【Sunday,October 30 2095
Person:@;g>.=er[ "Tatsuya,S" 】
正面玄関での戦闘もうまく鎮圧し、今現在必要なことは論文コンペで使用されたデモ機のデータの削除だ。
雫に案内されたVIP会議室で把握できた状況は、とても好ましいとは言えなかった。敵・・・おそらくは大亜連合による侵攻。まさかここまで大事になるとはつい先ほどまでは確かに思っていなかった。
しかし、ある意味予感は当たっていたのかもしれない。
"彼"が、少なからず動いていたということは、おそらくはそういうことなのだから。
皮肉なものだと思いながらデモ機のデータを消去していく。現在は一人だけだが、その分"分解"を遠慮なく使うことが出来るため楽なものだった。
この調子だと数分と立たずに終わるだろう。
最後のデモ機のデータの削除が終わったとき、ヘリのローター音が聞こえてきた。
室内でも聞こえるほどだ。おそらくはよほど近くまで来ているのだろう。
しかし、VIP会議室でもここまで早く救助のヘリが来るということさえ確認できてはいない。もしかしたら敵のヘリという可能性もあり得ないわけではない。
そうなると、速やかな迎撃が必要だ。そう思い、正面玄関から外に出ようとする。
そこから見えたヘリは確かに"敵"のものではなかった。
確実に、国防軍の一部隊の代物。
しかし、彼らの装備は確実に一般部隊のソレではないことを物語っていた。
国防軍に配備されているハイパワーライフル。そして見た目こそ二十一世紀初頭に見えるが装備としては一線級の防具一式。
そして、全員がつけている目出し帽。
それらが指し示す部隊など、一つしかない。
「おっと、余計なもん見られちゃったかな」
そう、"後ろ"から"いるはずのない人物"の声を聞き、咄嗟に振り替える。
そこには、スーツ姿に身を包み、小脇に"筒"を抱えている"彼"の姿があった。
「この事は内密にな。それさえやってくれりゃとりあえず九校戦での借りは無しでいいさ。俺もまだ"仕事"がある。ここで足止め食うわけにもいかん」
「お前、いったい何が・・・」
「さぁ。何だろうな。想像にお任せする」
そう言って、"彼"は着陸したヘリの周りで警戒体制のまま待機している部隊の所へと向う。
"彼"の姿に気づいたのか、兵士が皆"彼"の方向に向き、敬礼する。
そして"彼"もまた、敬礼を返した。
ヘリの内部から男が出てきて、"彼"に敬礼を返す。
「閣下、中央即応集団所属特殊作戦群予備分遣隊、現刻を以て到着しました!」
「ご苦労。直ぐに飛び立たせるぞ、隊員をヘリの内部に収容させろ。作戦の詳細は機内で話す」
「ハッ!」
「達也!聞こえるか!」
ヘリのローター音でかき消されそうな中、"彼"が声を張り上げる。
「この先おそらくは賑やかになるだろう。お前にも上から命令が回ってくるかもしれん。だがな、それでもやりすぎるなよ!場合によってはそれ相応の措置を取るからな!」
「待て、一体何が起こっている!」
「"俺の関わっている事"は知っちゃいけないことだ。分かるな?」
その言い草に気になり、"眼"を使い彼が抱える"筒"を見ようとする。
しかし、彼自身による抵抗があるのかは分からないが、何故か"視えなかった"。
「知っちゃいけないことだと言っただろう?見せるつもりはない」
「・・・」
「お前はお前の周りのことだけこなせばいい。変なところまで首を突っ込む必要性はないさ」
そう言って彼が笑うと、ヘリに乗り込みパイロットに声を掛ける。
「よし、出せ!」
その言葉と共にヘリのドアが閉まり、三機のヘリが南側へと飛び立つ。
その様子を、ただ黙ってみることしか出来なかった。
「・・・本当に、何が起こっているんだ?」
国防軍とも通じ、国を容易く動かし、そして自分自身でも高い能力を誇る、"彼"。
その彼がこの騒ぎの中、様々なリスクを犯して介入している。
一体、"彼"は何物なのか?
この騒動に、どんな事実が隠されているのか?
その問いは、もはや誰も返すことは出来なかった。
何か起こっているのは分かるが何が起こっているのかがわからないと言うのが一番謎めいていて個人的には好きです。奇妙さが出てきますよね。
今回の"眼"もオリ主そのものに付随する物を見ようとした結果視れなかったと認識して頂ければ。なおオリ主の内部構造を達也氏が視る方法が一つだけあります。ありますが、そんなことになるのは全面対決した時でしょう。
次回、ヘリ内部にて。