コードギアス オールハイルブリタニア!   作:倒錯した愛

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外道紳士ツキト・カーライル兄貴嫌いじゃ無い好きだよ。


『人形』は『兵器』である

no side

 

 

狼のように獰猛で、ライオンのように雄々しく、蛇のようにしつこく、犬のように従順で、猫のように気まぐれで。

 

小間使いであり、従者であり、剣士であり、貴族であり、騎士であり…………。

 

ツキト・カーライルという人物を的確に表せる言葉があるのならば、それはきっと、『悪魔』以外にありえない、E.U.の政治家、軍人のほとんどはそう思っている。

 

ではE.U.の国民はどうだろうか?貴族の出でありながら庶民的であり、紳士然としながらも年相応の少年でもあり、友であれ敵であれフェアを貫こうとする姿勢や、弱きを助け強きを挫くのその姿は、まるで怪傑ゾロのようではないか。

 

…………と、『密かに』噂されていた。

 

貴族でありながら大盗賊にして真の紳士、優雅で可憐なるゾロと、同じく貴族で騎士であり紳士然とした態度、貴族位や家とも決別してまで尽くす忠誠心。

 

いつからか、ツキトの日本エリアでの活躍は、遠く離れたE.U.にも届くようになり、年不相応な紳士なところと年相応な少年らしさが、貧困層やイレブン(日本人)に人気になった。

 

そのうちインターネットが使える者がツキトの公開された情報を調べ、まるでヒーローかのようにその活躍を国内中に広め、敵国の人間であるツキト・カーライルは、ツキトにとって敵国である国民の憧れの的となった。

 

国内中に知れ渡っていることを、政治家が知らぬ筈がない、回り始めて3週間程度で情報規制を行なった、が、今でも細々とツキトに関する表の情報が出回っている。

 

………なお、表の情報しか知らないため、黒い部分や下衆な部分は知られていなかったりする。

 

政治家たちは情報規制に反対する国民に民主主義の弱点(多数決)を突かれた。

 

今の時間は、ツキトとレイラが出会ってから約1週間後、レイラ・マルカルは軽い取調を受けていた。

 

取調と言っても軍規違反をしたわけではない、軍がツキト・カーライルという人間について測りかねている現状では、対処方法がわからないため、こうしてツキトと出会って『生きたまま無事に』帰って来たレイラに情報を求めていたのだ。

 

若い女性で貴族のレイラに対し、窮屈で圧迫感のある取調室でムサイ男どもによる尋問紛いの事情聴取は、貴重な情報源であるということで却下、広い開放感のある会議室で年の近い女性のカウンセラーに全て任せることとなった。

 

「あなたがカーライルに問いかけられている時、あなたの部下の日向アキトさんがKMFに乗って割り込んで来た、あってますか?」

 

「はい」

 

ツキトの再度の問いに対し、レイラが答えを返すより先に、レイラの部隊の隊員であり日本人であるアキトの駆るアレクサンダに割って入られたのだ。

 

「あなたの部下、日向アキトがリニアライフルを構え、スピーカーでカーライルに『中佐から離れろ、さもなくば撃つ』と警告を発した、そうですね?」

 

「はい」

 

「そこでカーライルはどんな行動をしましたか?」

 

「リニアライフルを見ても動揺した様子は全くなく、むしろ余裕といった表情で日向大尉に向かって『無理やり割って入るのは無粋ではないかね?』と言っていました」

 

レイラに質問していたら突如現れたKMFに砲口を向けられたため、イラつきながらも笑み浮かべてツキトはそう言ったのだ。

 

「そうですか………………えーっと、それからは?」

 

「日向大尉に『安心してくれ、少しお喋りがしたくなっただけなのだ、時間も頃合だ、失礼させてもらおうか』と言っていました」

 

「なるほど……………それで?」

 

「自らのKMFに乗り込んで去って行きました」

 

「その時、日向アキトさんは何を?」

 

「カーライルに向けてリニアライフルを連射していましたが、彼はそれを避けて退いて行きました」

 

後に、カウンセラーがこの時書いた報告書が管理者の不手際により漏洩、アレクサンダより機動性に劣るグロースターでリニアライフルによる追撃を被弾無しで振り切ったという噂が広まり、暴徒化した市民を更にヒートアップさせた。

 

レイラ・マルカル、および彼女が管理している部隊には、略式ではあるがささやかな勲章と、ボーナスの半分程度の通貨と1週間の休暇が与えられた。

 

政府は『悪魔』を追い払った英雄に英気を養う時間を与えた、と宣伝したが、実際のところ早死にしてもらっては折角上がって来た軍の士気が崩壊しかねない、という心配によるものだった。

 

wZERO部隊の面々は休暇を楽しんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ツキトside

 

 

『〜〜〜〜………こっちはこんな感じよ』

 

「うむ、なら次は…………」

 

やあ諸君、紳士代表のツキト・カーライルだ、クレアと電話中で申し訳ない。

 

今日はとても面白い、朝のラジオをつければ、ユーロピアのプロパガンダ放送が耳に飛び込んできたのだ、内容は私を撤退に追いやったワイバーン隊というKMF部隊の宣伝のようだ。

 

向こうから情報をくれるなんて、今日はついてる日だな、しかも指揮官の名前まで教えてくれるとは。

 

ユーロピア軍中佐、レイラ・マルカル、1週間ほど前に会った女軍人、彼女がそうだったとは、面白い偶然もあるものだ。

 

『そうそうロイドから聞いたわよ、そっちに試作品持ってったって、棺桶で』

 

「戦闘ドローンのことか?凄い性能だぞ、特に私と同等のKMF操縦技術は素晴らしいものだ、そのうえ子供の世話までできるとはな」

 

『さっそく使ってるし………まあいいけど、人形好きの変態に見られないように気をつけなさいよ?』

 

「わかっている、婚約者がいるんだ、周りに誤解されるようなことは避けるさ、そう心配するな」

 

『あんたは気が抜けてるから心配なのよ』

 

失礼な事をポンポンいう奴だなぁ………。

 

「自分の分身みたいな人形だ、心配される要素がない」

 

『まああんたはナルシストじゃなさそうだけど………気をつけなさいよね、ルルーシュも心配してるわ』

 

あぁ、そういえばこっちに来る前にクレアのやつにルルーシュの電話番号を教えたんだったか。

 

事前にルルーシュには伝えておいたし、信用して良いと言ってあるためか結構な頻度でメールや電話のやり取りしているようだ。

 

すでに頻度で言えばシャーリーを超えただろうか、何回か前のクレアの電話ではデートのタイミングを聞かれたんだったか、軽く説明はしといたが、たぶん2週間以内には誘うんじゃなかろうか?

 

無理言ってルルーシュがクレアに向けたメールをコピーして送ってもらったが、文面から察するに年上であるクレアに気遣ってかいつも以上に丁寧な書き方、そして若干だが好意も見られる。

 

これはクレアの一人勝ちだろうな、シャーリーにはご退場願うとして、ミレイは利用するだけ利用して………っていうのはルルーシュが許さんだろう、まあ、せいぜい恋に悩めよ、ルルーシュ。

 

『ん、それじゃあ報告も注意喚起も終わったし、きるわね』

 

「あぁ、次はデートの感想を聞かせてくれ」

 

『ちょっ!?///まだ早いでしょうが!///この恋愛バカ!』

 

ガチャッ!!ツー、ツー…………。

 

「…………バカはないだろ」

 

思わず呟いてため息を吐く、すぐにまた電話がかかって来た。

 

「もしもし?」

 

『私だ、C.C.だ、定期連絡だぞ』

 

「ん、ご苦労様」

 

『今月に入ってエリアの成長率、貢献率は共に微上昇だ、それとユーフェミアがキョウトに対する罰を下した、徹底的な調査を行い、怪しい人物を拘束したようだ』

 

「ユーフェミア様が………ま、それなら言うこともないか」

 

『そうか、ジェレミアのほうだが、本人の希望で日本エリア防衛軍の格闘指導教官としてついてもらうことにした』

 

「ジェレミア卿が格闘の指導を……………ぜひとも受けて見たいものだ」

 

『ならさっさと帰って来い、剣で斬り合うに足る人物を求めているようだ、この間も剣の指導で熱が入ってな、50人抜きをやってたぞ』

 

「ほう、私なら100人くらい楽勝だ」

 

『マリアンヌが100人か?』

 

「殺す気かてめえ」

 

変わらないな……ジェレミア卿の見た目に似合わず熱血なところが結構好きだったりする。

 

あとC.C.は絶許。

 

「………まあいい、で、騎士団の方は?」

 

『どうやら強硬派閥が生まれたらしい、まだ定かじゃないが、早いうちに対策を考えたほうがいい』

 

「そっちはお前とルルーシュ様に任せる、私が手伝うべき案件ではないだろうしな」

 

組織のトップが下の者の暴走を止められないようではいけない、いかにルルーシュが甘いとはいえ、処罰も科せられんようでは皇帝の座は相応しくない。

 

『わかった、参考までに、お前だったらどうする?』

 

「疑わしい人間をリストアップしておき、いざ行動に出た時は速やかに鎮圧し、後に調査を行いリストと照らし合わせ処罰する、場合によっては処刑もする」

 

『参考にしておく、じゃあ、また今度電話する』

 

「あぁ、頼んだぞ」

 

『任せろ、私はC.C.だ』

 

電話をきる、さて、ナナリーにも電話を………いや、止した方がいいか。

 

「オリジナルー、子供の相手つかれたー」

 

「同じく………」

 

「ノックをしろ、ノックを」

 

スカートという寒そうな格好に防寒着を羽織ったヘンゼルとグレーテルが入ってきた。

 

防寒着を脱ぐと、グレーテルに比べてヘンゼルは少しラフな格好をしていた、ボディはどちらも微妙なBとCの中間のカップ程度なのだが、ヘンゼルのほうがラフなため少し強調されている。

 

そんなヘンゼルの言った子供の相手というのは、こいつらには非戦闘時には保護を求めて来たユーロピア人の監視・世話を頼んでいるからだ。

 

そこらの兵士に任せると暴行やレイプなどの問題が起こるかもしれない、と思ったから暇そうなこいつらに任せてみたが、意外と反発もなくすんなり被保護者に溶け込んだ。

 

本来の担当者も要件があるときはヘンゼルかグレーテルを通しているようだ、これを元に介護ロボットを開発するのも良いのかもしれない。

 

「疲れた、と言われてもな………正直な話、お前らとリンクしている時は私はずっと疲れている状況なんだぞ?わかってるか?」

 

「そうは言うけどさぁ……やっぱりゲームしたり寝たりする時にリンクしてる方が気分(?)的に気持ちがいいの」

 

「そもそもの話、リンクしてないとあたしたちはずっと無表情なのよね………表情や感情の学習のためにもリンクは切らない方がいいのよ」

 

「確かにそうではあるが…………いざという時に私が戦えない状況では困るのだ」

 

グレーテルの言う通り、リンク状態の時こそ学習装置の真価が発揮される状況で、ただの人型戦闘ドローンを多目的アンドロイドの完成形に近づけるためのもの。

 

なるべく長時間のリンクが望ましいのだが、知っての通り、私の精神がスリップダメージの如く削れていくため、ついこの間まではほとんど使っていなかったコードの力を少しだけ使うようにして精神力の回復に注ぐ羽目になった。

 

今も減り続ける精神を同じ速度で回復させ続けている、なかなかに奇妙な感覚だ。

 

「そん時はあたしたち、ヘンゼルとグレーテル姉妹におまかせ〜、ってね!」

 

「あたしはいや、ヘンゼルがやってよ」

 

「ちょっとーグレーテル?ちょっとはオリジナルの負担を減らしてあげよう、って言ったのはグレーテルでしょ?」

 

「オリジナルが倒れない程度に負担軽減を減らすって意味で言ったのよ、まあ、オリジナルがそう簡単に倒れるとは思えないけど」

 

「そうそう、オリジナルとリンクしてるからわかるんだけど………どうして平気なの?」

 

あぁ、リンクしてもコードのことはわからないのか…………リンクを始めてから連続稼働時間が1週間以上経つが、普通は数日リンクしたら数日安静にするように言われているからなあ。

 

それを無視してリンクを続けていれば、そりゃ不思議がられるだろうな。

 

「知らんほうがいいこともある」

 

「えーー」

 

「某ゲームのロボット系主人公の話だが、意外な事実を知ってしまったせいで狂ってしまったんだ…………お前たちもそうなるかもしれんから、秘密にしておく」

 

「む〜〜……オリジナルのけちぃ!グレーテルもなんか言ってやってよ!」

 

「いやー、そんな叫ぶほどじゃ無いんじゃないの?リンク中にちょっとずつ調べればいいだけじゃん」

 

「お前たちの処理能力はリンク中に限定してコンピュータ➕私の頭脳になるわけだしな………」

 

素のスペックの優秀なのは素晴らしいものだ、ロイドに感謝だな。

 

「詮索するな、とは言わん、だが仕事中にぼーっとしているようであれば……………」

 

「リンク切るんでしょ?わかってる、わかってるって!」

 

「うわぁ、調べる気満々でヘンゼルがキモいわぁ」

 

「ちょっと酷くないグレーテル!?私一応お姉さんなんだよ!?」

 

「こんな姉要らないわー、妹欲しいわー」

 

言い争う2人は、双子の姉妹にしか見えない、仲睦まじいのは結構だが、頼むから他所でやってくれ。

 

外のやつが大声を聞いて『双子の姉妹がカーライルを取り合っている』なんていう勘違いを引き起こして噂として広まっちまっているくらいなんだ。

 

「はぁ…………」

 

今日も、前線は平和だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

noside

 

 

数ヶ月前。

 

ロイドとツキトは、ロイドのラボにて話しあっていた。

 

「自律人型戦闘ドローンをアンドロイドに改造?」

 

「そうだ」

 

珍しくロイドが訝しんだ表情でツキトを見る、ツキトはいつも通りの表情だ。

 

「そんなことやってどうするのさあ?」

 

「さらなる技術発展のためだ、インコムの精神感応波技術は今はどんな段階だ?」

 

「理論上、有線では8km、無線だと4km弱の距離で精神感応波を接続できるようになったね、ある程度の小型化も出来そうだよ」

 

「それを搭載した、学習装置付きアンドロイドを作って欲しい」

 

「無茶言うねえツキト君………無論できないわけじゃないけど、アンドロイドでしょ?人に限りなく似せる関係上、部品は必然的に多くなるし、精神感応波の反応装置も小型化したけどそのぶん負荷が大きくなって熱の排気の問題が…………」

 

「いつになく弱気じゃないかロイド、とりあえず作ってみろ、金の心配はせずお前の全力を注げ……………それともあれか、自信が無いのか?」

 

ツキトは、ロイドのあげた問題点を金はあるからやれとゲスい発言で両断し、しかもムカつく顔で挑発まで行った。

 

「………………科学者がそこまで言われて黙ってるわけには、いかないねぇ…………いいよ、やってあげるよツキト君、度肝抜いて驚くといいよ」

 

ふん、と鼻を鳴らしてスタスタと机に向かうロイド、椅子に座ると紙とペンを取り出し何か描き始めた。

 

イライラした様子で頭を掻いたり、良いアイデアが思いついて鼻歌を歌ったりするロイドを見ながらツキトは紅茶をすする。

 

そしてツキトは呟く。

 

「計画通り………」

 

と。

 

数日後、試作1号が完成した。




最後のところは誕生秘話的なあれです。


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