書く場所が、ない・・・・。
【Sunday,February 12 2096
Person:operator4 】
二月も十日と少しが過ぎた頃。
今だ"家"の地下室の中から、四葉真夜からの報告を聞いていた。
『・・・とりあえずは現存してたパラサイトの宿主は全て"抹殺"。東京全域が危険地帯と化したわ』
「そうか。それで、観測は順調か?」
『一応"黒羽"の方々に観測を続けさせているわ。ある程度のデータも取れたし、そちらに後で送るわね』
「ならいい。問題は日本で最初に消えた二個体の場所だ・・・。他の三つはアメリカで"殺された"んだ。あっちの管轄でいい。二個体の特定は?」
『今だ特定には至っていないわ。流石に"アレの一部"となると予測もつきませんもの。ただ、一つについてはどこの辺りにいるかは分かっているのではなくて?』
その問いに、しばし言葉が詰まる。
自分達での観測データの結果から見ても、"目標1"はそう長距離を移動できるほどの力を残していたとは思えない。
アレそのものはかなり"生存欲"が強い個体だ。生命体に寄生した場合は次いでその個体の繁殖欲に影響を受けるが、例え寄生していなくても"生存欲"によって動くのは確か。
そして、その原理からすると例え非寄生状態で回復できたとしてもそのまま宙に漂い回復を待つような悠長な事はしないはずだ。それは生存欲があるが故の"危機感"が許さない。
となると、答えは一つ。
「人形に憑いた・・・か。面倒だな。"杭"が通じるかどうか・・・」
『この点は古式魔法師に一歩譲る形となりますわね』
そう面白そうに彼女は笑うが、此方としては他人事ではない。
人形であるが為、杭を打ち込むには"固すぎる"のだ。別に打ち込むことそのものは不可能ではない。
しかし、ソレにより体そのものが割れてしまい"人型"を維持できなくなってしまった場合、"杭"による封印そのものが不可能になる可能性が出てくる。
これはヒューマノイドにも同じことが当てはまる。"外側"が大きく崩れてしまうと、"内側"が無事でもバランスが成り立たない。
確かに、"宿主が死にさえしなければ抜け出しはしない"。しかし、流石に"人型も留めて置けないほど損傷した物"が例え稼動状態であったとしても、"あれ"を宿しておけるとは思えない。
これが擬似的なダッチワイフなどの物であった場合は楽だっただろう。"固すぎるが故に割れる"事は無かった。
しかし、学校にそんなものが置いてある筈はない。結局、別の手段を探した方がよいのかも知れない。
その様な事を考えていると、電話越しから彼女が"要望"を出してきた。
『ところで、一つほどお願いがあるのですけれど』
「・・・嫌な予感がするが、まぁいいだろう。言ってみろ」
そう促すと、彼女は正気かと思えるような事を口に出した。
『もしもよろしければ、"十二個の内の一つ"を、"四葉"でもらえないかしら』
「・・・それは此方が首を縦に振れない事を承知で言っているんだよな?」
その言葉に、彼女は間接的な肯定を返す。
『えぇ。あなた方にとって"アレ"は回収しなければいけないもの。そして、"創造主"に還元すべきもの。"普通なら"、とても許容できないことは分かっています』
「つまり、俺にそれを許容させる手段がある、ということか?」
その問いについて、彼女はまたしても肯定を返す。
『もちろん。そもそもあなた方が欲しているのは"切り取られた創造主の一部"。その目的はあくまで"創造主から切り取られた力を取り戻す"事であって、別に"オリジナル"でなくても、特に問題はないでしょう?』
この言葉には、しばし唸る。
個人的には判断は下せないのは確か。しかし、彼女が言っていることは一部事実では有るのだ。
つまりは、こう言いたいのだ。
"この世界であの一部を培養し、それを返してしまえばいい"と。
もしくは、オリジナルを返し"培養した物"を手元に置くのが本命か。
どちらにしても、確かに"四葉"の、というより"第四研"の目的の足がかりになるのは確かだ。
"精神"とは何か。
もしも彼女達が"アレ"を理解することが出来たら、恐らくはその答えになるだろう。
そのためには、力が弱っているかどうかなどは関係ない。"精神体"であると言う事こそが重要なのだから。
しかし、問題も出てくる。もし、培養された場合"力が薄くならないか"と言う事だ。
この一点のみが、個人的な判断を下せないでいた。
「・・・まず、培養するにしてもオリジナルは駄目だぞ。最低でもコピー品で我慢してもらうことになる。そもそもその許可さえこっちでは出せない。一度、お伺いを立てる必要がある」
一応念を押しつつ保留の回答を返すと、彼女はソレさえも想定通りかのように笑いながら答えた。
『あら、慎重なのね。構わないわ。返事は、そうね。最初の一体の所在が把握できたら、教えてちょうだい』
「分かった。それともう一つ、頼みがある」
とりあえずは保留を返せたところで、"先ほど考えた事"を頼む。
『代償、といったところかしら?』
「もしもこっちがお前の提案を受け入れてくれたら、の話でいい。現状此方の封印手段は"杭"に限られている。これそのものも便利だが、戦闘用には向かない。"封印"だけを目的とした、戦闘武器を作れないか?銃は無理だろうから、最悪刀か、もしくはナイフや小太刀でも構わない」
『無理・・・とは言わないわ。けど、直には無理よ?貴方が言っているのは"通常の武器の容量で封印を施せる物"を作れと言っているのだから』
「"創造主"様も流石にそこまでの物は作れないだろう。しかし、魔法の概念をより知っているお前達ならばもしやと思っただけだ。頼めるか?」
しばし間を置いた後、帰ってきたのは了承だった。
『分かったわ。"貴方達の能力"はよく聞いているから、ソレを元に作れるようにしましょう』
「では、そのように頼む」
『貴方もきちんとお伺いを建てて下さいね』
その念押しの後、通話が切れる。
「これだから・・・」
信用できない人間は、とは続けない。まだ彼女達が"力"を求めていないだけマシだ。・・・間に合っているからかもしれないが。
しかし、念のために聞いておいた方がいいのは確かだ。もし"培養"で力が衰えない場合は、一体だけ確保した後ソレを培養、後は全て"消してしまう"だけで簡単に処置を終わらせることが出来る。
しかし、それでも呼び出すのは忍びなく、結局コマンド越しにメッセージを"創造主"に送る形となった。
十一巻のところは結構書けそうな場所あるんですよね。そこまでのつなぎを何とか頑張ってます。
次回、未定。もし余裕があれば連投になるかも。