何でも島村卯月ちゃんかわいい!
はい、えー…………今回は、変装、というか女装回です。
noside
メイド服を着た少女の大声で藪の向こう側から現れる男3人、女2人の集団。
皆、KMFのパイロットスーツと思わしきライダースーツの上から軍服を羽織っている、男のうち1人だけ軍服を片側の肩に預けるようにしていた。
「E.U.軍、レイラ・マルカル中佐です、失礼ですが………」
「『失礼ですが』じゃないわよ!なにこそこそと出てきてんのよ!あんたら軍人ならもっと堂々と正面から来なさいよ!盗賊かと思ったじゃないの!」
質問をしようとしたレイラに、早口で怒るメイド服を着た少女、少女の手元には護身用と思わしき短剣が握られていた。
「も、申し訳ありません、驚かせてしまったことは謝ります」
「あー………はい、謝罪を受け入れるわ、だから、もう寝てもいい?眠くて無理だわ」
「え?いやその………」
「あんた、レイラとか言ったかしら?グレーテル様が謝罪を受け入れたのよ!?これから眠るとおっしゃったのよ!?はい、か、イエスで答えなさい!」
「は、はい!」
軍人として反射的に返事をするレイラだったが、早い返事に少女は満足げにうなづいて。
「話がわかるようで助かるわ、私の名前はマリア、こちらにいらっしゃるグレーテル様の世話役をさせていただいているわ」
と、先ほどまでの邪険な表情のない笑顔で自己紹介をしたメイド服の少女、マリア。
スカートの裾を少し持ち上げ軽い会釈をするマリアは、実に様になっていた。
「E.U.軍中佐のレイラ・マルカルです、こちらの4人は私の部下です、それでミス・マリア、いくつか質問をしても?」
「うーん…………いいわよ、グレーテル様が寝ていらっしゃるから、向こうの方でね」
レイラの問いに少し考えた様子を見せたマリアは、川近くに設置してあった折りたたみ椅子を指してそう言った。
「はい、ご協力感謝いたします」
「まだ感謝されるようなことしてないわよ」
クスリ、と笑ったマリアはそう言い、折りたたみ椅子の方に歩きつつレイラたちを手招きした。
男子陣と女子1人は折りたたみ椅子にどっかりと座り込んだが、レイラはまだ席に着かず、同じく席に着かないマリアを不審そうに見た。
「どうかしたのですか?ミス・マリア」
「ごめんなさいね、今お茶を用意するから」
「と、とんでもないです!お話をしていただけるだけで結構ですのに………」
「そうは言うけど、あなた達よく見るとボロボロじゃないの、目元にクマもあるわ」
「えっ!?」
思わず手鏡を出して確認したくなったレイラだが、今は持っていないことに気づき、そもそもこのタイミングで出すべきでないと思い、手鏡を探そうとポケットを弄る手を止めた。
「何があったか知らないけど、不健康な生活は美容の敵よ?」
マリアはどこから出したのか、折りたたみのアウトドアテーブルを広げ、簡素なコップを並べて紅茶を注ぎながらそう言った。
「うっ、肝に命じます」
「うん、で?レイラ、話ってなに?」
「はい、この付近で、ツキト・カーライルを目撃したりはしていませんか?」
「無いわ…………え?近くにいるの?」
紅茶を一口飲んだマリアは少し驚いたようにそう聞き返した。
「いえ、そう言うわけでは…………ツキト・カーライルはよく外出すると聞くので」
本当は付近の街でツキト・カーライルに似たラフな格好の人物がいたという目撃情報があったからであるが、軍事機密のためレイラはあえて伏せた。
「ふーん、そう、近くにいるんだとしたら気をつけなきゃいけないわね」
「ツキト・カーライルは超A級危険人物に指定されています、見かけたとしても接近を許さないようにお願いします」
「そうするわ、もし出会ったらグレーテル様が大変だもの」
「グレーテルさんが、どうか?」
「グレーテル様はブリタニアの貴族の末裔なの、本国でのイザコザに巻き込まれたくないから、ほとぼりが冷めるまでこっちにいるつもりだったのよ、なのに」
「運悪く戦争が激化しちゃった、ってこと?」
そこで口を挟んだのは男子陣で最も華奢な者、成瀬ユキヤだった。
「そうよ、ってあんた誰?」
「成瀬ユキヤ、こっちの背が高いのが佐山リョウ、で、こっちは香坂アヤノ、この仏頂面が日向アキト」
「ふーん、レイラの部下ってみんな日本人なの?」
「共に行動している彼らや兵士はそうですが、オペレーターなどはユーロピア人がほとんどです」
「そう、よかったじゃないのあなたたち、レイラが上司で」
「そうだな」
からかうようなマリアの言葉に冷静に答えたのはアキトだった、マリアは面白いものを見る目を一瞬だけアキトに向けると、すぐにレイラに向き直る。
「それで、ツキト・カーライルがもしもグレーテル様の顔を覚えていたら、どんな目に会うかたまったもんじゃないのよ」
「グレーテルさんはツキト・カーライルと面識が?」
「すれ違いざまにグレーテル様ち2、3話した程度だけど…………あいつは気に入った女をどんな手を使ってもモノにする最低のスケコマシよ、そして、自分の所有物が勝手に行動すると激怒するクソ野郎よ」
憎しみで埋め尽くされた表情から出る吐き捨てるような声が、マリアから出たものだと一瞬わからなかった。
「気にいる条件などはあるのですか?」
「あいつが会話した相手は気に入った相手なのよ」
「所有物、とはどのような段階で?」
「さあ?目をつけた時点で手に入れた気にでもなってるんじゃないの?自惚れ屋で有名だもの」
「……………あれ?レイラ、あんたヤバイんじゃないの?」
レイラの他のもう1人の女が喋った。
「え?」
「この前の市街地戦の時!あんたKMFに乗っててあいつに出会ったでしょ?」
「そういえば…………ですが、さすがにそれは」
「いいえ、あなたも危ないわよレイラ」
「ミス・マリア?」
「あいつにとって女は欲望の捌け口、いろんな女に目をつけているのも、『コーヒーの微糖とカフェオレをどっちも飲みたい』くらいの感覚なのよ」
「それでは、私は彼の………ストックと?」
レイラは声に出しつつ沸々と湧いてくる怒りを感じていた。
「ありえるわよ、日本エリアでの暴れっぷりを知ってるでしょ?」
「はい、総督を恫喝して無理矢理条例を変えたとか……しかしそんなことが可能なのでしょうか?いくらラウンズとはいえ不敬でしょう」
「当時の総督はコーネリア、彼女はあいつの幼馴染みたいよ、幼い頃からタラし込んでたんでしょうね、なんて言ったって、あのアールストレイム家だもの」
それぐらいやる子供に教えてても不思議じゃないわよ、そう言ったマリアにレイラはふと疑問を感じた。
なぜマリアはここまで情報を持っているのだろう?と。
「副総督のユーフェミアなんて酷いわよ?慕ってくれるイケメン騎士がいるのに、スケコマシにゾッコンなんだもの、笑えてきちゃうわ」
「それほどに求心力が?」
「求心力なんて高尚なもんじゃないわ、あれはただ………この話はやめときましょ、気分が悪くなるわ」
「そう、ですね…………良ければですが、私たちE.U.軍が保護しますが、如何でしょうか?」
「その辺は私はなんともいえない、私はグレーテル様の従者、主人の決定に従うだけだもの」
「では、マリアさんの方からグレーテルさんのほうに検討していただくようお話をお願いします」
「いいわよ………そうだわ、この近くに無事な街とかはないかしら?」
「ありますよ、しかし近くてもここから14kmほどあります」
「そう、ちょっと買い物がしたかったんだけど………」
「それなら、軍のトレーラーを回しましょうか?市民保護の名目ならば動かせるはずです」
「それがいいわ!グレーテル様には話は通しておくから、連絡お願いね」
満面の笑顔で言い放ったマリアに少したじろぐ男子陣、中でもガタイのいい男は少し照れているように見えた。
「わかりました、連絡をします、到着まで早くて4時間ほどかかりますので、お待ちください」
「ありがとう…………あっ、そうだわ、ここの川で釣った魚なんだけど、良かったら食べて」
マリアはテーブルに料理品を並べつつそう言った。
「いいのか!?」
「いいわよ、私じゃ食べきれないし」
「ですが……」
「いいのよ、お礼程度のものだし、残して捨てるよりも経済的よ」
「そうだぜ隊長さん、現に俺らは腹ペコだ」
「いただいたほうがいいぜ」
「うーん………そうですね、いただきましょう、感謝いたします、マリアさん」
男子2人の後押しにレイラはうなづいた。
「残さず食べなさいよ」
なお料理品は絶品であった。
ツキトside
翌日、ユーロピア軍のトレーラーに乗せてもらい近くの街の難民キャンプ区域に到着した。
休日のはずがいつの間にか敵地潜入任務になってしまった、せっかくの休みが消えるのは惜しい、だがここで情報を持ち帰れば一挙に殲滅するチャンスでもある。
武器類はグレーテルの体の中に隠すことで発見を逃れられた、これは大きい、それにバイクも回収してもらえたのもでかい。
急遽潜入を行う旨をコッソリと打電し、難民キャンプのテントが並ぶ中で見つけやすいような場所にテントを建てる、むろん私1人でだ。
「ねえ、私手伝わなくていいの?」
「グレーテル様はお休みください、あのトレーラーは揺れて腰に負担があったことでしょう」
従者とその主人の関係なのに主人が手伝っていたらおかしいだろう、察しろグレーテル。
(りょーかい………ふぁぁ、寝るわ)
…………………よし、これでいいだろう、ふー…………1人だと疲れるな、ざっと40分はかかった。
「グレーテル様、どうぞテントの中へ」
「ん?建った?んじゃ入るね、荷物よろしく」
「かしこまりました」
置いておいた荷物をテントの中に運び入れ、テントの入り口を閉める、これで外からは何も見えない、声も小さくならほとんど聞こえないはずだ。
「さてグレーテル、とりあえずここで3、4日ほど生活するぞ」
「いいけどさー、どうして?」
「共感覚を使って説明してもいいんだが…………私自身の体力が削られるから口頭で説明するぞ」
「あーさっきから繋ごうとして弾かれてたのってオリジナルが拒否してたからか」
「一回で弾かれたならそこで分かれ…………ここでユーロピアの内情をより詳しく知るためだ、首都であるパリであるならば、軍はほとんどいない、ここにいる軍人のほとんどは現在のユーロピア軍から離れた者達が集まった集団に過ぎない」
「離反者ってこと?ユーロピア軍は許さないんじゃない?余力のない状況で、放棄したパリに戦力を置いておくのは愚でしょう?装甲車も少なからずあるようだし、亡命も手配してるみたいよ、なおさらユーロピア軍が見過ごすはずがない」
「ユーロピア軍に余力がないには確かだ、ここにいる優秀な人材や兵器を少しでも多く確保したいのも確かだろう、だがそれはできない」
一度言葉を切り、繋げる。
「今の無政府状態のユーロピアを支配しているのは二つ、パリを中心とした難民支援の有志同盟、もう一つ、例の要塞にいる軍の上層部を中心とした者達だ」
「『難民』と『軍』、理解し合えるわけないわね」
「力を持たない難民と、力を振るう軍………正義感の強い奴らには、弱者たる難民の味方を名乗ろうとする」
「それでどんどん人が増えて、今のパリの有志同盟ってわけね…………そりゃ無理な話ね、パリの軍人を引き抜こうとしたら逆に絆されて引き抜かれるんだから」
「人が『気持ち良い』と感じるのは、己の自尊心が満足した時だ…………困った人を助けるヒーローごっこは、人殺ししかやってこなかった軍人にとってさぞかし気持ち良いものだっただろう」
「趣味わっる……なんでオリジナルを好きになる子がいるのかわからないわほんと」
それは私も言いたいことだ。
「オリジナルも自尊心を埋めるために人助けなんてやってんの?」
「私の場合は、その延長線上に大きな悦を見出しているだけだ、より多くの人を救うことが、我が主への奉公となることを確信している」
「おぉー………つまりオリジナルは愉悦マンと」
「自己満足のための自慰行為のようなものだからな、あながち間違いでもない」
「張り合いなさすぎ………ん、ちょっと寝るわ」
すでにテント内に広げた寝袋の中に入りつつそう言うグレーテル、最近寝すぎではないかこいつ。
「わかった、私は少し散歩してくる、何かあったら開けておくから呼べ」
「はーい……………すぅ……」
グレーテルが寝入ったのを見てテントの外へ出る、テントの外へ出たら、勝気なメイド少女『マリア』の出番だ。
「パンを売ってるお店はあるかしら?」
当面の問題は食料の調達になりそうだ。
勝気なメイド少女って、良くないです?
誘い受けロリと同じくらい好きです。
次回あたり戦闘を挟みたいなあ