魔法科高校と"調整者"   作:ヤーンスポナー

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なんかもうしばらく投稿してなくて申し訳ないの一言。とはいってもしばらく投稿遅れがちになるかもしれないので勘弁してください。


さて、本編です。


第七十一話~四葉~

【Sunday,November 6 2095

  Person:operator4  】

 

 

 

 

 

「さて、着いたはいいが出迎えは来るのかね」

 

 そう呟きながらバイクを降り、武家屋敷を思わせる建物を前にする。

 四葉邸。本来なら、ここに神の杖が撃ち込まれる筈だった場所。そして、話次第ではここにコマンドを実行して何もかもを消す予定でもある。

 

 

 それを実際に見てみると、なぜこうも二十一世紀末になって古風な建物ばかりを魔法師は好むのだろうかと思う。風情というものは十二分に理解できるが、わざわざそこまで神経質にこだわるのはなかなかない。

 

 それは魔法師特有の感覚なのか、それとも自らに"歴史"がないことを自覚してが故古風な代物を好むのか。しかし少なくとも二十一世紀初頭の物を懐かしんで、という訳ではないのだろう。そうであったら、まだもう少し庶民の家のようになっていたはずである。

 

 

 待つこと数分、使用人と思われる人物に案内され、奥の食堂に入る。

 食堂に通す、と言うことは恐らくは食事でもしながら、という歓待のつもりではあるのだろう。むしろ、"時間を長引かせる"為の策なのか。どちらにしろ、あちら側に今日向かうとしか言っておらず、朝と言ってもいい頃に押しかけてきたのにそこまでの対応ができるということは、おそらく"予測していた"のだろう。

 

 喰えない。素直に、そう思う。こちらがどの程度まで見透かされているのか、よく分からない。分かる必要がない内に終われば良いのだが。

 

 

 

「お待たせ致しました。急な来訪とはいえ、"苦労なされたでしょう"?」

 

 そう言いながら、この屋敷の主が食堂に入ってきた。

 

「いや?"小細工"は我々には効かないからな。そこら辺は気にしなくていいさ」

 

 これは暗に、"四葉が造った結界など効かない"と言う事を指した。

 当たり前だ。いくら四葉が造った結界とはいえ、ただの"魔法"である以上、どう足掻こうとも"我々"の障害には成り得ない。だからこそ、こうやって四葉の敷地内に案内なしに入ることもできたのだし、そもそも"神の杖"の照準を四葉邸に向けることさえ出来はしない。

 

「さて、こっちも時間は無い。"四葉真夜"に敢えて聞こう。何が目的だ」

 

「あら、知っているのではなくて?」

 

「時間稼ぎ、か。お前との雑談に興じるつもりは無い。はっきりと、呼びつけた理由を聞こうか」

 

 目的が時間稼ぎなのは分からなくもない。しかし、"彼"を話題に出した以上それがこちらにとって一考の価値有りとされる物であると判断した。そうでなくては、あの"四葉の当主"が態々こちらに"四葉が我々の動きに気づいている"という事実を晒してまで接触しようとする訳が無い。四葉家そのものが大事なら、手荷物だけ持って直ぐに脱出してしまえばいいのだから。

 

 もっとも、そんな真似をしても逃げられないのは確かなのだが。

 

「"司波達也"について。あんたは確かに、そう言った。あいつは今回派手にやらかしすぎたからな。そちらにとってもこちらにとっても頭痛の種なのは変わらないだろうさ。だからこそ、"余計な被害"を被る前にこちらに接触してきたのだろう?」

 

「よく分かっていらっしゃるのなら、話は早いわ。達也さんったら、あんな"派手"なことをしてしまった上、そのせいでこちらまで"烏"に目を付けられてしまうとなると私達もただ黙ってみている訳には行かなくて・・・」

 

「・・・既に"四葉"がこちらの存在に気づいていた事には勘付いてはいたが、本人の口から出てくるとはな」

 

「あら、意外?別にこちらとしては、それほど隠すことでもないのだけれど。それに、"あなた方"の存在を知っているのは"四葉"ではなく、どちらかというと"四葉の中枢"だけよ。流石に分家の方々も知っていると言うわけではないわ」

 

「・・・・だから黒羽の使いは"我々"が何か知らなかった訳か」

 

 迎えを寄越すかを聞いたと言うことは、つまりは"結界"が効くと思っていたからだろう。大方、苦戦したところでまた接触してくる予定だったのだろうが、生憎こちらもそんな物を待ってはいられなかったのは確かだ。

 

 

 

「さて、脱線してしまったな。それで、お前達"四葉"はどうやって"司波達也"を押さえ込むんだ?」

 

 出されたコーヒーを口にした後、率直にそう告げる。

 どう足掻いても残り数時間しか猶予はない。もし四葉の策がくだらない物であった場合数時間以内に"事"を済ませなければならない。それまでの間時間稼ぎをされるなど御免込むる事この上なかった。

 

「そうですね。達也さんをこちらで謹慎させる、というのはどうです?」

 

「本気で言ってるのならこれ以上話に付き合ってられんと答えるぞ。お前達"四葉"にはあいつの行動を直接抑制できるほどの術はない」

 

 "彼"の力は個人のそれ一つで国家を丸ごと相手にし得るだけの力を持っている。ましてやいくら強大とはいえたかが"一つの家系"ごときが"彼"を押さえ込むことなどできるはずがない。

 

 もちろん、"彼"とて四葉の下にはついているのだから無視は出来ないだろう。しかし、彼の価値観から考えて妹さんの傍を離れざるを得ない命令というのは許容できないはずだ。

 

「えぇ、もちろんこれはまず最初の一手でしかないわ。別にこちらは失敗しても構わないのだけれど」

 

「それは"四葉にとって"でしかないな。こちらにとっては数日以上掛かる手段に対して一考の余地ありと判断を下せるほど余裕は無い」

 

「まぁ、気持ちは分かりますわ。下手なリスクを背負うぐらいなら今すぐにでもここを消し炭にしてしまいたい、というのは"烏"が考えそうなことですから」

 

「何が言いたい?」

 

「思い切りが良いのは悪くはありませんが、たまには慎重になるのも良い、ということですよ。私が言わずとも分かっているとも思いますが、今"ちょうど着いた"( ' ' ' ' ' ' )ようですし」

 

「何がだ?」

 

 この言葉に、何か悪寒が走り、思わず聞いてしまう。

 

 四葉真夜は、美しい笑顔を浮かべ、答えを返した。

 

 

 

「ちょうど、達也さん達がここに」




まぁ日付被ってる時点である程度予想できてた人はいると思います。はい。

これの何が拙いのかは多分次回で。


次回、上記の通りこの直後から。

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