コードギアス オールハイルブリタニア!   作:倒錯した愛

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帰還は『延期』

ツキトside

 

 

アリエス宮でスザク、マリアンヌとともに朝食をとる、とても懐かしい味だったことを除けば、特に感想はないが、マリアンヌが誰のサポートもなしに食事している様子を見るとそうはいかない。

 

食べ物にフォークを刺して口に運ぶ、この動作を目を閉じてやってみると案外難しいものだ、たいていの場合、フォークが食べ物に刺さらない、あごや鼻に食べ物をぶつけてしまう。

 

しかしマリアンヌはそうではない、吸い込まれるように食べ物が口に入っていく、これも経験なのか、それとも元からこんな超人だったのか、たぶん後者だ。

 

またひとつマリアンヌの超人的一面を目にしてしまったところで、現在スザクと散歩中だ。

 

「わぁ、良い眺めだね」

 

「この丘にはよく登ったものだよ、どちらが早く登れるかでルルーシュ様と競争したものだ」

 

「どっちが勝つことが多かったの?」

 

「ルルーシュ様、と言いたいが、私だよ」

 

「あっはは、ルルーシュは子供のときから体力がなかったんだね」

 

「体力は無かったが、運動神経は良かったんだぞ?」

 

「そうなのかい?」

 

「マリアンヌ様の御子息なのだから当然、お2人とも高い能力があるだろう?ルルーシュ様は知、ナナリー様は武だ………マリアンヌ様の血を色濃く受け継いでおられるのだ」

 

「じゃあルルーシュとナナリーは2人でひとつ、なのかな」

 

「ルルーシュ様が考えて、ナナリー様が行動する………たしかに一見して良いチームだが、すぐに破綻すると思うぞ」

 

「どうして?」

 

「ルルーシュ様が、ナナリー様に無茶をさせるような事は絶対にしないからな」

 

「そうだね、ルルーシュは優しいから」

 

「ナナリー様はルルーシュ様のどんな無茶な頼み事でも引き受けるだろうから………」

 

「優しすぎるよね、2人とも」

 

「その通りだよスザク、ルルーシュ様もナナリー様も、優しすぎる…………いつかそれが仇にならなければ良いんだが」

 

「大丈夫さ、ルルーシュもナナリーも、きっとね」

 

「スザク…………フッ、そうだな、私も過保護が過ぎるようだ」

 

あの頃が懐かしい………ルルーシュとナナリーが自分をさらけ出せていた日々が、とても懐かしい。

 

あの日々はもう少しで帰ってくる………シュナイゼルを殺して、必ずあの2人を………ん?

 

「あれは………」

 

不意に視線に入った………汚物。

 

マリアンヌとその子どものルルーシュとナナリーを嫌う犬の糞以下の存在、ギネヴィアとカリーヌだ。

 

「どうしたんだい?……あの人たちがどうかしたの?」

 

「あぁ………いや、なんでもない」

 

スザクは知る必要はない、あんな屑共の事など………。

 

「そろそろアリエス宮に帰ろう、もうすぐ昼食の時間だ」

 

「そうだったかな?………あ、本当だ」

 

「行こうか、マリアンヌ様を待たせるのはいかん、おもに私の存在意義が危うい」

 

「ナナリーのお母さんだもんね」

 

「そ、そういうこと言うなよ、変に意識するだろうが……」

 

初恋の相手が婚約者の母親とか………もう本当に訳がわからん、これが人生か、破天荒に過ぎるぞおい、恋はままならぬものだというが、せめてハンドルくらい付けさせてくれ。

 

朝食に引き続きマリアンヌとの昼食を過ごした、スザクに言われた言葉が引っかかって若干ぎこちなかったような気がしないでもない。

 

挙動不審であったものの、なんとかやり遂げた、食事の時にこんなに緊張したことは無かった、ナナリーにプレッシャーを当てられてもこうはならないのに。

 

マリアンヌ相手にはどうしても勝てるビジョンが浮かばん、いや勝負に出る必要はそもそも無いんだが………それでも悔しいな。

 

さっさと日本に帰りたい………ペンドラゴンに家があるから帰ってきている状況だが、私の体はもうあのクラブハウスが恋しいようだ。

 

どちらかといえば、ナナリーが恋しいのだろう…………あの笑顔で心の中のドス黒いものを洗い流してもらいたい………だが夜の添い寝はできればノーセンキュー。

 

飛行機は今日の深夜発だ、今のうちに仮眠でもとっておくか。

 

ベッドに倒れ込むと同時に睡魔が襲う、抵抗せずにいるとものの数十秒のうちにまどろみの中へ………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ふぁぁぁあああ〜〜…………。

 

「んん"っ………よく寝た」

 

何気に久方ぶりの休眠ではなかろうか、これであと数ヶ月は闘える、愛と忠誠心さえあれば人間は立ち上がれる。

 

世の中には、愛と勇気だけが友達の国民的な菓子パンヒーローがいることだしな、勇気が忠誠心に変わっても問題なくやるだろう、忠誠心100倍!ア◯パンマン!

 

「いい時間だな、空港までは余裕で着くな、顔を洗ってさっさと行こう」

 

部屋から出て浴場にある洗面台で顔を洗う、さっぱりした。

 

「ツキト様」

 

「ん?」

 

顔をタオルで拭いているとメイドに話しかけられた。

 

「出発前にご入浴されてはいかがでしょうか?」

 

「おお、そうさせてもらおう」

 

「それでは、ごゆっくり」

 

メイドの提案に乗り、メイドが去ったあとで服を脱いでバスタオルを巻いて浴場に入る。

 

アリエス宮の浴場は広く、20人が同時に入っても余裕があるほどだ、この浴場にはよくルルーシュやナナリーと一緒に入浴したものだ。

 

体を洗って風呂に入る。

 

「ふぅ………」

 

いい湯だな………疲れが取れるようだ。

 

10分近く経った頃にあがり、着替えてスザクを呼びに行く。

 

「スザク、いるか?」

 

「いるよ」

 

「そろそろ出発の時間だ、準備はいいか?」

 

「出来てるよ」

 

「それじゃあ、日本に帰ろうか」

 

「うん」

 

荷物をメイドに任せて車で空港に向かう、空港に着いたときに時計を見るとまだ1時間近く余裕があるようだった。

 

チェックを済ませて待合室で待つことにした。

 

「来たときにも思ったけど、空港ってすごく広いんだね」

 

「この空港は帝都から1番離れた一般人用の空港だ、これくらい広くなければ人を捌ききれないらしい」

 

「そうなんだ………あれ?僕たちは一般人用の空港を使ってたのかい?ツキトはラウンズなのに」

 

「テロの予防だよ、日本へ向かうことはあれど、日本から来ることはあまりないからな」

 

それに、飛行機に日本人が乗っているとなればうるさい奴もいたのだろう。

 

「そうなんだね………あ、このお菓子美味しいよツキト」

 

「『皇族顔覚えクッキー』………どこにでも売ってるな」

 

皇帝陛下の顔がドアップで描かれた菓子袋、子供向けのお菓子で誰でも簡単に主要な皇族の名前を覚えられる『皇族クッキー』、本国での人気は並、植民地や自治区ではかなりの人気がある。

 

なお人気の内訳で堂々の80%超えでトップを飾ったのは『安さ』である、やはりと言うか、値段は重要だ。

 

「この空港で1番売れてるって言うのは本当だったんだね」

 

「まぁな…………私が言うのもアレだが、ブリタニア人はそこまで忠義に厚くないし、平気で人を騙すからな」

 

「そうなのかい?ツキトを見てるととてもそうとは思えないけど」

 

「私もさ、だが古い文献にはしっかり載ってる事なんだが…………隠されていたものだったし、一般的な認識はそうじゃないんだろう」

 

「ツキトやルルーシュに会う前までの僕は、ブリタニア人は一般人をたくさん殺す、悪魔みたいなものだって思ってたかな、今は違うけど」

 

「悪魔、か……………言い得て妙だ」

 

他称、【ブリタニアの悪魔】が、今は内政に勤しむラウンズか…………ラウンズが内政なんてしてて、マリアンヌによく笑われなかったものだ、知らなかっただけかもしれんが。

 

知ってた場合は、騎士は騎士らしく鍛錬に励むべきである、しかし事情が事情なだけに、仕方ないと思ってくれたのだろう、そう思うことにしよう。

 

「ツキト、そろそろ搭乗時間になるよ」

 

「ん、もうそんなか………では乗り込むとしようか」

 

スザクに続いて飛行機に乗る、指定席に座ってしばらくすると飛行機が動き出した。

 

日本に着くまでの数時間、ぐっすり眠れればナナリーの相手もできるはずだ、寝ておくか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

と、思ってたんだがなぁ………。

 

「機の故障で出発は明後日の昼に延期………か」

 

「………困ったね」

 

身バレを恐れて旧式の機体の便を選んだのが間違いだったのか、離陸寸前というところでメインモーターの故障が発覚、しっかり点検しておけよ………。

 

「あぁ、引き返してマリアンヌ様の厄介になるのは、さすがに迷惑だろうな」

 

「近いホテルにしばらく泊まるしかないね」

 

もう深夜なのに見つかるだろうか?最悪は野宿か。

 

「幸い金はある、問題は………ナナリー様だな」

 

「すっごく怒るか、泣いちゃうかもしれないね」

 

「ナナリー様を怒らせるなんて、できればしたくないんだがなぁ……」

 

怒ったナナリーは………そうだな、ガチギレしたルルーシュが一瞬で土下座するくらいの恐怖だ。

 

「えぇいままよ!スザク、ここから近いホテルで泊まろう、今日はもう寝る」

 

「そうしよっか」

 

スザクを連れて空港から1番近いホテルまでタクシーで移動する、帰ったあと帰りが遅いとナナリーに理不尽に怒られることを考えると、足取りは重くなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ナナリーside

 

 

どうしましょう………。

 

「ランペルージさん!ずっとあなたのことが………」

 

「ごめんなさい!」

 

ツキトさんがペンドラゴンに行かれてから4日、中等部・高等部無関係に告白を受けています。

 

どうやらツキトさんが仕事で日本にいない今この時期に………と狙ってのことでしょうけど、私が異性として好きなのはツキトさんだけですから、他の誰にも靡く気はないのですが………。

 

「っ………わかり、ました……でも諦めません!何度でも来ますから!」

 

えーっと、目の前の先輩………たしか高等部のフェンシング部男子の部の部長の………たしか、フォーエル先輩……でしたか、彼は私に諦めないところを見せてカッコつけようとしているのでしょうか………よくわかりませんけど。

 

今の彼がツキトさんなら………あ、ツキトさん相手だったらむしろ大歓迎でしたね、二つ返事でオーケーですね。

 

去って行く男子フェンシング部部長から目をそらして気持ちを集中させて、練習を再開させる、早く、一歩でもツキトさんに追いつけるように。

 

「ナナリー、おつかれー」

 

「あ、マリーさん、お疲れ様です」

 

この人はマリーさん、中等部で同じクラスにいて部活も同じフェンシング部、元気いっぱいな、可愛い女の子なんですよ。

 

「今日もまた、あの部長に告られたの?」

 

「はい、でも私にはツキトさんがいますから、断らせてもらいました」

 

「でもあの人って結構イケメンだよ?………そりゃたしかにアールストレイムさんも美形だけどさ」

 

「ツキトさんは、下心とか、そういうことを抜きに私を見てくれるんです」

 

「え、じゃあ、あの部長って………あっ(察し)」

 

「だから無理なんです…………それに、ツキトさんは」

 

私が、私だけが…………ツキトさんの………。

 

「まぁでも、ナナリーをそういう目で見ちゃうっていうのは、わかっちゃうんだよね〜」

 

「えっ?」

 

「だってかわいいんだもんナナリー、アールストレイムさんがベタ惚れなのも、あの部長さんがアールストレイムさんがいない隙を突いて告ってくるほどだし」

 

「ツキトさんが、ベタ惚れ………えへへ////」

 

ツキトさん………ツキトさぁん………♡

 

「………あー……ナナリー?」

 

「………ふぇっ?」

 

「(あざとい、これが天然だって信じられる?私は信じた)……妄想してないで、もうすぐ部活終わりだよ」

 

「あ、そうみたいですね」

 

壁掛け時計を見ると部活終了の時間をさしていて、周りを見ると防具を外し始める人がいた。

 

私も防具を外して更衣室で着替えて体育館を出る。

 

「ラ、ランペルージさん!」

 

「?…えっと、なんでしょうか?」

 

「ぼ、僕、高等部の射撃部部長をしています、ジュディ・マックスウェルです」

 

「マックスウェル先輩ですか、私に何か用でしょうか?」

 

予定通りなら今日はツキトさんが2日遅れで帰ってくる日、早く帰ってツキトさんをお迎えしないといけないのに。

 

「アールストレイムさん、に、これを………」

 

「ツキトさんに、ですか?」

 

「はい、お願いします」

 

「わかりました、しっかり届けますね」

 

マックスウェル先輩はそれを聞くと足早に去って行きました。

 

ツキトさんに届けるようにと言われたこの手紙………もしかしてラブレター…………マックスウェル先輩は男の人ですから、違いますね。

 

「ナナリー!今度は射撃部部長からなーにもらったの!?もしかしてラブレター!?」

 

「これはツキトさん宛てみたいです」

 

「へっ?射撃部部長ってほm………えっと、ちょっと特殊な人なのかな?」

 

「中身を見てないのでなんとも………ツキトさんに読んでもらった後聞いてみます」

 

「ん、わかったらメールちょうだい、またね!」

 

「はい、また明日」

 

マリーさんとわかれてクラブハウスに帰る、中には咲世子さんしかいないようです。

 

「お帰りなさいませ、ナナリー様」

 

「ただいまです咲世子さん」

 

咲世子さんと2、3ほど話して部屋に入って椅子に座って机に着く、貰った手紙を取り出して中身を取り出す。

 

中には差出人が違うの手紙が2枚だけ入っていました、差出人はフェンシング部部長のフォーエルさんとマックスウェルさんでした。

 

最初にフォーエルさんの手紙を読んでみましょう。

 

えっと、『クリス・フォーエル。このような手紙で情け無いと思われるかもしれません、それに、何度も告白を断られている男がこのように何度も繰り返し告白をするのは見苦しいかと思われるかもしれません。ですが、それでも私は諦めたくありません。………………(以下略)』……長い上にしつこいですね。

 

もう1枚はマックスウェルさんのようです、内容は…………同じですね、どちらも諦めきれないとか書いてありますし、きっと同じなのでしょう。

 

要約すると、『ツキトさんと決闘をしたいので、取り次いで欲しい(自分たちだと相手にされないため)』、ということみたいです。

 

それくらいのことは自分でやってほしいと思いますが、ツキトさんが受けるはずありませんものね、そこで私を通すというのは間違っていません。

 

確かに、私がツキトさんにお願いすれば、きっと決闘の場は作ってくれると思いますけど…………本国での重要なお仕事から帰って来てすぐにお願いはできませんね。

 

ツキトさんの邪魔にならない時期を考えなくてはいけませんね!となると、夏期休暇が丁度良い感じです、ですけど………わざわざお休みの日に決闘をお願いさせるなんてできません…………どうすれば良いのでしょうか………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ということで、ミレイさん、シャーリーさん、カレンさん、何か良い方法はありませんか?」

 

困った末に私は生徒会の皆さんから意見を聞くことにしました。

 

「良い方法も何も………直接頼めばいいんじゃないかしら?彼のことだし、喜んでやると思うわよ?」

 

「でも、たかが他人のためにツキトさんに貴重な休日を寄越せなんて言えません…………」

 

「(先輩じゃなくて他人……)」

 

「うーん、じゃあさ、条件を出し合ってみるのは?ナナちゃんがアールストレイムさんに頼む代わりに、アールストレイムさんのお願いを聞くの」

 

「その案は前に試しました」

 

「そう?ついでにその時のお願いは?」

 

「子供が欲しいと言ったんです、そしたら顔を真っ赤にして………あの時のツキトさんはとても可愛かったです………」

 

「あ………うん」

 

「まあ、ナナちゃんはちょっと彼に遠慮してるところがあるし、ここは思い切ってワガママを言ってみるのもありよ」

 

「ワガママ………」

 

「そ!普段言わないようなワガママを言って彼の気を引いてみるっていうの、よくあるじゃない?」

 

「………いいかもしれませんけど、常日頃からツキトさんにワガママしか言っていないような気がします」

 

「そうでも無いわよ?彼って結構奥手だから、たまにはナナちゃんがリードしてあげるのも大事よ」

 

「な、なるほど………わかりました、頑張ってみます」

 

そうと決まれば、帰ってくるツキトさんに美味しいご飯を………あれ、ツキトさんからメール………。

 

 

 

ゴトッ………。

 

 

 

『ナナリーへ

また2日ほど延期になった。

ツキトより』

 




さらなる滞在の延期を知らせるメール、放心するナナリー。

ツキトになにが起きたのか?

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