外側のやばさ…………感じるんでしたよね?
ツキトside
白い神の端末ですらマリアンヌを容易に轢殺できる、本体であればもはや戦いにすらならず、上位神からすれば手を振るうだけで体がバラバラ千切れ飛び飛散し、最高神の前では全てが無力。
ただひたすらに無力、無意味、無価値なのだ。
剣を極めた、槍の極致に至った、最長距離の狙撃をやってのけた、ビジネスで成功し数兆ドル以上稼いだ、戦争に勝って英雄になった。
それら全ての讃えられるべき答える事柄に、『だからどうした?』、『否』を突きつけられる絶対存在━━━━それが最高神なのだ。
では、それを知って挑むのを止めるのか?
私は『それでも否』と言う。
せっかく身体能力含めた私自身のあらゆる力を転生によって引き継ぎ、さらに神殺しの力まで会得したのだ。
これほどの強大な力を、全力で振るえる相手などこの世にはいない。
それでは私は満たされない………私を打倒しようと小細工を仕掛けて立ち向かってくる者たちをあしらい、それなりの実力者とそれなりにパワーをセーブして戦うなど、息がつまる、とてもとても窮屈だ。
あぁ、そんなのは嫌だ、伸び伸びと力を振るい、破壊と殺戮を振りまいてやりたいと言うのに…………。
この力で、より優れた強者との純粋な力比べをやりたいというのに…………。
それなのに…………この世界には、私と対等の存在などいなかった!
理解してしまった、白い神との会話で、私を超えるものはこの世界に存在しないと!
これまで、そしてこれからも、私が相見える敵は格下、全て等しく下郎でしかないのだ!
だが…………いるじゃないか、この世界の、【外側】に!!
私は馬鹿だ、阿呆だ、愚かだ。
私などただの1人の無知蒙昧にすぎなかったと悟った。
ゴマ粒がごとき世界の【内側】で、最強無敵を気取るなど、矮小の極み。
なぜ世界の外に目を向けなかった?あぁ……愚かな自分自身が忌々しい!!
いたではないか!すぐそこに!挑むべき絶対の強者が!!
知ったときは絶望した、後悔だってした。
しかし、それ以上に湧き上がる、挑戦への高揚感!強さのゴールなど最初からなかったのだ!
あったところで内側のゴール程度だ、そんなもの意味はない!私が目指す強さは、最強は、まさしく外側の存在!
ならばどうだ?私は勝てるのか?戦えるのか?精神は持つのか?
決まっている…………毛頭勝てぬ!戦いにすらならん!精神など容易く砕け散るだろう!
鍛錬も役には立たんだろう、ならば磨くべき技は!?
それは【神格】、神の素質を持つ者のみが身に付ける独特の空気、オーラとも言えるだろう。
どのように鍛えればいいかなど知らないが…………その程度は小さな問題よ!
戦いの時が来るまでまだ時間はある、待っていろ最高神。
お前は私が殺す。
「筋肉痛で動けない、だと?」
「ごめん、ツキト……」
「すまないツキト君!彼の身体能力が予想以上に良いもんだからつい………」
総督府でいつもの如く書類整理中だった私に、電話がかかってきて医務室に呼び出されたと思ったら…………。
皆勤賞そのものというべき存在のスザクが、ベッドに力無く横たわり弱音を吐いているとは露にも思わなかった。
その原因がジェレミアとの格闘訓練によるものと聞いて笑いも出なかった。
「良いさ、訓練に加えて日々の公務の疲れが出たのだろう?ゆっくり寝て休むことも大事だ」
「で、でも、これじゃユフ……ユーフェミア様の護衛が」
「ふむ、確かに護衛がいないのでは不安だ…………ジェレミア卿、臨時の護衛を頼めますか?」
「任せてくれツキト君!かのコーネリア殿下の妹君のユーフェミア様の護衛!しかとこのジェレミア・ゴットバルトが承った!」
うーん、この超熱血スゴクイイヒトのジェレミア………荒れた胃が爽やかになる。
「すみませんジェレミア卿……」
「気にするなスザク君!休むこともまた鍛錬だ!」
「はい!師匠!」
えっ?お前らそういう関係だったのか?
…………まあ、気は合うんだろう、似た者同士だし。
ん?それなら…………。
「ジェレミア卿、申し訳無いのですが、スザクとの訓練にKMF訓練を取り入れることは可能ですか?」
「できるとも、申請さえ通ればやる予定だった」
「では、後にスケジュール表の提出をお願いしてもよろしいですか?空き時間との兼ね合いを確認したいので」
「もちろんだとも、しかし突然どうしたのだね?」
「黒の騎士団とのKMFの模擬試合を考えていまして、使用するグラスゴーの感覚に慣れてもらおうと」
一般兵は常から乗り回しているが、スザクはランスロットしか乗っていないし、武器もランスロットのものだけだからな。
早めに慣れておいてもらったほうがいいだろう。
「ふむ、よろしい!スザク君は私に任せてくれたまえ!」
「お願いします…………というわけでスザク、異論は?」
「感謝しかないよ、グラスゴーにはまだ乗っていなかったし感覚を掴みたかったから」
「なら良い、模擬試合では是非とも優勝を頼むぞ、ユーフェミア様の騎士殿?」
「任せてよ!ユフィの騎士として、勝利を持ち帰るよ!」
「嬉しい返事だがその呼び方はNGだぞ」
気合の入った宣言にそう返す、ポカンとしてから気づいたようにハッとすると苦笑いを浮かべた。
「ハハハハハ……」
「公の場ではやらかさないようにな?」
「うん、気をつけるよ」
まあ、スザクなら次はやらかさないだろう。
ジェレミア卿は目を丸くして固まっていた。
再起動したらスザクは問い詰められるのだろうが………まあ、最後のフォローくらいはやっても良いだろう。
そう考えつつ、良い時間だったのでスザクにおやすみと伝え、執務室に戻った。
スザクside
「……………はぁ」
情けない、このくらいの訓練で筋肉痛で動けないなんて………。
ツキトだったら、きっと何の苦もなくやり遂げるはずだ。
早くツキトに追いついて、もっと役に立てるようにならないと……なのに。
「くそ………」
こんなザマじゃ、追いつくなんて到底出来ない。
アンドロイドの暴走事故、あの時僕はなにも出来なかった。
本当なら、ツキトと一緒に中に入って戦うべきなのに、ユフィの近くにいれば良いと胡座をかいてしまった。
それなのに、何もしていないのに、ユフィやツキトからは褒める言葉をもらってしまった。
違うんだ、僕は………俺はあんなことをしていたかったんじゃない!
ツキトの隣で、一緒に戦いたかったんだ!
ツキトなら、きっと必要なら俺を呼んだはず、でも呼ばなかった、つまり俺じゃ足手纏いにしかならなかったってことなんだ。
だから鍛えなきゃいけない、ユフィの騎士になって慢心してた。
ここで油なんか売っていられない、もっと上を目指すんだ。
どうせなら………ツキトと同じ、ラウンズの席くらいはとってみせないな。
そう考えていると、医務室のドアが開いた。
ヒョコッと顔を覗かせたのは、さっき出て行ったツキトだった。
「あれ?ツキト?なにか忘れ物かい?」
何も持ってきていないはずだけど………。
「あぁ、すまんなスザク…………そうだ、次の訓練の日程が決まったら、私も参加させてもらっても良いか?」
「ツキトが!?う、うん!もちろん!」
これはチャンスだ!ツキトにこの2週間で強くなった俺の実力を見せて認めてもらうんだ!
「ふう、よかった、ダメと言われたらどうしようかと」
硬い表情を和らげて微笑むツキト。
「ダメなんて言わないよ、ツキトもデスクワークで鈍っているだろうし、それに……」
俺の力を見てもらわないといけないんだから。
「ま、その通りだな、適度に運動もしなければ鈍ってしまう、ただでさえラウンズで最弱なのだから、せめて動ける程度には慣らしておかないとな」
「そんなことないよ」
ツキトはもはやラウンズ最強でも違和感ないくらい強いよ。
「ははは、ありがとうスザク、私もまだまだ、精神の鍛錬が足りていないようだ」
ツキトはそう笑いながら部屋を出て行った。
俺よりずっと仕事も責任もあるのに、あんなに余裕を持っていられる…………壁は大きいなあ。
肉体も精神も、はるか上。
でも諦めない!まずは俺なりに地道にコツコツとやっていこう!
スザク君の成長フラグ。
努力型のスザク君が本気出したのならすぐに強くなります。
しかし、ツキトも努力型で方向性がほぼ同じなため、正直部が悪い勝負です。
なお、ルルーシュは才能型、アーニャとナナリーはハイブリッド型です。
ハイブリッド型は器用貧乏になりがちですが、今は2人とも剣一本に絞った努力を積み重ねているので、成長は努力型よりも早いです。
なお、才能型は元が高い代わりに上昇値が低め、伸び悩むことが多いです。
以上から成長速度は、一本化したハイブリッド型>努力型>才能型>ハイブリッド型です。
例外が入るとする場合、白い神の端末と神格解放したツキトくらいでしょうね。
次回を待て。