魔法科高校と"調整者"   作:ヤーンスポナー

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五十九話からはほぼサブタイトルを二文字で固定させる事は雰囲気的に無理だと思ってください。何が言いたいかというと、このSSでの一番の山場なのです。

今回も長め。1.5話分かな。


第六十話~状況開始~

【Saturday,October 29 2095

 Person:operator4   】

 

 

 

 

 

〔operator4:核だと?!何でそれを今まで・・・、いや、いい。お前に出来なかったんだ。俺らにでも出来るかどうかは怪しい〕

 

 一瞬No3に対して限りない怒りを覚えた。何せ小型とはいえ核の動きを把握できていなかったのだ。気が抜けていたのではと思うレベルだ。

 しかし、No3も無能ではない。彼らに出来なかったと言うことは、こちらにも把握できるような状況だったかどうかは分からない。そう思いなおし、先のことを見ることにした。

 

〔operator3:本当に済まない。現状赤旗計画の中止を呼びかけるには時期が遅れすぎてる。何とかして核を起爆前に無力化する必要がある〕

〔operator4:・・・わかった。後始末はこちらで何とかする。そっちは大亜連合が日本からの交渉のテーブルに着くように手回しをしてくれ〕

〔operator3:具体的には?〕

〔operator4:それは状況が決める。俺らが止められれば日本側に有利に、止められなければそうとも限らない〕

 

 今回は完全に日本側に味方する形になる。なにせ大亜連合の切り札を潰すのだ。えこひいきと見られても仕方ないかもしれない。

 しかし、これにはNo3側も否定することはなかった。

 

〔operator3:分かった。何かしらあれば遠慮なく言ってくれ。出来る限り助力する〕

〔operator4:当たり前だ。では切るぞ。早速行動に移ろう〕

〔operator3:あぁ。それではまた〕

 

 それを最後に、パスが切れる。

 この非常事態に、やるべきことは既に頭の中に浮かんでいた。

 素早く別のパスを開き、"全ての調整者"を呼び出した。

 

〔operator4:全員聞け。緊急事態だ。現在の作業を中断し全ての能力を今回の指令に使え〕

〔moderator5:如何なさいましたか。緊急事態かとお見受け致しますが〕

〔operator4:その通りだ。各員聞け。先ほど大亜連合にいる調整者No3から緊急の連絡があり、現在大亜連合で進行中で、日本に対する強襲が計画されている"赤旗計画"にて、二発の小型核爆弾が使われることが判明した〕

〔moderator10:か、核爆弾ですか?!〕

〔moderator1:そんな馬鹿な。それは事実なのですか?〕

 

 混乱の広がる各調整者だが、それでも状況の把握をまず最初にやろうとするのは訓練された証拠とも言えるのだろうか。しかしそれでも、動揺は大きかった。

 

〔operator4:事実だ。今現状我々に必要なのは、小型核爆弾を運ぶ工作隊の作戦遂行前の確保、そして核爆弾そのものの確保、もしくは無力化だ。これから言うことを一つでも遂行できなかった場合は、恐らくは失敗するだろう。各員、全力を尽くせ〕

 

 全員から是の返答が来た後、それぞれに指示を出していく。

 

〔operator4:No1は各省庁に最大級の警戒態勢を敷かせろ。魔法科コンペがあるはずだからソレを名目に上手くごり押せ〕

〔moderator1:了解しました〕

〔operator4:No2は横浜近辺にいる駐屯部隊に訓練の名目で実包を装備させ、戦闘準備をさせろ。夜戦訓練とでも言っておけ。足もきちんと用意させておけよ〕

〔moderator2:了解です。直ぐに取り掛かります〕

〔operator4:日付が変わってからでいい。書類を作成するだけの時間はあるはずだ。No3は神奈川近県の全ての対空兵器をアクティブにしろ。同時に避難ヘリに対しておまえ自身で定めた着陸地点以外での着陸を禁じろ。最高権限で発動させろよ。間違っても十師族のヘリを十師族の土地に着陸させるような例外は認めるな〕

〔moderator3:分かりました。これらは直ぐに取り掛かっても問題ないですね?〕

〔operator4:発動は戦闘が開始されてからだがな。準備は今からでも問題ない。No4は敵揚陸艦が湾内に入った段階で全ての地上交通インフラを麻痺させろ。事故やら点検やらで完全に横浜を孤島にしろ〕

〔moderator4:よろしいのですか?〕

〔operator4:核を逃がしたらもっと大勢の人間が死ぬ。絶対に躊躇うなよ。No5は警察などを動かし道路などを徹底的に封鎖。検問を敷け。あらゆる例外を認めずに全ての所持品をチェックさせた上、無害な一般人に関してはヘリを用意し、ソレを用いてNo3が事前に用意した着陸ポイントまで避難させろ。後が詰まると面倒なことになる。ヘリは十分な数を用意させろよ〕

〔moderator5:畏まりました。ヘリ等の準備は今から始めたいと思います〕

〔operator4:任せる。No6は直ぐに演習中の国防軍主力艦隊を呼び戻しつつ領海に戦時潜水艦警戒網を敷かせろ。こんなもんで大亜連合の二次攻撃は防げないが、少しでも減らすことでいざと言う時の陸側のダメージを減らせ〕

〔moderator6:了解。直ぐに動かします〕

〔operator4:No7は各空軍基地に緊急警戒態勢を敷かせろ。タイミングはNo4の時と一緒だ。少しでもヘリ、VTOL機、小型輸送機などが承認なしに飛び立った場合は速やかに撃墜しろ。恐らくは湾内侵入と同時に攻撃を仕掛けてくるはずだが、そうでない場合でも構わない。後始末は面倒になるが核を起爆させられるよりはましだ〕

〔moderator7:了解。準備を進めます〕

〔operator4:No8は朝に内閣の連中を集めろ。事が起こった時には直ぐにこちら側の要求を遂行できるように待機させておけ〕

〔moderator8:分かりました〕

〔operator4:No9は大亜連合にいるNo3に話を通しておくから、あっち側と連携を取れるようにしておけ。一番退屈かもしれんが場合によっては一番重要な役割にもなり得る。気を抜くなよ〕

〔moderator9:了解しました。同時にこちら側での連携も私を中心とした物でよろしいのですか?〕

〔operator4:全体の指揮もできるなら任せる。何が必要なのかは分かっているはずだからな。No10は状況終了後の日本と大亜連合の交渉の為の準備を進めろ。成否どちらにもあわせられるようにしておけよ〕

〔moderator10:了解です〕

〔operator4:では現刻を以って状況を開始する。各員、死力を尽くせ。以上だ〕

 

 その言葉を最後にパスを切り、今度は"部隊"を動かす為に端末から連絡を掛ける。

 

『俺だ。緊急事態だ。明日の朝の段階で部隊を動かせるように準備をしろ』

 

『いきなりですね。準備の後は別命あるまで待機状態でよろしいのです?』

 

『そうだ。こちらから指示があった場合はそれに則って行動しろ。汎用ヘリ二機と攻撃ヘリ一機を運用する前提で準備させろよ』

 

『何をするつもりなんです?』

 

『命令はこちらと合流後に通達する。状況は激しく変わる可能性があるからな』

 

『合流するお積もりですか?!』

 

『そうだ。恐らく作戦地域は横浜になる。そのつもりで用意させろよ!』

 

『了解!』

 

 そう指示した後、通話を切る。

 

「後は移動準備だ。こちらからバイクで行った方がいいだろうな。いやしかし・・・」

 

 現状ではまだ"彼ら"は事態を把握していないだろう。また、させるつもりもない。

 しかし、俺は一応でも連帯行動を取らない限り特にレオやエリカに対して何かを察しさせてしまう可能性がある。出来るだけ核のことは秘密裏に処理したい。その方が後の日本と大亜連合の交渉の際の"切り札"になり得る。

 

 しかし、こちらで核の位置を把握、可能ならば確保を実現する為にも揚陸艦が湾内に入った時点で上陸に対して備えておきたい。そのためにもバイクは用意したい。

 

 

 そして、それらの問題を解決してくれる人物も、また直ぐに思い当たった。

 港湾警備隊の入沢を端末で呼び出す。

 彼は案外夜も暮れている時間ではあったが数コールで出た。

 

『もしもし。いきなりどうした?』

 

『緊急の要件だ。理由は問うな。今から言う物を速やかに用意し、指定があれば十分以内に横浜国際会議場に持ち込む用意をしろ』

 

『その物は?』

 

『小型の短機関銃、出来れば四十五口径の奴を一丁とマガジンを六個。それに単発型の擲弾銃と通常弾頭を三発。携行爆薬を三個。それとバイクを用意しておけ』

 

『アタッチメントは?』

 

『どうせ賑やかにする予定だ。短機関銃の方はRDSとフォアグリップだけで構わん。四十五口径の奴はフラッシュライトを頼む』

 

『分かりましたよ。必ず用意させておきます』

 

『ならよし。もしかしたら場合によってはその後で追加で何か物を頼むかも知れん。その時には一時間以内に用意できるようにしておけよ』

 

『ソレに関しては出来るかどうか分からん。努力だけはしておくって事で』

 

『構わん。頼むぞ』

 

『了解』

 

 それを最後に通信が切れる。

 

 これで、今の段階で出せる指示は全て出した。後は、時を待てばいい。

 

 

 

 必ず核を止める。

 この先の、パワーバランスの為にも。




オリ主勢の本気モードです。


なお、大亜連合が核を使ってくるという設定はかなり前から考えてました。というのも、大亜連合が戦争を再開する予定だとしたらせっかくの強襲作戦をあそこまでちっぽけな物にはしないんじゃないかなと前々から思っていたからです。そこで、秘密裏に核を使う予定だったという設定を作りました。もしかしたらあったかもしれないというのは、このこと。

達也達はその、ほんの僅かな一端しか今回は知ることは無いでしょう。しかし、水面下ではこの重大な事態が進んでいる。その模様を、お楽しみいただければ幸いです。


次回、雰囲気を出す為に達也回にするかも。

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