コードギアス オールハイルブリタニア!   作:倒錯した愛

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今回は短いです、事件の後をちょこっと書いた程度。


『勇士』たちよ、今はただ『休め』

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no side

 

 

「『事件については調査中であり、早期の原因究明と再発防止に努める………また、勇気をもって立ち向かった勇士の諸君には、後日勲章を授与する』……以上が今後の予定だ」

 

総督府内グラウンドに設置されたプレハブ小屋の簡易病院、そこでアンドロイドたちによって負傷した怪我の治療を受けているブリタニア軍兵士たちに向けて、ツキトは以上のように言った。

 

「常套句はまあ、こんなものでいいとして…………まずは諸君、誰一人欠ける事無く、生きていてくれてありがとう、今はゆっくり体を休めてくれ…………あぁ、手当の心配はするな、私が回しておく、今はとにかく、食って、寝て、治すのだ、良いな?」

 

「「「イエス!マイロード!」」」

 

「ふっ…………病人が騒ぐんじゃない、馬鹿者どもめ」

 

威勢の良い兵士たちからの返事に、ツキトは笑ってそう返した。

 

「そうは言いますがカーライル様、こうも食う寝るでは体が鈍ってしまい、ジェレミア指導官に怒られてしまいます!」

 

「ジェレミア指導官は、まことに恐ろしい方でございますので!」

 

誰かの言葉を啖呵に、次々と自らの指導官であるジェレミアについて語る兵士たち。

 

年の割に強面だとか、右目がイカすとか、意外と家庭的だとか、訓練では鬼だとか……。

 

「だが、驚くほど良い人だ」

 

そんな兵士たちに向けてツキトがそう言う、すると。

 

「「「その通り!あはははは!」」」

 

ほんとうにこいつら病人かと疑うほどの笑いの旋風が巻き起こる、看護婦がやってきて叱りつけるまで止むことはなかった。

 

簡易病院を後にし、デスクで今回怪我をした兵士全員の手当等の申請書類を作成し始めた。

 

クレアと共に兵士1人1人の名前、住所、電話番号、識別ナンバー、顔写真を確認しながらペンを走らせ、次々と書類を作り上げていく。

 

怪我、病気、入院等の医療保険の申請書類は当然、軍規に沿った特別な手当の書類も作っていく。

 

休みなく続けて2時間ほどで作業が終わった。

 

「しっかし、終わってみれば気が抜けるわね」

 

「まったくだ、拍子抜けしたよ」

 

ひと段落ついて休憩している時、ふとそんな風に言い合うツキトとクレア。

 

「死んでたのはどいつもこいつも尋問中だった中華連邦の要人、全員首を切られて即死していた」

 

「兵士の傷はどれもメイスによる打撲と、ショーテルによる浅い裂傷だった、と」

 

はぁ……とため息をつくツキト、それもそのはず、重要な情報源であり今後の中華連邦に対する牽制球でもあった要人が使い物にならなくなったのだから。

 

「中華連邦との取引の駒が消えてしまうとは…………」

 

「向こうは知らんぷりしてたし、難癖つけられるよりはいいんじゃない?」

 

「マイナスになったことは喜べんよ、しかし、どうしたものか……」

 

ツキトが悩んでいるのは中華連邦との取引よりも、その後に配置するはずの潜入工作員をどう入国させるかだった。

 

中華連邦の土地に入って会議の形で大々的に放送する中、積荷に偽装した工作員を巣立つ小鳥のようにばら撒く腹づもりであった。

 

潜入工作員による『耳』が構築され次第、すべての情報はツキトの支配下におけるようになる。

 

如何なる自由も不自由も、ツキト次第で転がる向きを自由自在に変化させ、中華連邦の弱体化を狙ったのだ。

 

「脆弱な共産主義体制と、身を弁えぬ愚かな統治者どもを葬る算段が、これでパァだ」

 

「なにげえぐいわねツキト……」

 

「それは褒め言葉だぞ、少なくとも私のような人間にとっては、な…………ところで」

 

ツキトはおどけた表情から真剣な表情に変え、クレアの目を見つめる。

 

「クレアの能力で探知できなかったのか?」

 

「………それなんだけど、私の能力は1年後に確定で起こる事象と、ビックイベントだけで、『不確定な事象』や『突発的に起きるけどビックイベントではない事象』は予知できないのよ」

 

「ふぅむ…………何らかの線引きがあるのだろうか?」

 

「この前ツキトが言ってた『白い神様』の話を交えた推測だけど、たぶん、世界に影響が出すぎる事象を『ビックイベント』としているのかも」

 

「中華連邦の要人が数人死んだところで世界に影響は少ない、ということか?」

 

「本来なら、200人以上が死んでたクーデター未遂が予知できて、5人死んだのにかすりもしなかった………はあ、役に立ててる気がしないわ」

 

「………まあ、毎日のように起きている殺人事件や死亡事故、自殺までカウントされたらたまったもんじゃないからな」

 

「ぷっ、そんな能力だったら突き返してるわ」

 

ツキトの言葉に吹き出し、笑いながら答えるクレア、意外と落ち込んではいない様子にツキトは安堵した。

 

転生者(クレア)という仲間はツキトにとって大きな意味を持つ、一般には敵対して潰し合いをするのが俺TUEEEE系転生者の常だが、クレアは別だ。

 

転生の目的がルルーシュと添い遂げたいだけであるため、戦闘能力の低さも相まってツキトと潰し合いになることは無いのだ。

 

むしろ、気があうということもあって非常に密な協力関係に発展できたのも、ひとえに、ツキトがルルーシュの従者であるからこそであろう。

 

何せ、こと恋愛ごとにおいて奥手で初心なルルーシュに、助言という形でクレアを押すことなど容易いからだ。

 

以上から、クレアにとって大きな後ろ盾であるツキトだが、ツキトもまたクレアを重宝している。

 

クレアは仕事に私情を持ち込まないのだ、いかにルルーシュが大好きでも仕事中は別なのだ。

 

ツキトからすれば、自分に好意を向ける人物ではないことが1番の救いだった、何故なら、ツキトの経験上、自分に好意的な女性と2人っきりになった時、大抵ろくなことにならないからだ。

 

その点、クレアほど信頼できる女性はいないだろう、友好的でありながら明確な恋愛的好意は皆無、仕事はそつなくこなし私情は持ち込まない、さらに認識は限りなく近く意思疎通が容易という、まさに有能な部下像そのもの。

 

「兵士にも臣民にも死人が出なかったのは、偶然が重なったことによる奇跡、というほかないがな」

 

「本当に奇跡よね、まさか、【ツキト・カーライル】を分析して超えようとしてきたなんて…………ね」

 

「想像の斜め上だったぞあれは、ロボット三原則はどこにいったんだ?」

 

「3つ目は守ってるじゃない」

 

「それでは一原則になるな」

 

「いいじゃないの、どこのフィクション探しても守ってるとこなんてそんなないし」

 

ついでに三原則の内容は、人間への服従、人間に対する安全性、自己防衛、だ。

 

またまたどうでもいいが、正確にはロボット工学三原則である、本当にどうでもいいが。

 

時を同じくして、世間は大いに騒ぎ立てていた。

 

アンドロイド…………ではなく、ツキトの見せた剣技についてだ。

 

ツキトが剣技を披露する機会は少なく、ほかのラウンズのように戦闘すること自体がないこともあり、その実力について疑問視されることが多い。

 

専門家から専門家気取りの一般ピーポーまで、ツキトの剣についてネットなどでやいのやいの好き勝手言っていたが、それも一変した。

 

ツキトの見せた秘剣、【燕返し】によって、評価が変わったのだ。

 

いや、それでは誤解がある、正しくは秘剣【燕返し】の模倣、よく似た模造品、劣化性能の同一品、とでも言うべきもの。

 

発端は、あの場に居合わせた一般人の中でスーパースローカメラを持った者が撮影したビデオがインターネットに投稿されてからだった。

 

ビデオの内容は、ツキトが妙な構えをとって、突っ込んで来たアンドロイドをカウンターで斬り倒す様子だった。

 

問題は、それのスーパースロー、ツキトが剣を振るう瞬間が入っていたが、どれだけ遅くしてもその動きが素早く、ようやく捉えることができたものの、そこでさらなる謎が浮上した。

 

剣を振るう瞬間、ツキトの上半身から剣先までが3つに分身し、同時に、アンドロイドを斬ったのだ。

 

それも、重みと勢いに乗せた叩き斬るものではなく、美しい弧を描く軌跡によって両断されていたのだ。

 

証拠に、力任せに引き裂いた残骸と比べてもすぐにわかるほど、断面に差異があった。

 

現在、ツキトの剣について否定的な意見は確認されているが、今までと違って散発的で賛同者も少なく、ネットの掲示板で喚き立てる程度だ。

 

ほとんどの者は手のひらを返すように評価を改めた、多くのブリタニア臣民は言う。

 

ツキトこそ【剣聖】に相応しいと。

 

なお、ツキト自身はその評価を聞き、鼻で笑って言った。

 

『あんな芸ひとつで剣聖になれるなら、この世に手品師はいらんな』

 




いつものやつはお休みで、今回は秘剣【燕返し】についてお話しをば。

まあ、だいたいわかってると思うけど。

Fate/SNより、山門を守護する雅なアサシン、しかして幻想のサーヴァント。

もしくは、FGOより、世界唯一のマスターとともにオルレアンを解放し、魔神王を打倒し人理焼却から世界を救った大英雄。

佐々木小次郎の使った、アノ秘剣です。

ツキトが使ったのはそれを不完全ながら再現した技。

というのも、本来【全く同時に放たれる3方向からの回避不可の攻撃】である燕返しを、ツキトの本人の技量と身体能力でもってかなりの無茶をして繰り出しています。

不可能なことを無理矢理にでも可能にしようとしたわけです。

んでまあ、正直言って全く同時に3方向から攻撃すると言うのは分身でもしないと絶対に無理だったため、1、2、3、どの振りもタイミングは異なっています。

『いやいや!ツキトニキならいけるでしょ!』……【無理】です。

さすがのツキトも分身の真似事や燕返し擬きはできても本家の秘剣【燕返し】は絶対に再現できません。

何故なら、無名の剣士が生涯を通して刀を振るい続けて、死の直前に会得したような技を、たとえ前世の経験値込みであってもそんな簡単に再現することはできません。

ツキトは才能はありますが、天才では無いのです。

そう言う意味では、ナナリーのような天才とは真逆ですね。

時間を要すれば完璧にできるツキトと、時間を要すればそれ以上の結果を出すナナリー、ですからね。

なので、将来的には…………。

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