コードギアス オールハイルブリタニア!   作:倒錯した愛

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ツキト・カーライル
特技:洗脳


『プロパガンダ放送』

ツキトside

 

 

「うっ……くぅ………」

 

ユーロピア寒すぎだろう…………今何時だ?4時……4時!?まさか暖房止まって…………あー、そういや暖房ないんだったな。

 

まだ早い時間だが……着替えておくか。

 

まず防寒用の下着を着込んで、ブリタニア軍の正規の軍服を着て、ブーツを履いて、軍帽を被れば完了、あとは長い髪をポニーテールにでもしておけば邪魔にならない。

 

かっこいいデザインなんだが、軍服の胸部分に輝く、地獄行きを告げる勲章が嫌味ったらしいったらない、もらったら名誉ではある、だがもらったものから死んでいくという不名誉な噂を聞いていなかったなら、私も喜んでいただろう。

 

ブラウン・ベルトを巻いて士官用の銃をホルスターに収める、サーベルを反対方向に帯刀して装備は完了。

 

部屋から出る前に棺桶を一瞥し、部屋を出る、私の部屋は軍内部で言う将校であるため、ここ、野戦キャンプのような場所ではテントよりも多少なり暖かい内装の簡易コンテナを与えられる。

 

まあ、テント内で寝袋で眠る兵たちと比べれば、十分過ぎるとも言える。

 

まだ起床時間には早いこともあり、番兵を残してテントの中の兵は皆寝ているようだ。

 

静まり返ったテントの集落の中心を歩いていき、KMFの格納庫に着く、見事に第四世代グラスゴーと第五世代サザーランドばかり、特殊な装備は見当たらない。

 

よく整備の行き届いているところを見るに、ユーロ・ブリタニアの士気や整備技術はかなり大きいようだ、老兵までも戦力として数えているから当然かもしれんが。

 

ユーロピア、ユーロ・ブリタニア共に疲弊しているとはいえ、ユーロピアは兵器の絶対数が足りない状況に対し、ユーロ・ブリタニアは圧倒的な人材不足だ、生産力で勝負すれば人材豊富なユーロピアに圧されるのは明白だ。

 

だがユーロピアはユーロ・ブリタニアにくらべて軍師の数が足りないのか、下手な指揮戦争当初は豊富にあった武器を喪失して現在の状況にあるのだとか。

 

逆にユーロ・ブリタニアはユーロピアにくらべて兵が足りず、ひとつの戦線に投入できる兵数が向こうの数分の一程度となってしまうのが痛いところ。

 

正直言って、本国から本腰の入った大々的な支援でもなければ、ユーロ・ブリタニアは勝利できないだろう。

 

最前線のキャンプに滞在中にそのような内容のレポートを纏めて本国に送る予定だ、もう書いてはあるため後は送るだけだ、しかし、この前線から海を越えて本国まで送り届けるのは伝令兵はあと数日は戻って来ない、それまではカバンの奥に入れて置くだけになってしまうな。

 

「ん?…………」

 

今、向こうで何か動いたような………。

 

「そこの君」

 

「はっ、なんでありましょうか?」

 

「あっちの方向に友軍の部隊はいるか?」

 

「向こうですと…………いえ、特にはないと思われます」

 

友軍の兵には知らされないような秘密行動中か、それとも敵の斥候か、もしくは本隊。

 

持ち運びの小型通信機のスイッチを入れる。

 

「カーライルだ、至急偵察隊を北西方向に送れ」

 

『イエス、マイロード』

 

通信機をきる、さて、味方なら良い、しかし敵の部隊なら規模によっては追撃、もしくは増援の要請と足止めか。

 

しかし目視出来た数だけならばKMFが10機程度、中隊規模の数だ、ならば我々でも叩ける。

 

不安要素があるというならば、大規模補充によって新兵しかいないということ。

 

できれば無駄な損失は出したくないから大隊規模以上の敵部隊ならば応援を、中隊規模で五分五分、小隊規模は精鋭部隊の可能性もあるため一先ずは様子見が良いだろう。

 

ま、偵察隊が情報を持ってくるまで時間はあるんだ、敵KMFのデータとその戦術は頭に入っているが、もっとたくさんのデータが必要だな。

 

何せ、敵KMFと戦闘して生き残った兵は皆口を揃えて『みんな突っ込んで来て自爆する』と言うのだから。

 

ユーロピアが日本のカミカゼを模写するとはな、たしかに、生産力に物を言わせてKMF型のドローンを突っ込ませているんだろうが、それも長続きは…………。

 

『カーライル様!敵はKMF!数は20から30!』

 

唐突に入ってきた無線通信、それは偵察隊の状況が絶望的であることを示していた。

 

「全力で逃げろ!そこのお前!アラーム鳴らせ!KMF隊は準備出来次第出撃!」

 

「ハッ!KMF隊出撃準備!繰り返す!KMF隊出撃準備!」

 

間髪入れずに指示を飛ばす、兵のほとんどが新兵とはいえ数分もあればKMFに乗り込めるはずだ。

 

チッ!嫌な予感が当たってしまうとはっ!持ってくれよ!

 

『T19からU30へ向け逃走中!敵KMF全機追って来ます!』

 

U30地点は………くそっ!遠すぎる!グラスゴーでは間に合わん!

 

「全力でキャンプに向かえ!」

 

『しかし!それではキャンプの兵が!』

 

「カーライル様!出撃準備完了です!」

 

「よし!聞こえたか偵察兵!同志の迎撃の準備は完了だ!全速で来い!」

 

『はい!!ありがとうございます!!』

 

礼を言うのが早すぎだぞ、まったく………。

 

戦意高揚のため、近くの兵からスピーカーを奪い取り叫ぶ。

 

「ユーロ・ブリタニア軍の同志諸君!北西方向より我らが同志が敵を誘い出すのに成功した!数はKMFが30!これを打倒しなければ、後方の同志も、決死の囮を買って出た同志も死ぬ!同志を救え!各員全力出撃!敵を殲滅しろ!」

 

ゴッホ!………喉痛い………。

 

あ〜〜………才能というかスキルというか、便利なんだがいかんせんヤリスギ感あるな。

 

「行くぞ野郎共!ユーロピアの腰抜けに、ブリタニア魂見せてやれ!」

 

「「「「おおおおおおおおお!!」」」」

 

「正面から迎え撃つ!俺に続けええええええええ!!!!」

 

戦意高揚のバフかけるとやる気が全然違うんだな、うん、これは良い実験なったな。

 

グラスゴー、サザーランド混成のKMF隊20機が出撃、数だけならば負けてるな、士気は雲泥の差だろうな。

 

敵も、まさかこんなところにキャンプがあって、偵察隊が馬鹿正直にキャンプに向かってて、まさか正面から迎撃されるなんて毛頭思ってないだろうし。

 

多分勝っただろう…………だがやはり練度は見ておきたい。

 

「そこの君、使えるKMFはあるか?」

 

「ハッ!すべて整備されており、追撃部隊の出撃準備も完了しています!」

 

威勢の良い整備兵の返事と用意周到さに満足、あぁ、やはり腕が良いなここの整備兵は、もう見た目でわかる。

 

「よろしい、では、どれでも良いから一機選んで装甲を出来るだけ外せ、そしたらカメラとスピーカーをありったけ取りつけろ」

 

「ハッ!?なぜ………」

 

「3分だ、やれ」

 

「は、ハッ!おいお前ら聞いたな?急げ!」

 

「チャチャっとやるぞ!」

 

少し酷だがキツイ口調で押し切る、すまんな、どうしても必要なんだ。

 

選んだのはグラスゴーのようだな、重要な部品が剥き出しにならない程度に最低限の装甲を残して外し始める。

 

そして………。

 

「装甲板外しました!」

 

「カメラ、スピーカー共に取り付け完了!」

 

「装置、全て正常に作動中!行けます!」

 

「2:48…………素晴らしい!帰ってきたら私の持ってきた酒をありったけ飲ませてやる!」

 

叫んでグラスゴーに飛び乗り、ランドスピナーを始動させる。

 

「マルドゥック中佐!」

 

「は、はい!」

 

気の弱い、だが人の良い臨時副官マルドゥック中佐を呼びつける。

 

「私が不在の間、貴官に指揮権を預ける!」

 

「え、えぇ!?」

 

驚いた顔を尻目に、グラスゴーは走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

noside

 

 

ユーロピア共和国連合軍に所属するとあるKMF部隊、その隊長は愛機『アレクサンダ』を駆り、30機のアレクサンダによる中隊を率いて作戦行動中であった。

 

目標は、ユーロ・ブリタニア軍前線の後方陣地に対する強襲攻撃。

 

広い平原をアレクサンダの特徴である四足歩行によって高速移動中、あろうことか敵の偵察兵に見られてしまった。

 

すでに情報は送られてしまっているだろう、すぐに自分たちめがけ砲弾とKMF部隊が迫ってくるに違いない。

 

だが、すぐに始末すれば詳細な位置はわからないはず、隊長はKMF全機でもって早急な排除を命じた。

 

この判断は正しいと言えよう、だが誤算があった。

 

ひとつめは、偵察兵の乗るハンヴィーがリニアライフル30門の掃射をことごとく避けてしまうこと。

 

ふたつめは、新兵が多かったために静止が利かず、逃げるハンヴィーに固執してしまったこと。

 

みっつめに、引き時を見誤ってしまい、見えざる敵の正面からの攻撃を察知できなかったこと。

 

『うぎゃあああああ!!』

『がああああ!?』

『ぜ、前方より、てkぎゃああっ!!』

『た、隊長おおおおおお!?』

『嫌だ!嫌だ!嫌だぁああああああ!!』

 

そのみっつの原因が、ハンヴィーに固執して接近し過ぎていたKMF8機が穴だらけになる結果を生んだ。

 

22機にまで一気に減ったアレクサンダ中隊は、前方からの斉射でさらに数を減らす。

 

狙いの定まっていない57mmアサルトライフル20門の一斉発射、マガジンが空になる勢いでばら撒かれた57mmの徹甲榴弾は、アレクサンダの薄い装甲を貫き、信管が作動して榴弾の炸裂効果で爆散していく。

 

斉射のあと残ったのはたったの6機、即座に反撃もできず、奇襲する側が逆に奇襲を受け、中隊規模のアレクサンダを一方的に損失、小隊規模がせいぜいという数にまで減ってしまったのだ。

 

ここまで一方的であればもはや隊長も冷静にはいられない、血が上った頭で考えられるのは、突撃くらいのもの、しかし、指揮官としての意地もある、ここは撤退し情報を持ち帰って味方に知らせる方が得策。

 

幸いにも、数キロ下がれば無線通信がギリギリ入る、ブリタニア軍の精鋭部隊が攻めて来たと言えば、応援も期待できるはず。

 

うまく増援と共同で撃退できれば今回の24機のアレクサンダの損失の責を問われる可能性も低くなる。

 

むしろ、精鋭部隊相手に奮戦した、と栄誉を受けられるかもしれない。

 

と、保身を全力で考える中隊の隊長であった。

 

回れ右して引き返そうとしたその時、振り向いた先からスラッシュハーケンが飛んできた、隊長機の頭部と胸部を貫いて、隊長は絶命した。

 

残った5機は碌な反撃もできずに牽制しつつ後退、しかし多勢に無勢で撃破され、晴れてアレクサンダ30機の殲滅が終了した。

 

数十分後、オープン回線にてブリタニアの国歌が流れ始めた、ユーロ・ブリタニア軍のユーロピアの国民へ向けたプロパガンダ放送だ。

 

『同志諸君!我らがユーロ・ブリタニア軍は、KMF30機と交戦し殲滅した、損失はゼロ!繰り返す、損失はゼロ!』

 

オープン回線から飛び出すユーロ・ブリタニア軍の戦果報告。

 

『ユーロピア共和国連合とユーロ・ブリタニアの最前線!ユーロピアの新鋭のKMFが30機に対し我が軍のKMFは旧式が20機!絶望的な状況を、KMF隊指揮官の巧みな戦術と士気旺盛にして優秀な同志の諸君によって、被弾を許すことなく全機撃破!!』

 

ユーロピアの国民に動揺が走る、今までの戦果報告とプロパガンダを繰り返してきたユーロ・ブリタニアであったが、今回の放送はいつもと違うのを感じ取った。

 

『ユーロピアに隠れて住まう同志諸君!立ち上がるのだ!今こそ、腐った共和国連合に、裁きの鉄槌を下す時なのだ!我らユーロ・ブリタニア軍は、同じ思想を持つ同志を歓迎しよう!オール・ハイル・ブリタニア!』

 

数日後、ユーロピア共和国連合国内において発電所などの重要施設が同時多発的に襲われる事態が起こった。




作者「すっごーい!君は敵も味方も洗脳して思いのままに操るドクズなフレンズなんだね!」
ツキト「バス投げんぞゴラ」
作者「すんません」

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