コードギアス オールハイルブリタニア!   作:倒錯した愛

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ダンガンロンパ見てて遅れました。
カムクラ君が希望に溢れてて………んんんんんううううぅぅぅぅううううううん!!!


許されざる『恋』はあるのか

ツキトside

 

 

早朝の空港に立つ私、スザク、アーニャ、ヴァインベルグ。

 

機に乗り込む時間になったとき、アーニャがいきなり腕を掴んできた。

 

「アーニャ」

 

「………やっぱりやだ」

 

「あのなぁ………」

 

機に乗り込むのを妨害された、このやりとりはホテルやタクシーでもやっていて、なんどもなんども説得してここまでなんとかやってきたのだ。

 

スザクはこの光景に慣れたのか、微笑ましいものを見るような笑みを浮かべている。

 

逆にヴァインベルグは困惑混じりの苦笑いだ、自分の同僚がこんなブラコンじゃあ、そりゃそうだろうな。

 

にしても………。

 

「年明けのラウンズ同士の晩餐会でまた会えるんだからいいだろう?」

 

「年明けまであと3ヶ月もある、待てない」

 

「だから、待てたら言うことを何でも1つ聞いてやると………」

 

「じゃあ前借りして、あと1週間こっちにいて」

 

「できるかバカモン」

 

「じゃあキスして」むちゅー

 

「いい加減にしろ」ぽこんっ

 

「じゃあ…………セッ」

 

「………斬るぞ?」チャキッ

 

「ごめんなさい……」涙目

 

こんなわがままな子だっただろうか?妹だからいいものの、そこらの女ならここまで堪えてられないだろう。

 

アーニャのわがままくらい聞いてやりたいが、さすがに性行為はな……無理だ。

 

「むー………お兄ちゃんのケチ」

 

「ケチじゃないだろうに……そもそも、そんなやたらめったらキスなんてするもんじゃない、ましてや私とお前は兄妹だぞ?そのような行動は本来タブーだ」

 

「お兄ちゃんならむしろばっちこい」

 

どうしてこんな子に育ってしまったんだ………はぁ。

 

「はぁぁぁ………」

 

「どうしたの?キスする気になった?」

 

「なぜそこまでしてこだわる?何かわけでもあるのか?」

 

「お兄ちゃんが好きだから」

 

「だからな、私とお前は……」

 

「好きだから………」

 

「………ん?」

 

「お兄ちゃんが好きだから(恋愛的な意味で)」ポッ///

 

「………」

 

…………こういう時は、病院を進めたほうがいいのだろうか?

 

衝撃的すぎてもう何も言えん、さっきからやりとりを見てるスザクとヴァインベルグがすごいショックを受けた顔で硬直してしまっている。

 

私もお前たちと同じ顔ができたら幾分か楽だっただろうな………残念ながら私の顔の筋肉は疲れてもう動かんよ。

 

「お兄ちゃんが、好き………だから、離れたく、ない」

 

正直恋愛的に好きというのは驚いたが………嫌な気分はしない、近親者からの恋愛的な愛情というものは嫌悪感を抱くものといわれるが………むしろ嬉しく思うな。

 

っという私は異常者か?正常者だと思ってたんだがなぁ、いざ自分の異常性を知ると怖いものだな。

 

「気持ちは嬉しいが………お前にもラウンズとしての仕事があるはずだ、使命を全うしろ」

 

「………嫌じゃ、ないの?」

 

「そんなわけない、むしろ嬉しく思うぞ」

 

「本当?嘘じゃない?」

 

「お前のようなかわいい女の子に愛されるなんて、幸せ以外の何物でもないさ」

 

「……はぅ////」

 

「(………女誑しみたいだなアールストレイムって…………日本のほうにも何人か愛人がいるって噂だし………)」

 

「(ツキト…………さすがにモテ過ぎだよ)」

 

しかし、早くしないと機が出てしまう、それ以前にここは空港だ、人が少ない時間帯だからいいが、さすがに人目を集めてしまう。

 

「アーニャ、私とお前は繋がっている、どこにいても、私はお前と共にある」なでなで

 

「うん………///」

 

「離れていても、私たちは一緒だ」

 

ケータイを取り出して、えーと、アドレスは………あったあった。

 

「これが私のメールアドレスだ、いつでもメールしていいし、時間が取れれば電話もしよう、互いに交換しようか」

 

「それはとても魅力的……///」ポチポチ

 

ケータイを取り出してメールアドレスの交換をすませる、名前はシンプルにアーニャか、かわいいな。

 

「これで、私はアーニャといつでも、どこにいてもメールで話ができるな」

 

「お兄ちゃんとメール………」

 

惚けているアーニャの肩に手をおく。

 

「アーニャ、休暇が取れたら日本に来い、一緒に遊んだり、美味しいものを食べたり、綺麗な景色を見に行こう」

 

「お兄……ちゃん………」

 

「我慢、できるか?」

 

「………うん、我慢できる、お兄ちゃんに迷惑はかけない」

 

「よく言った、それでこそ私の愛しい妹だ」ギュッ

 

「あっ………あぅ////」

 

「(愛しいって言ったぞ!?おい!今愛しいって…………)」

 

「(残念だけど、これでほぼ素なんだよジノ)」

 

「(ウッソだろ………天然ジゴロって怖え………)」

 

「(ついでに言うとコーネリア様とユーフェミア様もツキトに惚れてるからね)」

 

「(おいおいおいおい!どこまで行く気なんだよ!?)」

 

「(ツキトに会った女の子の半分は惚れちゃってるから………)」

 

「((((;゚Д゚)))))))」

 

アーニャを抱きしめる、視線が集まるが、そんなもの知ったこっちゃない。

 

アーニャの気持ちを利用しているようで悪い気もするが、すでに多くの人間を見殺しにしてきた私が、今更この程度のことで戸惑うな。

 

「お前の仕事の成果、日本で楽しみに待っている、では、またな」

 

「う、うん………」ポ〜……

 

顔を赤に染めてフラフラしているアーニャを近くの椅子に座らせる。

 

「ヴァインベルグ、アーニャを任せた」

 

「へ?あ、おう」

 

「言っとくが、襲いでもしたら………」

 

「しないしない!しないって!」

 

「ならいい………いくぞスザク、もうあまり時間がない」

 

「あ、ちょっと置いてかないでツキト!」

 

早歩きで歩き始め、すぐに速度を落として足を止め振り向く、アーニャに言い忘れたことがあった。

 

「アーニャ」

 

「……なに?」

 

まだ顔が若干赤いアーニャにこう言った。

 

「次会った時は………そうだなぁ………キスしてやろうか?」

 

「………………………………………っっ!?!?!?」ボフンッ

 

「ふふふ、かわいいな…………ではまた、3ヶ月後に会おう」

 

あまりのことに頭が沸騰してしまったようだな、いちいち反応がかわいいなアーニャは。

 

踵を返し今度こそ機に乗り込む、ふらふらと危なっかしいアーニャを眺め、しばらくすると飛び立った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お兄ちゃんと……キス……3ヶ月後に………キス」ポ〜…

 

「(アールストレイムやべえ!妹すら見境なしか!?恐ろしい奴だって聞いてたけど、マジかよ!?!?)」ガクブル

 

「ハッ………帰ったらメールしなきゃ………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なにやら不愉快な想像をヴァインベルグあたりにされている気がする………。

 

「ツキト………」

 

「どうした?」

 

スザクが妙に真剣な顔つきだ、また悩み事か?

 

「その…………ブリタニアでは、妹と結婚できるのかい?」

 

「ハァ?妹と結婚なんぞできるわk…………おい待てスザク、お前まさか………」

 

「ちちちち違うよ!僕は別に!ツキトが妹と結婚するのかなぁ?なんて全然思ってないよ!」

 

「阿呆!そんなわけあるか!だいたい私には、ナナr………婚約者がいるのだぞ!?お前は私に重婚、それも近親婚しろと言うのか!?」

 

「ごめんツキト、そんなつもりじゃ………」

 

「………私もすまん、少し冷静になろう、お互いにな」

 

爆弾発言をぶっ込んできたスザクのおかげで、先ほどまでの煩悩を払い、スーッとリラックスしてきた頃に、スザクが口を開いた。

 

「ツキト、アーニャの気持ちはどうするつもりなんだい?」

 

「………たった1人の妹の思いを、無下にはしたくない、アーニャは私の最愛の妹だ、何か別の方向で思いに応えるべきだと思っている」

 

生まれた頃から一緒だった故か、他の女のように淡々と切り捨てるという選択ができない、未練がましい男だなまったく、私もまだまだ未熟だな。

 

「だが、そうするには互いの立場が………ラウンズという立ち位置が邪魔だ、近々枢機卿になることが決定してはいるが、それでは余計に行動の範囲が狭まるばかり…………自由を求めてここまで登ってきたが、逆に不自由とはな」

 

笑えてくるよまったく。

 

「なのに猶予は少ない、アーニャの状態から見ても我慢が効くのはおそらく1ヶ月と少し程度、3ヶ月後の晩餐会まで保たんだろう」

 

「よくわかるね、妹だからかな?」

 

「………まあ、よく似た知り合いがそんな感じだしな、ただの推測にすぎない」

 

よく似た知り合いとはもちろんナナリーだ。

 

「だからあんな約束を取り付けたわけだ、ああ言っておけば素直なアーニャは我慢しようと堪えるだろう……………結局は3ヶ月後に私がキスよりもひどい目にあうわけだが……」

 

「あぁ………アーニャってナナリータイプの子なんだ」

 

「ナナリータイプ?なんだそれは?」

 

「うんとね、押しが強い女の子」

 

「くすっ、納得だな」

 

どうやら、私は押しが強い女性には滅法モテるようだ。

 

そんなに私に防御力がないように見るのだろうか?実際低いから仕方ないか。

 

「アーニャのことでいつまでも悩んでいても仕方あるまい、今は一刻も早い日本エリア防衛軍の設立の方が先だ」

 

「そうだね、ツキト的にはどれくらいの規模にする予定なの?」

 

「現在の日本エリア全土の防衛戦力の1.2〜1.5倍ほどだ、練度も今よりも高い現地人兵士を育成し、各地に配属させる予定だ」

 

「となると、大々的な宣伝が必要だね、それも多くの日本人に好意を持ってくれるような良いものじゃないとね」

 

「その通りだ、スザクも頭が回るようになってきたな」

 

原作よりも頭が良くなってきたかな?もともと勘がいい奴だから、ちょっと補助すれば後はスイスイ行けるものなんだよスザクは。

 

スザクはナゾナゾや迷路が得意なタイプだ、コツが解ればすぐに解いてしまう、その点計算で動くルルーシュはスザクの倍はかかってしまったり、答えが間違っていることがあったっけか。

 

「ちょっと勉強しただけだよ、ツキトの助けになりたくてさ」

 

「嬉しいことを言ってくれるじゃないか、じゃあ早速スザクには大役を務めてもらおうか」

 

「大役?」

 

「日本人が求めるものは、あの時の式典である程度理解した、何にも縛られない『自由』、不安色の無い無色透明で透き通るように先が見える『明日』、そして………彼らの道標となる『英雄』の存在だ」

 

「『英雄』の存在……僕にそれを?」

 

「そうだ、一兵士から騎士となり多くの注目を集めている『救国の騎士』枢木スザクに、日本エリア防衛軍の指揮官を務めてもらう」

 

「僕に、指揮官!?しょ、正気かい!?そんな経験………」

 

「別に戦場の外から部隊を動かせとは言っていない、そんなもの彼らが求める英雄の姿では無い………彼らが求める英雄、それは戦場にて自らが一番槍となり味方を鼓舞し、勇気と希望を与える者………私はそう考えている」

 

日本においても、ブリタニアにおいても、ひとえに英雄足る者は、戦場を縦横無尽に駆り、単体で大軍を殲滅した者たちだ。

 

マリアンヌやナイトオブワンがそれにあたる、簡単に言えば一騎当千の存在こそ英雄と呼べる。

 

スザクもその力があるはず、無いのならつけてもらうだけのことだ。

 

「処理が面倒だから指揮官と呼称したが、要するに部隊長となんら変わり無い、スザクには戦闘の際、一番先頭に立って戦ってもらうというだけの話だ」

 

「なるほど、それくらいなら僕にもできそうだよ」

 

生か死かの戦場の一番槍を『それくらい』なんて普通言わんぞスザク、英雄の器に違いは無いが、とんでもないくらい豪胆だなぁ。

 

「人々を導く英雄………歴史上の偉人ならば、連合ができるより遥か昔、フランスという国家の戦乙女、ジャンヌ・ダルクが有名か」

 

「ジャンヌ・ダルク?いつの頃の人なんだい?」

 

「歴史書くらい流す程度でもいいから読んでおけ……………我がブリタニアがかつてユーロピアの地にあった頃、フランス国内の混乱に乗じて戦争を起こした、100年戦争と言われる多くの民に犠牲を強いた愚かな戦い、ちょうどその75年経ったあたりの1412年だ」

 

「へえ、すごい大昔の人なんだね、それでその人は何をしたの?」

 

「一応、ユーロピア連合のほうでは超がつく有名人で逸話も多い人物なんだが…………彼女は神の啓示に従いフランス軍に従軍し、当時のブリタニア軍と戦い勝利した、彼女のいる戦場ではいつも奇跡が起きたと言われ、死に体であったフランス軍が、ついにはブリタニア軍を押し返すほどの気勢を得ていた」

 

「そんなすごい人が………まさに英雄そのものの活躍っぷりだね」

 

「現在彼女は聖人として名を連ねている、ブリタニアは過去の歴史に否定的故に快く思っていない者も多いが、私は彼女のような国民誰にでも愛される英雄こそが好ましい」

 

敵のか味方のかさえわからぬような血に染まり、自国民からすら恐れられる英雄など、そんなものは英雄でもなんでもない、ただの殺戮者。

 

倒されるべき悪だ。

 

「しかし…………私自身がその悪とは、何たる……」

 

「?………どうかしたのかい?」

 

「あぁいや、独り言だ」

 

また声に出てたか、気をつけんとな。

 

しかし、スザクの前だから良かったものの、これがもしナナリーやアーニャの前だったらまずかったな、ナナリーやアーニャの前では絶えず気を張っておくようにしようか。

 

「ツキト」

 

最悪聞かれてもアーニャならまだ誤魔化しは………いや厳しいか、元よりアーニャは鋭いところがある、家族だからと気を抜くのは危険か。

 

しかし、もしばれてしまった場合は………。

 

「ツキト?………聞いてる?」

 

「………口封じするより他ないか」

 

「!?………ツキト、口封じってなんだい?」

 

「……!?」

 

しまった!?言ったそばからこれか!クソ!なんて軽いんだ私の口は!!

 

「スザク、今のは言葉の綾で」

 

「時折ツキトが見せる悩んでいる表情や、行き先を告げずにどこかにふらっと出かけることがあるって、それで不安だってナナリーから相談されたことがあるんだ」

 

「ほう?ナナリーから?」

 

ナナリーめ、スザクに釘をさしたな、私が不審な行動を起こした時にブロックできるようにしやがったか。

 

つくづくルルーシュの妹だな、まったく。

 

「悩んでいるのはルルーシュやナナリーの今後のことで、ふらっとどこか出かけるのはちょっと口に出せない買い物をしたりしているからだ、怪しいことなどしておらんよ」

 

「…………嘘はついてない?」

 

「あぁ、嘘をつく理由がない、私が浮気でもしているなら別だが、買い物の際は咲世子が隣にいるんだ」

 

ナナリーや咲世子と比べたら世の女なぞすべて等しく下位になる。

 

「買い物っていうのは何を買っているんだい?」

 

「………この際だから言うが、私にはファッションセンスが皆無でな、咲世子に選んでもらっているんだ」

 

「あ………確かにナナリーには言えないよね」

 

「情けない話だ…………誰にも言うなよ」

 

「言わないよ、ツキトの頼みなんだから」

 

あはは、と笑うスザク、誤魔化せたようで一安心だ。

 

(完璧超人なツキトにも、こういう弱点があるっていうのがわかると、なんていうか………遠慮しなくていいっていうか、気負わずにいられる、なんだかおかしいけど、嬉しいな」

 

………スザク、口に出てるぞ………………。

 

「………あれ?ツキト、顔赤いけど、風邪でも引いた?」

 

「………お前のせいだぞ////」

 

「……………えっ?」

 

気まずくなって会話が途切れる、ちょうど良く睡魔が襲ってきたので抵抗することなく身を委ねた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

noside

 

 

場所は変わって、昼を過ぎ放課後の教室にて、1人席に座りメガネをかけ、柔らかな長髪をポニーテールにして文学書を読む人、アッシュフォード学園中等部の女神、もしくはワルキューレ(ヴァルキュリア)とも呼ばれる女生徒、ナナリー・ランペルージ。

 

彼女は婚約者であるツキト・アールストレイム不在による、ここ最近続く中等部・高等部(稀に初等部)の告白ラッシュとツキト・アールストレイムへの決闘の取り付けラッシュに、温厚で知られ女神と謳われる彼女の精神にも限界が来ていた。

 

告白ラッシュはまだわからないでもない。

 

ツキト・アールストレイムという家柄良し私財良し将来性良し顔良し性格良しの歩く超優良物件が、今はブリタニア本国へ出張中、落ち込むナナリーをこの機に口説いて……言い方はあれだが寝取れる可能性もなきにしもあらずだからだ。

 

しかし、それはナナリーの心に大きく左右されるところが大きい。

 

ツキトへの想いの強さが、そこらの雑多の男のナナリーへの想いを大きく上回っているため、ナナリーは揺らぐことはないのだ。

 

決闘の取り付けラッシュに関しては、落ち込んだナナリーを寝取ってしまおうなどいう軟弱者と違い、ツキトと剣を交えて納得させようというものだ、剣を嗜むツキトに剣で勝利すれば、自分こそナナリーのフィアンセとして相応しいのだと主張できる。

 

だが残念、かなしきかな、ツキトに純粋な剣の試合で勝てるのはナナリーくらいで、ルール無用の殺し合いともあれば、相打ち覚悟で咲世子くらいしか勝算がなく、まだ誰も知らないがツキトは不老不死の肉体を持っている、時間をかけて戦ったところで再生されるため、結局は咲世子でも勝つのは厳しいのだ。

 

ナナリーはツキトが剣の試合では実力が制限されることもあり、ルールの設定等はツキトに一任するならば、という条件付きで一応受け取りはしているが、賢い男や勘の鋭い男はこの危険性を早急に察知、結果数名の自信満々な脳筋がもれなく生贄に捧げられてしまった。

 

「ナ、ナナリー、ケーキ買ってきたんだけど………一緒に食べない?」

 

「………はい、いただきます」

 

「「「「「(ホッ……)」」」」」

 

親友マリーの気遣いあって、女神は堕天せずに保っていられるが、それもいつまで持つのか。

 

ミレイの気遣いで生徒会を休むよう言われ、部活のほうにエネルギーやストレスをぶつけようと思っていたナナリーだったが、身が入らずに部長に許可を取って休んでいる。

 

女子フェンシング部部長曰く、ナナリーのコンディションは見たことがないほどに悪いため、そこも理由としてあるのだろう。

 

机をくっつけてマリーが売店で買ってきたアッシュフォード学園名物のケーキをナナリーの前に置いた。

 

「美味しそうですね」

 

「なんて言ったってこの学園1番のケーキだしね」

 

「そうなんですか?」

 

「私も結構食べるんだけどね?これがすっごく美味しくて………」

 

「太っちゃったんですね」

 

「そーそー、体重計乗ったら2キロも………って違ぁああああう!!何言わせんのよナナリー!」プンプン

 

「くすっ、言ったのはマリーさんじゃないですか」

 

マリーのノリツッコミに笑みを浮かべるナナリー、ようやく戻ってきたか?とマリーは思い、このままテンションを上げていくことに。

 

「あーこの薄情者!私だけ恥をかくなんてズルイ!罰としてナナリーの体重を一般公開!」

 

「別にいいですよ、ツキトさんにはすでに知られてますし」

 

「え?まじ?」

 

「はい、あ、あと身長とかスリーサイズとか、とにかく教えられることは全部ですね」

 

「えぇー………」

 

「「「「「(スリーサイズ!?)」」」」」ガタタッ

 

唐突な大暴露にドン引きするマリー、スリーサイズで盛り上がりすぐさま妄想に浸り始める男子達、今この教室は混沌と化した。

 

教えられた時ツキトはそれはもう見事な土下座をかましたそうな。

 

「?……何かおかしかったですか?」

 

「いやいやいやいやいやいや!!普通におかしいから!この学園のどんなカップルでもそんなことしないわよ!」

 

「そうでしょうか?好きな人に自分のことをより深く知って欲しいと思うのは、当然だと思うのですけど」

 

その理屈がわからないわけじゃないんだけどさぁ………とでもいいそうな女生徒達の微妙な表情にナナリーは首をコテンと傾げる。

 

だが、なんだかんだ言ってナナリーの感情が上向きになっているのはいいことである。

 

そしてここでナナリーにとって朗報が、一部にとっては悲報がナナリーに届けられる。

 

ケーキを食べ終わった頃、突如として壊れるんじゃないかと思わせる音を響かせて教室のドア、向こう側には中等部3年生のナナリーの後輩、2年生の女子フェンシング部部員が膝をついていた。

 

「申し上げます!!ナナリー先輩の婚約者、ツキト・アールストレイムさんが帰還なされましタァッ!」

 

「っ!!」ダッ

 

聞くや否や教室から飛び出していくナナリー、校舎を飛び出したところでスザクと並んで歩くツキトを見つけ手を振る。

 

「ツキトさーーーーん!」

 

気づいたツキトは手を振り返してくる、隣のスザクも手を振っている。

 

ここまでなら感動の再会で済む、しかしそんなわけがない。

 

「………」

 

瞬間、ナナリーの表情が無になり、走っていたのから歩きに変わり、じきに止まった。

 

ツキトの背中からひょこっと、小さな少女が出てきたからだ。

 




この兄妹もうだめみたいですねぇ…………まあ、兄妹姉弟に惚れるのは珍しくないし、多少はね?
でも多少じゃすまないほど愛が深いんだよなぁ。
さあて、謎の少女とはいったい!?それ以前にツキトハーレムはどうなっていくか!?

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