【Sunday,April 3 2095
Person:@;g>.=er[ "Tatsuya,S" 】
個人用カードの配布の後、ちょっとした一幕があり、図らずもお茶会になった後。
夕暮れに近い時間に帰宅したらすぐ、深雪が声をかけてきた。
「あの、お兄様」
何か、心配するような様子で呼び止める。
「何か、あったのですか?」
「どこか変わったことでもあったのか?」
「どこか、エリカ達と話してる時も、帰るときも何か"思い悩んでる"ように思いまして」
本当によく気づく。
出来のいい妹に思わず苦笑しそうになった。
「まったく、深雪には適わないな。確かに黙ってても仕方ない話だ。長くなるだろうし、話は後でリビングでしよう」
「"対象の残滓さえ残さないほど強力な魔法"?」
リビングでコーヒーを入れてきた後、達也から話を聞いた深雪はその規模の大きさに唖然とした。
「あぁ。俺が視たのは"缶コーヒーを消す"時だけだったが、その後の様子だとどうやら物だけでなく、対人にも使えるようだ」
「ですが、先ほどの話だと"お兄様には効かなかった"という風に取れますが・・・」
「あぁ。ソレは間違いない。確かにあいつは同じ事を俺に対してもやったはずで、しかし成功しなかった」
これが極めて事態をややこしくしていた。
その力がただ単純に"対物"オンリーだと割り切っていた力ならそこまで重要視するものでもないし、対人に使えるとはっきり分かっていた場合は脅威度が分かるだけいいのだ。
しかし、今回の場合は"対人でも使えること"を仄めかしているのに"実際の被害は皆無"に近い。再成もそもそも使われていない。
結果だけ見れば極めて無害に見える、が
「物と生物の間に、あれほどの力の場合は成否に関わる重要な差はないはずだ。それでも成功しなかったのは一体何が原因なのかは分からない。ただ、もし本当に人にも使えた場合、一番危険なのは"俺の周りにいる人物"だ」
「誇張では、ないのですね?」
深雪の問いに対して、しっかりと頷く。
「最低でも俺には"再成"があるから対象にされる分には問題はないだろう。ただ、そうと分かった場合やってくるとしたら周りを人質にとった"交渉"しかない。そして、彼はわざわざ"人質を確保する必要がない"。そう考えた方がいいだろう」
入学初日の夜としてはありえない空気の重さが続く。
当たり前だ。知らない方がいいこともあると言うが、今回はむしろ何も知らないからこそ怖いとしか言い様がない。
深雪が、口を開く。
「伯母様に、相談した方がいいでしょうか?」
この状況では、最低でも何が起こってるのかだけでも調べる必要がある。
深雪の提案には、達也も賛成だった。
「出来るだけ伯母上には頼りたくないが、その方がいいだろうね。連絡は自分でやるよ。ついでに風間少佐にも頼んでおく。深雪も、一応注意しておいてくれ。もしかしたら深雪が相手の目標になるかもしれないから」
その言葉に、深雪は頷いた。
「はい。お兄様も、気をつけてくださいね?」
「あぁ。どんなことがあっても、必ず帰ってくるよ」
少々大げさなようで、それでいて規模にあっているような会話。
そのやり取りの後、報告や依頼を行って、ようやく二人の日常が戻ってきたのだった。
ということで達也回でした。
今回に関しては、実はどんな構成にするか悩みました。
葉山sに報告してる途中がいいのか、それとも風間少佐か。
いっそのこと葉山ポジとか伯母上ポジにしてやって伏線祭りのほうがいいのかとか悩んだのですが、一番無難にかけそうなのはこれだったっていう。
今回も自分で書いててひでぇ駄文だなとか思いながらの一幕でした。
次は借哉回です。日にちがそのままなのはこれで最後かな?