コードギアス オールハイルブリタニア!   作:倒錯した愛

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たぶんこの作品中もっとも長いと思うんですけど………。
途中でガンダ◯ネタが出ます。



『脱出』、そして『邪悪』なりし『KMF』

ツキトside

 

 

広大な宮廷の庭の茂みをいくつか越えると、20〜30ほどのKMFが集結していた。

 

明らかに正規のカラーリングでない特殊な模様が施され、瞬間的に敵であると認識した。

 

「DB13よりP1!発砲許可!繰り返す発砲許可!」

 

『P1了解!』

 

アーニャに通信を送り軽マシンガンを構え、近くのターゲットに照準後すぐにトリガー。

 

ババババババババババババババッ

 

「DB13よりH1!敵KMF30と交戦中!集結中の敵主力の一部と思われる!」

 

『H1よりDB13へ、了解、増援は必要か?』

 

「DB13よりH1、増援は不要!脱出を優先せよ!」

 

『H1よりDB13、武運を祈る!』

 

『今はまだ』が入るがな………これ以上の敵がいると反応速度的に厳しい、何も機体が悪いんじゃない。

 

極端なショートバレルの軽マシンガンは銃口が暴れ回って精度もクソもないが、あえて狙わずバラまいたほうが76mmの大口径の徹甲榴弾を活かせる。

 

出来る限りあげた各モーターのレスポンスも悪くなく、被弾はまだ無いが、後ろに回られてもきっと被弾を最小限に抑えれるはずだ。

 

「P6、そっちの残弾は?」

 

『P6よりDB13、残弾は余裕あり、でも囲まれてて身動きが!』

 

「DB13よりP6、一度下がれ!代わりに前に出る!」

 

ヒートアップしたアーニャを冷静にさせるために下がらせ、代わりに私が前に出て派手に動く。

 

チューン済みの機体に標準仕様の機体では旋回が追いつかないのか、はたまた無駄に高い才能ゆえか、弾をばら撒くだけで敵機が落ちて逝く。

 

バババババババッ………

 

おっと、弾切れだ。

 

『うおおおおおおお!!』

 

「チッ、単独での吶喊は減点対象だ馬鹿者!」

 

対KMF戦用ランスを背中から引き抜きざまに薙ぎ払う。

 

『ぐうぉ!?』

 

「吶喊は最後の最後まで取っておくものだ!この阿呆が!!」

 

直撃し転倒した敵サザーランドにケイオス爆雷の置き土産をする。

 

起爆したケイオス爆雷は弾丸のハリネズミを形成し、その弾幕によって範囲内の敵KMFを数機まとめて穴だらけにした。

 

『P6よりDB13、リロード完了、復帰する!』

 

よし、アーニャが復帰したか、今度は私が下がってリロードを………。

 

『H1よりDB13とP6へ、足止めありがとう、おかげで警戒網を抜けることができた、殲滅しだい合流してくれ』

 

無事に突破したか、敵の集結中にうまく虚をついた形で出ることができたみたいだ。

 

「DB13よりH1、了解、殲滅しだい合流する………DB13よりP6へ、弾切れだ、援護頼む」

 

『P6よりDB13、カバーするから、急いでね』

 

後ろに下がると同時にアーニャが前へ出る、ランスを背中に背負い込み、マシンガン系統の巨大な円盤型マガジンを付け替え初弾を装填、各部モーターの過熱具合を見て…………よし、まだ行けるな。

 

「DB13よりP6、待たせたな、一気に行くぞ!」

 

『P6よりDB13、了解!合わせるよお兄ちゃん!』

 

残り7機の敵KMFに対し吶喊、アーニャと複雑な動きを取りターゲットされにくいようにし、マガジンを連射し突撃する。

 

回避が遅れた一機を屠り、連射して弾切れになった軽マシンガンを捨ててランスを抜いて肉迫、なぜか脱出装置を作動させたようで逃げようとしたため、投げ槍の要領で投擲、ランスはコックピットブロックを貫通して地面に落ち、コックピットブロックはバランスを崩し建造物に激突、きっと中身はミンチだろう、二機目も撃破。

 

そんなことを悠長に考える暇もなく、背後から弾丸が飛んでくる、急いで全速でその場から回避、さっき脱出しようとしたやつの機体から57mmアサルトライフルをもぎ取る。

 

振り向きざまにスラッシュハーケンを近くの建造物に打ち込んで巻き取りをする、地面に固定されている建造物はサザーランドより圧倒的に重くて頑丈だ、つまり、建造物に向かって高速で接近することになる。

 

建造物に乗り上げて跳ぶ、瞬間にスラッシュハーケンを外し、もう一方のスラッシュハーケンを別の建造物に打ち込み、遠心力で自機であるサザーランドをハンマーとして敵サザーランドにドロップキックをかます。

 

その場で制止してアサルトライフルでこちらを撃ち落とすことに躍起になっていてくれたおかげでドロップキックはクリーンヒット、急な衝撃に対ショックも間に合わなかったのか、敵サザーランドはランドスピナーでの制御もままならず吹っ飛んで地面を転がった。

 

敵サザーランドは機体のあらゆる場所を損傷しながらも、何とか立ち上がろうとしているが、姿勢制御装置がやられてしまっているのか、コンピュータ補助の起き上がりは発動せず、自力で立とうにも左腕部のモーターが逝かれているのか、右腕部だけでやっているが、難しいのか、ある程度は浮き上がるもののすぐに地面に着いてしまう。

 

と思ったら今度はこっちに右手を突き出して人差し指をクイクイと曲げ伸ばししている…………もしかして、アサルトライフルのトリガーを引こうとしているのか?だがやつの持ってたアサルトライフルはどこかに吹っ飛んでいってしまって手元には無いのにな。

 

57mmアサルトライフルを構える、気づいた敵はスラッシュハーケンを2機打ち出してきた、セミオートで両方とも撃ち落とし、ワイヤーを撃って切断する。

 

続けてコックピットを撃ち抜く、敵サザーランドは動きを止めた。

 

最後に仕留めた奴はなかなかガッツのあった、磨けば光りそうなものであるが、思想の違いがあるのでは仕方あるまい。

 

付近に敵機は…………索敵に感無し。

 

「DB13よりP6、状況終了、お疲れ様アーニャ」

 

『お兄ちゃんもお疲れ様、怪我はない?』

 

「機体に数発掠ったが支障なしだ、アーニャのほうは?」

 

『お兄ちゃんと同じ、問題は無いよ』

 

「怪我がなくてよかった…………よし、使えそうな物を剥ぎ取ったら本隊と合流するぞ、10分くらいで終わらせろ」

 

『わかった、後少し頑張ろうお兄ちゃん』

 

「あぁ、頑張ろう」

 

ゴロゴロところがっている57mmアサルトライフル装備の機体から57mmのマガジンを剥ぎ取り、腰のマガジンラックや57mmアサルトライフル本体の予備マガジン入れに差し込んでいく。

 

57mmと比べ珍しい40mmアサルトライフル装備の機体を見つけたので、40mmアサルトライフルを剥ぎ取って背中の予備武装ラックに収め、数本の40mmのマガジンを腰のマガジンラックに入れる。

 

さっきの攻撃でランスが少し曲がってしまったようなので、ランスはもう捨てて行くことにする、いっそ接近戦はある程度捨てた方がいいかもしれない。

 

『お兄ちゃん、準備いいよ』

 

「了解、よし、巡航速度で向かう、後ろを頼む」

 

『任せて、1発も通さない』

 

「頼もしい限りだ………出るぞ」

 

KMFを巡航速度で発進させ陛下とユフィの護送部隊と合流するため、宮廷敷地外のポイントへ向け全身を開始した。

 

草木生い茂るだだっ広い庭を抜けた先、侵入防止のための巨大な壁が見えた、これを超えると宮廷の敷地外だ。

 

敷地外に出ると、大勢の正規軍仕様のKMFからもはや骨董品である戦車まで、数々の機動兵器が反乱軍を宮廷に閉じ込める形で包囲しているようだった。

 

『止まれ!どこの所属だ!』

 

近づくと一斉に銃口を向けられる、が、慌てないことが大事だ、彼らは同志なのだから。

 

「ナイトオブサーティーンだ」

 

『ナイトオブシックス』

 

『ハッ!失礼いたしました!こちらへどうぞ!』

 

身分を明かすとすんなりと通れた、私とアーニャは宮廷の壁を最前線とするなら、もっとも後方の作戦司令部に通された。

 

作戦司令部の仮設テント近くでKMFのコックピットを開放する、地面に降りようとしたところで通信が入った。

 

『お、お兄ちゃん、外に出れない………』

 

ハッチの故障か?仕方ない。

 

「わかった、今開けるから心配しないでいい」

 

『う、うん』

 

不安げなアーニャに努めて優しく言ってコックピットから降り、アーニャの乗ったKMFのハッチに飛び移り観察する。

 

どうやら被弾によってひしゃげてしまっているようだ、近くの工具置き場からバールを拝借してもう一度よじ登る。

 

「今から開けるから、じっとしているんだぞ」

 

『うん………ごめんねお兄ちゃん』

 

「お前が謝ることじゃ無いさ」

 

ひしゃげて空いた隙間にバールを差し込み、テコの原理で無理やりこじ開ける。

 

コックピットのハッチは難なく開いた。

 

「開いたぞアーニャ、さあ、休憩しようか」

 

「ありがとうお兄ちゃん……助けてられてばかりでごめんね、情けなくてごめんね………」

 

「おいおい、いきなり何を言いだすんだ?」

 

「だって、アーニャ、お兄ちゃんに助けてもらってばかりで……」

 

パイロットとしての技量の差を感じてしまったのだろうか?アーニャは役に立てなかったと謝罪の言葉を言っている。

 

「何を言うか、お前がいなければ30機のKMFの相手などできなかった、リロードの時間を稼いでくれなければ私はジリ貧だった」

 

本当だ、アーニャがいなければ、私もあそこまで冷静に戦えなかっただろう。

 

「でも、お兄ちゃんなら、あれくらい近接戦闘でどうにでもなるでしょ?」

 

「仮にそうだったとして、勝ったとしても私は満身創痍だ、宮廷の外に出るなんて絶望的だろう……」

 

「でも………」

 

涙を浮かべ駄々をこねる子供のように幼児退行してしまったアーニャを抱きしめる。

 

「おにい、ちゃん?」

 

「お前がいてくれたから、お前が背中を守ってくれていたから、私は戦えたんだ………私は臆病者だ、戦ってた時だって怖かった………でもアーニャがいたから、いてくれたから、私は戦えたんだ、お前は必要なんだ………」

 

「私が、必要?要らなくない?」

 

「絶対に必須だ、戦いの時も、日常生活の時も、そばにいてくれるだけで、心が暖かくなる、安心するんだ………だから自分のことを要らないなんて思うんじゃない」

 

「………お兄ちゃん、もうちょっとストレートに言ってみて」

 

「え?……えーっと……お前が必要なんだ、そばにいてくれ!」

 

『ピッ、録音しました』

 

……………………へ?

 

「やった………」

 

「あ、アーニャ………?」

 

「お兄ちゃん、騙してごめん、この音声の代金としてなんでも好きな食べ物を奢るから、それで許して」

 

ボイスレコーダーらしき物を持ってフリフリと目の前で振ってそう言うアーニャ、抱きしめていた力が緩んでいく。

 

というか代金として奢るのは食い物オンリーなのか。

 

「はぁあああ………よかった、悩んでなかったんだな」

 

「お兄ちゃん嬉しいけど心配しすぎ、それに私程度の操縦テクじゃお兄ちゃんには遠く及ばないってわかってるから」

 

強かだなぁ………さすがは私の妹だ。

 

ま、元気があるようでよかった。

 

「よしわかった、で、音声については消去は受け付けてくれないのか?」

 

「受け付けるけど、代わりに私のお願いを1つ聞いてもらうことになるよ、どんな非人道的なことやタブーとされてることでも、ね」

 

怖いこと言うなあ………。

 

「うむ、では奢りの方で、そうだな………アーニャの手料理1週間分でいこうか」

 

言っといてなんだが、すっごく役得なこと頼んでるよな私、少なくとも1週間の21回の食事をアーニャと過ごしながら一緒に食べれる………至福の時だな。

 

「!……ま、任せて!アーニャ、お兄ちゃんの好きな物作るの得意だから!」

 

「お、おう………そうか、たくさん練習したんだな」

 

「うん、たくさん練習した」

 

「そうか、偉いな、アーニャは」

 

えらく料理に関してテンションが高いアーニャの頭を抱きしめた状態で撫でる。

 

ほんと、妹じゃなかったら今頃恋人になってたよ。

 

ハァ〜〜〜…………本当に愛おしい………。

 

「お取り込み中のところすまないが、中に入ってくれ」

 

「ヴァルトシュタイン卿………」

 

「あぁすまない、ヴァルトシュタイン卿」

 

「仲睦まじいのは良いが…………兄妹婚はあまりよろしくないぞ?」

 

「そのつもりはないから安心してくれ」

 

「むぅ………」

 

作戦司令部のテントから出てきたビスマルクに入室を促されつつ茶化された。

 

アーニャは邪魔されたからかムッとして目に見えて不機嫌になった。

 

「さて、行こうか」

 

「うん……」

 

抱き合うのをやめてアーニャの手を握る。

 

「……待って、こっちがいい」

 

そう言ってアーニャは手を絡ませるように繋いだ、恋人繋ぎだった。

 

「よし、行こうか」

 

「うん!」

 

手繋ぎで機嫌が直ったのか、元気な挨拶を返してくれた。

 

「(リア充爆発しろ!!!!)」

 

「(くっそおおおお!羨ま死ね!!!)」

 

「(非リア充損傷率99.9%!生存確率0%!グハァッ!!)」

 

作戦司令部テント内にはすでにラウンズが私たちを除き全員集合しており、ディスプレイを兼ねた大型テーブルを囲い、それぞれ軽食を食べたり飲み物を飲んでいる。

 

テーブルを囲う顔ぶれの中にはユフィもいた。

 

「ツキト!無事でしたか!?怪我はありませんでしたか!?」

 

「はい、かすり傷1つありません」

 

「そうですか………よかった、ツキトが怪我をしていたら私……」

 

「大袈裟に考え過ぎです、仮にもラウンズである私があの程度の者共に遅れは取りません」

 

「そうかもしれませんが………でも心配なのです、ツキトは確かに強くて頼りになります、けれど、自分の身を省みない戦い方をするから、気が気でないのです」

 

「そ、そうでしょうか?」

 

身体能力が高い上に不死身だからなぁ、多少の無理が効くからつい………。

 

「それに、私の知らないところで、全速力を出すとパイロットが100%死ぬ試作KMFに乗ってたっていうじゃないですか!!」

 

「「「「「「「「(え"!?)」」」」」」」」

 

「そ、それは………」

 

何故それを!?ユフィには決して見せないように工作しておいたはず!

 

「………お兄ちゃん?」

 

「あ、アーニャ、これはその……状況的に仕方なく………」

 

「ツキトはそうやって、相手には無理をするななんて言って、自分は死ぬかもしれないような無理をたくさんして!!」ダン!

 

「ひっ!?」

 

いきなり机を叩くな!怖いんだから!ビックリするだろ!

 

「そんなことをするから………女の子がみんなツキトに惚れちゃうんですよ!!」

 

「…………それ私悪くn」

 

「言い訳ですか!?私を惚れさせておいて!アーニャさんを惚れさせておいて!ナナリーを婚約者にしておいてぇ!!」

 

「ひぅ、ご、ごめんなさい………」

 

「ユーフェミア様、待って」

 

「それに何ですか!?アーニャさんと恋人繋ぎなんて!羨ま………羨ましいことを堂々と見せつけるようにして!」

 

「………ふふん」ドヤッ

 

「ちょっとアーニャさん勝ち誇った顔はやめてください!そもそも兄妹じゃ結婚はできないんですからね!?」

 

「事実婚すればいい、お兄ちゃんと一緒に居られるなら愛人でも奴隷でも良い、そばに居られるだけで幸せ」

 

「アーニャ…………できればその言葉は私以外の男に言って欲しかった」

 

もはや作戦司令部テント内はカオスだ……………ダレカタスケテー。

 

「とりあえず、この紙のここにサインをして指で判を押してくれたら許します」

 

「待ってください……それは何ですか?」

 

「婚姻届ですけど?」

 

「アウトですアウト!いいですかユーフェミア様?結婚とはしっかり決められた順序で交際を経て互いを理解した上でするものです、相手のことをよく知らないのにホイホイ結婚するなど………」

 

「ツキトのことはよく知ってますし、良いと思いますけど………父上はどう思いますか?」

 

え!?そこで陛下に聞くのか!?

 

「………互いの了承さえあれば良い、あとはぁ、枯れない愛を証明できればなお良い」

 

「ではツキト、了承の証としてここにサインを………」

 

「あの、ですから私はユーフェミア様と結婚はできないのです………ご理解ください」

 

「くっ、やはりナナリーが大事ですか………」

 

「…………そろそろ話を進めてもよろしいですか?」

 

「今大事な話を………」

 

「ユーフェミア様、その話はすべて終わってからしましょう………2人っきりで」

 

「はい!そうしましょう!」

 

「「「「「「「「(手馴れてるなぁ)」」」」」」」」

 

ユフィを席に戻し、私とアーニャも席に座る、目の前にコーヒーが差し出された。

 

「まず敵戦力について、宮廷敷地内には未だ未確認のKMF数十機、150〜200ほどの歩兵戦力があるものと推定される」

 

「この数字は各駐留部隊の欠員者を調べたものから算出されており、おおよそ正しい数字と見てくれて良い」

 

「作戦だが、親衛隊から選出した40名とラウンズ4名の合計44名によって4個小隊を作り、各方角から突入してもらう」

 

「敵KMFを殲滅後はラウンズ2名と歩兵4個小隊で内部へ侵入、敵首領の捕縛を行う」

 

「内部にKMFは入れないのか?」

 

「入れないこともないが、場所が限定される上とても狭い、現実的ではないだろう」

 

となると、私は白兵戦に回ったほうがいいな。

 

「ではKMFに搭乗するラウンズ4名の選出だが、希望者はいるか?」

 

「俺が行くぜ」

 

「私も行きます」

 

「私やります!」

 

「私にやらせてくれ」

 

「ブラッドリー卿にヴァインベルグ卿、クルシェフスキー卿にエニアグラム卿か、次に内部への突入部隊の2名だが」

 

「私が行こう」

 

「お兄ちゃんはダメ」

 

「なぜだ?白兵戦は私のレンジだぞ?」

 

「危ないからです!ツキトが怪我をしてしまいます!」

 

「戦場に安全な場所などございませんユーフェミア様、それに怪我を恐れて戦えぬなど兵士にあってはなりません」

 

「「でも!」」

 

ちっ、まったくうるさい………。

 

「…………1週間口をきかないほうがいいだろうか」

 

「「何でもない(です)!好きに動いて(くださいね)!」」

 

「(調教済かよ、やべえなアールストレイムのやつ………)」

 

「(スザクに聞いてた知ってたけどやっぱすげえな、皇族すら手玉に取っちまってる)」

 

「あー、じゃあアールストレイム卿と、もう1人はどうする?」

 

「あ、私行きます、いいでしょ?お兄ちゃん」

 

「反対はしないが………大丈夫か?人を斬り殺す覚悟はあるか?」

 

「覚悟はしてる、大丈夫」

 

「そうか、ではヴァルトシュタイン卿、私とアーニャで」

 

「わかって、では残った私とエルンスト卿で護衛を行う、作戦開始は現在行われている反乱軍に対する降伏勧告が拒絶されてから30分後だ、休憩を取り各自の持ち場に集まること、以上解散!」

 

ビスマルクの掛け声で解散が決定した。

 

さて、まずは人探しをせんとな。

 

ユフィがいるならスザクとロイドとセシルがいるはずだ。

 

作戦司令部テントから出て適当に立てたと思われる簡易地図を見る。

 

どうやらあるみたいだな、ここからも近い、ユフィを連れて行くか、いや普通に言っても来ないだろうし………そうだ。

 

「ユーフェミア様、私はこれからスザクの元へ行きます」

 

「スザクのところですか、私も一緒しても?」

 

「構いません、では………アーニャ、ユーフェミア様の護衛についてくれ」

 

「わかった…………ユーフェミア様、お兄ちゃんは渡さない」

 

「へえ…………私もツキトは渡しませんから」

 

連れて行くことはできたが、争うのはやめてくれ………私のために争うのはやめてえ!…………アニメのヒロインか私。

 

後ろで冷たい殺気をぶつけ合うアーニャとユフィを見て見ぬ振りを決め込んで歩く。

 

ほんの50m程度の場所に巨大なコンテナとともに特派のトレーラーが止まっており、テントが設置されていた。

 

そこに入る頃には、後ろの2人の殺気は消え、むしろある程度和やかな雰囲気を感じた。

 

「失礼する」

 

「ん〜?……あらぁ、ツキト君!おひさ〜………あり?後ろの人たちはユーフェミア様と」

 

「アーニャ・アールストレイム、ナイトオブシックス」

 

「アーニャ君ねぇ、了解〜、それでツキト君なーにしにきたの?せっかく君のKMFの準備しといたのに歩兵と突入するっていうから無駄骨になっちゃったしぃさぁ」

 

相変わらずのテンションで安定感があるなほんとこいつは。

 

だが純粋に科学者としては尊敬できる精神と信念を持っているから好感が持てるんだよな。

 

「お前の場合はデータが欲しかっただけだろう?まあ新兵器については興味があるから、あとで話を聞かせてもらうとして、スザクはいるか?」

 

「スザク君?いるよぉ、今はランスロットの調整中なんだぁ」

 

「ランスロット?」

 

「アーニャ君はご存知ない?そりゃ勿体無いよ!ランスロットはねぇ!世界初の第7世代KMFの実証試験機なんだよ!第5世代とはあらゆる面で一線を画す高性能機なんだからね!」

 

「つまり………」

 

「いろいろと敏感すぎて整備が面倒臭い点、それこそエースパイロットでも操縦が非常に難しい点、一機につき第5世代KMF数機以上のコストがかかる点を除けば、優秀な機体ってことだ、アーニャ」

 

「理解したよお兄ちゃん」

 

さすがはアーニャ、理解力が高くて助かる。

 

「痛いことついてくるよねえツキト君は………まあその辛口な評価が僕の技術力向上に一役買ってるんだけどね!」

 

「それは何より………アーニャ、ユーフェミア様を連れてコンテナに行ってくれ、白いほっそりとしたKMFがあるから、そこにスザクがいる」

 

「わかった、行きますよユーフェミア様」

 

「えぇ…………ツキト」

 

「何でしょう?」

 

「無茶をしたら、私とアーニャとナナリーが黙っていませんからね?」

 

「……はい、畏まりました」

 

怖え…………というか同盟でも組んだのかあの2人、険悪そうには見えなかったし。

 

さて、暇になったしロイドの新兵器について聞くか。

 

「ロイド、新兵器について聞かせてくれ」

 

「いいよぉ、それじゃあツキト君のKMFを見に行こうか!」

 

ハイテンションでテントを飛び出してコンテナを開けた。

 

私のグロースター・テンペスタはどんな魔改造を………いや待て、こいつグロースターじゃないぞ?どちらかというとこれは………。

 

「ロイド、こいつはもしや………」

 

「そう!ガウェインなんだよねえ、これ」

 

やはりガウェインか。

 

「期日通りに返還されたと聞いていたが………で?今回はどんなびっくりどっきりメカを仕込んでくれたんだ?」

 

「ふふふん、驚かまいでよ?な〜〜んと!分離可動式ハドロン砲を4機も搭載したんだよ!」

 

「名前からして面白そうだ………どんなものなんだ?」

 

「実はね、僕にしては珍しく休暇を取った時に見たアニメが着想の元で、パイロットの意思で自由に飛び回る兵器でね、それを元に超小型高速ヘリのようなものを試作して、これが物凄く高い性能を発揮してくれたんだよ!」

 

「ほう、超小型高速ヘリ……帰ったらそっちも見て見たい」

 

「そう?いつでも好きなだけ見ていいよ、でも今目の前にあるのはそれの完成形なんだ!さあ見て!ガウェインの背中部分!4つの壺みたいなやつ!」

 

ガウェインの背に回って見ると、確かに巨大な壺のようなものが口の方を外側にしてX字型に取り付けられていた。

 

「スラッシュハーケンの機能で4つのインコムを射出して、ハーケンブースターの機能の応用で軌道を変え、インコム自体につけられたフロートユニットで姿勢制御を行い、小型のハドロン砲で攻撃、インコムに繋げられたワイヤーで巻き取って機体に接続、射撃用のエネルギーとフロートユニットのエネルギーを本体から確保するんだよ!」

 

「インコムとはなんだ?」

 

どっかで聞いたような………そんな気がするんだ、そう、どこかの宇宙要塞の決戦時、敵エースパイロットと戦うために用意された特殊な機能を持つ専用機の………。

 

「パイロットの意思で動く機動砲台だよ、ワイヤーの長さで制限はあるけど、ワイヤーの長さが足りるのなら4つのインコムで敵を囲んでオールレンジ攻撃を仕掛けられるよ」

 

ガン◯ムのジ◯ングだこれ!足つきだからパーフェクトの方だこいつ!逆に足がなければある意味で原作再現っぽくなるな。

 

「なるほど、他には?」

 

「このインコム、いろいろと動作テストを重ねてるんだけど、補助コンピュータを使っても僕やセシル君、スザク君でさえ一個動かすのが精一杯、インコムを動かすのに必死でとても操縦なんてできなかったよ」

 

「おい」

 

「それほどに難しいんだよインコムっていう兵器は、打ち出す方向をある程度決められるスラッシュハーケンとは違って方向転換や姿勢制御のために思考を大幅に割かなくちゃいけないんだ、2人乗って手動で動かして見たりしたけど、それでも2つが限界なんだ、人間に腕が4本あれば4ついけたんだけどね………ちなみに、ほんとに動かすのに精一杯で、まだ射撃テストも出来てないんだよ、手動の場合、風の流れとか重力に気をつけて常にインコムのフロートユニットの出力調整をキーボードで撃ち続けなきゃいけなくて、とても的に向けて小型ハドロン砲を発射するのは厳しいんだよぉ〜………」

 

「作ってみたはいいが、実験も出来ない飾りになってしまったわけか」

 

まさに『ぼくのかんがえたさいきょうのないとめあふれ〜む』だな、夢と希望に溢れすぎて人間が使いこなすためには脳のスペックが足りなすぎる。

 

こいつをそこらの一般パイロットが全力稼働させるということは、1000人vs1000人の超大規模オンラインゲームを1GBのパソコンでやるのと同じようなもの。

 

正直言って、まともなプレイは無理、不可能もいいところだ

 

「今のところはね、そこで!元の持ち主のツキト君にやってもらおうと思ったのさ」

 

「なるほど、そこでここに持ってきたという………」

 

『敵襲!敵しゅうううううう!!!』

 

「なんだ!?」

 

「ひぇえ、敵がくるの!?早くしまわないと!」

 

まさか降伏勧告にキレて攻勢に出たのか?前線が勢いに飲まれたわけか!

 

そうだ!

 

「ロイド!データ取得のチャンスだ!」

 

「まさか、乗るの!?」

 

「そのまさかさ!早くしろ!敵はすぐそこまで迫ってる!」

 

「がってん!セシル君!セシルくーーん!」

 

ロイドを走らせ私は急いでガウェインに乗り込む。

 

ぶっつけ本番でインコムを使うというところまで原作再現させやがって………まったく、嬉しいことをしてくれる!

 

「通常のエナジーフィラーよりも長持ちするエナジータンクを背中に2本さしてあるからエネルギーは十分だよ!」

 

「了解!ツキト・アールストレイム、ガウェインで出るぞ!」

 

フロートユニットを全力稼働、速度はテンペスタより落ちるが十分だ!

 

「早すぎる、前線はもう落ちたか、チッ、前線近くに置いといたKMFはもうダメそうだ………ラウンズの応援は期待できないか」

 

やはり万年演習しかしてこなかったような親衛隊は役に立たんか、親衛隊なぞどこの世界も似たようなものか。

 

上から見たところ敵はざっと40はいるな、しかも内部からゾロゾロ出てくるから実質それ以上か。

 

「だが好都合!ロイド!記録頼む!補助コンピュータ起動!インコム全力展開!」

 

バシュッ!バシュッ!バシュッ!バシュッ!

 

4機のインコムが射出され、敵の方向へと向かう。

 

「そこ!貴様ら全員落ちろおおおお!!」

 

それぞれのインコムから同時に小型ハドロン砲が放たれる。

 

小型といえどさすがハドロン砲、その威力は申し分なく、敵機であるサザーランドを破壊するに留まらず、貫通して射線上の敵サザーランドも巻き込んで破壊した。

 

この一斉射で実に14機の敵サザーランドがレーダー上でロスト、撃破扱いとなった。

 

『すごい………これがインコムの本当の力……』

 

「まだ的がいてくれるとは、嬉しい限りだな!ロイド!」

 

インコムの位置を変えて次の射撃。

 

「死ねぃ!」

 

ちっ、たったの7機か………一般的には十分な戦果だ、だがまだうようよと出てきやがる、特攻してみんな死ぬつもりか?

 

「ロイド!今度はインコムに合わせて全武装一斉射撃を行う!記録忘れるな!」

 

『待ってよ!豊富なデータ量にパソコンが悲鳴をあげてるよ!!』

 

「うれしい悲鳴だろう?喰らえ!」

 

『セシル君こっちのコード早く繋いで!パソコンが吹っ飛んじゃうよ!』

 

ハドロン砲収束率を80%、地上付近で拡散して敵機を巻き込むように、これで!

 

「これがブリタニアの科学力!!」

 

肩のハドロン砲が地表の敵機を焼き尽くし、逃れた敵機をインコムで倒し、それを逃れた敵機にスラッシュハーケンを突き刺し仕留める。

 

「逃げられるものか!このオールレンジ攻撃から!」

 

景気良くインコムで射撃を行なっていたが、ついにインコム内のエネルギーが切れた。

 

「インコム内のエネルギー枯渇!ワイヤー巻き取りで本体に戻しエネルギー充填する!」

 

『うーん、フルチャージ状態なら3、4回の射撃は可能………意外と燃費いいのかな?でも4機分となると相当量食うし……』

 

ロイドがブツブツ言ってる間にエネルギー充填完了した。

 

「再度インコムを射出し攻撃する、いくぞ!」

 

よし、インコムの操作は慣れた、この時ほど数多くある才能がカンストであることを喜んだ時はないだろう。

 

ま、私のような人間ではサーモンピンク色のMSパイロットのように、NTにはなれないだろうけど。

 

しばらく撃って戻してを繰り返していると敵の増援がやんだ。

 

壁の周りに親衛隊のKMFが前線を形成したため、一度交代して補給することに。

 

せっかく立てた作戦も、配置決めも何もかも無駄足になり、ほぼすべての敵を単騎、それも数分で殲滅した結果となった。

 

新しい敵が来る可能性もある、補給は迅速に。

 

ゆっくりと特派コンテナ前に着地する、近くにはアーニャとユフィが心配した表情で見上げているのがディスプレイで確認できた。

 

次々に人が集まり、ラウンズや陛下までもが居合わせた。

 

皆見守るようにガウェインを見上げている…………いや、降りづらいんだが。

 

とりあえず降りなきゃ怒られそうだし、コックピットハッチを開けて外に出る。

 

そのまま飛び降りるとなぜか小さい悲鳴が上がったが、無視してその場にいたロイドの方を向く。

 

「ロイド、補給を頼む」

 

「はぁい…………うわぁ、データがいっぱいだけどインコムがボロボロだぁ………整備大変だよこれ」

 

「の割には嬉しそうに言いますねロイドさん………」

 

ロイドとセシルに補給を頼む、まだ内部に敵がいるかもしれん、いつ突っ込んでくるかわかr

 

「ツキト君!」

 

「ヴァルトシュタイン卿?なにかあったのか?」

 

妙に慌てた様子でビスマルクが来た、どうしたんだ?

 

「先ほど反乱軍が降伏した、20名ほどを捕虜として捕らえた」

 

「……もう、終わったのか?」

 

「君の短時間での大量撃墜がキッカケで反乱軍上層部は戦意喪失、白旗をあげたよ」

 

早すぎる………そんなにこの機体が怖かったのか。

 

「そうか………あ、ロイド!データは十分にとったよな?」

 

「もう十分なほど〜」

 

「わかった、とりあえず、終息を喜ぶこととしよう…………それでヴァルトシュタイン卿、首領は?」

 

「今は護送車の中に押し込めてある」

 

「了解………ふぅ………あれ?」フラッ

 

「お兄ちゃん!!」

 

「アールストレイム卿!?」

 

力が入らない、消耗し過ぎたか、アーニャに抱き留められるのは新鮮だな。

 

「すまん、アーニャ、ちょっとふらついただけで問題は……」

 

「お兄ちゃんもう休もう?ベッドで寝たほうがいい、っていうか寝て、休んで、お願いだから」

 

「え?あ、はい……」

 

そんなに具合悪くないんだが………。

 

「アーニャさんはツキトを、こっちのほうです、ゆっくり連れてきてください」

 

「はい、お兄ちゃん、ベッドまで連れてくから、ちょっと我慢してね」ヒョイ

 

「え?」

 

なぜかベッドに連れてくだけなのにお姫様抱っこされた、肩に手を回してくれるだけでいいのに………。

 

「………アーニャさん、変わりませんか?」

 

「嫌です」

 

恥ずかしいから連れてくなら連れて行ってくれ、頼むから……….

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

no side

 

 

大事をとって病院へと運ばれたツキトは、医師免許を持つロイドによって精密検査を受けた。

 

ラウンズという貴重な存在ということもあり、存在の露見を避けるために隔離病棟へと通された。

 

ツキトはベッドで眠っており、ユーフェミアやクロヴィスなどの大物皇族からアーニャなどのラウンズ、親友であるスザク、ツキトの出撃によって偶然にも大怪我を免れた親衛隊隊員数名が病室に詰めかけていた。

 

ロイドの持ってきた診察書に息を飲む病室の面々。

 

「………………うん、健康状態に異常は無いね、たぶん新兵器を長時間使ったことで疲れたんだろうね」

 

「ということは?」

 

「ただの疲労だよ、しばらく寝てご飯でも食べてればけろっとしてると思うよ」

 

「よかった…………」

 

肩の力が抜け、ホッとした声が病室に満ちた。

 

「ツキト君は自分の基準で行動するから、人から見ると無茶してるように見えちゃうから心配するのはわかるけど」

 

「どうにかできないんですか?」

 

「精神的なものだし、本人は無茶してる自家なしだからねぇ、仕事してないと落ち着かないタイプなんだよねぇ、典型的な社畜だよね」

 

「社畜………」

 

「長く見てきたからわかるけど、仕事してる時とか考え事してる時、一緒に新兵器の評価をしてる時や戦闘中とかは本当に楽しそうに笑うんだよねぇ」

 

「そうだったんだ…………お兄ちゃんのこと、何も知らなかった」

 

「私もです………」

 

空気が重く沈む、とりわけクロヴィスとユーフェミアは幼馴染としての立場もあって、アーニャは妹として、スザクは親友として、より重く受け止めていた。

 

「ツキト君は自分の基準で行動する割にはキャパシティを把握してないんだよねぇ、大人っぽく振る舞う割に妙に子供っぽいというか、無理して背伸びしてるというか………まあ、ちょっと抜けてるとこあるんだよね」

 

「まあ、ツキトって天然なとこあるし、女装とかにもためらいがない………あっ」

 

「スザク、今のはどういうこと?」ゴゴゴゴゴ

 

「聞かせてくれますよね?」ゴゴゴゴゴ

 

「はい………」

 

後にこの部屋にいた一人は語った、スザクの失言を追求する2人の姿は、まさに恐怖の光景だったそうな。

 

「とりあえず点滴とかもろもろ入院代は僕が立て替えておくけど………これって保険とか保障とかおりるよね?セシル君」

 

「はい、『戦闘中の意識不明』という名目で入院代にお釣りが出るくらいはは降りるかと思います」

 

「あちゃー、まずいよそれ」

 

「「「「え?」」」」

 

「僕がうまくごまかしとくから、ツキト君にその話はしないでよ、ここにいる人全員約束だからねぇ!」

 

ロイドの慌てた様子に病室に来ていた者たちが不審に思った。

 

「ロイドさん、まさか着服しようなんて……」

 

「立て替えた分はもらうけど、残りは退院後にバーっと使っちゃってね!1ドルも残しちゃダメ!最悪アーニャ君が財布に入れといて!」

 

「なんでそんなに慌てるの?」

 

「ツキト君、お金嫌いなんだよねぇ、結構前の愚痴で『口座のお金が一向に減らない』、『給料が多い割に仕事が少ない』、『1000万ほど募金しようとしたら突き返された』、『金を預かってくれないか?5000万くらい』ってノイローゼ気味に言ってて、僕までノイローゼになっちゃいそうだったんだよ!」

 

「「「「えぇ………」」」」

 

呆れたため息が満ちる。

 

知ってる人も多いが、ツキトはかなりの倹約家で有名であり、金銭感覚が別方向に狂っているのだ。

 

事実、ツキトは一級料理人が最高級食材を使って作った高級料理を優雅に食べるより、タイムセールのスーパーに嬉々として突っ込んで野菜と惣菜を確保し、自分で料理して食べる方が好きな人間だ。

 

そこがブリタニアの庶民や日本人に愛される『庶民派貴族』の所以なのだが、その生活スタイルと散財が噛み合わないのが悩みだった。

 

ツキトも使うときはバーっと散財するが、その使うときというのがルルーシュかナナリーが絡んでないと使わないのだ。

 

位の高さと有能さが重用され、給金は上がるも散財はほとんどない、そのためツキトの口座の金額の桁は文字通り桁違いの貯金額となっていた。

 

もちろんツキトなりに努力はして来たつもりだ、口座の金を使っている咲世子に、買い物を頼むときに値段は気にせず良いもの買うようように頼んだりしたし、ルルーシュとナナリーへの栄養バランスを考えて値段無視で食材を買うように頼んだりした。

 

咲世子は優秀なメイドなので、言われたこと以上の成果を発揮し、いつもより多くの支出に成功、電化製品や調理器具なども購入し、ツキトの散財に大きく貢献した。

 

さらに運動部であるナナリーに消耗品である防具や新しい剣を本国から取り寄せて贈るなど、本人は貢がれているみたいで嫌がってはいたものの、ツキトからの贈り物というのもあってとても喜んで使ってくれた。

 

ルルーシュにも次期皇帝としてしっかりした服装をしてもらう、という建前で、ブランド物の服を何着か咲世子に買わせたりした、結果として私服の時のルルーシュのモテ度がとてつもないことになったが、結果としてルルーシュもファッションはアレだったため、喜ばれた。

 

なお、ルルーシュとナナリーの両名は後に贈られた数々の物の値段を友人から聞いて初めて知った時、ツキトの頭を心配したそうな。

 

とにかく、このように多くの対策を講じたが、見事に敗北、それも給金がまた少しアップしてるのを見て大敗北、せっかく賜った給金を返すのも無礼なのでさらに心労が募った。

 

「だから、お金の話は特にNGだよ!予算とかの話だったら大丈夫だけども、貯金の話とかポケットマネーとか聞いちゃダメだからね!」

 

「もしも聞いてしまった場合は、よい散財方法を教えてあげてください、散財方法について現実的かつ社会に役立つ方法のほうが良いでしょう、決して『自分で使う』ような散財方法はダメです」

 

「それ言ったらどうなるの?」

 

「そんな無駄遣いできるわけがない、と言ってキレます」

 

「お兄ちゃんらしいけど………自分で使って欲しい」

 

「ツキト君、仕事の欲が深い割に自分で欲しいものとかないから………散財も趣味を作ってもらうほかないんだよね………っと、話がずれちゃった、そんなわけで、2日は安静にしてもらうから、お見舞いに来たければいつでも良いよ、ツキト君は文句無いだろうしね」

 

その場の何人かがグッとガッツポーズをした。

 

「もちろん、ツキト君に手を出すのは御法度だよ、なにせ彼は、ガウェインの理論上の限界を軽々超える性能を引き出したスーパーパイロットなんだから」

 

「ガウェイン………あの黒く禍々しいKMFか」

 

「ええ、その通りですよクロヴィス様」

 

「ロイドさん、お兄ちゃんのKMFについて教えて」

 

アーニャがロイドにそう聞いた。

 

「いいよぉ、あーでも一応機密扱いだから、皇族の人はいいけど親衛隊の人は出てってね、あ、スザク君は特派所属でユーフェミア様の騎士だから居て良いよ」

 

言葉通りに親衛隊隊員が退出し、クロヴィス、ユーフェミア、アーニャ、スザクだけが残った。

 

「じゃあ説明するよぉ、まずは元となった『ガウェイン』について、セシル君スペックお願い〜」

 

「型式番号はIFX-V301、機体名『ガウェイン』、全高6.57m、全備重量14.57t、乗員は1名または2名、複雑な電子解析システムである『ドルイドシステム』と強力な『ハドロン砲』を実戦で使えるかどうかを試験する実験機です」

 

「第7世代までのKMFと、現在開発中のKMFをぜーんぶ引っくるめてもガウェインに火力では勝てないんだよね」

 

「僕のランスロットでも、ですか?」

 

「ランスロットは機動力に出力を振ってるんだけど、ガウェインは機動力に回す出力を攻撃面に振ったいわゆる指揮官型なんだ」

 

「ドルイドシステムによる高い索敵能力を駆使しての最前線での部隊指揮、ハドロン砲による遠距離砲撃能力の付与、フロートユニットによってそれを空中から行えるという大きな強みもあり、次世代の主力にも期待されました」

 

「ところが、ドルイドシステムの演算は非常に複雑かつ繊細で、パイロットを2名乗せることで負担を軽減させることを考えたんだけど、同条件のパイロット2名では演算を処理しきれなかったんだ」

 

「計算結果では、ドルイドシステムを完全に使いこなすには同条件のパイロットを4名以上でなければ安定すらしません」

 

「しかも、4人居てやっとドルイドシステムが安定するのに、操縦にもう1人必要になる計算なんだよね、ガウェインって」

 

「そんな………ではツキトはなぜ」

 

「ツキト君はガウェインにとってまさに救世主みたいなパイロットなんだよ、たった1人でドルイドシステムの演算を処理できて、完璧に操縦までこなせるパイロット、まさに逸材だよ、逸材って点ではスザク君と同じだね」

 

「ランスロットにはスザク君でなければ、ガウェインにはツキトさんでなければ機能しません、ランスロットの性能を限界まで引き出したのは他の誰でも無いスザク君たった1人で、ツキトさんはガウェインの理論上の性能限界値を超えてしまいました」

 

次々にでてくる単語にユーフェミアは『?』状態だったが、スザクを引き合いに出されるとどれくらい凄いのかすぐにわかった。

 

つまり、『なんかよくわかんないくらいすっごく強い』ということだ。

 

「ツキトさんから得た実戦データを元にロイドさんが新兵器を搭載、仮名称『ガウェイン・アンジェラ』となりました」

 

「新兵器というのは?」

 

アーニャの言葉に、ロイドは待ってましたと言わんばかりに笑みを深めた。




言いたいことはわかります。
でも言わせてください。
高性能の電子解析システムであるドルイドシステムとツキトの演算処理能力、インコムくらいいけるでしょ!
まあ、正直ファンネルは無理だと思いますけど。

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