魔法科高校と"調整者"   作:ヤーンスポナー

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重大な原作の読み誤りが発覚したのでこちらを投稿した後訂正します。
詳しくは後書きにて


第八十一話~阻害~

【Friday,January 20 2096

  Person:operator4    】

 

 

 

 

 

「・・・こちらは"危険区域"から離脱した。全員無事か?」

 

『全部隊、離脱を完了しました。しかし無事かどうかは私達には分かりかねます』

 

「分かった。一旦合流しよう。ヘリを失敗時の回収地点へと向かわせる。そいつに乗って基地に帰投しろ」

 

『了解』

 

 通信が切れると共に、大きくため息をつく。

 素直に、助かったと言うべきだった。

 

 

 正に今日、二つまで割れた"目標"の根城のうち、片方に襲撃を掛けた。

 あえて逃げ道を作り出し"自分"の元へと誘導、そして行動不能にした隙に仕留める。そのような算段"であった"。

 

 

 ここで、誤算が生じてくる。肝心の"こちらへ向かってくる途中の目標"を、スターズが捉えてしまったことだ。

 

 最初に"目標"を認識した部隊は足止めできた。しかし、"シリウス"がそこを突破してきた為、"目標"もこちらの望むルートとは外れた道で逃げてしまう。

 

 

 だが、これはまだいい。はっきり言って、誤差の範囲内だった。

 問題は、今回の事態が四つ巴はおろか各勢力の争奪戦になりかけていた事だった。

 

 "目標1"を追尾しようとした時、それぞれの分隊が広域特捜チーム、スターズ、七草・十文字連合や千葉・吉田連合の各勢力のルートと被り、それらを避けるように移動せざるを得なくなったのだ。

 結果、追撃の速度は考えられないほど低下し、仕舞にはスターズに"殺害"を許してしまったのだ。

 

 その時点で"寄生される危険性"を分かっているこちらは各勢力とは正反対の方向に、つまり離脱を図った。

 何とかこちらに関しては逃げ切れた物の、内心嫌な汗が止まらなかった。

 生きた心地がしない、とは正にこのことを言うのだろうか。今ならNo1が失敗した理由も分からなくはない。それより難易度が数段跳ね上がっているが。

 

 

「・・・これはいっそのこと何処ぞやの勢力と協調路線を張った方がいいのだろうか」

 

 このままではそれぞれ足の引っ張り合いをしているだけだ。いっそのこと利害を一致させて連携して事に当たればいいのではないか。

 

 

 そう考えて、直ぐに無理だと思い直し諦める。

 そもそも"我々"が動いている、というより存在さえ知っている者は"我々"以外にはいないのだ。

 これで取引を万が一持ち掛けられたとしても、相手からしたらポッと出の訳分からない団体が一枚かませろと言ってきたのと一緒だ。

 

 

「隠密性が必要だったとは言え、こんなところで弊害が出てくるか・・・」

 

 もう何度目かも分からないため息を漏らす。しかし、重要なのはここで悲観することではなく、次をどうするかだ。

 

 とりあえず"目標2"が死んだことにより"あれ"が外に漏れ出し、次の"宿主"に寄生するその瞬間まで、我々はその危険性から現地域に近寄ることさえ出来ない。

 つまりその間、"目標2"の追跡は完全に不可能になる。また宿主を特定し、根城を探し出すところから始めなければならないのだ。

 

 

 もう何度「いっそのこと四葉を投入してしまえばいいのではない」という考えが頭を過った事か。どうせこちらにとっては消耗してもいい手足だ。はっきりいった話"目標"が死んだとしても追跡させればそれはそれで楽なのではないか。

 

 しかし、どうしても四葉を使いたいとは思えない。いくらその方が仕事が安上がりに済むのだとしても、これを機に何かしらの尻尾を捕まれでもしたら更に厄介なことになる。何しろ、四葉は何処と無く恐怖を感じるのだ。そんな勢力には例え間接的であっても余り関わりたくはない。

 

 

「・・・どの道最低でも一週間ほどは立ち入れなくなると考えた方がいいだろう。寄生される確率は近くにいればいるほど高い。その間何も出来ないのはどうも悔しいが・・・」

 

 いっその事"目標"を追跡するチームをいくつか潰すのもありだろう。"スターズ"あたりなら他勢力と協調路線を張ることもないだろうし、ある意味"潰しやすい"。

 もしくは広域特捜チームそのものを取り込んで協調路線をとらせるか、ソレが無理なら最低でもこちらの行動に支障をきたす行動をさせない様にするのも良いかも知れない。むしろ、こちらの方が取り掛かりやすい。

 

 

「後は、"アレ"その物の対処か・・・」

 

 現状方法としては監視カメラにて"寄生後の目標"を探し出すしか方法はない。映像にて顔の識別が"不可能"な場合は、それが目標と見てまず間違いは無い。即応性が求められるが、そこは収まってから何とかするしかないだろう。

 

 

 

 視線を下に落とし、そして"あるもの"を見たときに考えが浮かぶ。

 

「そういえば、この"杭"は確か・・・」

 

 "創造主"様が言うには、この"杭"は魔法の概念を使っている、との事だった。

 つまり、この"杭"と同じように、"アレ"に対する一定の対応策を"魔法師"は持っているということではないのか。

 

 現代魔法師では恐らくは無理だ。しかし、"古式"なら?

 昔から"怪異"について人間にしてはある程度知っている"彼ら"なら、否、"彼らだからこそ"あの危険地帯の中を追跡できているのではないのか。

 

 この事態に関わっている古式魔法師は、確か千葉家に協力している形で"吉田家"がソレに当たったはずだ。

 現状"伝手"は無いに等しい。しかし、国を動かすことで"要請"は出来るかもしれない。"彼ら"がもし危険が収まる前に確保できたとしたら、その対象を引き取ることも恐らくは可能だろう。

 

 最悪、保管しているところに強襲をかけて強奪してしまってもよいのだ。そちらの方が、幾分か手間が省ける。

 

 

「全戦力は避けない。が、動けるようには準備はさせておくか。分隊を一つほど吉田家の付近で待機させておいた方がいいだろうな」

 

 

 そう思い至った所で、迎えの車両が来る。

 流石に現地点から"家"へと戻り、バイク等に乗って合流できるほど距離が無い訳ではない。失敗時の為にに事前に"自分の回収手段"も用意させていたのだ。

 

 その車両の後部座席に乗り込み、今や唯の荷物にしかならないライフルの入ったアタッシュケースを隣の席に置いたところで、その車両は動き出した。

 

 

 

 




前書きに書いたとおり、訂正箇所があります。

具体的には、世界に入り込んだ"パラサイト"の数です。
脱走者が八名だというだけで、実際は十二個のパラサイトが入り込んでいるようです。これのお陰で恐らくかなり矛盾が発生すると思われるので、こちらの個数を変更させて頂きます。

変更箇所は 七十三話 七十七話 になります。

また、これらを変更すると共に同時に作品にて矛盾が出てきます。
簡潔に言えば、"脱走していない宿主の確保に何故動かなかったか"と言う事です。
これに関しては最も行動が活発的な宿主=繁殖に最も積極的な宿主を優先して確保に動くべきと判断した、と考えてください。増やされる前に、ということです。


かなり設定を間違えてしまい、大変申し訳ありません。
個人的にも来訪者編は長いが故か横浜編やその他と比べて理解度が作品の構築に必要なレベルまで行っていないことが今回のことで分かった為、少々読み直してきます。
またしばらく遅れるかもしれませんが、ご容赦いただけると幸いです。ただ、最低一週間以内には投稿できるよう努力する予定ですので、出来ればこの先も温かく見守って頂けると幸いです。

【追記】目標のナンバリングをミスしたため修正 1ではなく2です。後、雰囲気が英数字の方を使った方がよいと考えた為目標、及び管理者と調整者のナンバリングは英数字で行っています。悪しからず。

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