コードギアス オールハイルブリタニア!   作:倒錯した愛

65 / 96
『奈落』

ツキトside

 

 

「ありがとうございましたツキト・カーライル様」

 

「あぁ……」

 

やっと、終わった。

 

書記官の事務的な言葉に適当に返しつつ宮廷内の尋問室を出る。

 

宮廷の窓から見える青空を眺め、3時間に及ぶ長い質問に凝り固まった背筋を伸ばす。

 

どうも向こう側は、勝手に講和会議の場を作らされたために宮廷内は大慌て、勝ち確の状態でいきなり下手に出たことで皇帝陛下も怒り心頭………。

 

と、思いきや別にそんなことはなく、ユーロピアの領土も無事ブリタニア帝国のものになったということで、突然の終戦で大慌てする家臣に向け皇帝陛下が『別にいいんじゃない?(意訳)』と一蹴する事態に。

 

皇帝陛下はいいかもしれないが文官連中はそうではない、帝国に関するあらゆる事柄を文書で記録する役目を持つ彼らは仕方なしに私に話を聞く名目で呼んだのだそう。

 

相変わらずフリーダムな皇帝陛下で私としても助かる、本当に。

 

ルルーシュとナナリーの件について黙認している時点で私にとっては強い味方だ、権力持ちということで好感度が高い。

 

あと原作と違って優しいのもポイント高め。

 

ま、いろいろとおかしいが、優しい世界線であろうよ。

 

「あとは………神根島の【エレベーター】か」

 

思考エレベーター………【集合無意識】は、【神】と呼ばれるものの正体。

 

実体を持たない、過去現在未来に至るすべての無意識の集合体。

 

それに干渉し、世界に変化をもたらすことができる、【玉座】、あるいは【神殿】ともなるのが、【アーカーシャの剣】。

 

アーカーシャ………単に空、とか天空、とも訳されるが、この場合はおそらく、【虚空】。

 

【虚空の剣】とは、ずいぶんとおっかない名前じゃないか、そんなものがあったとしたら、きっと効果は斬られた瞬間に存在ごと消滅するようなものだろう。

 

あるいは、集合無意識に取り込まれるかだろう、シャルルやマリアンヌのように、集合無意識に塗りつぶされて消えてしまうのだろう。

 

はぁ…………すべてが終わった暁には、私も消えてなくなりたい…………と思っていたが、今となってはナナリーの前から消えるのが怖い。

 

不老不死なんて今にでも捨てたいよ。

 

ん?電話?クレアからか。

 

「もしもし」

 

『ツキトー、二次募集の集計と選定が終わったわよ』

 

二次募集の定員に達したのか、まだ三日もたってないのというのに。

 

ああそうだ、一次募集が多すぎて集計に時間がかかってしまってな、二次以降は定員まで集計されたら次の募集に回すことにした。

 

今の所、四次募集まで行っているが、三次募集はもう6割を超えているらしい、2、3日あれば四次も半分くらいは行きそうだな。

 

これほど集まるのは想定外だが、日本人の優しさに触れたみたいで私としては嬉しい限りだ。

 

「そうか、輸送機の準備はいいか?」

 

『問題ないわ、明日の朝にユーロピアを発って明後日にはこっちに着くわ』

 

「わかった、パイロットには少しでも長く休息を取らせてやれ、物資も余裕を持って運ばせろ」

 

『わかってるわ、それと、直掩機パイロットから護衛中に近くを飛ぶ中華連邦の戦闘機を見たそうよ』

 

「中華連邦…………わかった、万が一に備え武装強化型に乗り換えさせろ」

 

『そんなことしたら速度が落ちるわよ?』

 

「構わない、数も増やして索敵精度を上げろ、それからパイロットに通達しろ【警告後も過剰接近するようなら即撃墜せよ】とな」

 

『ちょっ!?そんなことしたら戦争になるわよ!?』

 

「中華連邦には輸送機の積荷について通達済みだ、それでもなお接近しようものなら【空賊】と見なし撃墜するのみだ」

 

あの輸送機は積載量は優秀で居住性も軍用にしては悪くないが、防護装備が皆無なのだ。

 

本来なら重装型の戦闘機だけでなく、爆撃機を護衛にコンバットボックスを形成したかった。

 

だが、向こうで燃料であるバッテリーを充電する設備はほとんどない、空爆と砲撃で吹っ飛ばしてしまったからそれの文句も言えない。

 

そもそも大砲撃の指示は私がきったものだ、自業自得というかなんというか………ちくしょう。

 

「中華連邦とは緊迫した状態が続いている、戦後で疲弊したブリタニアが弱みを見せればたちまち攻め込まれる……………気が乗らないが、戦力は十二分にあることを知らしめるために虚勢を張るしかない」

 

『世知辛いわね………わかったわ、重装型に乗り換えさせるわ、でも数は増やさない、これ以上増やすと日本エリアの防空網が薄くなるわ』

 

「増やせないか…………仕方ない、クレアの案でいこう、早速やってくれ」

 

『はいはい、やっておくわ………それとツキト、あんた早く帰って来なさいよね、ユフィが大変なんだから』

 

「おいこら、不敬だぞ」

 

『あんたはわからないと思うけど、昔のお絵かきに書いた婚約の宣誓文を本気で信じてたのよ?それが無効だって言われれば…………引きこもりたくなるわよ』

 

「引きこもったのか!?」

 

『えぇ、しかもリスカしようとしてたわ』

 

っ!?………うっ……………想像したら吐き気が…………それに寒気も。

 

「な、なぜもっと早く言わなかった!?」

 

『戦争が終わるまでユフィに口止めされてたのよ、「悪いのは私なんです」って謝りながらね…………ねえ?ユフィの「おにいちゃん」?』

 

「うぐっ!?」

 

クレアめ、痛いところをっ…………!!

 

だが、妹がリストカットするほど苦しんでしまうことをやってしまった私は、間違いなく大馬鹿だろう。

 

『今はもうベッドで安静にさせてる、刃物も近くに置かないようにしてるし、鎮静剤とか抗うつ剤?とかを飲ませてる』

 

「そうか……………すまない、用事をできるだけ早く終わらせてそっちに帰る」

 

『それがいいわね、あぁそれと…………あんたはナナリーちゃん一筋で満足かもしれないけど、惚れさせた責任取るくらいじゃないとただのクズよ』

 

クズ……………。

 

「責任と言ったって………重婚でもしろと?」

 

皇族復帰後にナナリーに婿入りする予定だから……ユーフェミアはどういう扱いにすれば?

 

『いいんじゃない?女の子侍らせてハーレムなんて、男の夢でしょ?』

 

「そんな畜生みたいなこと……」

 

『畜生がウダウダ言ってんじゃねえ!!!』ガァンッ!

 

「はひぃ!」ビクゥッ

 

ひぃっ!?……やだもぉ女の子怖いぃ……………。

 

『わかったらさっさと帰ってくる!』

 

「わ、わかった………」

 

下手をしたらクレアに殺されかねんぞこれ…………。

 

電話をきってハンカチで汗を拭く、かなりかいていたようでハンカチの吹いた部分がじっとりと濡れていた。

 

「…………今日明日中に死ぬんじゃなかろうか?」

 

ケータイをしまい……………その前に、ナナリーのメールが着てたと思うからチェックしておこう。

 

えーっと………ふむ、いつもと変わらない日常的なことだけだな、平和でよかった。

 

ふむふむ……………ほー、女子部員とお茶会をするのか、いい茶葉と茶菓子を買っておこうか。

 

戦勝祝い………ではないな、平和祝いとでも言うべきかな?ナナリーの友人たちに幸せのおすそ分けといこうか、たまには高級品を買っていくのも悪くないだろう。

 

「『もうすぐ帰るから待ってて、お土産に期待してね』…………これで送信」

 

私も私でいつも通り短い文で返信する。

 

さて、ついでに茶菓子を検索しようかな。

 

どうせならユーロピアにちなんだものもいいかもしれないな。

 

そうだな…………本場バームクーヘンとか本場マカロンとか…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

no side

 

 

日本エリアの総督府、その特派の研究ラボにて、ロイドは忙しなくボードを叩いていた。

 

「ちょーっとー、ローイードー?まーだ終わらないの〜?」

 

「正直だっるいんだけど〜………」

 

アンドロイド2体の声を聞きながら。

 

「あのさぁ……………君達ねえどうしちゃったのさあ?ここまで感情豊かになる機能、僕つけた覚えないんだけど?」

 

いや、余白(ストレージ)は多かったから学習能力的には可能だけど………そう力無く呟くロイドは、珍しく疲れた目で目の前のアンドロイド【ヘンゼルとグレーテル】の解析をしていた。

 

一足先に日本エリアへと棺桶で送られたヘンゼルとグレーテルは、およそ1週間ほどの時間をロイドによる解析を受けていた。

 

「学習装置の長時間連続稼働、長期間に渡る精神感応波による共感覚システムの使用、蓄積された多くの有用なデータ……………嬉しいことこの上ないけどぉ……」

 

「1週間のデータ解析進行度は2体合わせても18%程度…………ロイドさん、これ本当に終わるんですか?」

 

「精神感応波技術は最優先研究課題だから、終わらせないと予算がゼロになっちゃうかも」

 

「恐ろしいことを言いますよね、ツキト君って」

 

「あれでも大分優しい方だけどねぇ…………あー、こき使われた時のことは本当トラウマだよ」

 

ロイドは思い返す、ヘンゼルとグレーテルの2体のアンドロイド作成までのブラック企業も嘲笑えるほど過酷な2週間を………。

 

「それに比べたら、ゆっくり解析ができる今なんて『休憩時間』みたいなもんだよ」

 

「どれだけ酷かったんですか………」

 

「ストレスで体重が10kg近く落ちるくらい酷かった………って言ったらわかるかなぁ?セシル君」

 

「うわぁ………………鬼ですね」

 

「いやいや、悪魔だよ、彼は」

 

セシルの同情のこもった視線を受けつつ作業は止めないロイド。

 

ロイドはこの時、過酷な日々を振り返りつつ、今一度自分について考える。

 

自分にとって特派は本当に天職なのか?と。

 

「……ねえセシル君」

 

「なんですかロイドさん?」

 

「転職するのってありかなぁ?」

 

「うーん……難しいんじゃないですか?」

 

「やっぱり?……………はぁ」

 

項垂れるロイドを横目に見るセシルは、頭の片隅で『天才でも悩むものなのか』などと考えていた。

 

一方、ヘンゼルとグレーテルはというと…………。

 

「ねー、せめてケータイゲーム機持ってきてよ」

 

「あ、私のぶんもお願い、RTAの練習するから」

 

暇過ぎる解析に飽き飽きして娯楽を要求しだしたのであった。

 

グレーテルに至っては解析されている最中、スペックが少し低下した状態でRTAをやるとも言い出した。

 

「某ハンティングゲーなら、世界記録くらいヨユーヨユー」

 

「………解析が進まないのって無駄な機能のせいじゃないですか?」

 

「……………」

 

「あっ……」

 

セシルのつぶやきにロイドは沈黙するしかない。

 

開発者であり、いろいろな機能を付け足してしまった身としては、沈黙しか選択肢がなかった。

 

セシルはそんなロイドを見て察してしまったが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ツキトside

 

 

「入りたくない…………」

 

そう口に出せればどれほど楽だろう。

 

総督府最上階、大会議室の半分ほどの広さを持つユーフェミアの部屋の前で私は立ち往生していた。

 

クレアの話を聞き、日本エリア総督府へと来たはいいが、部屋の前に立った途端、脚が木偶の坊と化してしまった。

 

なんと情けないことか…………いや、もともと女に尻に敷かれるような情けない男ではあったんだが。

 

それでも、傷付いて閉じこもってしまった女の子に会うことが、こんなに難しいなんてな。

 

何がブリタニアの悪魔だ、何が終戦の英雄だ、嗤わせる。

 

「おい、さっさと入らんか」

 

「ッ!……C.C.か………」

 

突然呼ばれたことで振り向きざまについ手が剣に伸びかけたが、C.C.だったとわかり、手を引く。

 

本当に情けない、Cの世界で繋がっているC.C.の気配すら探知できないとは………。

 

「なんだ?私の近づく気配すらわからないほど、この扉の向こうの小娘が気になるのか?」

 

「あぁ………気配すら気にならない、無警戒になってしまうくらいには、気になっている」

 

嘲るようなC.C.の言葉を肯定しつつ、扉に向き直る。

 

「ならさっさと入れ、うら若き小娘の柔肌に傷をつけさせた、その罪の贖罪の時だ」

 

静かに、強い口調で言ったC.C.は、どこから見ても怒っているようだったが、同時に、とても悲しそうに見える。

 

「C.C.…………はっ、お前ってやつは」

 

ハッパをかけるなら、もっと怖い顔をしろよ…………そんな悲しそうな顔されたら………。

 

「あぁ、ちくしょう…………C.C.、お前はいい女だよ」

 

「ふふっ………当然だ、私は………」

 

ふっ、と笑みを浮かべC.C.は言う。

 

「C.C.、だからな」

 

「………そうだったな」

 

今なら、今ならば、脚が動くはずだ。

 

一歩、また一歩、扉に近づく。

 

ドアノブに手を掛けたところでC.C.の方を見る。

 

「何を見ている?さっさと行けよ、色男」

 

「言われずとも、私は行くさ」

 

C.C.、やはりお前は私にとって最高の…………。

 

コンコン

 

扉をノックし、言葉を紡ぐ。

 

「ユフィ?入ってもいいかな?」

 

返事はない、だが、行くしかない。

 

灯りのない部屋に入った私は、ベッドに腰掛ける少女の前に立った。

 

「ユフィ……」

 

「…………ツキト……」

 

もう一度声をかける、ユフィは小さく反応するとフラフラと立ち上がって私に向かって歩いてくる。

 

「ツキト………ツ……ぁっ」

 

小さく唸ったかと思うと、不意にユフィがバランスを崩し倒れかける。

 

近づいて倒れる前に支えると、首に腕を回される。

 

「ねえ、ツキト………」

 

「何かな?」

 

聞き返すも返事はない、嫌な予感を感じつつそのまま待っていると、チクリ、と首筋に痛みのようなものを感じた。

 

「?」

 

不思議に思いつつ、ユフィの顔を覗き込む、暗がりでよく見えないため、電気のスイッチを探す。

 

それらしいスイッチを入れると、部屋に灯りがついた。

 

部屋の様子はほとんど変わりはなく、ただベッドが少し乱れているだけのようだった。

 

「ん?」

 

そう思っていた時、不意にベッドに置かれた絵がきになった。

 

子供が描いた落書きのような絵だったが、そこにおかしさを感じた。

 

使われたクレヨンと思わしき色が、遠目から見ても赤が多いのだ。

 

瞬間、ドキンッ………と心臓が高鳴った気がした。

 

これ以上、あの絵について考えてはいけない、すぐに部屋から出るべきだ。

 

だが、私の頭脳がそれより早く真実に到達する…………して、しまう。

 

首筋の痛みが増した気がする。

 

脚は動かない。

 

それは湖の真ん中で抱き合う男女の姿、男よりも若干背丈が高い女が、男を包むように抱きしめている絵だった。

 

首筋の痛みが増す。

 

女の抱きしめる腕の先、手の部分には短剣が握られている、抱きしめる腕は男の首に巻き付くように描かれている。

 

短剣は男の首に深々と刺さり、血が噴き出している。

 

だが、男は笑っている、女も笑っている。

 

男の血でできた湖に2人で浸かりながら、2人とも笑っていた。

 

首筋の痛みが増す。

 

脚は動かない。

 

抵抗できない。

 

「おっ………あっ………」

 

ユフィの顔が見える。

 

絵よりも綺麗で美しい笑みを浮かべたユフィが、そこにいた。

 

そんなユフィに、私は首筋を貫かれた。

 

「あぁ………ツキト………………愛してる」

 

ユフィの目の奥は、深淵の深い深い闇の色をしていた。




文官「詳細オナシャス!」
TKTニキ「しょうがねぇなぁ〜」

クレア「おいゴルァ!甲斐性見せろぉ!見せろつってんだ…………YO!!!」バァン(大破)
TKTニキ「お、おかのした……」ガクブル

TKTニキ「お久しb」
ユーフェミア「愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる」ズブッ
TKTニキ「えぇ………クゥーン……(貧血)」ドサッ

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。