短めですが、ここからが本番。
タイトルの意味は、読めば分かる。
【Saturday,October 29 2095
Person:operator4 】
『・・・関本勲から得られた情報はそれが全てか?』
『ハッ、その通りです。後に書類も上がるかと』
『了解した。しばらくした後、問題がないと判断できる場合は八王子に返しておいてくれ。上への報告はこちらで行う』
『了解しました』
そう取りあえずは言っておき、通信を切る。
結局得られた情報はそう目新しい物でもなかった。
「しっかし、出し抜かれたなぁ・・・。最後にどうしてもケチがつくとはこの事か」
物事はほぼ終わったと思つつ、部隊を動かし、工作隊の潜伏場所に強襲を掛けようとはしたのだ。
しかし、動かす時期が少々遅かった。気が抜けていたといってもいいかも知れない。
いざ工作隊本隊に強襲をかけようとさせたら、運の悪いことに独立魔装大隊の強襲作戦と被ってしまったのだ。
お互い秘密部隊の性質を持っていた為作戦の共有さえ出来ておらず、危うく遭遇戦寸前の状況となった。
結局互いに国防軍だと分かり緊張状態が解けた頃には工作隊のほとんどが独立魔装大隊の別働隊によって拘束されていたのだ。
もちろん、割り込みを掛ける事で後に得られた情報では"裏の事"は話題にさえ出てきていない。恐らくは隊長の陳祥山などのごく僅かな上部の人間にしか知らされてはいなかったのだろう。
それほど機密性が必要なことなのかと言う疑問も出てくるが、そもそも"赤旗計画"さえ管轄ではなく正確な把握をしていない工作隊の手足達が知るはずもないかと思い直し、とりあえずは問題にはならないと結論付ける。
しかし、それでも物事の最後にケチがつくというのは気分のいいことではない。
割り切ってはいるのだが、それでもため息を吐かずにはいられなかった。
「まったく・・・。もしかして"あいつ"は何か?ストレスでも溜まってるのか・・・」
最後に一矢報いる・・・と言うより、部屋に一時閉じ込めた礼を返されたと見るべきなのだろうか。それにしては少々弱い気がしなくも無いが。
そのような無為な思考を巡らせていると、"コマンド"から呼び出しが入った。
パスを開くと、相手はNo3だった。
〔operator3:済まない、いきなり呼び出して。緊急の要件なんだが大丈夫か?〕
〔operator4:どうしたいきなり、らしくないぞ。とりあえず言って見ろ〕
〔operator3:大亜連合の強襲部隊・・・揚陸艦を国防軍で撃沈できないか?〕
この質問・・・と言う依頼に対して、本格的に訳が分からなくなってきた。
〔operator4:本当にどうしたんだ。"赤旗計画"そのものに俺らが介入するほどの価値はないだろうに。それに今から国防軍を動かしても主力もいないんだから補足した頃には既に港にまで来るだろうさ。心配するな、たかが横浜の中だけでの作戦だ。そう気にすることは無いだろう?〕
〔operator3:どうしても無理なのか?頼む、事態はもはや深刻な状況に陥ってるんだ〕
この言い様には違和感を覚える。思い当たった中で出てくるこの焦り様は、確か第三次世界大戦の時のそれに近い。
一体何があったのか。まず目先の質問に答えを返してから、聞くことにした。
〔operator4:無理だな。揚陸艦が今どの位置にいると思ってるんだ。明日の昼には港に入れるだけの位置にいるんだ。今更国防軍の艦艇を動かしても間に合わない。空軍を使った攻撃も迎撃システムでやられるだろうからそもそも無意味だ。らしくないぞ、そんなことさえ分からないなんて。何かあったんだ?〕
〔operator3:・・・すまない。完全にこちら側の落ち度だ。出来れば、尻拭いをして欲しい〕
〔operator4:本当に何があった。別にお互いの協調は当たり前のことだから気にすることでもないだろう〕
〔operator3:・・・こちらでも先ほどまで動いていて、やっと事態を把握したんだ。もう少し、この事態を予期できていれば・・・〕
悲観的な思考になってるNo3の、次の言葉を待つ。
〔operator3:・・・大亜連合の機密庫に先ほど確認を取らせると同時に、大亜連合強硬派の上層部に対して部隊を投入し、尋問を掛けた。こちらでも調査の上にその必要があると判断したからだ〕
〔operator4:それで、何が分かった?〕
その問いに対して、出てきた答えは最悪といっても良い物だった。
〔operator3:・・・機密庫から、大亜連合の旧型スーツケース核爆弾が二発、消えていた。また、大亜連合強硬派上層部の尋問の結果、"赤旗計画"の揚陸艦にそれらが搭載、人員を潜入させて横浜、京都に仕掛ける計画があることが判明した〕
〔operator4:おいおい、まさか・・・・〕
〔operator3:そうだ〕
〔operator3:連中は、"核"を使うつもりだ〕
次回。物語は加速する。