魔法科高校と"調整者"   作:ヤーンスポナー

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タグを追加する予定です。最近銃火器系の描写が多いので。


第六十二話~追尾~

【Sunday,October 30 2095

  Person:operator4  】

 

 

 

 

 

「港湾警備隊、全部隊の配置を完了しました」

 

「ありがとう。それにしても入沢のやつ、いい仕事をするな」

 

 そう言って見渡すは現在バイクをその場に止めて大亜連合の部隊の襲来に備えるべき待機している山下埠頭での警備員の多さだ。

 山下埠頭を含め横浜湾全域において一時的な警備の強化が実施されている。これはNo1に言いつけたことも影響にあるが、入沢が身分も弁えずに港湾警備隊に具申した結果だった。

 

 しかし、これはいい方向に働いている。武装は本当に警備員レベルでしかないが、それでもいないよりはマシだ。その方が一時的に事態を進めやすくなる。

 

 大亜連合の揚陸艦が入ってきていたのは確認していて、その時点で交通インフラを完全に麻痺させ、また道路に関する完璧な検問が始まり、"部隊"にもこちらを着陸地点として既に呼び出している。全ての準備は整い、後は"核を引き出す"だけだ。

 

 現在時刻は午後三時三十分。そろそろ、大亜連合の揚陸艦から仕掛けてくる頃合か。

 

 

 そう思った直後、"背後"から爆発音が響いた。

 

「な、なんだ?!」

 

「何が起こった?!」

 

「落ち着け、現状の確認急げ!」

 

 慌てる港湾警備隊を一喝し、状況を整理させる。とは言っても、すでに予想はついている。

 

 そして結果もまた予想通りだった。

 

「管制ビルに特攻攻撃です!追加の特攻はないようですが、避難は既に始まっています。我々はどうすれば?」

 

 その意図は開いた監視網の穴に対する処置について。通常ならば現在展開している湾岸警備隊にそれを当てるのがよい。

 

 しかし、"何が起こるか知っている"となると、話は別だ。

 

「全員退避!攻撃が来るぞ!」

 

 そう言うと同時に、"目の前の揚陸艦"から各埠頭へロケット、及びミサイルによる攻撃が開始される。

 何とか指示が間に合ったのか壊滅こそ免れているが、現在の港湾警備隊の指揮統制能力は大きく下がっていた。

 

 そして、同時に埠頭"内部"から旧型の装甲車、及び直立戦車が現れる。

 

「最初は事前に忍び込ませた工作隊による撹乱を狙うつもりか・・・」

 

 素早くバイクと共にコンテナの端に寄せ、隠れると同時にほぼ無駄だと分かっている指示を無線機を通して出す。

 

『全港湾警備隊へ。現在敵勢力からと思われる攻撃を受けている。該当地域の隊員は速やかに離脱。他の部隊は付近の一般市民の避難を支援しろ』

 

 通達が終わり攻撃の様子を見ていると、揚陸艦から"軍用車両"が出てきた。

 このタイミングで本隊を出すはずは無い。そう思い、"眼"を使って確認する。

 

 

 結果は、"本命"が確かにそこにあることを示していた。

 

 

「見つけた!」

 

 そう叫ぶと同時にバイクに跨り、エンジンをスタートさせて後を追いかける。

 軍用車両側も追われている事に気づいたのだろう。速やかに車両を二分させてきた。

 片方は魔法協会、ではなく石川町方面へ向かっている。恐らくはこちらは警備が厳重化された可能性がある魔法協会を一時的に避けたのだろう。もしくは別の地点で起爆するつもりなのか。

 

 そして、もう一つの車両は、桜木町方面へ。こちらは恐らく、京都に運ぶ分だろう。しかし、インフラは既に麻痺させている。駅から運ぶことは不可能なはずだ。

 

 

 京都用の核爆弾が横浜にある限り、大亜連合は横浜で核を起爆することは出来ないはず。ここで京都用の核爆弾を確保すれば、少なくとも起爆を決断するまでにいくらかの時間は要するはずだ。そうでなくては肝心の精鋭を揃えた本隊をもろとも吹き飛ばすことになる。最低でも揚陸艦が離脱するまでの時間は必要とするはずだ。

 

 ならば、やるべき事は京都用の核を確保後、速やかに横浜用の核を確保すること。となると、選択は一つしかなかった。

 

 

 桜木町方面へ向かう車両を追いかけつつ、端末を取り出して部隊に連絡をかける。

 

『俺だ!現在国防軍独自で組織した避難計画を教えろ!後は軍事衛星を用いて石川町方面に独走中の車両を追尾しろ!』

 

『了解しました。・・・石川町方面へ向かう軍事車両を確認。これより軍事衛星による監視を開始します。現在国防軍で組織された避難計画は事前の物に乗っ取って避難船が準備されています』

 

『それだな。到着にはどれほど掛かる?』

 

『二時間ほど必要とするかと』

 

『となるとそれまで待機する場所が必要だな・・・・』

 

 そう独り言を零しながら展開を予測する。

 現状陸路は麻痺させていることは大亜連合でも把握しているはず。一番横浜を脱出しやすい方法は、やはり先ほどの避難船から一般市民にまぎれて、だろう。

 本来の大亜連合の計画の一部が遂行される場所で隠れられれば一番いい。それも、出来るだけ隠れやすい場所が。

 

 答えは、"つい数時間前まで自分がいた場所"だった。

 

『聞け!部隊の着陸地点を変更する。予定着陸地点は横浜国際会議場だ。合わせられるな?』

 

『分かりました。ヘリパイロットに通達します』

 

『ならよし。そっちで会おうと伝えてくれ』

 

『了解!』

 

 そこで通話を切り、目の前の車両に攻撃を加える。

 元々用意させた重武装で待機していたため、最初から満足いく火力で攻撃が出来る。

 擲弾銃を取り出し、車両の側面に命中させる。

 

 しかし、さすがは軍事車両なだけあり、榴弾では多少車の機動を不安定にさせる程度にしかダメージを与えることは出来なかった。

 

「あぁ、やっぱりこうなるか。リロード出来んのだぞ運転中は・・・」

 

 無力化させるとしたら車体に直接爆薬を着けるしかない。しかし、恐らくはその前に目的地に到着してしまうだろう。

 

 当然だ。お互い法廷速度など既に超えた速度でカーチェイスをしているのだ。むしろ事故を起こしていないのが不思議なレベルだ。

 

 もう既に横浜国際会議場は目の前にまで来ている。相手車両は減速の構えを見せていた。

 

 しかし、ここで内部に入られると室内での近距離戦に成りかねない。こちらは、あえて"加速"した。

 

 相対的な速度差が減り、一気に車両の前に出る。

 そして前に出て最適のタイミングでバイクを横にし、減速を開始する。

 これならなんとか相手の前に出たまま横浜国際会議場に着くはずだ。

 

 

 そして、相手も屋内に入るのが一時的な目的である以上、甘くは来ない。

 素早く上部ハッチを開け、こちらへグレネード弾を発射し、それはバイクの傍で着弾する。

 

 爆発の衝撃でバイクが宙を舞い、放り出される。

 

「クッソがぁ!」

 

 そう叫びながら、懐から何とか手榴弾を取り出し、車両へ向けて転がす。

 

 

 車両が停止したタイミングで手榴弾は爆発しその車両の走行能力を奪い、

 

 

 こちらは国際会議場の内部へバイクと一緒にガラスを突き破りながら再度入ることになった。

 

 




ということで終了時刻15:37あたり。結構時間に無理があるんじゃないかと指摘されるかと思われますが、一応概略図では15:30時点で埠頭からコンペ会場まで1/3の距離まで部隊は展開している様子。また、16:00から五分以内に歩きで横浜国際会議場から地下シェルター付近にまでいける(七草&深雪の地下陥没の確認の時点での時刻が16:05で、出発が16:00かソレより後bywiki)、また原作でも53分以内に横浜国際会議場での戦闘~最後尾の七草組がシェルター付近にまで行けた事も考えて距離は近い物と推測し、この物語を構築しています。魔法による移動での速度もバイク並ということは、七分以内だったら何とか着けるかな、という寸法です。

なお、最後の互いの爆発。これが横浜会議場での最初の爆発になります。行き成り正面に擲弾とか普通無意味じゃないですか。ソレに対する辻褄あわせ。ここでは達也様も"眼"を使っていないから核の存在は察知できてないっていう。

次回、オリ主は死なん。死んでも蘇るさ。装備ごと。

【追記】誤字を一部修正しました

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