と言いたくなるような内容です、理解できなくてオーケー。
理解できない存在、それがツキト・アールストレイムなのかもしれない。
ツキトside
いつも通り4時くらいに起きる、ベッドから出て着替えて道具を持って特訓を………。
って、どこだここは!?
天井もなければ壁もない、一面真っ白の不気味な世界だ。
寝ている間にタイムスリップでもして、地球ができる前の世界にでも来てしまったのか?
「お待ちしておりました」
「っ!誰だ!」
声のした方を見ると、白いベールを被った男か女かわからない人物が立っていた。
「ここはCの世界を仲介してあなたのコードの力を使って意識のみを接続している、いわば『神の間』です」
「……なるほど、随分と殺風景な部屋なもので思わず誘拐でもされたのかと思ったぞ」
「あなたを物理的に誘拐できるのは数える程もいないでしょう、ツキト・アールストレイム、前世名、龍宮寺月斗」
「なぜそれを!?貴様は一体……?」
「私は神、と人から呼ばれる存在です」
神…………本物か、あのとき会った転生の神とは違って、何も読めん。
「今回こうしてあなたの意識を無理やり接続させていただいたのは、あなたが転生する際に必要だった処置について説明をするためです」
「必要だった処置、だと?」
「そうです、転生するにあたり、私たち神はある程度の能力を与えるついでに、次の世で生きていけるように、『才能』や『パラメータ』を調節させてもらっています」
「それがどうかしたのか?」
「あなたを転生させるとき、あなたの持つ『才能』が邪魔をして、一度転生ができなかったのです、その『才能』というのが剣の才能です」
「待ってくれ、それじゃあ私が転生際に受け継いだ剣の才能はどうなったんだ?」
「怒らずに聞いてください………どうにかして転生させようと、私たちは剣の才能を削り、他の才能に振り分けたのです」
「なん………だと……」
「簡易的に説明いたしますと、前世での剣の才能が5、他の才能が3〜4、今世での剣の才能は3、他の才能が4〜5、というように調節させていただきました」
「で、では、なんだ?私は前世のように強くなることはできない、のか?」
「いいえ、努力によって前世以上に強くなることが可能です、しかし成長率は才能の高さに依存します」
「というと?」
「剣の腕を磨く場合、剣の才能を基準に、努力の才能などが加算され、その結果として腕が上達する、ということです」
「そ、そうか………待ってくれ、それでは先ほど言った『パラメータ』の上限に引っかかるんじゃないのか?」
「では、『パラメータ』について説明いたします」
白い人物が腕のようなものを振ると頭上から雰囲気に似合わない黒板が現れた。
「………これは?」
「あなたなら言葉でも十分に理解が可能ということがわかっています、しかしより詳しい説明のために必要だと思い、召喚しました」
自分の空間ならなんでもできるんだな。
白い人物がチョークを持って図を描きながら話し始めた。
「私たちの言う『パラメータ』とは、転生者が生まれた時の上限値を設定することを言い、その後『パラメータ』が伸びていくかどうかは転生者の行動次第です」
「『パラメータ』はあくまで初期値、と言うことか?」
「その通りです、そして『パラメータ』の設定にはルールがあり、強力だったり利便性の高い転生特典を選んだ転生者は『パラメータ』が低く、弱かったり限定的にしか使えないような転生特典を選んだ転生者は『パラメータ』が高いようになっています」
「ふむ、例えの話だが、今の話しの前者と後者が純粋に殴り合いをしたらどちらが勝つ?」
「後者が圧勝します、そもそも強力な転生特典というものはそれだけで勝利できてしまうものが多く、身体を使う必要がないので、必然的に身体は弱くなります」
「なるほど…………参考までに聞きたいんだが、強力な転生特典というのはどういうものなんだ?」
「『王の財宝』、『無限の剣製』、『ベクトル操作』、『dies iraeのエイヴィヒカイト』、『リリカルなのはの力』………創作物内の登場人物の力を選択される転生者が多いです」
どれも聞いたことないな…………。
「私の転生特典、身体能力と技術の引き継ぎと『コード保持者を殺せる』能力を選んだやつはいないのか?」
「前者は多少いますが、後者はあなただけです」
「強さは?」
「最弱クラスといって過言ではありません」
「薄々わかってたが凹むな……」
「その分『パラメータ』は歴代でも最高クラスです」
つまるところ、最弱の転生特典のおかげで身体能力、『パラメータ』は歴代のあらゆる転生者を凌駕する、ということか。
「理解した、だがまだわからんことがある」
「なぜ、剣の才能が5のままだと転生できなかったのか、ですね?」
「そうだ、『パラメータ』には直接関係するわけでもないのにおかしいだろう」
「剣の才能を削るというのは、私より上位の神による指示でもあったからです」
「この際従ったことについては別にいい、なぜ、削らなければならなかった?」
「理由はふたつ、あなたは前世において世界の頂点に立った、それが私たち神の世界………神界と言いましょうか、そこにまで伝わってきたのです、伝令の天使はそのことを針小棒大に上位の神に訴え、死後に転生する際はその力を削ぐのが良い、という結論が出てしまったから、というのがひとつ目」
「未知の存在に怯えるのはしょうがないが………神というものも、案外臆病者なんだな」
「それがふたつ目の理由につながります、上位の神はいずれ神界にあなたが侵略を行うのではないか?という不安にかられたのです」
「それで、上位の神とやらは私のことを転生させるなと言ったのか」
「はい、しかしそれは上位の神の一個体の意見であり、大多数は何かしらの問題があっても転生させる、という決まりがありそれに従っています」
その一個体だけ殺すか。
「実を言うと、その一個体の独断の行動であなたの剣の才能は1になるまで削られる一歩手前まで行きました」
「おい………」
「ごめんなさい殺さないでください許してください何でもしますから」
いきなりうずくまり自分を抱きしめるように両腕を交差させて震えだす白い神。
「前世世界でのあなたは勘がいいので、削りすぎると何かされたのではないかと察してしまうので、3でストップさせたのです」
「それは良い判断だったな」
「つくづくそう思います…………そして、ここでふたつ目の理由です」
「さっき言ったんじゃないのか?」
「いいえ、ここからです、ふたつ目の理由ですが、それはあなたに与えた転生特典にあります」
「『コード保持者を殺せる』能力がか?だがこれは最弱クラスの特典なんだろう?」
「人から見ればなんの害もないのですから、最弱クラスと言ったのです、しかし私たち神からすれば最強クラスなのです」
「どうしてだ?まさかコードは神である証だとでも言うのか?」
「あなたがコード保持者を殺すくらいは私たちにとってはどうでも良いのです、しかし、あなた自身がコード保持者となり、転生特典と共存してしまったがために変化が生じました」
「変化?」
「今のあなた自身の状態、把握できていますか?」
「不死身で不老不死のスーパーマンってとこだろう?」
「概ねは、今のあなたは不死身で不老不死で、私たち神する片手間で滅することさえ可能な力を保ちながら人の姿を保っている状態です」
「はぁ!?」
「つまりあなたは、例え火に焼かれ灰になろうとも、その灰から不死鳥のごとく復活し、例え四肢をもがれ塵芥のように砕け散ろうとも、完全に再生し、例え深海の奥深くに沈められ圧壊しようとも、その場から生還でき、どのような生物も概念すら殺すことができ、その気になれば1000年でも万年でも、それこそ無量大数の先を見ることができるほど長い時間生き続けることができ、その間に肉体に激しく負担のかかる運動を続けていても決して息切れすることもない、唯一死ぬ方法は、自害することのみです」
「…………3行で言うと?」
「あなたが
全宇宙全概念の中で
1番強い」
「…………」
「転生特典を与えた時はこうなるとは思いもしなかったのです、しかしこうなってしまった以上、あなたと接触せざるを得ませんでした」
「それで、何をしたいんだ?」
「答えていただきたいのです、あなたは私たちの敵か、味方か」
「私を味方にしたいのなら、お前たち神が隠し持っている私の剣の才能の断片を渡せ」
「………なぜそのことを?」
「勘だ、勘」
当てずっぽうなのにあたってしまった………。
「わかりました、しかしそうするとなると、仮に味方であった場合であっても、上位の神に一層警戒されますが、よろしいでしょうか?」
「自分で蒔いた種に怯えるような神に興味はない、一度戦ってみたいとは思うが………どうなんだ?」
「あなたに触れた瞬間に存在ごと滅されるので拒否すると思います」
もはや私自身が神と言っても過言じゃないんじゃないか?
「まあ、私としてはそっちがまだ持ってる分を返してもらえればいいさ、コードもそのうち捨てる気でいるしな」
「わかりました、その言葉を信じて削り隠し持っていた剣の才能の断片をお返しします」
白い神が両手で皿を作る、するとそこに水が湧いてきた。
その水をコップに移し変えて差し出してきた。
「これはいわば才能のスープ、ここにはあなたから削り取った剣の才能が液体として入っています」
「水にしか見えんな」
「コーンスープ味なので問題はないかと」
「味があるのか!?」
剣の才能=コーンスープという驚愕の事実。
「じゃあ早速………」
コップを受け取って飲…………いや待ってくれ。
「質問だが、これを私以外の人間が飲むとどうなる?」
「飲んだ人物の剣の才能が1〜2ほど上昇します」
なるほど…………。
「ナナリー・ヴィ・ブリタニアとアーニャ・アールストレイムの剣の才能はどれくらいなんだ?」
「前者は4、後者は5です」
アーニャの方が上なのか。
ふむ。
「これを私のいる世界に送り込むことはできるか?」
コップを持って見せながら言ってみた。
「可能です、しかし送り込むとなると、味の質が落ちますが、よろしいですか?」
「構わない、瓶詰めにして私のベッドの近くにある棚に置いといてくれ」
コップを渡すと中身もろとも消失した。
今の一瞬で送ったのか、まあ神だしこれくらいはできるのか。
というか味が落ちることを気にしてどうする。
「わかりました、他に用件はございますか?」
「特にない………ところで、かなり下手に出てるようだが、そんなに私が怖いか?」
「上位の神より、接触時に無礼がないようにせよと言われましたので」
その上位の神とやらに一度会ってみたいな、件の一個体のやつかもしれないが。
「そうか、では私を現世に返してくれ、そろそろ起きねばならん」
「はい、切断いたします」
その言葉を最後に、真っ白な空間は消え、見知った自室の天井が見えた。
起き上がって時計を見ると午前5時半、寝過ごしたか、今日の特訓はなしだな。
棚の上を見ると水のような液体が入った瓶が置いてあった。
蓋を開けて匂いを嗅ぐと、間違いなくコーンスープの匂いだった。
「夢ではなかったんだな………」
不思議な体験に少しの驚きと興奮を覚えた。
しかし時計の針が指す数字を見て余韻を断ち切って通勤の準備を始めた。
この体験はクレアとの話のネタにできそうだと、そう思いながらパジャマを脱いだ。
「………………ということがあった」
総督府にある私の執務室にて、雑務をテキパキとこなすクレアに今朝の出来事について話した。
「はぁ?」
「中二病患者を見るような反応は傷つくぞ」
「いや、とんでもないこと起きてんのになんで平然としてんのよ………ってかなんでここにそのスープ(?)持ってきてんのよ」
「肌身離さず持っていないと、私の部屋に入ってきたナナリー様か咲世子が勝手に飲みそうだからな」
私のパンツが2日ほど行方不明になった後でタンスの中に綺麗に畳まれて帰ってくることがたまにあるからな。
……………確率的には咲世子のほうが若干高いだろうな。
「えぇ………」
「まあ、どのみちこれはナナリー様に飲んでいただくつもりであるが」
「でた、ナナリー贔屓」
「そう言うな、神によればナナリー様の剣の才能は4、これを使えば5になり、対等に戦うに相応しい2人目の好敵手となるだろう」
「1人目は?」
「我が愛妹、アーニャ・アールストレイム、アーニャはすでに才能が5であるうえに、私の本気、全力の攻撃を全て弾いてみせた、実力は本物だ」
「ツキトが言うならそうなんでしょうね………ところでツキト」
「どうした?」
「この間のアッシュフォード学園でのナナリーとの練習、あれが記事になって出回ってるわ」
「どんな感じでだ?」
「『彼女がツキト・アールストレイム卿の婚約者か?』とかそんな感じね」
「ついに学園の外に漏れたか、情報操作はしっかりとやってたんだがな」
網目から抜け出されたか、こうなると面倒だ、否定して回るとナナリーが悲しむし……………うむ。
「…………放置でいい、何かあったら伝えてくれ」
「いいの?本国にナナリーの顔とか流れたらまずいんじゃない?刺客が送られてくるかもしれないわよ?」
「日本エリアのブリタニア軍はほとんど私の派閥で構成されている、コーネリア様やユーフェミア様の派閥とも良好な関係だ、皆優秀な者たちだ、本国からくる形だけの刺客など、相手にもならん、審査の時点ではねるだけだ」
「本当に大丈夫なの?」
「正直な話、本国にナナリー様とルルーシュ様が存命していることがバレたとしても、私のやることに変わりはない、私はただ、御二方の手足となるだけだ」
「ナナリーの夫の間違いでしょ?」
「将来的にはな、今は従者で十分に幸せだ…………それに、いつかはバレるんだ、問題はその後、今まで親しかった者がどのような反応をするのかだ」
「メンタル面のチェック……いえ、強化かしら?」
「あぁ、バレて広まったらそうすることにする、もし陛下にバレていたとして何もアクションが無いのなら、陛下は少なくともルルーシュ様とナナリー様の味方ということになる」
「………結構杜撰な考えなのね」
「まあ、そう思うだろうと思った」
「どういう意味よ?」
「とある組織が、杜撰で穴だらけの計画を立て、それを偶然にも知った自称正義の味方クンはどういう行動をとると思う?」
「…………あーー…………何となくわかった、性格悪いわね」
思いっきり嫌な顔をしてクレアはそう言った。
「効率的と言ってくれ」
「自分の主人、将来の妻を餌に敵をおびき出そうとする作戦は効率的と言うより卑劣よ」
「クレアならそう言うと思っていたよ、しかしだ、未だ姿を見せないC.C.のストーカーを早めに処分したいのだ」
「気持ちはわかるけど………原作みたいな状況になってもルルーシュはギアスがないからマオに勝ち目はないのよ?」
「私がいれば勝ち目はある、それも100%だ」
「コードってほんっとーにチートよね…………しかも今は神殺しの力もあるし、その才能の水(コーンスープ味)を飲めばさらにパワーアップできるわけだし」
「だからこれはナナリー様に差し上げるのだと言っておろうに………まあ、私自身の剣の才能は3程度、確かに飲めば強くはなるだろうな」
「じゃあさ………それを複製したらどうなるの?」
それは考えたことがなかったな………無理なものと思っていたし。
『できますよ』
「!?」
「?……どうしたのよ?」
「いきなり、あの白い神の声が聞こえてきた………」
「まじで?うわーー………コード持ちじゃなくてよかったぁ」
「おいこらクレア」
『痴話喧嘩中に失礼します』
(痴話喧嘩ではないわ!)
『失礼しました………先ほどの話ですが、それを複製するおつもりですか?』
(そのつもりはないが……)
『出来る出来ないの話ならば、あなたがいれば可能です』
(私が?)
『はい、しかしかなり特殊な工程が必要であり、現状では極めて困難かと』
(じゃあ作らないでいいか…………ところでなぜ私がいれば作れるんだ?)
『今のあなたは神格を得つつあります、コードを獲得された日から、日に日に神としての素質が向上している状態です』
(神格をか?そんな感じはしないが……)
神格というのは一種のカリスマ的なものなのだろう、確かにほとんどの部下は私への忠誠をわかりやすく表現してくれているが………。
『自分でも気づけないほど微小な変化ですから仕方ありません、しかしそう言うものに聡いお方はあなたに尊敬や畏怖を感じているでしょう』
(そうなのか?)
『はい、2ヶ月ほど前から素質が今までと比べ大きく向上しつつあります、最近になってメディアが騒ぎ立てているのはそのためでしょう』
2ヶ月前………ちょうど考えを改めて特訓を始めた頃か。
『神格は自らを高めようとする行為によってより大きくなります、神格が大きくなることで現人神のような存在になることも可能です』
(現人神になるとどうなるんだ?)
『食事は必要でなくなります、入浴せずとも体は常に清潔を保てます、【神】という存在になるため、持っている才能の全てがカンスト、パラメータも人の限界値を超えることができます』
(いいことづくしだな)
『デメリットもあります、仮に現人神となった場合、人からの一切の攻撃を遮断できるゆえに死ねません、傷ついたとしてもあなたの場合は回復・再生が早く、自害も困難です、そしてこの世界を管理する神の補佐をすることになります、また、他世界の問題解決のために出張することもあります』
えぇ………(困惑)
派遣社員に永久就職するわけか………面倒だし死ににくなるのは嫌だな。
「ちょっとー?さっきから神妙な顔で何考えてるのー?」
メリットを塗りつぶす勢いのデメリットの大きさに脳内で、ドン引きしているとクレアに話しかけられた。
「クレア、どうやら私は神になることができるらしい」
「…………はぁ?」
その反応は今日だけでも2回目だぞ、という言葉を飲み込んで今さっきの白い神との会話の内容を説明した。
あまりにぶっ飛んだ内容にクレアがオーバーヒートを起こしたため、今日の分は明日に回して揃って寝ることにした。
実を言うと、私もオーバーヒートを起こしそうだったからと言うのもあるが。
後日、私とクレアの添い寝を見た兵士の間で何やら怪しい動きがあったとかなかったとか。
なお、現人神になると究極ボッチ神になるもよう。
次回予告(嘘)
神へ至る資格を得た男が、突如として叛旗を翻す。
募り募った恨みつらみの呪詛が、流星群の如く帝国国民に降り注ぐ!
失われる、国民およそ2億人の命。
裏切られる、ルルーシュとスザクとの熱き友情。
切り離される、ナナリーとの愛。
審判の日来たる!神罰下る!
全てが塵芥となって朽ち消える!
賽は投げられた、地獄はどこだ?ここだ!ここにある!
裁かれる瞬間はきたのだ!
次回、【開戦の狼煙】
帝都の空が燃える!