならどうだ?

 

要塞に対して砲兵総動員で榴弾を降らせた、ユーロピア軍にとっての悪魔でしかない私は怨む対象としては最適だろう。

 

意気揚々と暗殺に打って出てきているのも納得だ、列車にホテルに、ついでに一昨日のパリ散歩の時にも数回ほど刺されそうになったな。

 

皇家とラウンズ、ブリタニアにとって痛手となるのはどちらか?そんなものは考えるまでもなく皇家だ。

 

それに、怨みの集まり方(ヘイト管理)の観点で考えてみても、皇帝陛下含む皇家全体がテロリズムに晒されるより、私1人に集約させた方が守り易い。

 

それに、皇家やその関連人物の全ての警護となると金も人も足りないが、私1人程度のほうが安く上がる。

 

加えて、私に関係のある人物は基本的にコーネリア含む軍閥と、元より警備の厳しい研究所のロイドたち特派、そしてアッシュフォード学園しかない。

 

つまり、総督府とアッシュフォード学園の警備を強化すれば事足りてしまうのだ。

 

万が一にでも私が命を落とした場合、すぐにでもブリタニア空軍の主力爆撃機がユーロピアを小さな島の一片すら残さず完全に焦土化する手はずを仕込んである。

 

その時にブリタニア人のボランティアが脱出できず、不運にも残ってしまっていた時は…………『人質に取られ、順番に処刑されていた(な に も 見 な か っ た)』ということとする。

 

いやなに、これも、『平和的解決の為の致し方ない尊い犠牲(コ ラ テ ラ ル ダ メ ー ジ)』さ、彼ら彼女らはその報酬として、英雄として名を刻むのだ。

 

こうしてブリタニア国民を鼓舞し、ユーロピアへの弾劾をより一層増すのだ。

 

不満の対象を用意し、世論を操作し、いざ打倒のため立ち上がれと臣民を鼓舞する。

 

そうしてブリタニアはより強大な正義として聖戦の狼煙を上げ、華やかな勝利を飾り、その歴史にさらなる栄光を刻むのだ。

 

しかし………その先にあるものは、一体なんであろうか?戦いの先のそのさらに先に行き着いた時、果てに到達した時、何がある?

 

破滅か、それとも更なる苛烈な戦いか…………。

 

…………おっと!いかんいかん、会議中である事を忘れていた。

 

改めて会議の様子に目を凝らす…………までもなく、乱闘騒ぎに発展しており、警備員が止めにかかっている状況だった。

 

時計を見る、物が当たって傷ついた文字盤は止まってしまっていた。

 

腕時計の小さな針が指し示す時間と、掛け時計の時間を見比べ、乱闘が始まったのが2分前であると知った。

 

必死に議員たちを抑え込む警備員たちをぼんやりと眺めながら、明日まで延期だろうな、などと考えていた。

 

「本日の会議は!一時中断とします!」

 

予想通りに議長が大声で中断を宣言する、それは乱闘の中にかき消えてしまうものの、ヤジを飛ばすだけだった外野の連中の耳には届いたらしく、今度は議長へとヤジを飛ばし始めた。

 

「グレーテル」

 

「終わってるわよ」

 

帰るための支度が出来ているか確認のためグレーテルを呼ぶとそう帰ってきた。

 

今回はヘンゼルが留守番にして代わりにグレーテルを連れてきた。

 

顔は瓜二つで変わりはなさそうに見えるが、今回は会議ということもあって雰囲気的により秘書っぽく見えるほう…………と考えた末の結論だ。

 

それに、実に些細なことではあるが、グレーテルはヘンゼルのデータを元に若干の仕様変更が行われているのだ。

 

ヘンゼルのデータで気になった箇所を洗い出していたロイドが、グレーテルのボディ作成時にやらかしてしまったのが原因だからあまりかっこよくないんだが…………。

 

誤差の範囲だとしても、少しでも身の安全を確保できるであろうという点でも僅差だがグレーテルに軍牌が上がる。

 

もちろん、まったくの誤差の範囲でもあるかもしれないため、ヘンゼルでも問題はない。

 

しかし、前述の通り、誤差レベルだと信じてもやはり理知的に見えるグレーテルのほうが見た目的に良かったのが決め手だ。

 

未だ乱闘を続ける地域代表たちを放置して先に帰ることにした。

 

待たせてあったリムジンに乗り込み、パリにおける活動拠点の主軸、駐留軍駐屯地を目指す。

 

数週間前まで瓦礫しかなかった街並みは、今や建築途中のビルや家が所狭しと並び立ち、どの建物も土木関係者とみられる男女で作業が行われていた。

 

再建は順調、治安もそれなり、ボランティアより一足先に来ていたジェレミアの活動と、実に早い指示を出したマリアンヌに感謝だ。

 

おっと、そうだ。

 

「グレーテル、ヘンゼルに連絡しておけ」

 

「集合、でいいのね?」

 

「片付けを念入りに、とも言っておけ」

 

うなづいたグレーテルは精神感応波で……はなく、ケータイを取り出してヘンゼルの持つケータイへと繋げた。

 

本来こんな面倒な事をせずとも、電波以上の伝達速度を持つ共感覚で伝えればまさしく一瞬なのだが、運転手がいる前でそれはできない。

 

運転手が軍属だから守秘義務から精神感応波については話さないだろう…………という問題以前に、精神感応波の存在そのものがトップシークレットなので、不審な行動をとったり、あまりにも無口が過ぎるのもいけないのだ。

 

考えれても見てくれ、一切喋ることのない仕事などないだろう?

 

バスでもタクシーでも車でも、となりにそれなりに気心の知れる中の者がいたなら一、二言の世間話程度は話すだろう?

 

ただ無言でじっとして動かないまま、なんてことはあり得るはずがない。

 

共感覚は無言でじっとしていてもできることなので、一般人からすれば不気味にしか映らない。

 

そのため私は、人目がある場所でヘンゼルとグレーテルに伝えることがある時は会話でやるようにした。

 

『時が来るまでは、精神感応波技術は完全に秘匿する』

 

それが私とロイドの下した最終決定だ、そう簡単には覆させん。

 

再建途中の街並みを進んで行くと、正面に仰々しい門が見えてきた。

 

あれがパリにおけるブリタニア軍の駐留拠点の入り口だ。

 

派手好きなフランス人らしい無駄な装飾の入った門に些か不愉快にさせられるも、警備中のブリタニア軍兵士の堂々たる立ち姿で苛立った心が中和される。

 

車に乗ったまま顔パスで門を通り、一際大きな営舎の前で止まる。

 

ここがひとまず仮の総督府施設だ。

 

本来ならもう少し大きなビルのような建物が望ましいのだが、立地と警備の問題で仕方なくこのボロ小屋になったそうだ。

 

しかしながら、その程度でジェレミア率いるエリート治安維持部隊は怯まなかった。

 

その活躍ぶりは日本エリアを通り越し本国にまで駆け抜けたと聞く。

 

その活躍とは━━━━━。

 

連日連夜、書類との格闘…………体力有り余るジェレミア率いる特選部隊にとって、椅子に座って腕を動かすだけの作業など苦ではなかったそうな…………むしろ脚の筋肉が弱ると言ってスクワットをしながらの作業だとも聞いた。

 

鳴り止まぬ電話(リフレイン・アンコール)…………ユーロピア国民の反発的感情からのイタ電もあったが、真摯に対応、日に日に減っていると聞く、現在は初期の1/4程、だいぶ静か。

 

行くぞガーデ◯マン!パトロールだ!…………昼の街に繰り出せばゴミ拾い、夜の街に繰り出せば不良青年を熱く説き伏せる……ジェレミア、お前がブリタニアの良心ナンバーワンだ!(時点でオデュッセウス(無 能))。

 

━━━と、非常にポジティブ、というかマッシブ、マッチョの化け物フィジカル集団だ。

 

気合いと筋肉で激務を乗り越える変態集団化しているが…………結果としてプラスなら、いいんじゃないか?

 

車を降りて営舎を見上げる、営舎は以前見たボロ小屋と見違えるほど修繕されているのが一目でわかった。

 

ひび割れた鉄筋コンクリートの壁は塗り直されて明るい色のペンキで一色になった。

 

割れたガラスは全て取り外され、新しいものに交換された。

 

中に入って廊下を歩く。

 

電灯も心なしか設置箇所が増え、外見からは思いもつかないほど中は明るかった。

 

相当の念が入って修復された様子は存分に確認できたが、この予算の出所は一体どこから………?

 

なんて考えながら、ジェレミアたちの執務室の前に着いた、電話の着信音が廊下まで伝わって来ている。

 

存外に壁が薄いのか?まあ営舎だからな…………と納得しつつ古めかしいドアを数回ノックして入室する。

 

「失礼する、治安維持部隊部隊長のジェレミア准将殿に用件があり参った」

 

「おぉ!ツキト君じゃぁないか!あぁすまない、男所帯なもんで少し汚くしてしまってな……どうも片付けは苦手で」

 

肩が懲りそうなガッチガチの入室の挨拶にもフレンドリーに返してくるジェレミア。

 

さすが現場にいた人間は違うというか、そもそもジェレミアからして私は弟のような存在なので、大抵このように返されてしまうのだが。

 

そしてジェレミアの言う通り狭い部屋には書類が散らかっているのが嫌でもわかった。

 

「構いませんよジェレミア卿、私のデスクもこれが常ですから」

 

「そうかね?やはり私たちにデスクワークは馴染まぬか」

 

ボヤきながらジェレミアはグレーテルに目をやった。

 

「おっと、グレーテル君か、さっき来たヘンゼル君は奥の部屋でくつろいでいるよ」

 

さすがにバイクの方が早いなヘンゼル、私と同等の運転スキルが功をそうしたか。

 

「こんな部屋じゃ息も詰まるだろう?君も奥の部屋に行きたまえ」

 

「はい、オリジナル?」

 

「心配はいらん、何かあれば呼ぶ」

 

そう言って手をひらひらさせて見送る。

 

「んじゃ、3日くらい寝て来るわ」

 

「せめて15分くらいにしろ」

 

ボケにツッコミを入れつつ奥の部屋へと向かうグレーテルの背中からジェレミアへと視線を移す。

 

置いてあったパイプ椅子をジェレミアのデスクの近くまで持って行って座り、口を開く。

 

「ジェレミア卿、活動状況はどうですか?」

 

「最初の頃は酷かったが、今では好意的に受け取られていると感じているよ」

 

「なるほど、何か、怪しい……………組織的な動きなどは?」

 

「ふむ……確認できたものでは、小規模だが週に一回の頻度でユーロピアの警察にも我々ブリタニアどちらにも未申請のデモが発生していることくらいだ」

 

未申請の小規模デモか………人目と軍を引きつける目的でもあるのかもしれん。

 

「それは何かしらの宗教的な活動ですか?反ブリタニアの同志を募る……というような」

 

「いいや、自治区化したユーロピア政府に対する不平不満を叫んでいるだけのようだ…………えぇっと………この資料にまとめた、これまでのデモの内容と参加者の調査と開かれたデモの累計を載せておいた」

 

「ヘンゼル」

 

資料の束を受け取り、すぐにヘンゼルを呼び出す。

 

「はいはーい!お呼びですかぁ〜?ごしゅj」

 

スパァァアンッ!!

 

懐から出したハリセンでヘンゼルの頭を叩いて黙らせる。

 

機械相手には効かないが、人目のある場所のため…………。

 

「いっっっっ…………たぁぃ……」

 

このように、目を潤ませ蹲って頭を抑えて痛がる演技をする。

 

ついでにこのハリセン、見た目こそ硬い厚紙で出来ていて思いっきり殴れば痛そうだが、ピコピコハンマーのように派手な音がする割に痛くないものだ。

 

ハリセンひとつ取っても少し力を入れてしまえば、アンドロイドであろうと首がもげてしまうからな………。

 

冗談抜きで私自身が一番危険だな。

 

「グレーテルとメンバーを良く確認しておけ、何か事が起きた時に使うはずだ」

 

「ひゃぁい…………うぅ……いひゃい………ょぉ……」

 

テロを起こす人物としてみれば、この資料にあるメンバーとその身内は第一候補になるからな。

 

「へ、ヘンゼル君?大丈夫かね?」

 

さすがのジェレミアも引いた様子だ。

 

「ジェレミア卿、これ(ヘンゼル)は頑丈なので問題ないです、今やってるこれも演g」

 

「そう!キューティクルなヘンゼルさんは石頭なのだ!」

 

飛び上がったと思えばズビャーンと効果音でもつきそうなポーズをキメるヘンゼル。

 

…………もう一発いっとくか?

 

「そ、そうかね………」

 

「それでは次に、配給の物資は充実していますか?」

 

「十分…………ではあるが、すべてを行き渡らせることができない状況だ」

 

「何か問題が?」

 

「届いた物資は公正に分配させてはいる、私の名に誓って…………ただ、どうしてもフランスより遠くへ、となると危険もあって十分な配達ができない」

 

「陸路は未だ安全とは言えないでしょうからね……」

 

フランスは大抵駆逐した、だが他の地域に野盗化した兵隊がまだ数え切れないほど残っているのは確かだ。

 

何かの間違いで野盗が戦車でも持っていたら…………と考えると危な過ぎておちおちトラック輸送もできない。

 

ルートを確保できても、到着したところを待ち伏せでもされたらおしまいだ。

 

空挺降下で完全に安全化したいくらいだが…………こんなことで空挺をポンポン使うことはできん。

 

空挺はKMFが広がった今でも切り札として使われる、切り札をチラつかせては脅威度が下がってしまう。

 

「フランス以外で十分な距離の滑走路があるのは隣接するスペイン地域の南端、それ以外となるとオランダとポーランドしかない、その周辺ならば…………」

 

ジェレミアがラミネート加工されたユーロピアの地図をデスクに置き、滑走路のある場所をマーカーで◯をつけていく。

 

「スペインの滑走路は戦争の序盤から拠点として利用されていた場所で、部隊も駐留している、この中でもっとも安全だろう」

 

「そこへのフランスと同量程度の物資を空輸をすることにしましょう、ポーランドとオランダはどうなのですか?」

 

安全ならば、そこに直接空輸したいのだが……はたして?

 

「ポーランドも安全性という点では問題ないはずだ、しかしオランダは隣のドイツが問題で近づけない」

 

「野盗ですか?」

 

「対空砲トラックと戦闘装甲車を持った武装集団がいる…………という噂だ」

 

「厄介ですね…………真でも、嘘でも」

 

フラフラした正確性に欠ける情報や、噂ほど怖いものはない。

 

それが本当かもしれないものほど人の恐怖心をイタズラに刺激する。

 

「火炎放射器装備型のKMF部隊を送っては?」

 

「都市部ではなく森の中なんだそうだ、戦後に森を焼くのは反感を買う、だからと言って迂闊に進めば罠にはまる」

 

「なら、少し前に開発が完了した高機動装甲車の実地テストと称して偵察を行うのは?」

 

「その高機動装甲車とやらは、信頼できるのか?」

 

「データ上ではありますが…………。

①新型サスペンションにより、従来の装甲車よりあらゆる地形、地象での機動性は高いものになっている。

②90mmクラスの威力を持つ戦車砲を限定旋回の砲塔に装備しており、極めて高火力。

③内部の設備の配置の見直しによる不意の打撲などを防ぎ、搭乗員の防護性能の改善。

④小型化による被弾率軽減、および戦車に使われる複合装甲による高い防御力を獲得。

…………総合的に見ればグラスゴーを上回る性能を持っています」

 

しかし、と付け加え。

 

「①頭数が少ない試験車両止まりであること。

②グラスゴーと同等以上のコストがかかる、これは従来型のおよそ2倍〜2.5倍にのぼるものかと。

③未だ屋内試験のみであり実戦ではカタログスペックに満たない可能性があること。

④全地形をタイヤで走破するコンセプトのため、従来型のように履帯を付けたり、ゲタを履かせたり、空挺作戦用のパラシュートを装備することなどができないこと。

⑤試験車両であることから搭乗する兵の訓練がされていないこと。

⑥複合装甲はあくまで砲塔及び前面装甲に限られ、側背面の防御性能は比較的低い。

⑦また、⑥に付随して、複合装甲による重量増加からフロントヘビーとなってしまい、走行性能に影響がある可能性がある。

⑧小型化によって搭乗員が密集し、運が悪いと一発の被弾で全滅の場合もあり得る。

……………これらを除けば、都市部等の『後方警備』程度は務まるかと」

 

「…………開発が完了しているのではないのかね?」

 

「一応ではありますが、⑦の問題はバッテリーとモーターを車両前方に、砲塔を車両後方に配置することでカウンターウェイトとして運用することで解決しました………………しかし、それ以外の構造の見直しは行われずに終了、完了と称した事実上の打ち切りでしょうね…………ジェレミア卿は装甲車に求められるものはなんだとお考えですか?」

 

「こっちに来る前に、ロイドから大まかに聞いた、話半分だが…………」

 

「そうでしたか、では、少々省いて説明しますと、大まかにふたつです」

 

近くのクリップボードを手に取り、コピー紙を一枚挟んで鉛筆でさらさらと描いていく。

 

「まず一つ目は大雑把に『頑丈さ(タフさ)・兵員輸送能力・最低限の攻撃力』の三つの能力を求められています、これは現在使用されている装甲車がすべての条件を満たしています」

 

「ロイドが言ってたのは確か………どんな悪路でも壊れない頑丈さと、安全に乗員を移動できること、そして、軽装甲のテクニカルや高機動車(ジープ)を破壊できる程度の火力、だったか?」

 

「その通りです、戦争において最重要兵種はKMFパイロットではなく歩兵です、どれほど危険な状況下であっても陣地占領を行うのは歩兵………ならば装甲車のあるべき姿は彼らを守護する盾であるべき、ということですね」

 

「でも、もうひとつは?」

 

「もうひとつ、それは時代の移り変わりによって生まれた、KMFに対する対抗心から来た技術者達の最後の矜持、最後の抵抗とも取るべき案…………『KMFと同等以上の戦力』であること、です」

 

「…………無理だろう」

 

「ええ、無理です」

 

滅多なことがない限りジェレミアは【無理】とは言わない、つまりこれは、そう言う意味を持った言葉だった。

 

現役の軍人をもってして、不可能と言わしめた、そう言わせるより他なかった。

 

「構造以前に形状も、重量も、装甲も、何もかもが違い過ぎるアヒルの子に、同じことをやれと言っても不可能だった、ということです」

 

「それが先の新型装甲車と言うわけか………新型をこっちに寄越すとは何を考えているんだと思ったが、ただの厄介払いとは」

 

ため息をつき、あきれた様子で椅子に座るジェレミア。

 

「…………ジェレミア卿にはバレバレでしたか」

 

「複数回に分けて見たこともないコンテナが本国から運ばれてきているのを見てな、大方こっちなら試験に丁度いいとでも思ったのだろう」

 

「一番の理由はコスト面です、【研究が打ち切られた未完成の新型装甲車】がいくら潰れても上にとっては痛手にはなりませんから、何せ、技術漏洩の観点から暗黙的に新型兵器の類いは【存在しない】ものとなっていますからね」

 

「金、か………だが、仮にも新型だぞ?我が国の大貴族や企業からの様々な投資があって技術部が作ったものなら、従来型よりも高価なはずではないか?」

 

「これから倉庫の肥やしになるであろう装甲車と、生産が続けられている従来型では重要さがまるで違うんです…………意訳すれば【全部使い潰しても構わない、そうする場合は戦果を立てれば損害は不問にする】………いつものプロパガンダに利用するためですよ」

 

「また宣伝目的か……我々は国民に嘘をつくために仕事をしているのではないと言うのに」

 

「まあまあジェレミア卿

、世には必要な嘘というものもあることです…………それに戦後の動乱を鎮めたのは、冷酷な真実ではなく、優しい嘘でありました」

 

「不用意に悲しませることも、傷つける必要もない場合はそうかもしれんが………」

 

「いえいえ、国民に対して、陛下が国防に関心を寄せていると思わせるためには、このような兵器の開発も必要なのですよ」

 

「うぅむ…………難しいことはよくわからん……」

 

「国民の明日のために、無駄に日々苦心する臣下がいると言うだけです」

 

陛下に政治への興味などさらっさらなく、今はただ臣下たちが練り上げた法が帝国を支配するという、君主国であるにもかかわらずその実共和制のようなおかしな状態になってしまっている。

 

しかし、そんな状況にほころびが入りにくいのは、ひとえに現皇帝シャルルのカリスマ性の賜物か。

 

ならばそのカリスマ、求心力諸共、奪い取ってくれよう。

 

私の力で、ルルーシュがな!

 

たとえルルーシュのカリスマがなくても、厨二病が治らなくても、私はルルーシュを皇帝にのし上げてみせる!

 

必ず、必ずだ!

 

「陛下なりのお考えあってのこと、ということか………」

 

「案外、後継者を探しているのかもしれませんね」

 

「後継者!おぉ、それはなんと…………うん?それは喜ぶべきことなのか?」

 

「本当であれば、陛下のご判断を信じて待つのみでしょう…………しかし、陛下に擦り寄らんとする邪なる者共は大人しくしているはずがない、下手に噂が広まれば皇家の方々や貴族だけではすみません」

 

権力に擦り寄る無能どもにいいように動かれるなど、実に腹立たしい、虫唾が走る。

 

「マリアンヌ様でさえ狙われかねない今、内部に敵がいるという状況ははっきり言って気持ちが悪い」

 

そこで、私はジェレミアに聞いた。

 

「陛下に寄生する虫はその親玉から叩いて潰さねば卵が残ってしまいます、そこでジェレミア卿………………内部改革、いいえ、革命にご協力いただきたいのですが、どうでしょうか?」

 

「カーライル卿!側でお聞きしておりましたが、いくらあなたでもそれは不敬罪ですぞ!」

 

ジェレミアに革命への協力を求めるが、ジェレミアが口を開くよりも早くジェレミア配下の兵が口を開いた。

 

「不敬?ほぉ…………民の財を貪り、陛下の権力を傘にした下衆どもによる支配が行われている現状を破壊するための一手を、貴様…………不敬と言うか、なるほど」

 

その男の目を見た瞬間、色々と察した。

 

いや、見るよりも前から、嫌な空気のようなものを感覚で感じ取っていた。

 

「ふむ…………グレーテル」

 

「なーに?もうちょいでロンドンクリアなんだけど?」

 

扉から顔を出したグレーテルは不満げな表情でそう言った。

 

ってかおい、もうロンドンまで行ったのか、早いなおい。

 

「アレを適当な取調室にでも連れて行って吐かせろ」

 

「了解、ヘンゼルー、画面構わないでよね」

 

グレーテルはヘンゼルに釘を刺すと男に近寄って行った。

 

「どういうことですカーライル様!?」

 

「貴様の様子がおかしいものでな、なにか隠しているのではないか…………そう思ったに過ぎん」

 

「私と取調室でちょっと話せば終わるしさ」

 

「し、しかし…………ジェレミア卿!」

 

「…………ツキト君、私は難しいことはよくわからない、だが、その革命とやらで多くの犠牲が出るかもしれないと私は直感でわかった、わかってしまった…………そのようなことは陛下に仕える者として容易く容認できるものではないのだ…………どうか、考えを改めてはくれないか?」

 

「良いでしょう、では、今しばらく待つとして…………その男、ユーロピアの反政府組織と内通していますよ?」

 

「なにぃ!?本当かね君!?」

 

「そのようなことはありません!カーライル卿も冗談は…………」

 

「私はスパイ風情に冗談など言わん、連れて行け」

 

言い放ち、グレーテルに連行を指示する。

 

違う違うと喚く男、未だ私を宥める気でいるジェレミアの声を遮断してひとり呟く。

 

「どこまでも腐っているというのか………」

 

大義なきブリタニアの改革、否、革命は早める必要がある。

 

ジェレミアが率いた純血派も引き込みたかったが…………ジェレミアはテコでも曲げんだろう。

 

まずは…………ナイフで少しずつ削っていくとしよう。




ツキト「革命!暴力!政権掌握!って感じだな」

C.C.「そのための、間諜」

ツキト「そのための洗脳?そのためのカリスマ?」

こっから展開がすっごい荒れるから、見とけよ見とけよー?


誤字修正しました!

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