魔法科高校と"調整者"   作:ヤーンスポナー

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元から第八十七話を書いてる際に思い描いていたのは、オリ主の圧倒的な力量です。原作キャラ勢には"技"で遠く及ばない。その"技"故に、圧倒的と言った様な物です。

だけど、オリ主視点からしたらどうもあっさり終わる。
だからと言って達也視点でも散々オリ主の化け物具合は見てきてるから結局そこまでのインパクトはない。

だから、あえて従来のラノベのように多角的視点から描写してみようかなと言う風に至ったわけです。

完全に練習用ともいえますが、勘弁願います。一応冒頭の時系列表示は下の流れどおりにしますけど、今回だけです。多角的視点は今回だけになります。悪しからず。


なお、この作品を描く時、オリ主登場からのところは個人的なBGMのイメージは『VII』って言う。ノリスのテーマです、はい。通じる人何処までいるかな・・・。


番外編~第八十七話~

【Sunday,February 19 2096

  Person:command<multi>  】

 

 

 

 

 

 広い人工の森を、四人と一体が一塊になって進む中、フリーハンドの通信機から美月とほのかの声が聞こえる。

 

『達也さん、止まってください。現在の進行方向正面から右手三十度の方向に、パラサイトのオーラ光が見えます』

 

『私も確認しました!男性二人、女性一人の三人組です』

 

 この二人の探索スキームが有る限り、達也たちは態々面倒な散開による策敵をせずに済んでいた。だからこそ、貴重な戦力である幹比古を二人の傍に護衛として貼り付けてある。

 

 

 再び、ほのかから連絡が入る。

 

『あっ、達也さん達の反対側から、パラサイトに仮面の女の子が近づいています』

 

 これは、恐らくリーナだろう。パラサイトのオーラ光も、彼女の接近と同じくして活性化する。

 

 

 身振りで移動を指示し、駆け抜けようとした時、

 

 

 爆音が、森の中で鳴り響いた。

 

「なっ?!」

 

「地雷・・・この爆音は指向性の物か?」

 

 レオがその爆音に驚く中、冷静に爆音の元を分析する。

 

 通常の地雷とは若干音が異なる。恐らくは、指向性を持たせた物が炸裂したのだろう。

 

 

 それと同時に、"眼"で"パラサイト"が別の者によって仕留められるのを確認する。

 

 それは、"彼女達"にも見えていたようだ。

 

 

『パ、パラサイトが・・・封印された?』

 

『まさか・・・あの人は・・・』

 

 

 しかし、その様子には何処かしらの狼狽が見える。

 

 

「急ぐぞ」

 

 そう声を掛け、三体のパラサイトの元へと駆ける。

 

 

 

 そして、開けた視界で見えたのは。

 

 

 三体の封印されたパラサイトと、スーツに身を包み、右手に日本刀を持った"彼"の姿だった。

 

 

「・・・最初にかち合うのは別かと思っていたが、まさか"お前達"とはな」

 

 

「・・・やはり、借哉か」

 

 

 今回の騒動は少々大きすぎた。しかし、その割には"彼"が出てこない、というかソレを除いても全く動いていないことを不審には思っていた。

 

 しかし、それはある意味で正しく、ある意味で間違っていたようだ。"彼"は、確かに動いていたのだ。それが、どんな目的でかは分からないが。

 

 

『封印、されてる・・・?一体、刀一本でどうやって・・・』

 

 通信機越しに困惑の声を見せる幹比古。そして、

 

「借哉くん、まさか・・・」

 

「借哉、どういうことだよ」

 

 レオとエリカは、彼らが認識しない間に、借哉がこの事態に介入していた事に困惑を見せる。

 

 否、困惑ではないかもしれない。彼らは、一度"この姿の彼"に会っている。四月の時、二人をみすみすと出し抜いて彼が脱出した、あの時だ。

 

 

 しかしそんな二人の様子を無視し、"彼"は此方へ"通告"を口にする。

 

「達也、それとレオにエリカ。一つ、警告しておく。今回のことから今すぐ手を引け。"こいつら"(パラサイト)は"我々"が確保する。はっきり言って、邪魔なんだよ。お前達が初めから首を突っ込んでさえいなければ、事態はもう少しマシなまま終わることが出来た。これは元から"お前達"が触れるような問題じゃない。今すぐ、来た道を引き返せ」

 

 

 そう、こちらに聞こえるようにはっきりと"彼"が口にする。

 

 その言葉に対し、真っ先に動いたのはエリカだった。

 

 

「何をっ!」

 

 そうエリカは叫び、八相の構えから飛び掛る。

 相手はいくら手練でも"銃火器"の扱いにしか優れていない。"刀"の間合いなら、此方の方が経験では"上"のはず。

 

 そう、エリカは判断しての行動だった。

 

 

 それに対し、"彼"は"もう片方の刀"に手を掛け、一閃。

 

 

 その一瞬で引き起こされたことを、エリカ自身の素早い認識能力は正しく認識し、素早くエリカは一撃を加えることなく跳躍を選択する。

 

 

 否、一撃を加えられなかったのだ。

 エリカの持つ"ミズチ丸"は、その根元から刀身を断ち切られていた。

 

 これが、並みの剣士であればその事を理解することさえ出来なかっただろう。否、手練の剣士であっても難しい。それほどまでに、素早く、巧みな一撃であった。

 

 

 "彼"の背後に回ったと認識し、最早無くなった刀を残心の容量で向けようとする。

 

 

 しかし、振り向いた先にあったのは、彼の刀の切っ先だった。

 

 

 命の危機による悪寒を感じ、素早く後ろへ下がる。

 

 そこで、"彼"の様子を改めて確認する。

 

 

 "彼"は、エリカが背後に回りこんだことを、エリカの最速を以ってしても把握していたのだ。

 

 何の飾り気もない、唯の中段の構え。

 しかし、そこには如何なる隙も存在しない。単純が故に、最も完成された代物。

 

 

 中段の構えは珍しいものではない。むしろ、剣を持った際に始めて習う構え方だ。

 しかし、それは中段が最も"完成された"構え方であるが故である。

 それを、熟練の剣士が使えば、一気に難攻不落の構え方になる。

 

 

 その"彼"の姿を見たとき、エリカはあることを思い出した。

 

 

 

 それは、まだエリカが剣を持ち始めた時。

 一度だけ、老練の剣士に稽古をつけて貰った事があった。

 その剣士も、何の変哲も無い、唯の中段。

 

 しかし、その時彼女は全身から汗が吹き出て、どう動いても仕留められてしまうような気分だった。

 

 こちらは、何もそうと分かるような動作は行っていないはずであった。なのに、その老練の剣士はエリカの全ての太刀筋を見切って見せたのだ。

 

 

 それは、まるで"お前のような未熟者がやる事など分かり切っている"と言わんばかりのように。

 

 

 事実、剣道でも八段同士の試合はただただ静かだと言う一点に尽きる。

 派手には動かない。静かに、唯静かに戦う。

 しかし、その一撃は鋭く、また他のどの試合をも凌ぐような駆け引きが行われている。

 

 

 結局、その時は一度もエリカは一本も取れることは無かった。

 

 

 

 この場に至って、こうして刀を叩き折られた状態で向かい合って、始めてその時と同じ感覚を、見た目は自分と同じくらいに"若い"彼から、何故か感じ取った。

 

 これは、勝てない。腕が、経験が、違いすぎる。

 

 

「腕は良し。鍛え方によっては、最高の剣士になれるだろうな。だが、"俺"を相手にするには早い。経験の差、というもんだ」

 

 

 その言葉を素直に飲み込めたらどれほどよかったか。

 これがもし道場の中での出来事であったのなら、自分の才能を認めてもらったが故に喜びさえ抱きそうな言葉だった。

 

 

 しかし、この場は戦場に近く、それは皮肉でしかなかった。

 

 

「エリカ!」

 

 

 一瞬、しかし確実に固まったエリカを助けるべく、レオが"彼"に向かって突っ込む。

 

 しかし、ソレに対してそのままの体勢で"彼"はレオの鳩尾に一撃を加え、そのまま組み付き地面へと叩き伏せる。

 

 

「邪魔なんだよ。これは、高校生が首を突っ込める問題じゃない。分かるな?」

 

 

「だからと言って、易々と手を引く訳にも行かないな」

 

 

 そう言って、達也はCADを抜く素振りを"見せる"。

 

 

 しかし、これは"幹比古の一撃"の為の陽動だ。

 

 それに気を取られた隙に、幹比古による"雷童子"が"彼"を襲う。

 

 

 本来ならば、一撃で"彼"の意識を刈り取ったはずであった。

 

 

 しかし、"彼"は避けることも、防ぐことさえもせず、ただそのまま"受け止め"、そしてそのまま何事も無いような様子で抜き身の刀を収めていった。

 

 

『ダメージがない・・・?そんな、どうやって・・・』

 

 

 余りにも有り得ないその光景に、ほとんど全員が絶句していた。

 

 

 

「だったら!」

 

 

 もはやヤケクソと言った様子で、エリカが突っ込む。

 

 しかし、そこに割り入る者がいた。

 

「駄目だ、エリカ!」

 

 そう叫びながら、千葉修次が割って入り、刀を抜き彼に飛びかかろうとする。

 

 

 しかし、その瞬間、まるで狙い済ましたかのように遠距離からの狙撃による銃弾が飛来し、正確に彼の足を撃ち抜く。

 

「ぐっ?!」

 

「次兄上!」

 

 突然の狙撃を食らい倒れた修次にエリカが駆けつける。

 

 その向こうでは、"彼"がヘッドマイクで狙撃兵と通話しているのが見える。

 

 

 かなりの手練の戦士を、悟らせることもさせずに撃ち抜いたのだ。

 

 

 もしこれが、自分自身に向けられていたら?

 

 

 達也の"再生"が行使できるのはあくまで"即死でない範囲"でのみだ。

 

 心臓が破損した程度では、まだ何とかなる。

 しかし、脳天に銃弾を食らった場合は?

 そして、その時に自分が反応できる可能性は?

 銃弾を食らうその瞬間までに、狙撃を把握することが出来たのか?

 

 

 達也は、その事を想像し、今更ながら"彼"に、そして"彼の持つ戦力"に戦慄した。

 

 格が、最初から違う。

 

 この時点で、この障害を"押し破る"等と言う発想は達也の頭の中からは除外されていた。

 

 

「借哉、お前、一体何者なんだ」

 

 同じように恐怖の色を見せるレオに対して、"彼"が答える。

 

「其れは"蛇"とも呼び、"猫"とも呼ぶ。"牛"とも呼ぶし、"狐"とも呼ぶ。"烏"と呼ぶものもいれば、"兎"と呼ぶものもいる」

 

「・・・!」

 

 それは、まさに四月の時に、司甲が狙撃された際の、最後のうわ言。

 

 

「お前は、なんと呼ぶ?他の奴らのように、"烏"とでも呼ぶか?」

 

 

 そう尋ねる"彼"の姿は、まるで魔王の様な印象を、対峙した全員に抱かせていた。

 

 




満足しました。うん、やっぱり一々気にしない分こういうのは楽ですね。出来るだけ主観は統一させたいので普段はやらないんですけどね、これ。どうしても必要って時はログと言った形式にしてます。それが〇.5話形式。対してこれは別に描写しなくてもいいので、完全な番外編です。


さて、では皆さん、おやすみなさい(白目

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