ツキトside
ゲットーのどこかにあるとまことしやかに囁かれ、学校の中でその場所を突き止めようと研究を続ける部が存在しているほどの今もっとも熱い人気スポット。
それが、黒の騎士団の本拠点だ、ここに来るのも久しぶりで道に迷いそうになった。
「準備はいいか?エリー」
「……うん、問題ないよ!早くいこうよ、ゼロが待ってる!」
エリーの格好をしてC.C.と一緒に拠点に入る、今日はゼロとその側近であるエリーとC.C.を混ぜての定例会議の日だ、今日は来る必要はなかったが、C.C.が来てくれとうるさいので来てやった。
すでに会議室にいるゼロの両脇の椅子に座り、会議が始まる。
「諸君、礼を言わせてもらう、集まってくれてありがとう」
ゼロの感謝の言葉にどうってことない、当然のことだと返す騎士団員達。
「では、まずは報告から頼む、ラクシャータ、KMFの解析の方はどうだ?」
「予想以上に厳重なプロテクト組んであったせいでフロートユニットしか解析できなかったわ、本当マジむかつくー」
「十分な成果だ、ブリタニアが新型KMFにフロートユニットのような空を飛ぶ装備を取り入れてきたということは、今後この装備がKMFの標準装備になるはずだ、フロートユニットの詳しい解析と開発を頼む」
「りょ〜かいよん」
「次に、エリー、ブリタニア内部の様子はどうだ?」
「枢木スザクは騎士団とブリタニアが手を組むことにまだ納得しきれていないようだけど、そっちはたぶんアールストレイムが抑えるから問題ないとして…………問題は盗んだKMFのほうかなー」
「なにかあったのか?」
「返品の日時を決められちゃってさ、5日以内に頼むって、それまでは解析でもなんでもしていいって言ってけどさ………」
「…………どういう考えなんだ?いったい何を考えている?」
「ゼロ、アールストレイム卿はどういう考えなのか、なにか検討はないか?」
藤堂が質問する、さすがの藤堂でも真意は読み切れないか。
真意、というほどでもないが、解析がまったく進んでいなかった時用の保険だ、最低限フロートユニットの原理程度でも解析してくれという意味でハッパをかけるつもりだったのだ。
「わからん、まったく考えが読めん、が………荒唐無稽だが、我々に技術提供をしてくれている、そうとしか考えられない」
ゼロにはすでに伝えてあるため、いい感じにお茶を濁してくれた。
「おそらくアールストレイムはそのつもりなんだろう、しかしあいつの場合、そういうことを公にするとマズイポジションにいるからな」
C.C.のフォローも入る。
「今や日本エリアの統括はほとんどアールストレイムによって行われているようなもんだしね」
「ちょっとエリー、それってどういう意味?」
「どういう意味もなにも、アールストレイムは総督のコーネリアや副総督のユーフェミアを差し置いて政治に深く干渉しているんだよ、日本エリアの統治権の全権はアールストレイムがすべて握っているようなものだね」
「アールストレイムはコーネリア総督とユーフェミア副総督の幼馴染で『お気に入り』だからな………盗んだ新型KMFも、コーネリアにねだったら貰えたものらしいし、発表した政策もユーフェミアをうまく言いくるめて原案とは違うものになっているそうだしな」
本当じゃないけど嘘じゃないから否定しずらい。
「なによそれ………結局コネしかないクズ男じゃない………ナナリーちゃんが可哀想だわ」
おい聞こえてるぞシュタットフェルト!
「ナナリー?それはいったい誰のことなんだカレン」
ゼロがシュタットフェルトに自分の妹を聞く………シュールだ。
「えっと………ナナリーは、その、通ってる学校の中等部にいる友達で………アールストレイムの、婚約者です」
バラしたな!?シュタットフェルトーーー!!!
「アールストレイム卿に婚約者…………いてもおかしくはないが、彼の年齢から考えると、婚約者の年齢が………」
「日本の学校で言うところの、中学生、に当たるな」
「………ふむ、エリー、そのナナリーという人物についての情報はないのかね?」
なるほど、ナナリーから私の情報を得ようということか、だがナナリーについて詳しく教えれるのはマズイ、ナナリーはいろんな意味で私にとって弱点になる。
「あるにはあるけど………詳しいことは教えられないよ、女の子の私生活とか見たらだけで処刑ものだからね」
「構わない、趣味でも好きなものでも、彼女がアールストレイム卿をどう思っているかとか、少しでも手がかりが欲しい」
「藤堂さんがそこまで言うなら、仕方ないね、それじゃあナナリーちゃんについてわかっている情報の一部を公開するよ」
「頼むぞ、エリー」
ゼロはそう言った、ゼロの目を見るとナナリーについてあまり詳しいことは喋るなと言っていた、ふっ、それくらいわかっている。
「まず、ナナリーちゃんはカレンと同じ学校の中等部にいるよ、部活はフェンシング部、カレンは知ってると思うけど、アールストレイムにも非公式試合で勝ってるんだよね」
チラリとゼロを見ると仮面の向こうでドヤ顔が幻視できた、いっそ清々しいほどのシスコンである。
「ほう、彼女は剣を謹んでいるのか」
「昔はフェンシングはしていなかったようだから、おそらくアールストレイムのブリタニア本国での活躍を聞いて自分もやってみたくなったのだろうな、ふふっ、かわいいもんじゃないか?なあ、藤堂?」
まったくその通りで反論のしようがない。
「うむ、自らの愛する者のために力を得ようと努力するその姿勢………彼女と添い遂げることができるアールストレイム卿は幸せ者だろう」
「このナナリーという少女の思いはかなり強いものだろう、アールストレイムのためならば命すら差し出すほどの執念にも似た信念を感じる………とても強かな女性なのだろう」
藤堂とゼロ、2人してナナリーをべた褒めしている、というかお前、なぜ聞いてもないのにそんなとこまでわかるんだお前は…………まあいい。
というかゼロ、いやルルーシュ、たとえ事実だとしてもそういうことは言うな、今後ナナリーとどう接すればいいか困るだろ!
「藤堂さんとゼロが言ったように、ナナリーちゃんはいろんな面で強かな女性だよ、たとえナナリーちゃんを人質にアールストレイムを脅しても効果は薄いかな、逆の場合は効果が高いけど」
私を人質にとれたらの話だが。
「そんな卑怯をする気はさらさらない、アールストレイム卿の騎士道精神を貶すことと同義だからな」
「私も同様の考えだ、それに、ブリタニアと協力関係にある今、一般人に犯罪行為をはたらくことは、アールストレイム以下騎士団という存在に味方する人々に対する裏切りに等しい」
「ではゼロ、今後はどのように動けばよろしいのですか?」
「…………ふむ、まずはラクシャータ、KMFの解析に全力を注げ!返済期日ギリギリまで粘るんだ!」
「りょーかい、会議が終わったらすぐにでも取り掛かるわ」
「次にカレン!親衛隊の皆にいつでも出撃できるようKMFの整備をしておけ!突発的な状況に対応できるよう、万全を期せ!」
「了解!」
「藤堂と四聖剣は引き続き団員と猟犬部隊の教育を頼む、彼らは今後の日本の未来を背負っていく者たちだ、しっかり頼むぞ!」
「「「「「御意!」」」」」
ゼロが全員に指示を出していく、この命令から察するに、ゼロは『待ち』を選んだようだ、今なにか行動を起こすのは得策ではないし、当然か。
「C.C.とエリーは例の件についての情報を集めてくれ!」
「「はーい(わかった)」」
「最後に、アールストレイムの婚約者についての情報は、この場だけの話に止めておいてくれ、広がれば厄介なことになる、なにか質問のある者は?………………では、解散!」
ゼロの号令で会議は終わった、ゼロが会議室を退室すると最初立ち上がったのはシュタットフェルトだった、整備室に通じる階段を降りていった。
次にラクシャータ、ゆっくりと立ち上がりシュタットフェルト同様に整備室の奥にある研究室に向かうため階段を降りていった。
藤堂は四聖剣の面々と意見を交換し合っている、おそらく今後のトレーニング内容を考えているのだろう。
「私たちも行くか」
「そだね」
C.C.と共に立ち上がって会議室をあとにする、向かった先は私とC.C.に与えられた共同部屋。
中に入りドアに鍵をかけるとソファに座ったC.C.が話しかけてきた。
「ところでツキト」
「どうした?」
ここでは私はエリーではなくツキトなのだ、いわばこの部屋は避難場所だ。
「先日のナナリーとのデート、朝帰りだったが、なにかあったのか?」
「…………恥ずかしい話だが、食事の後ナナリー様が行きたいところがあると言われてな」
「ほう、行きたいところって言うのがラブホテルだったわけだな?」
「察しがいいな、私もな、一応、拒んだんだが………無理だったんでな、泊まったんだよ」
「それで、いきなり押し倒されたんだな」
「あぁ、ベッドに縛り付けられて精力剤をがぶ飲みさせられながら朝まで絞られたよ……」
「ツキト……お前いい加減少しは学習したらどうだ?密室でナナリーと2人っきりになったらどうなるか、お前ならわかるだろうに」
「C.C.、私だっていろいろ対策をしてみてはいるんだ、だがな、幼少から染み付いた奴隷根性が抜けないんだよ」
「その結果、テクノブレイクを2回も味わったわけか、感想は?」
「死ぬ瞬間がもっとも気持ちいい………って何言わせるんだ」
今までなんども死にかけたが、あんなに精神的に辛い死に方は初めてだ。
「お前が勝手に言ったんだろう」
「まあ、そうだが……」
「いっそナナリーを眠らせるのはどうだ?」
「SO☆RE☆DA!!」
私自身の精神の安寧のため、さっそく睡眠薬を用意せねば!
「だが逆にナナリーに飲まされるかも………ってもういない……」
数日後、短い休暇を終えて仕事のために総督府に例のバイクで来たが、何やら慌ただしいな。
中に入ると忙しなく走り回る将兵が大勢いた、スザクに聞くか、と思ったが向こうからはしってくr
「ツキト!大変なことになった!」
「どうした?何があった?」
「元日本政府の人が大量のKMFを連れて九州基地を占拠したんだ!」
「なんだと!?」
「今は元日本政府の人が基地から放送を流してる」
もうそんな時期か!?早すぎる!まだリフレインやサクラダイトの問題も解決していないというのに!
「これからが大事な時期だというのに、クソッタレのゴミカス共が………放送の内容は?」
「騎士団は腰抜けだとか、日本を真の意味で解放しようだとか、そんなことをずっと言ってるよ」
「馬鹿が、今我々がやっていることこそ、真の意味での解放への近道だとわからんのか!………それで、コーネリア様はなんと?」
「出撃の準備を進めてる、ツキトのKMFもランスロットと一緒に積み込み中だよ」
「わかった………ん?スザクも行くのか?」
「うん、ユフィからの命令だからね」
「本来騎士が離れることはできないのだが………主人であるユーフェミア様がそうおっしゃるならばいい………のか?」
まあ、そういうところって結構ガバガバだったりするし、気にしないでおこう。
「ではトレーラーに……」
「アールストレイム卿!」
「ん?なんだ?」
「報告します!ただいま黒の騎士団のゼロより通信がきました!」
「ゼロから………貸してくれ」
「ゼロ……こんな時にどういうつもりなんだ?」
通信兵からヘッドギアを貰い装着する、モニターにゼロが映し出された。
「ゼロか、何の用だ?」
『アールストレイム卿、私は九州基地を占拠している者達についての情報を持っている』
「なに!?」
「………聞こうか」
『九州基地を占拠した者達のKMFは中華連邦製のもの、さらに報告を続けている元日本政府の役人は中華連邦に亡命していた者だ、つまり、十中八九敵は中華連邦の軍で間違いはないだろう』
「中華連邦………なぜこの時期に来たか、ゼロ、君の考えを聞きたい」
『推測の域を出ないが、おそらく中華連邦はこの日本を足がかりにブリタニアへ宣戦布告する予定だったのだろう、日本解放をうたって騎士団と連携する体裁をとってな………だが我々騎士団は諸君らブリタニアと協力関係をとった、しかし計画の変更はきかなかったのか、あるいは協力関係にあることを知らなかったかは知らないが、こうして乗り込んできたのだろう』
「なるほど……その推測には私も納得がいく」
原作でも騎士団と手を組んで日本を中華連邦が抑えてやろうと思っていたが、騎士団は味方につかず、結局ブリタニア軍と騎士団の戦力でひねりつぶされたんだったか。
しかしルルーシュが情報を与えるだけ、とは考えられない、おそらく詳しい情報をネタに協力を申し出るはず。
『そこで提案なのだがアールストレイム卿、我々騎士団も討伐作戦に作戦させて欲しい』
きたか。
「………参加するかどうかは私の一存では決められん、だがひとつ聞きたいことがある、騎士団に戦えるだけの戦力はあるのか?」
『心配は無用だ、アールストレイム卿、貴公の部隊の教育係を務める藤堂と四聖剣、そして赤いKMFを貴公の指揮下に置く準備がある』
「藤堂さんと、赤いKMF………」
『さらに、騎士団の偵察隊から届いた生の情報の転送の用意も、ある』
生の情報、その魅力と破壊力は計り知れない………情報は生死を分ける、喉から手が出るほどに欲しい、だがコーネリアがどう動くか……。
「わかった、コーネリア様に伝える、返信はこの通信回路で良いか?」
『構わない、貴公の良い返事を待っている』
モニターからゼロが消える、沈黙する司令部室。
「ツキト………僕たちは、どうすれば……」
「わからん、だが、藤堂と四聖剣という戦力が加われば、損害はずっと少なくなる………スザク、今回は防衛戦だが、攻城戦の形をとっている、一筋縄ではいかんのだ、攻略を有利にするためには、生の情報が必要不可欠、だが、私に決定権はない、すべてはコーネリア様次第だ」
「ツキト………」
「スザク……いや、兵士諸君、私たちに出来るのは、コーネリア様の命令に従うことだけだ………輸送班は引き続き出撃の準備を進めてくれ、整備班はコーネリア様のKMFを重点的に整備しろ」
「「「「「ハッ!」」」」」
「スザクは………そうだな、特派に行ってロイドに極秘で伝えて欲しいことがある」
「極秘?でも口頭で極秘情報の伝達は危険じゃないかい?ここは文書か暗号で伝えた方が」
「いや、ちょっとしたことだ、ロイドに私のKMFを好きに弄っていいと言ってきてくれないか?それだけでいいんだ」
「?……………とりあえずわかったよ、好きに弄っていい、でいいんだよね?」
「あぁ、しっかり頼む、あとスザクは伝えたら一度戻ってきてくれ」
「わかった、行ってくるよ」
スザクが司令部室を出て行くのを確認してKMFの積み込みの進行状況を見る。
さっき私がスザクに伝達を頼んだ言葉だが、ロイドに私のKMFの魔改造の許可を出したのだ、ロイドはこういう突発的な状況で意味不明な装備をつけるような愚か者じゃないからな、おそらく九州基地占拠の件は知っているはず、今は一刻を争う時、面倒な書類申請なんかしている暇なんぞない、緊急時ということで口頭伝達で済ませることにした。
ロイドとしては兵器のテストができるわけだし、よい評価なら量産も視野に入ることだろう、WIN-WINというやつだ。
ばれたら私が始末書を書けばいいだけの話だ、問題はない。
「アールストレイム卿!KMF及び戦闘物資の積み込み、完了いたしました!」
「わかった、ところで………コーネリア様はいったいどこに?」
「コーネリア様なら、ユーフェミア様のお部屋にいらっしゃいます」
「ユーフェミア様お部屋に?…………そうか、ありがとう……」
これは入らないほうがいいか。
「誰かユーフェミア様のお部屋に通信回路を開けるか?」
「やってみます」
実に頼もしい通信兵だな……。
「繋がりました!」
「モニターに………いや、映さんでいい、サウンドオンリーで私だけに繋いでくれ」
「了解しました、アールストレイム卿のヘッドギアのナンバーを教えてください」
「………9番だ」
「了解………繋がります、音量に注意してください」
「わかった」
音量を最低まで回してから少しずつ音量を上げていく。
『………何度も言っているが、自分が出るならともかくとして、騎士から離れるなど……』
『なら私も出ます!』
『お前はKMFで戦えないだろう!足手まといになるからダメだ!』
『ならせめて移動拠点に!』
『そこにいてどうなる!?お前には部隊を指揮できる権限はないんだぞ!』
『ですが、祈ることはできます!戦場で戦うお姉様やツキトやスザク、兵士の皆さんの無事を、皆さんの近くで祈ることができます!!』
『祈るならここでもできる!わざわざ最前線に出て戦力を分散させることはできん!』
『ですが!』
『くどい!!相手は中華連邦なのだぞ!万が一にでもお前が捕まればブリタニアへの交渉材料として使われるんだぞ!』
『ですが……私は………』
「(姉妹喧嘩中に)失礼します、コーネリア様」
『っ……ツキトか』
「はい、戦闘物資の積み込み、及び出撃の準備が完了いたしました、いつでも出撃できます」
『わかった、そちらにもd『ツキト!!』
「ぎゃぁ!?」
み………耳が………。
『ツキト!私も一緒に連れて行ってください!』
『ええい!お前はここにいろ!』
『嫌です!ツキト!お願いです!!』
『この〜!……ツキトもなんとか言ってくれ!』
そういう喧嘩とかはそっちでやって欲しいんだが………。
………ここでユーフェミアを連れて行くように誘導できれば、スザクとランスロットの両方を戦力として投入できる、そのためには移動拠点の防御が硬くなければならない、頑丈さで言えばスザクのランスロットを超えるKMFはガウェインを除けば存在しない、ガウェインは返却されてはいるが、今はオーバーホール状態、今から組み立てている時間はない。
かといってスザクとランスロットを防衛に回すのは愚策、スザクの真骨頂は攻めの戦いにある、わざわざ能力を出せないように足枷をさせることなどできない、では私が防衛につくか。
だがそうなると騎士団の要求を呑んだ場合に藤堂と四聖剣を使えなくなってしまう、日本解放戦線にいた頃は常に防衛戦だったが、あいつらも本来は攻め向きの戦士たちだ、防衛に回らせるのはスザクとランスロット同様に愚策、愚の愚、愚の骨頂とも言える……。
ではいったいどうすればいいのか………ルルーシュ、そうだルルーシュだ!今回の戦いは防衛戦、日本エリア全体の問題だ、日本エリアの自警団的存在となった今の騎士団の首領であるゼロなら、防衛戦の最前線に立たないはずがない!私と猟犬部隊で移動拠点の防衛、攻撃はコーネリア率いる精鋭軍で正面を、ゼロ率いる騎士団は側背面の奇襲!簡単じゃないか!
…………問題は、コーネリアがゼロとの共闘を良しとするかだ、最悪コーネリアは私がなんとかできても、ブリタニア精鋭軍の説得は難しい、名誉と国家愛と向上心にあふれる精鋭軍に、元とはいえテロリストのために囮になれ、と言うのは難しいし、私が精鋭軍の一員なら絶対に首を縦には振らないだろう。
無理矢理にでも命令してもいいが、今後日本エリアをユーフェミアが納めていくことになった時に、クーデターが起きる可能性がある、即座の鎮圧は可能だが、シコリは残る。
…………ちょっと待ってくれ、藤堂、四聖剣、シュタットフェルト、スザク、私、コーネリア……このメンツを敵中のど真ん中に降下させればいいんじゃなのか?それでブリタニア精鋭軍と騎士団の部隊で包囲網を形成、我々は内部から喰いちぎる…………まさかの最善手か!?敵中に放り込むことが最善手かよ!!??
うわ、どんな作戦よりもうまくいきそうなビジョンが見える………。
………とにかく、コーネリアに騎士団の件を意見具申しよう、話はそれからだ。
「コーネリア様、実はユーフェミア様の乗られる移動拠点の防衛につきまして、ひとつ案がございます」
『だからヘッドギアを返せユーフェミア!』
『私だってツキトの声を感じていたいんです!離してください!』
「……………ハァ……」
なんかもう……真面目にやるの、ちかれた……。
「(アールストレイム卿が疲れておられるぞ)」
「(コーネリア様は何をしておられるのだ?)」
「(アールストレイム卿をここまで困らせられるとは………さすがコーネリア様だ)」
「(ため息を吐くアールストレイム卿hshs!!)」
「(prprしたい……したくない?)」
「(やっぱりショタっ子の上司を………最高やな!)」
「(こ、こ↑こ↓に、アールストレイム卿のため息顔の写真、あるんだけどさ………焼き増ししてかない?)」
「(いいっすね〜、じゃけん夜カメラ屋さん行きましょうね〜)」
「(おい待て、肝心なとこ洗い忘れてるゾ、見ろよ見ろよ)」っ照れ顔のアールストレイムの写真
「(やはり(アールストレイム卿の照れ顔は)ヤバイ!)」
「(あぁ^〜)」
『やった!掴み取ったぞ!ツキト!ツキト聞こえるか!?』
「……はい、聞こえております」
これはもうブチギレても許されるんじゃないかな?今すぐにでもラーメンを食いたい気分だ、脂でギットギトのやつを、常識的に見て食い物には見えないほど脂でギットギトになってて麺が見えないほどチャーシューが盛り付けられてるやつを食べたい。
というか今後ろから邪気を感じたんだが、気のせいか?
『それでさっきの、案があると言ったな?聞かせてくれ』
「わかりました、ですがまず最初にご報告を致します、先ほど騎士団より通信がございました」
『騎士団がか?九州の拠点占拠について無関係だとでも言っていたのか?』
「いえ、そんなわかりきったことではございません、もっと大きなことです」
『もっと大きなこと?』
「騎士団は敵の配置や兵員数などの情報提供、さらに藤堂や四聖剣、赤いKMFなどの戦力の提供と引き換えに、我々ブリタニア軍との共同戦線を望んでいるようです」
『………たしかにこれは大きいな、情報だけでも大きいが、まさか藤堂に四聖剣まで貸し与えるとは………騎士団の主戦力をこちらに回すとはどういう腹積もりなんだ……』
どういう腹積もり、か、たしかにそう思うだろう、ここはひとつ騎士団のフォローでもしておこう、双方ともに円滑にことを進めるために。
「おそらくですが、今回の中華連邦による九州拠点の占拠の影響が出ているようです」
『影響?たしかに中華連邦にみすみす拠点を取られたのは大きい損害だが、騎士団には無関係なのではないか?』
「そうですね、しかし民の感情は、主に日本人の感情というものは、そう簡単にもいかないようなのです」
『感情、か』
「はい、中華連邦は元日本政府の役人を利用し、ブリタニアからの日本解放をうたって攻撃、占領後は中華連邦が独立の手助けとでも言って支配するつもりなのでしょう」
『そこは私でも予測はできた、日本人たちが一刻も早い独立を望んでいることも、ユーフェミアの話で理解しているつもりだ、こうして政策にも反映している』
「ですが、人の感情というものは移ろいやすいもの、心が弱い者ほど楽な方向へと逃げていきます………コーネリア様、騎士団は現在我々ブリタニアと協力関係にあります、言い方を変えれば騎士団は我々ブリタニアの提案を受け入れ軍門に下ったとも見れます」
『それがどうかしたのか?』
「考えてもみてくださいコーネリア様、解放を願い戦ってきた騎士団が、突然それをやめブリタニアについたのです、解放を待ち望む日本人はさぞ失望したことでしょう、結局騎士団も日本解放戦線同様、腰抜けの集団だったのだと………そこに突如、元日本政府の役人が中華連邦という強大な後ろ盾を連れて日本解放のために現れた、日本人がどちらに味方するかはすでに明白です」
『なるほど、我々ブリタニアにとってみれば、攻め込んできた中華連邦は悪だが、一部過激な日本人にとってみれば正義、もしくは希望、そう見えるということか』
「その通りです、時間の経過とともにその感情は膨らんでいくでしょう、騎士団への不信はブリタニアの不信、ひいては今後この日本エリアを統括するユーフェミア様への不信に繋がりかねません………最悪の事態になれば、皇帝陛下から懲罰が課せられる可能性もありえます」
『むぅ………それは困るぞ』
「そこで私がいち政治家としての目線から提案いたします」
『聞こう』
「今後ブリタニアと騎士団の連携強化、協力関係のアピールのため、騎士団と共同戦線を結ぶことを提案いたします」
『やはりか、結ぶしかないか………』
「そしてもうひとつ、今度はいち兵士として提案いたします」
『ん?あぁ、聞かせてくれ』
「はい、今回の作戦はできるだけ早い決着、短期決戦が望ましいです、よって、私とスザクのKMFを高度限界から占領下の九州拠点のど真ん中に投下、直ちにブリタニア軍本隊による包囲戦を開始、私とスザクが内側から食い荒らします」
『そんな無茶させられるか!』
「ですからあくまで提案です、最終的な判断はコーネリア様にお願いします」
『………わかった、ひとまず出発する、会議は移動中に行う』
「イエスユアハイネス」
通信を切断して通信兵にヘッドギアを返す、マイクをとって総督府中に届くように設定しスイッチを入れる。
「全軍に通達!九州拠点奪還作戦に参加する者は、ただちに輸送トレーラーに乗員せよ!繰り返す!九州拠点奪還作戦に参加する者は、ただちに輸送トレーラーに乗員せよ!」
マイクのスイッチを切り、後任者に司令部室を任せて特派のトレーラーに向かう。
「ツキト、出動命令が出たんだね」
「そうだ、いよいよだ、しっかり気を引き締めろ」
「うん………それで、騎士団のほうは?」
「移動中に会議を開くそうだ、それまでこっちのトレーラーで待機しておく」
「わかった、それからツキトのKMFだけど、かなり改造されてるみたいだよ」
「なに?……それは楽しみだ」
特派のトレーラーに入ると、私のKMFが見えた、しかしその背中には羽織っていたマントは無く、代わりに見たことのないほど巨大な、本体の全高をゆうに超す大きさのフロートユニットが取り付けてあった。
「おいロイド」
「おー、ようこそツキト君、ところでこれどぉ?」
「ものすごくイカすデザインだな、見たところ従来のよりも出力が高そうなフロートユニットだが、どんな感じになっているんだ?」
「説明は私がしますね、アールストレイム卿」
「お願いねぇ」
「あぁ、頼む」
セシルがタブレット片手に近寄ってきた、ロイドはセシルに説明を任せるとなにか情報を打ち込み始めた、セシルはタブレットを操作し、ある画面を見せてきた。
「ロイドさんがアールストレイム卿の言葉通り好きにやってしまったので、かなりピーキーな性能になってしまいました」
「構わん、むしろその方がパイロットとして腕がなるというものだ」
「そうですか、では機体説明に移りますね、本機体はロイドさんがフロートユニットのテストから得た情報をもとに作り上げたスーパーフロートユニットの試作機を取り付けた機体となります、スーパーフロートユニットは従来のフロートユニットに比べ数10倍という大出力を誇りますが、重量がとても重く、また人間だと加速によるGに耐え切れないため解体される予定だったんですが………ロイドさん、なんでまだ残ってたんですか?」
「それはねぇ、ちょこっと書類の内容を変えてさぁ」
「立派な犯罪ですよそれ」
「気にするな、今回はそれが役に立つかもしれんしな」
大出力のフロートユニットとかものすごくワクワクするんだが、リアルでガン◯ムのトー◯ギスみたいな機体に乗れるとか感動ものなんだが、もしかしたらあのセリフを言えるかもしれん、楽しみだ。
「はぁ、アールストレイム卿がおっしゃるならいんですけど………あ、先にコンセプトを言うべきでしたね、コンセプトは大出力のフロートユニットを使い強力な装甲を持つKMFでの戦線の【単独強行突破】を目的としたものです、スーパーフロートユニットによって得られた浮力の分だけ元になったグロースターに増加装甲を施しましたので、装甲防御力についてはランスロット以上の性能を誇ります」
【単独強行突破】……ロマン溢れる素敵な言葉だ。
「ここまでは良かったんですが、ここからはロイドさんの趣味が出てまして……例えば、見ていただければお分かりになると思うのですが」
「盾、か」
「はい、盾です、左上腕部に脱着式の円盤型の超硬シールドを搭載、アサルトライフルの弾丸を2000発まで防ぐ性能があります、そして次に、こちらに横たわっている武装を紹介します」
そう言ってセシルが指さしたのはグロースターの前に置かれた大砲のようなもの。
「高速弾電磁射出砲、通称スパークライフルです、アサルトライフル等と同様の機構ですが、アサルトライフルと違い非常に高初速かつ大口径の弾丸を発射できます、これは廃棄される直前の拠点防衛用の沿岸砲にアサルトライフルの回路を簡略化して取り付けたもので、分類上はカートリッジ式のオートマッチライフルです」
「沿岸砲!?沿岸砲を使ったのか!?気は確かか!?」
「は、はい、ごめんなさい……でもロイドさんがいらないものだから使ってもいいだろうって………」
「………あとで私から文句を言っておく」
「助かります………続けますね、次はロイドさんがアールストレイム卿にと急造したブリタニア国旗付きのランスですが、性能は変わりありません」
「うむ、ここは後で褒めておこうか」
よくわかってるなロイド、いいセンスだ。
「最後にMVS、これも特に変更はありませんが、形状がやや細く長くなっているので気をつけてください」
「わかった、説明ありがとう」
予想以上にピーキーな仕上がりになったようだが、扱えないこともない、まあ死にながら覚えればいい。
これで、ようやく本当の意味での私の専用機となったわけだ、私以外誰も乗りこなせないという、本当の専用という意味でな。
これから急速に加速していくであろうKMFの進化に置いて行かれないか、それだけが心配だが、ありきたりな言い方を言わせてもらうならば、機体性能の差が戦力の差に直接影響することは、ほとんどないのだ、自慢できるほどの腕じゃないが、時代の流れの中で生き残って見せよう、このグロースターとな。
せっかくだ、グロースターじゃ味気ない、新しく名前をつけよう………………そうだな、今日からお前は……。
「グロースター・テンペスタ」
そのスーパーフロートユニットで、嵐が厄災と破壊をばら撒くが如く、あの大空を縦横無尽に、自由自在に、跳ね回ってやる。
「よろしく、と言っておこう、テンペスタ」
グロースター・テンペスタ
命名:ツキト・アールストレイム
分類:第五世代KMF
所属:神聖ブリタニア帝国
製造:神聖ブリタニア帝国
生産形態:急造品
全高:5.20m
全備重量:15.9t
推進機関:ランドスピナー、スーパーフロートユニット
武装:内蔵式対人機銃、MVS、対ナイトメア戦闘用大型ランス、スラッシュハーケン、アサルトライフル、スパークライフル
乗員人数:1人
搭乗者:ツキト・アールストレイム
機体説明:防衛線や包囲網などの【単独強行突破】をコンセプトとして急造された機体、通常型のグロースターにトップスピード使用時の死亡率100%を誇る脅威のフロートユニット【スーパーフロートユニット】を搭載、装甲防御力向上のために増加装甲を取り付けた、速さと硬さの両立を図った、ブリタニア史上最も狂った思想のもとで作られた機体。
ロイドは戦線を単独、単騎で無理矢理突破するために必要とされるとものは、何よりも速さと硬さだと思った。
敵の射撃を振り切れる速度、万が一被弾しても貫通しない装甲、相容れないもの同士の両立を図った、結果、形にはなったがシミュレーションではトップスピードに至る前にパイロットが気絶、トップスピードに入っても数秒後には死んでいる可能性が100%、スーパーフロートユニットの搭載と増加装甲により重量は倍になり、各所への負担が大きくなった、もはや気が狂ってるとしか言いようがないが、本来のスペックを活かせれば最強の機体となるだろう!
そう、トップスピードを出し続けられれば、この機体はまさしく最強なのだ。
この機体の特徴的な武装といえば、高速弾電磁射出砲、通称【スパークライフル】だ。
廃棄寸前の旧世代の自動装填装置付きの沿岸砲を改造した物、超高速で大口径の砲弾を6発連続で射出するカートリッジ方式のKMF用の武装として生まれ変わった。
【スパークライフル】という名前の由来はこの砲が廃棄される原因となった事故に起因する、この砲が沿岸砲だった時代、射撃練習をしていた兵士が射撃時に装填装置から噴き出した火花で失明、改良が加えられつつ使用を続けられたが結局事故は続き、数年前に取り外し作業が開始された。
時期を同じくして、日本エリアをブリタニアが占領し、海岸線の防御を固めるために本砲を本国より輸入していたのだが、いざ取り付けとなった時に本国で廃棄が決定、お蔵入りになった。