コードギアス オールハイルブリタニア!   作:倒錯した愛

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たでーま。

前回のあらすじぃ!

TKTNK飛び降り自殺。


少々勿体無いが、『秘剣』をもって切り刻もう

バキッ……バキッ……バコォォオオオン!!

 

「「……」」

 

「う、うわあああああ!!??」

 

「ば、化け物!化け物が出てきやがった!」

 

正面から堂々と出てきた2体のアンドロイドに混乱する兵士達。

 

2体のうち1体はメイスを持ったM型で、ツキトに破壊されたものと同一のものに見える。

 

だがもう1体のアンドロイド、ツヴァイヘンダーを腰に差したZ型は少し格好が異なり、マントを着けていた。

 

「ご覧ください!あそこに見えます武器を持った2人組が、今回の事件の犯人なのでしょうか!?」

 

「ラウンズのツキト・カーライル氏は2人組にやられてしまったのでしょうか?」

 

怯む兵を前に、後方からここぞとばかりにカメラを向けマイクに向かって喋り始めるマスコミたち。

 

好き放題に言いたいことを言っている者、状況を伝えることのみにとどめている者、ブリタニア兵の貧弱さについて批判している者、実に様々であった。

 

その時、ひとりの男が叫んだ。

 

「怯むな!隊列を組め!銃を構えろ!」

 

「我らカーライル様の尖兵!猟犬部隊なり!」

 

男は拳銃型コイルガンを振り上げて周囲の仲間を鼓舞し始めた。

 

男は、かつての日本への憧れと復活を強く望む以外は平凡な日本人のブリタニア兵士であった。

 

彼に転機が訪れたのは、ツキトによる猟犬部隊設立の際、志願した時だった。

 

「立て!今こそ!カーライル様の恩に報いる時だ!」

 

『君のように強い志を持つ人を探していた』、ツキトはそう語り、彼を入隊させ、軍隊内の教育機関にて教育を受けさせ、驚くべき短期間のうちに幹部へと昇格、晴れて指揮官となった。

 

ツキトの後ろ盾もあったのだろうが、幹部に至れた要因は彼の目標に対する強い意志があったからだろう。

 

「二列横隊を組め!後方の市民には、指一本触れさせるな!」

 

「りょ、了解!」

 

「はい!おいお前ら!やるぞ!」

 

その強い意志が、自殺にも等しいアンドロイドとの戦闘のために部下を立たせた。

 

だが、それは決してやけを起こしたからというわけではなく、ここにいる猟犬部隊の面々は同じ意志を持って立っているから、ということだ。

 

「カーライル様の到着までの少しの時間を耐え凌げ!」

 

「俺たちにできる全力を尽くせ!」

 

「震えるんじゃねえ……ふるえるんじゃねえよ、俺の脚!」

 

「脚が震えてるくらいでビビんな!俺なんてもう漏らしてる!」

 

「はっ!怖いのが恥ずかしいもんかよ!」

 

「どんだけ情けなくても俺たちゃカーライル様に恩を返さなきゃ死にきれねえんだからよ!」

 

「全くその通りだぜ!」

 

赤信号、みんなで渡れば何とやら、今の彼らはひとつの生命のように団結し、迷いなく防御の隊列を組んだ。

 

租界やシティに住む多くの人々を守るため、どん底から救い上げてくれたツキト・カーライルの恩に報いるため。

 

「着剣!構え!」

 

「「「イエス!マイロード!」」」

 

小銃を持った歩兵を横に並べたその隊列。

 

即ち、防御特化の【戦列歩兵(時代遅れの自殺戦法)】

 

「我らは盾だ!一歩も通すな!」

 

「「「うおおおおおお!!!」」」

 

しかし、士気旺盛で理性も飛んだ兵士たちにとって、ここを死地として自身を奮い立たせるしかないのだ。

 

何せ彼らにはツキトのような精神力も剣技もない。

 

誰も彼もがツキトからすれば一兵卒より上という程度の認識。

 

ただ、日本エリアをよりよくしていきたいという志で集ったただの日本人でしかない。

 

銃弾を弾き、高速移動するアンドロイドに勝てるわけがない…………そんなことはわかりきっているのだ。

 

だがそれでも、ツキト・カーライルの兵士として、譲れないものがあった。

 

民、臣民、人の命である。

 

「密集したまま取り囲むぞ!左翼、右翼は少しずつ開いて半包囲しろ!」

 

そのために死ぬ覚悟は…………すでにできているのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ツキトside

 

 

自由落下の気分を聞かれたらこう返すだろう、『ジェットコースターの落下の気分を味わい続ける感覚』、もしくは『内臓が上がってくる感覚』と。

 

勢いよく飛び出しては見たものの、はてさて、このままでは地面に激突してスライムになってしまうこと確実。

 

落下していく中で見える様子から、どうやら猟犬部隊が格闘でアンドロイド2体と応戦しているようだ。

 

うち1体はマントのようなものを付けていてよくわからないが、もう一方はメイスを持っていることからM型だろう。

 

あいつはS型とともに恐怖を撒き散らす【宣伝官】として製造された、ゆえに純粋な戦闘特化ではなく、動きに無駄が多い。

 

銃が怖いと感じるのは『目に見えない速さで金属の塊が飛んでくる』から、とよく言うが、そんなものを想像できる人間は少なく、結果としてブリタニアは民間人でも気軽に銃を所持できる。

 

昔ならいざ知らず、慣れ親しんだ銃は人から『恐怖を容易に想像できる音や形』という認識を薄くさせた。

 

時代とともに旧世代の武器に対する恐怖は薄くなる、それでも…………あの悍ましい見た目の拷問器具にも見える武器への恐怖は永遠だ。

 

そのメイスを以って、恐怖を振りまくための、そのためだけにプログラムされたのがM型。

 

恐怖、というのは人の潜在的な意識、『痛いのは嫌』とか、そういう思いが無意識のうちに足を竦ませる。

 

実際に壁でも殴ってその威力も見せてやれば、追い詰められた罪人は腰が抜けて動けやしなくなる。

 

そこをE型がスパッ……と、やるわけだ。

 

今も猟犬部隊の彼らはいの一番に逃げ出したい恐怖を押し退けて戦っている。

 

ある者は腕を潰され、ある者は足を潰され、そしてある者は腹を…………。

 

気に入らない、実に気に入らない。

 

M型はたしかにその役目を果たしている、不気味な動作でメイスを振り回し、恐怖を振りまきながら戦闘力を破壊し、逃げる気力さえも奪う…………。

 

距離20…………構えは大上段、距離5から振り下ろす。

 

ズギャアアアアアアン!!!

 

ズッ……ダンッッ!!!

 

その役目は一時休止だ、M型。

 

「…………少し逸れたか」

 

なんてカッコ悪い…………鍛錬が不足していたようだ。

 

ま、M型アンドロイドは綺麗に切って裂けて壊れたからよしとしよう。

 

「か、カーライル様……!」

 

「よくぞ耐えた、猟犬部隊の勇士達」

 

おい副隊長、なんだその嬉しそうな顔は。

 

「負傷者を後方へ移送、離れて隊列を形成、民間人を守れ」

 

はっ……よろよろで覚束ない足でよく立っていられたものだな。

 

最高にカッコよかったぞ、猟犬部隊。

 

「あとは…………私に任せてもらおうか」

 

残った1体のアンドロイドと対峙する。

 

アンドロイドはマントを外すと長剣を引き抜いた、ツーハンデットソードのZ型だったか。

 

「は、はい!お願いします!カーライル様!」

 

「日本エリアの平和を、頼みます!」

 

今更それを言うか、そんなこと言われずともわかっているさ。

 

…………しかしこのZ型、何か違和感がある、一体なんだ?

 

ツーハンデットソードを構えたZ型を観察する。

 

構えはツーハンデットソードを好んで使ったと言われるドイツ傭兵のドイツ流剣術、その【雄牛】の構えに見える。

 

簡略さ(わかりやすさ)、能率も良い、真剣勝負に長けたドイツ流剣術を、私に対して使ってくるとは…………なるほど。

 

ここは、乗ってやるやろうじゃないか、せめて最期の手向けにするといい。

 

私も雄牛の構えを取り、深呼吸をして一拍置いて…………駆ける。

 

距離に入ったところで横に斬る、防がれる。

 

反発力を利用して弧を描く斜め下からの切り上げ……防がれる。

 

突きが飛んでくる、鍔で剣先の軌道を変え、剣身をレールにして首を狙う。

 

剣を振り上げられ宙を斬る、空いた腹に横薙ぎが迫る、振り抜いた勢いを殺して戻して構え、防ぐ。

 

鍔迫り合いが始まるが、MVS・Cの剣腹を蹴ってツーハンデットソードを弾いて一歩後ろへ。

 

すかさず振り下ろしが来る、一歩引いていなければ頭から真っ二つだった。

 

右へ剣を払い、返す剣で横に薙ぐ、しかし振り上げられた剣に弾かれ防がれる。

 

一度引くと向こうも引いた。

 

構えたまま警戒しつつ、違和感の結論を見出した。

 

…………動きが、良すぎる。

 

私のデータ入りとは言ったが、それもたかだか10年程度もあるかどうかの西洋剣術、達人からすれば、齧った程度の練度だ。

 

本来の私のすべての剣であるならば、古今東西の剣を知り、極みに至れないまでもそれなりの腕はあった。

 

その私が、剣よりも重いとはいえ、MVS・Cという剣を振るってもやつに届かないとは。

 

最高条件ではないにしても、剣はそれなりに振るえるはず、それでもなおかすりもしないと言うことは…………。

 

まさか………。

 

「とったな?…………貴様、木偶人形の分際で、私の動きを【写し取った】な?」

 

「……肯定、プロトタイプZには、お前の動きが予測できている」

 

どうやったのか…………そんなもの聞くまでもなくわかっている。

 

「共感覚システム、それを繋げて【視て】いたのか」

 

「肯定、S型、F型、E型、E型…………各機体と共感覚システムを繋げ、お前の動きをすべて撮っていた」

 

歩法まで見抜かれていたわけか、どうりでことごとく攻撃が避けられるわけだ。

 

「面倒な……」

 

「ツキト・カーライル、お前の勝ち目はゼロになった」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

no side

 

 

「ツキト・カーライル、お前の勝ち目はゼロになった」

 

無表情で告げるアンドロイド、MVS・Cを構えたまま静かにそれを受け止めるツキト。

 

止まる時間、動かない両者、ツキトは負けを認め、もはやなすすべがないのだろうか?

 

「ふ、ふふふふふ……」

 

…………ツキトは笑う。

 

『そんなわけがないだろう、愚か者』と。

 

ツキトは笑う。

 

『私がいつ、この世界に来てから、全力を出し尽くしたというのだ』と。

 

ツキトは笑う。

 

『いったいいつになれば、私が全力を出せる戦場を用意してくれるんだ?』と。

 

ツキトは、笑わない。

 

笑みを殺して剣を構えた。

 

『結局、私の真似事をしただけか……』、そう落胆したかのように、ため息を一つ、はく。

 

アンドロイドに背を向けるようにして剣を構えるツキト、それは90度回転させた雄牛の構えに似ているものであった。

 

だが、なぜ背を向けるのか?非効率的であり、相手を挑発するにしても機械には通用しないはずである。

 

「コイツ(MVS・C)では再現も何も無い、雑多な切り返しにしかならんだろうが…………まあよい」

 

そう呟くツキトの声には、アンドロイドに対する失望に満ちていた。

 

アンドロイドの目的はツキトの処刑でもなんでもない、ただ、『強くなって見たかっただけ』なのだ。

 

『あらゆるモノの上に立つツキトを超えるにはどうすればいいのか?』という単純な問いに対して、難解な解答を提示しただけの話。

 

挑発し、観察し、転写し、利用する。

 

ツキト・カーライルの剣を、究極の剣術を、100%の完成度で『模倣する』こと。

 

それこそが最強、それこそが無敵、それそこが地においてあらゆるものを屈服させる理念であると。

 

しかし、アンドロイドたちは大きな計算間違いをしていた。

 

ツキト・カーライルという人間の剣が、ただの一代、10年程度の月日で完成されたものと誤解してしまったことだ。

 

ゆえに、ツキトは笑ったのだ。

 

「私はな、どうしようもなく下手くそだったんだよ、『剣を振るう』のが」

 

「なんだと?」

 

「何度も何度も練習しても、うまくいかなかった…………だから私は、模倣した、師の剣術を」

 

驚愕、唖然、悲鳴…………静寂。

 

ツキトとアンドロイドを囲むあらゆる人間の反応がそれだった。

 

「唯一無二の無双の剣などありはしない、時代とともに練り上げられた効率的な殺人技法、それが剣術だ、私のはそれの雑多な模倣に過ぎない」

 

ツキトは暗に、それでいてストレートに言い放ったのである。

 

『おいアンドロイド、お前がコピーしたのは、究極の殺人剣の劣化コピーだ』と。

 

「かつて、振るえば空気すら震えず敵を斬り裂ける究極の殺人剣があった、長い年月の中で受け継がれ、技は磨かれていった」

 

だが、とツキトは言い。

 

「ある日、ふと、不要になった、人殺しの技など、好んで学ぶ者がいなくなったからだ」

 

「その剣術を私は、とある書によって知り、その書の文字から動きの再現を試みた」

 

結果。

 

「出来上がったのが、お前がコピーした私の剣術、言うなれば劣化の劣化、しかも直伝ではなく文章からのものだ」

 

「よかったな、夢想の剣だ、誇れよ木偶人形」

 

ツキトは笑う、アンドロイドへの嘲笑をむき出しにして。

 

「…………ツキト・カーライルぅぅぅううううううう!!!!!」

 

突如としてアンドロイドは激昂したかのように叫ぶとツキトに突っ込んだ。

 

アンドロイドの電子の脳にあるのはただただ否定の一文。

 

そんなはずがない、ツキト・カーライルの剣は無敵の剣だ、伝承の劣化コピーだなんて認めない…………。

 

それらを認めては、存在意義の否定となってしまう。

 

数多の兄弟達が切り開いた【最強へ至る近道】…………そんなものは初めから無かったのだと告げるツキトに、否を突きつけるべく疾る。

 

アンドロイドには、ツヴァイヘンダーを振るうZ型には、他の同型アンドロイドへの同情や家族のような情などはない。

 

だが、共通の認識を持った、『雑兵たる数多の群』で甘んじるのではなく、『比類無き最強たる個』のためにと役目を負い、果たした同胞であり。

 

ツキト・カーライルに破壊される【憎悪】を共にした戦友でもあったのだ。

 

信じて獲得した、今持てる最強の剣術において、眼前の仇敵(ツキト・カーライル)を仇討ちしてこそ、同胞の活躍への手向けとなる。

 

故に、アンドロイドはツキトへと駆ける、串刺しにせんと、八つ裂きにせんと。

 

「死ねぇ!!!」

 

アンドロイドが剣を振るう、剣先がツキトの肉体に到達する頃には、鋼鉄さえ切り開ける最高速度に逹するであろう。

 

だが、ツキトは動かない。

 

もうコンマ00秒以下の時間の中で、アンドロイドのツヴァイヘンダーのその一撃が迫っているのにも関わらず、だ。

 

このままではスピードののった剣先がツキトの頭蓋を叩き割り、脳味噌をザクロが如くぶち撒け絶命するであろう。

 

アンドロイドはその時気づく、ツキトの口が動いていることに。

 

聞こえない声を発していることに。

 

アンドロイドとしての高速演算処理機能が、口の動きから言葉を映し出した。

 

『それを待っていた』

 

瞬間、3つの方向からアンドロイドを覆うようにして、剣閃が煌めいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「秘剣━━━━【燕返し】」




アンドロイド「死ゾ」
猟犬部隊「「「「我々は防衛する!」」」」
隊長「さあ、いこうぜ!」

アンドロイド「ほらほらほらほら」メイスブンブン丸
猟犬部隊「「「「もう保たない!」」」」
隊長「やはりやばい!」
アンドロイド「やっちゃうよ?やっty」
TKTNK「YO!!!」ズバッ
隊長「はえ〜すっごい」

TKTNK「奪ったぁ!?」
アンドロイド「そーなの、パワー、スピード、技量、すべて同等ゾ」
TKTNK「ははぁ(嘲笑)……とぼけちゃって」
アンドロイド「は?なんで?(静かな怒り)」
TKTNK「わしの剣術は劣化コピーだったんだゾ」
アンドロイド「は?ふざけんな!」
TKTNK「本当の剣術…………見たけりゃ、見せてやるよ」
アンドロイド「ヤローブッコロッシャー!!!」

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