魔法科高校と"調整者"   作:ヤーンスポナー

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これ書いてると、時々"無能なのは主人公勢じゃないのかな"なんて思ったりするんです。一応結果は残してるんですけどね。まぁ経験故のって奴なんですがね。

だけど、何やかんやで当初の思惑通りに動いていた入学編、九校戦、横浜編と違って今回は完璧にやられた側です。珍しいんです、本来は。オリ主達が出し抜かれることなんざ。

さて、本編です。


第七十二話~提案~

【Sunday,November 6 2095

  Person:operator4  】

 

 

 

 

 

「・・・どういうことだ」

 

 今、彼女は"彼ら"を呼び出し、今ここに着いたと言った。

 "彼"だけではない。確かに、四葉真夜は「達也さん"達"」と言った。

 ソレの示すことは、つまり、

 

「・・・あいつの妹さんまでここに連れてきたのか」

 

 自分で導き出した答えに、真夜は頷いた。

 

「えぇ。この後達也さん達とも色々話すこともあるし、何より"その方があなた方にはこちらに手出ししづらい状況になる"かと思いまして」

 

「・・・"あいつ"に俺の力は効かん。いようがいまいが変わらないとは思わなかったのか?」

 

「今"あなた方"がここを消し炭にしようとしたら、深雪さんまで巻き込むことになりますよ?そしたら、達也さんはどうなるかしらね」

 

「・・・飛んだ自爆戦術だよ。理解できる脳が無きゃ世界と心中するのと一緒だ」

 

「それほどでもないわ。"烏"なら、気が付かない訳がないでしょう?」

 

 

 してやられた。流石に、そう認めざるを得なかった。

 ここでもし真夜の話に価値無しと見て"広域消滅処理"を行おうものなら、"彼"には何も怒らないだろうが妹さんは間違いなく四葉もろとも消えてなくなる。

 

 そうなった場合、"彼"はどうなる?

 

 彼の心の拠り所と言っても過言ではない"彼女"を消してしまって、彼が正気でいられる保障は?

 

 そして、正気を失った彼が日本を、もしくは地球そのものを"一瞬で焼いて"しまわない保障は?

 

 四葉の敷地内から出る者には細心の注意を払っておきながら、"四葉の敷地内に入る者"に対して注意を払っていなかった。

 否、払う必要がないと思っていたのだ。四葉の敷地内に入ると言うことは、すなわち四葉の手先なのだから巻き込む前提で問題などなかった。

 また、"彼"に対してはコマンドは通用しない為、たとえ四葉に呼び出されていたとしてももろとも巻き込んでしまっても問題はない。

 

 しかし、妹さんが来るとなると話は変わってくる。

 真夜がやったのは「私を殺すと貴方の大切なものが壊れますよ」と脅してきたようなものだ。意味も理解できず、可能とも思わなかった場合はまず間違いなく脅した本人も脅された側も致命的な傷を負う。理解できるものにしか効かない、やぶれかぶれの脅し文句。

 

 

 しかし、いくら心の中で批判しても、この一手で確実にこちらは動けなくなったのは確かだ。

 今のうちに七草に対して照準を定めている"神の杖"だけでも実行してやることも不可能ではない。しかし、ソレを行った場合その騒ぎの中で四葉は途方もないレベルでこちらから隠れることが恐らく可能だ。

 そうなった場合は日本全域でお互い足りない手数でフォックスハントをする羽目になる。水面下で内戦じみた事態が発生するなど唯でさえ神の杖の使用後は後始末が大変なことになること必至なのに本格的に首が回らなくなる。

 

「・・・呼びつけたのはあくまでこちらに"お前の策を聞かせる方法を理解させる"為で、無理矢理交渉のテーブルに座らざるを得ない状況を作る、か。見事にしてやられたな。少々お前達のことを侮っていたようだ」

 

「そこまで露骨に敵対心を向けなくても大丈夫ですよ。"私は"、あなた方と友好的な関係を築きたいと思っていますから」

 

「"四葉は"ではなく、"私は"、か。あえてそういう言い回しをしたと言うことは、こちらとの交渉で得られる利益を個人の物にするつもりか?」

 

「その方が都合がいいもの。深雪さんが当主になったら、私の権威は四葉内では最低でもそれなりのレベルまで弱まるわ。そうなったら、いざと言う時に達也さん達の制御が効かなくなるわ。今のうちにあなた方と懇意になれば、四葉なしで四葉と同等の力を得る事が出来るわ」

 

「そこまで言うからには、お前にもカードがあるんだろうな。こちらに対する、利益の提供が」

 

「えぇ、もちろん。"あなた方"にも協力してもらう必要はあるけれど、手はあるわ」

 

「具体的には?」

 

 そう聞いたこちらに対して、真夜は自信ありげに答えた。

 

「とりあえずは私が四葉家の当主である間は、"四葉があなた方の窓口になる"つもりなのだけれど、どうかしら?」

 

「・・・こちらの都合のいいように解釈すると、"四葉がこちらの犬になる"と言う事になるが、間違いないか?」

 

「まぁ、有り体に言えばそうなるわね」

 

「・・・正気か?いや、元から正気ではなかったか」

 

「あら、酷い言い様ね。だけど、別に私達は上か下か、使う側か使われる側かなんて物に興味は無いわ。私達の利益になるのだったら下にもなるし、使われもするわ。ましてや主体を保ったまま"烏"の下につけるのなら、それほど利に適う事はないわ」

 

「・・・そっちが求めるのは"我々の側に下ると共に、手足となるが変わりに手足としてのケアと利益の提供"と言う訳か。確かにこれは"四葉の方針"というよりは、"四葉真夜の希望"に近いな」

 

 確かに、こちらの手足に下るとすれば逆にこちらは手足に対して然るべき保護と利益を与えなくてはならない。ましてや世界を直接掌握できる者の手足ともなれば、その幅はかなり大きくなる。

 

 しかも、彼らが手足となった場合のその活用法は自然と"日本魔法師社会内部への干渉"になり得る。四葉のみがその窓口になった場合、こちらはそれ相応の物を提供せざるを得ない。

 

 

 しかし、利が無い話ではなかった。むしろ、ある種お互い得るものが有る取引とも言える。

 これが上手く嵌れば"コード666"を態々実行しなくても済む。

 四葉が魔法師社会内でも特に目立った形で力を増すことになるだろうが、こちらの意の通りに動くのならばむしろ問題はない。

 

 

 なのだけれども、四葉の方針としては"余計な干渉はしない"と言う物が近い。

 その方針から逸れている以上、これは"四葉真夜の意図"の割合が強いと見るべきだ。

 

 

 だが、それはあくまで四葉内での問題だ。いざと言う時は四葉そのものを後で消せばよい。もしくは四葉真夜の側について四葉そのものをこちらの手足に出来るよう手回ししてしまえばいい。

 

 しかし、それだけで妥協できる話でも、またない。

 

「"司波達也"を押さえ込む策は、もちろんあるんだろうな?」

 

「えぇ。詳細は追々話す予定だけれど、彼をある程度の方向に動かすのはそう難しいことではないわ。達也さんは、深雪さんには逆らえないから」

 

 成功することを微塵も疑っていない様子である真夜の様子を見て、とりあえずは、及第点は満たしたと考えることにした。

 

「・・・分かった。とりあえずは、お前の甘言に乗ってみようじゃないか。安全な連絡手段はこっちから用意しよう。ただ、もしこちらの望むような行動が取れなかった場合は、覚悟しておけよ」

 

「では、そのようにお願いしますね」

 

「・・・さて、邪魔したな。そろそろ御暇するとしよう。ではな、"期待しているぞ"」

 

「えぇ。それでは、また後日、今度はそちらの用意する"連絡手段"で」

 

 

 そう言葉を後に、食堂を後にした。




はい、真夜おばさんが自分の思い通りに事を進めました。
真夜は最初からこれを狙ってました。オリ主側に敢えて"寝返る"事で、ただ魔法師の頂点にいるだけでは得られない権力、利益、権威を得る事が出来る。"事情を知る者"ほどその効果は大きくなっていくので限りなく狙う価値がある、と言う訳です。

さて、これでとりあえず原作で言う8巻までが終わった形になります。もしかしたら番外編みたいな形で続くかもしれませんが、主体としての話は8巻が終わった形になるはず。

そして、来訪者編へと入るわけです。ここからがまた熱く・・・なれればいいなぁ。

次回、未定。例に寄って更新は遅れるかも

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