魔法科高校と"調整者"   作:ヤーンスポナー

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展開に悩む。ちょっと物語に飲まれすぎると時々行き過ぎた伏線まで回収してしまいますからね。現に一旦書いた後書き直しました。物語が続かなくなると思って。二度手間です。

物語を作るときは酒のソレが当てはまりますね。呑んでも呑まれてはいけないということです。


さて、本編です。


第八十三話~優先度~

【Tuesday,January 31 2096

  Person:operator4    】

 

 

 

 

 

「お前が、"創造主"様の言っていた・・・?一体、何故・・・」

 

『あら、"あのお方"は何も言っていなかったのね。まぁ、態々たかが連絡の為だけにあなた方に労力を割けるほど"あのお方"には余裕がなかったのでしょうけど』

 

 そう言って、電話越しにコロコロと彼女は笑う。

 

『本当なら今すぐ話しても構わないのだけれど、貴方からしたら直接話を聞きたいでしょうし、"今、最も重要なこと"はそのことではないでしょう?』

 

 まるで宥めるように、しかし肝心なことは何も話そうとしない真夜に対して、浮かんできたのは怒り、ではなかった。

 想像以上の恐怖が湧き出たが故の影響なのか。自然と、思考が整理されていったような気がした。

 

「・・・そうだな。ただし、"事"が終わったら、全てを話してもらう」

 

『えぇ。積もる話が私にも、貴方にもあるでしょうからね。場所はそちらで用意するのかしら?』

 

「いや、此方から向かおう。聞かせられる話でもないだろう。お互いだけで、な」

 

『構わないわ。じゃあ、この話は"アレ"を確保した後、と言う事で』

 

 

 そこで一旦話が区切れ、"目先の事"へと話題が移っていく。

 

『それで、貴方達は"私達"を使う気になったのかしら?』

 

「・・・とりあえずはどうしようも無いからな。力を借りるぞ。一旦宿主を全て"殺害"するとして、その後離脱した"アレ"そのものを観測することは可能か?」

 

『勿論。と言うより、それも既に指示してあるわ。"あのお方"は貴方達がやろうとしていることを全て察して、指示を此方に出したのだもの』

 

「・・・此方にとっては不甲斐ない気持ちで一杯だがな」

 

 勿論、これは"四葉"に向けてではなく、"創造主"様に向けてだ。確かに単独では遂行が難しかったとは言え、ここまで御手を煩わせているとなると落ち度が目に付く。

 しかし、だからこそこれ以上手間取るわけにも行かないのは事実だった。

 

「とりあえずは、その後だ。とりあえずは再度寄生した"アレ"を宿主ごと、なんとかして確保しろ。手段、金額等は問わない。必要な範囲は全てバックアップする。確実に遂行してくれ。それと、今現在此方には非寄生状態の目標に対して対抗手段がない。こちらが"戦力"を動かせるような状況になったら情報を頼む」

 

『分かったわ。では、その様に。他に何か用件はあるかしら?』

 

 その問いに対して、肯定を取る。

 

「あぁ、一つだけな」

 

 そう言って、一つだけ、確認したいことを聞く。

 

 

「"創造主"様は、"知り合い"・・・つまりお前に、助けてもらったと言っていた。そして、その礼に何かしらの物を渡したと。それは、事実か」

 

 

 その質問に対し、帰ってきたのは肯定だった。

 

 

『えぇ。今は詳しくは話せないわ。けど、貴方の言ったことは確かに事実よ』

 

「そうか。聞きたい事は今のところはもうない。では、言った事をきちんと遂行してくれ。それではな」

 

 その言葉と共に、通話を切る。

 

 

 受話器を机に置き、一息つく。

 まだ、現実感が沸かなかった。このような気分になることがあるのかと、長い間生きていながら始めて的外れな感慨を受けた。

 

 机の上に置いてあった煙草を取り、箱から一本を取り出し火をつける。

 その煙を吸い込みつつ、椅子の上で力を抜く。

 

 

 そうして忘我に数分ほど浸った後、コマンドから呼び出されていたことを思い出し、パスを繋ぐ。

 余り放置しすぎたせいか、向こう側はかなり慌てている様子だった。

 

〔moderator1:やっと繋がった?!何かそちらでも問題がありましたか?〕

〔operator4:いや・・・とりあえずは此方の方で整理したい。お前達にとっては問題ないから気にするな〕

〔moderator1:・・・分かりました。それで、"四葉"の事なのですが〕

 

 そう言って先ほど漏れ出ていた内容を再度話そうとする彼を制止する。

 

〔operator4:ノータッチだ。こちらで意図を把握した。やろうとしてた事は同じだったようだし、ついでに色々頼んだ。こちらは"四葉"の連絡があり次第動く。どうせしばらくは危険で、動くことも出来ないんだ。しばらくは前よりはゆっくりできるかもな〕

〔moderator1:悠長なことをしている場合でもないのですがね〕

 

 そう言ってはいるが、事実上ほとんどの事を四葉が代行してくれるような物だ。現状バックアップだけしていればいいのだから、危険が収まる間は逆にゆっくりできるというのは事実だった。

 

〔operator4:じゃあそのように頼む。一応"特戦"にも今後の行動方針は伝えておいてくれ。四葉が関わっていることは一応伏せておけよ〕

〔moderator1:了解。それでは、失礼します〕

 

 その言葉を確認し、此方からパスを切る。

 

 

「・・・全く、考えられないほど疲れたな」

 

 いつの間にか半分まで減った煙草の火を消しながら、そう呟く。

 

 

 疑問は今だ尽きない。否、更に増えていると言ってもいい。しかし、重要なのは今目の前にある事だという事実は今だ変わることは無い。

 

 変わって欲しいと思うわけでもなく、しかし好んで知りたいとは思っているのだが。

 

「知りたい時ほど知ることが出来ず、知りたくはない事ばかり知る。起きて欲しいことよりも、起きて欲しくない事の方がより多く起きる。皮肉な物だな、分かってはいたが幸運と不運は釣り合ってないらしい」

 

 その言葉と共に、背もたれに体重を預ける。

 出来ることならば、コーヒーが飲みたかった。缶の物ではなく、コップに入れた、温かい物を。

 

 しかし、立つ気力も無い今の状態でそのような物が都合よく用意できるはずも無く、仕方なく机の上に置いてあった、室温によって冷えたコーヒーで我慢することにした。

 

 

 




前回にて、話に呑まれてくれた人がどれほどいるのだろうなぁ、と少々想像しながらとりあえず八十二話を書きました。いてくれたらいいなぁ、と少し思ったり。
まぁ、自分にはさほど文才がある訳でもないのでさほど多くはないのでしょうがね・・・。今だ精進すべきか。それに伏線は一応ありましたしね。想像していた方もいらっしゃったのかもしれません。


さて、次回。未定です。10巻は描写するところの選別が難しいので。まさかリア充の日を書くつもりはありませんし。やっぱりピクシーのところからかなぁ、なんて思ったり。


余談ですが、ピクシーと聞くと片羽を思い出すのは多分自分だけじゃないはず。

【追記】ナンバリングミスの為変更しました。

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