コードギアス オールハイルブリタニア!   作:倒錯した愛

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ユーロピア行って、シコれ。


『棺桶』と『少女』

noside

 

 

「あー、ロイドか?夜遅くにすまんな……………ランスロットの調整中だったか、なら良い、ところで私が頼んだブツは?…………………そうか、感謝する、ん?………いや、ちょっとした余興に私の数ヶ月の特訓の成果と、お前の作った技術の素晴らしさを世に知らしめてやろうと、思ってな…………………あぁ、両方とも頼む、なに?名前?うーむ……………双子なんだし、童話からとって…………なかなか良いだろう?じゃあ切る……………わかってるさ、しっかりデータは送るさ、では、おやすみ」

 

これは皇帝専用列車に登場する数日前の深夜の出来事………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ツキトside

 

 

「…………」

 

皇帝専用車両………豪華な装飾が施され、乗車している者に不快感を与えないよう計算された速度とカーブ、快適なベッドやサービスも充実したまさに線路上を走るホテル。

 

「…………」

 

いや、線路上を走るラブホテルのほうがあっているか?とてつもなく下品な渾名だが、皇帝陛下ならここでもヤリかねない。

 

さて、豪華絢爛、地上を疾走する豪華客船に乗り込んだ私の感想だが。

 

「暇だ」

 

テレビもビデオデッキもない部屋にイライラしていた。

 

皇帝専用列車とは名ばかりなのか、陛下が乗った時に備えて娯楽の品を用意しておくものだと思ったが………。

 

それともあれか、どうせ陛下はSEXしかしないから、ベッド周りを快適にしてやればいいだろう、とでも思ったのだろうか?

 

まあ、100人近い皇妃がいるわけだしな、そう思うのも無理ない。

 

しかしだ、今回乗るのは私なんだぞ?あれか?向こうに着くまでルームサービスの女でも抱いてろってか?フザケンナコロスゾ。

 

あぁそうそう、持ってきた荷物の中にはマリアンヌの剣も入ってるんだ。

 

この剣、ヴィ家とアールストレイム家との関係をより強固にするための取引材料的な、もしくは儀式的に貸し与えるもので、返還かアーニャに渡すかが妥当な線だと思ってたんだが…………。

 

マリアンヌ直々に『あなたにあげるわ♡(は〜と)』と、(は〜と)のところまでしっかり声に出して言われたために持っている、正直な話しこのセリフを言っているときのマリアンヌは人妻とは思えないほど可愛かった…………ナナリーも将来マリアンヌ以上に可愛くなるとか反則だろう。

 

教科書にのってるマリアンヌの写真が初恋の男は多いと思う、私なんて本人見て今世の初恋だったしな。

 

話しがそれたか、それで実質的にマリアンヌの剣の所有権が私に移ったわけで、でもこの剣で人を切るわけでもないのになぜ持ってきているのか?それを言いたかったのだ。

 

簡潔に言うと、権力を示しやすいからだ、これを持っているだけで私のバックに皇帝陛下と特別親しい仲である第五皇妃マリアンヌ・ヴィ・ブリタニアがいることを証明できる、しかも貸し与えられたのではなく貰ったのだから、マリアンヌのツキト・カーライル個人への信頼は大きいものだと相手に思わせることができる。

 

マリアンヌの影響力はブリタニア国内外問わず人気だ、容姿や剣の才、血塗れのシンデレラストーリーと現役引退後の暗殺未遂事件など、多くの人々の様々な感情の視線を思いのままだ。

 

いざとなれば、マリアンヌの剣を持ってマリアンヌの威光を使わせてもらおうという算段だ。

 

説明しててなんだが、これではただの小者だな、実際小者だししょうがない。

 

『カーライル様、間も無く到着いたします』

 

乗客は私しかいないため名指しでアナウンスが入る。

 

荷物は兵が持っていくだろう、私は少し身だしなみを整えていくか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

noside

 

 

「本当なのか?皇帝専用列車にラウンズが乗ってくるって話」

 

「大マジだ、元アールストレイム家のお坊ちゃん、ツキト・カーライル様が来るんだと」

 

「俺たちの代わりに戦ってくれねえかなぁ」

 

「専用のKMFを持って来てねえから、ただの視察じゃねえの?」

 

「なあなあ、カーライルってマジで男?女?」

 

「男だろうがよ、じゃなきゃユーフェミア様がレズビアンってことになんだろ」

 

特設の駅の内部では出迎えの兵が並び、列車の到着まで当人のツキトについてだべっていた。

 

「到着まで、あと10分!」

 

「よし、おい!くれぐれも失礼のないようにな!」

 

「了解っす中隊長」

 

「っ!…………皇帝陛下専用列車、来ます!」

 

兵の1人が指差し叫ぶ、指差した方向にはヘッドライトを付けて駅に向かって走って来る巨大な列車。

 

「せいれーーーーーつ!!」

 

列車は徐々に減速し始め、規定の線の場所に合わせて停止し、扉が開かれる。

 

「剣抜け!」

 

「「「「「ハッ!」」」」」

 

伝統と格式を重んじるユーロ・ブリタニアらしい、抜刀した剣によるアーチ、重要人物の出迎えは豪華なものだが、ユーロピアとの戦争中のためある程度省略されている。

 

だがそれでも本国からの重要人物に他ならぬツキトのためにと、出来る限り多数の士官を集め、なんと30組60人にも及ぶ出迎えの剣のアーチが完成した。

 

「…………………」

 

列車から降りたツキトは驚いた顔で硬直した、まさか自分がこれほどまでに手厚い出迎えを受けることができるとは思わなかったからだ。

 

「本国からよくぞおいでになられました、我らユーロ・ブリタニア軍一同、感謝の意を表します」

 

「ナイトオブラウンズ、『呪いの13番』、ツキト・カーライル、諸君の盛大なる歓迎に、感動を抑えきれない」

 

「そう言っていただけると幸いです」

 

「改めて諸君に言おう、私のために貴重な時間をかけてくれてありがとう、諸君に皇帝陛下と神の加護があらんことを」

 

剣のアーチの中を話しながら歩くツキトと指揮官の男、その後ろから台車に乗せた棺桶が2つ付いて来る。

 

「カーライル様、あの棺はいったい………」

 

「ん?あぁ、あれか………」

 

剣のアーチを抜けた所で棺桶について聞く指揮官の男、立ち止まったツキトは棺桶の表面を撫でる。

 

「…………君たちにも、人に言えないような秘密があるだろう?」

 

「え、えぇ」

 

「この棺桶が、私にとってのソレだ、あまり深く詮索しないでくれると、助かるのだが…………ね?」

 

ニヤァァ……っと気味の悪い笑みを浮かべて棺桶に肘をつき、表面を撫でるツキトの姿に、不気味な妖艶さと危険さを感じ後退りする指揮官の男。

 

やがてツキトは棺桶を撫でるのを止め、不気味な笑みを浮かべたまま只ならぬ気配を纏い、柄頭に左手を載せて指揮官の男を見上げる。

 

「わかってくれたかなぁ?」

 

「い、イエス!マイロード!」

 

指揮官の男はそういうしかなかった、それ以外の言葉を発すれば、ツキトの腰に引き下げられた宝剣……………マリアンヌの使っていた二対の剣の片割れに、瞬きすら許されず斬り殺されるサマを幻視したからだ。

 

「よろしい…………おい、しっかり運べ」

 

「「ハッ!」」

 

歩いて行くツキトの背中に、そこにいた誰もがドロリとした気味の悪さを感じていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ツキトside

 

 

ふう、なんとか押し通せたか。

 

この棺桶の中身だけは、まだ知られるわけにはいかない。

 

私にとって武器であり、ロイドにとっては新兵器の新しい使い方の実証になる物、壊されても困る。

 

…………という考えで棺桶に入れてきたわけだが、余計に怪しまれてしまったか。

 

しかし、重量とサイズから棺桶以外に入りそうなものもなかったし、コンテナに入れて行くのは戸惑うものがあったし………。

 

もう今更だ、腹をくくろう。

 

………………しかし、棺桶と同じ部屋で寝泊りしろというのは新手のイジメか?

 

いや詮索するなとは言ったが、せめて棺桶の形をしてるんだから霊安室くらい………いやもういいや。

 

いざとなった時は棺桶に近い方が自衛になるだろう。

 

「しかしなんだ、あれだ………疲れた」

 

今日はもう寝よう、時間も10時を回っている、駅周辺を軽く視察して、2日後に前線に移動する予定だ。

 

早く寝て、明日に備えることにしよう。

 

パジャマに着替えて備え付けのベッドに倒れこむ。

 

「あぁぁぁぁ…………」

 

みっともない溜息が出るが、そんなことを意識するいとまもなく、意識が遠のいていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

視察は順調に終わり、報告書をトレーラーの中で書いていた。

 

そう、前線行きのトレーラーの中で、だ。

 

視察のあとゆっくりと熟睡できたものの、まだ午前5時、眠気が残る中走るペンは遅い。

 

揺れる机に突っ伏して眠気と格闘しつつの報告書の執筆はとても順調とは言えるものではなかったが、書き終えた後の清々しい気分は最高だった。

 

午前6時、あと3時間で目的地に到着する、到着した後はユーロ・ブリタニアの長どもとの顔合わせ、あとは独自の4つの騎士団長とも少し話して、ランチをとったら夜は貴族の諸侯を集めて盛大なパーティー。

 

別にパーティーなどせんでもいいだろう、知ってるか?パーティーをよく開いていた貴族は家ごと爆撃されるんだ、何故なら夜でも屋敷が明るくて見やすいからだ。

 

今世の世界では貴族がバカなせいで戦時下でも夜にパーティーを開けるのだろうな、まったくつき合わされる方の身にも…………パーティーは参加しないことを言っておけばいいか。

 

尊大で臆病な私のキャラ的に、『爆撃機が怖いから』とでも言えばむこうも納得するだろう。

 

はあ、政治ってマァジめんどくせえ………おっと、失礼。

 

ん?トレーラーが止まったな、もう到着か、早いな、もっと渋滞してるものかと思ったが。

 

「カーライル様、到着いたしました」

 

「わかった、カバンを頼む、棺桶のほうは乗せたままでいい」

 

「ハッ!」

 

兵がカバンを持たせトレーラーから降りるのを確認する。

 

一応、ここからは先は危険地帯になる、起動しておくか…………よし、起動確認、駆動音も問題ない。

 

トレーラーから降りて大層な建物に入ると、むさいおっさんやらヒゲのじじいやらが並んで座っていた。

 

目の前に出ると書状を取り出した。

 

「『神聖ブリタニア帝国、ナイトオブラウンズ13番、ツキト・カーライル………偉大なる皇帝陛下の名において、以上の者をユーロ・ブリタニア軍の侵攻を支援に命ずる』…………以上だ、諸君の陛下への忠誠を示せ」

 

読み上げてからそれぞれに適当な挨拶をして全員でランチ、出てきた料理は鶏肉料理だった、まあ油でギトギトのものが出てきても困るし、量も手頃で丁度いい、変に高級肉なんて食っても正直感想が言いづらいしな。

 

あっ、ちゃんとパーティーには出ないことを言ったぞ、睨まれたが仕方ない、爆撃は怖いんでね。

 

与えられた部屋のベッドに寝転び、部屋を見渡す、クローゼットが置いてあり窓が付いている、あとは旅行カバンと仕事用の防弾カバン、そして棺桶が2つ。

 

部屋の広さ的に霊安室だなこれは。

 

立ち上がって片方の棺桶を開ける。

 

蓋をズラしたところで、思わず口角が釣り上がる。

 

そこには、MVS・Cを抱いて眠る少女がいた。




なんだこの棺桶の中身は!?少女を閉じ込めるなんて犯罪じゃないか、たまげたなぁ………(棒読み)

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