魔法科高校と"調整者"   作:ヤーンスポナー

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借哉回です。
やっぱオリ主は文が進むね!チョッと長めかも


第五話~対策~

【Sunday,April 3 2095

  Person:operator4  】

 

 

 

 

『/command call "moderator" "all"』

 

 借哉は自宅の中で、自分の部下ともいえる調整者達と今回のバグについて検討するべくコマンドを使った。

 

 自宅、といってもそう大層なものではない。

 彼にとっての自宅は、外から見た場合は「他の家よりは大きいかな?」程度でしかない。

 しかし、中はまるっきり違う。

 もし、これが高級感あふれる調度品の溢れる豪華絢爛な家だった場合は誰もがうらやむだろう。

 しかし、現実に中に入ってみたら見えるのはそんなものではない。

 軍事用以上に性能のよい、"管理者"の為だけに、ドイツ、日本、アメリカなどから極秘裏に造らせた最高クラスの人工衛星をコントロールするアンテナが隠されてこそいる為、家の五割を占めている。

 残りの内の三割は日本国内の膨大な情報を処理する為のスパコン、更にその冷却の為の冷房器具が一割を占め、最後の一割は精々移動経路にしか使えない。

 では、自宅と呼べるのはどこなのか。答えは単純、地下である。

 とはいっても地下の部屋の割り振りの内の四割が武器庫で、もう四割はLAVやバイクが入れてある車庫。

 残りの2割のスペースでやっとベットと操作端末、そして少しばかりの嗜好品を置いただけの粗末な部屋が出来上がる。

 ほぼ独房のそれと一致しているかもしれない。それほどまでに狭く、殺風景な部屋なのだが彼にはそれで十分で、それこそが必要なものでもあった。

 

 

 今回も、彼らとのパスは直ぐにつながった。

 

 

 

〔moderator1:"管理者"殿。例の件はどうなりました?〕

〔moderator3:広大な敷地と人口の中では探すのも一苦労だったでしょう。結果はいかがでしたか?〕

〔operator4:対象は割り当てた。だが、問題が発生した〕

 

 今回の経緯を詳細に報告した後、帰ってきた反応は決して明るいものではなかった。

 

〔moderator7:"我々"と同じレベルの権限を持っている"バグ"ですか・・・。コマンドが通用しないというのは厄介ですね〕

〔moderator9:となるとやはり生物的な殺害しかないでしょうが・・・〕

〔moderator10:ほぼ劣化版に近いとはいえ、"我々とほぼ同じ再成能力"に、並みの相手なら一撃で無効化し得る"究極の分解魔法"。我々の人脈から無理矢理軍隊を差し向けても、恐らくは勝てないであろう能力の前では、むしろ殺害の方が厳しいかと・・・〕

〔moderator6:この"バグ"はさすがに我らでも対処しきれない。ここは"創造主"様へ報告すべきかと存じますが〕

〔moderator5:馬鹿者。それがどれほど"創造主"様を消耗させる行為か分かっているのか。我々との更新で使うのは"借りた自我"ではないのだ。そこを意識せずに言っている訳ではあるまい〕

〔moderator6:しかし今回のケースは始めてだ。無論、始めてのことなんぞは他にもいくらでもあったが、"規模が大きすぎる"。早期の解決が必要で、その為には致し方ないのではないか?〕

 

 限りなく後ろ向きな意見しかでてこない。だが、それでは駄目なのだ。

 可能な限りを尽くした後でないと、"創造主"様に相談するのは早すぎる。

 借哉は、何時もやっていたやり方を逆転させ、むしろ基本的なことを提案した。

 

〔operator4:やはり現状"バグ"の最優先消去はほぼ不可能だというのは共通の認識で問題ないだろう。だからこそ、ここで発想を変えよう。今までは"バグを消してから、原因を突き止めていた"。だが、今必要なことはむしろ"バグの原因を突き止めること"だ。ソレが分かれば、"バグを消す為の"突破口は開けるはずだ〕

〔moderator2:とはいっても、それこそ時間を掛けすぎる危険性があります。それでは本末転倒では?〕

〔operator4:その点は確かに考慮すべきだが、無理に"創造主"様に負担を強いてしまうよりは上策だ。それに、別に不発弾のような代物でもないんだ。出来るだけ無害であるように、ある程度のアクションはこちらからしておく。とりあえず今必要なのかは、"このバグがどのような種類の物に近いか"だ。何でもいい。送った情報から、気が付いたことを言ってくれ。〕

 

 待つこと数分、一つの疑問が浮かび上がってきた。

 

〔moderator3:一つだけ、気になる点が。〕

〔operator4:言ってみてくれ。〕

〔moderator3:この情報を見る限り、何から何まで始めてとしかいいようがありません。種類さえ判別が不可能。ですが、一番最初の検査対象のところに、気になる文字列が〕

〔moderator6:と、いうと?〕

〔moderator3:識別番号ですよ。バグで化けてこそいますが、どのような場合でも一部文字が化けずに残る場合があります〕

 

 

 

 

〔moderator3:《@;g>.=er[》から読み取れる、g,e,rの意味は一体なんです?〕

 

 

 

 

〔moderator5:確かに、通常ユーザーのIDとの法則とは毛ほども一致していない〕

〔moderator10:それだけではありません。最後の"er"の文字。これではまるで、"最初から我々と同じ類のものであった"ようではありませんか〕

〔operator4:ユーザー作成の段階からバグっていたというのか?そうなると、世界のシステムそのものが故障してる可能性があるか?〕

〔moderator9:その割には"たった1件しかヒットしなかった"ってのが気になりますな。もしかしたら、世界の維持そのものには影響しないレベルの小さな傷があるのかもしれません〕

〔operator4:冗談じゃない。我々とほぼ同レベルの能力を持つ一般ユーザーなぞ洒落にならん。早急に検査する必要があるな〕

〔moderator4:個人的には、むしろ"バグ"の人物像や、周辺などが気になります。魔法師の時のように、"管理者権限に近いもの"を獲得された可能性があります。調べれば、もしかしたらかけらでも掴めるかと〕

 

 一人で考えるよりは、十一人で考えた方が視野が広がる。

 これはまさに魔法師が生まれた時のことから学んだ教訓だった。

 やはり、こまめな会議をすることは事態を一歩進めるのに役立つ。

 

〔operator4:とりあえずはシステムの点検は俺が今日中にやっておこう。各員は対象に関する情報を最優先で取り揃えろ。確か人間社会での名前は「司波達也」であっていたはずだ。繰り返し言うが、"最優先"だ。現行の作業を一時中断し、全力で調べ上げろ。草の根レベルの情報であっても取りこぼすな〕

 

〔moderator2:了解。2~8は現行の作業を一時中断。1,9,10を筆頭にしたうえで、情報収集を開始します〕

 

〔operator4:頼んだ。結果は出来るだけ早めに頼む〕

 

 これを最後に、パスが切れた。

 ある程度の目処は付いたことに安堵こそするが、問題はむしろ悪化している気がする。

 果たして探るべくして突いた藪からでてくるのは、本当に蛇で済むのか。

 そう思いつつ、再びコマンド画面を開き、世界の点検を始める。

 今夜は恐らく、寝れそうにない。

 

 




めっちゃ書きやすい。
オリ主って楽でいいですねほんと。性格をさほど気にする必要性がない。

んでもって文としては前よりはよさげですがストーリーとしては伏線のチラ見せが難しいことを実感させられる。
やはり魔法科の作者様の文才などには敬服するしかありませんね。
何せ8巻から伏線をチラ見せしつつ、展開としてはこれが一番有力か?いやでも・・・なんていう気分にさせて、15巻でようやく確信に至らせるってのは読んでてほんと凄いと思いましたからね。まぁ深雪の感情からして結構見えやすかったかもしれないけど。

次回はいよいよ日にちを跨ぎます。果たして達也回にして九重先生との相談をさせるのがいいのか、それとも教室での邂逅をさせるべきなのか・・・・

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