魔法科高校と"調整者"   作:ヤーンスポナー

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バトル回。長いです。二話分の文字数があります。悪しからず。

後一応注釈。オリ主がナイフと拳銃を同時に構えてる時は基本CODのあれです。しかし、振ると描写した時は逆手持ちから普通の持ち方に変えて振ってます。そして何で今までも刺してないかというと、大振りで振ることで切断するつもりで振ってるからです。刺すことで効果があるなら初めから刺してるけど、呂に関して言えばナイフ刺さったぐらいでは手負いの虎にし兼ねないからです。でも拳銃と一緒に持ってる以上即応性も考えたら一応は逆手持ちにしてるって感じです。そう解釈してくれれば。


第五十八話~火力~

【Tuesday,October 25 2095

 Person:operator4   】

 

 

 

 

 

「こちらの書類に基づき、一一五〇を以て関本勲に関する事項、および身柄を国防軍諜報部の管轄とし、移送を開始します。これまでの連絡と相違がなければ、こちらにサインを」

 

 そう言って用意していた書類を八王子特殊鑑別所の"所長"に対して事務的に渡す。

 最近の行動からして"手下"として振る舞うのは違和感がなくもないが、まず今回は下手な管理役として出向くよりはそちらの方がいい。

 とはいっても、やはり今回の移送の責任者という立場にはなるのだが。

 

「分かりました。態々国防軍の方から直接来て頂けるとなると、それほど重要な案件なのですか?」

 

 そう尋ねる所長に対して、一応は肯定を返す。

 

「可能性がある、というレベルでですが。もしも何の問題もなかった場合は、そちらの方に再度管轄が移ることになります」

 

 とは言っても、そこまで重要性はないのだが。

 

「なるほど。移送はヘリでよろしいのですか?一応は魔法師ですから、リスクのない手段を選んだ方がよろしいかと」

 

「問題ありません。出来るだけ速やかに事を済ませたいので、陸路よりは空路の方が早いです。こちらで身柄を確保するまではそちらに責任が発生するとはいえ、そこまで怯えなくても大丈夫ですよ?」

 

「いえ、そういう訳ではないのですが・・・」

 

 躊躇いがちにそう答えながら、彼はサインを書き終え判子を押したようだ。

 

「ではこちらで」

 

「確かに受け取りました」

 

「それでは案内します。ヘリは屋上で待機しているのですか?」

 

 確かにヘリで移送するとなれば屋上に置くことになる。案内する為の確認の意図で聞かれたこの質問に対しては、否を返した。

 

「いえ、正面の方に待たせてあります。我々は屋上からこの施設に入りましたか?」

 

「失礼しました。それでは、こちらです」

 

 そう彼が促し、場所へと向かう。

 

「現在第一高校の方が面会中の為それが終わり次第ということになるかと思われますが、大丈夫ですか?」

 

「期限を一時までと事前に通告したのはこちらです。少々予定を早めてしまいましたが、別に咎めるつもりはありませんよ」

 

 そう言いながら、笑って返す。

 元々さほど重要な案件でもなく、大亜連合の工作隊に対して打撃を与える、及び他勢力に対する情報の流出を防ぐというだけの意味しか持っていない。

 別に言うほど必要という訳でも無い為、目的の一部が達成できなかったとしてもさほど問題ではないのだ。

 

 

 中央階段を上り、二階にある関本勲の部屋の傍まで来る。

 

「こちらになりますね。まだ面会中のご様子ですし、しばらく別室でお待ちいただいてはどうでしょうか?」

 

「ふむ、そうですね・・・」

 

 しばし、考える。

 確かに廊下のそばで大人の集まりがただただ立っているというのも奇妙なものがある。そこまで急く必要も無い為、提案に乗った方がよいだろうか。

 

 

 そう思った時に、施設内に非常警報が鳴り響いた。

 

「なっ、非常警報?!」

 

「やーっぱ来たか・・・タイミングがいいとは言えんが」

 

「少々お待ちください、連絡を・・・」

 

「いいですよ。この事態は想定していました」

 

 そう言って、所長を止める。

 

「少々"こちらの流儀"で行かせてもらいます。構いませんね?」

 

「は、はい。大丈夫です」

 

 勢いよく首を縦に振る所長を傍目に、指示を飛ばす。

 

「各員、三名は関本勲の室内に入り、関本勲及びご学友を保護しろ。ご学友に関しては決して部屋の外に出すな」

 

「しかし七草のご子女もいるんですよ?」

 

「それが、どうした?」

 

 七草の力に怖気づく"何も知らない部下"に対して、質問という名の威圧を加え黙らせる。

 

「・・・分かりました」

 

「ならよし。所長、屋上の足止めは出来ています?」

 

「えぇ。間違いなく」

 

「ならよし。残りの七名は関本勲をヘリまで運び出せ。襲撃の"本命"は俺が足止めする」

 

「ハッ!」

 

「所長は屋上の方の指揮をお願いします」

 

「分かりました。では一旦失礼します」

 

 そう指示を伝え終えると、部下はそれぞれの個人防衛火器を取り出し、室内に入っていった。

 

「さて、いろいろ喚いてくるだろうが、抑えてくれよ?」

 

 そう祈りつつ、拳銃とナイフを取り出し、顔を隠すためのサングラスを着ける。

 

 

 

「さて・・・本命か。どうやって倒したもんかな」

 

 

 先ほど上ってきた階段からは、大柄な若い男が上がってきていた。

 視線が、こちらに固定される。

 恐らくは、既視感と違和感の二つが彼の頭に浮かんでいることだろう。

 既視感は、拳銃とナイフという組み合わせと、その構え方。そして、俺の背格好と顔立ち。

 違和感は、格好の違い。今現在来ているのは、あの時とは違いスーツである。

 

 

 しかし、お互いにとって決まりきっていることもまた、ある。

 

 

 お互いに、敵だということが。

 

 

 呂剛虎が前傾姿勢を取った後、突進してくる。

 ソレに対して、狙いを正しく、かつ素早く五連射で発砲する。

 しかし、前回の戦闘で銃による警戒を一層強めているであろう彼に対して効果は無く、空しく弾かれる。

 彼の体当たりが迫ってきたところで、後ろに数歩下がりながら閃光手榴弾を床に放る。

 

 その様子は彼にも見えていたため、素早く立ち止まった後目を庇う。

 

 数拍置いて、炸裂。

 強烈な光と音が発生する。

 もちろん呂自身が対策を取ったためこれでは無力化は出来ないが、一瞬の隙にはなる。

 

 その隙を突いて、素早く間合いを詰めてナイフを振る。

 呂も素早く下がるが、ナイフの先端が腕を僅かに掠める。

 

 

 ナイフは、確実に彼の皮膚を割いていた。

 余りにも浅く、うっすらと血が滲む程度。

 しかし、唯のナイフの一振り。それで傷を負ったことに対して、困惑と納得の両方が織り交ぜになっただろう。

 こちらからすれば、当然としか言いようが無いが。

 

 もちろん隙を与えるはずも無く、素早く拳銃を捨て、懐からマシンピストルを取り出し、マガジンが空になるまで撃ち続ける。

 無論"遠隔武器では"魔法の影響はどうしても受けてしまう。銃弾は彼の体を唯撫でるだけになってしまったが、それでも一時動きを止めることには成功した。

 

 

「・・・」

 

「意外か?弾は通じずに、なぜナイフが通じたのかが」

 

 黙したままこちらを見詰める呂に対して、笑って問いかける。

 尤も、答えを求める物ではないのだが。

 

 

「当たり前だ。銃は弾を発射するだけのものだが、ナイフは俺の延長線上にあるようなもんだ」

 

 

 そして、魔法師がどこまでいっても"唯の魔法師"(唯のバグ)である以上。

 

 

「"我々"に、魔法は、効かない」

 

 

 再度、武器を構える。

 彼も、近接攻撃に対するリスクを今、はっきりと認識しただろう。

 ゆっくり間合いを詰めてくる。恐らくは、ナイフは届かず、されどたったの一足でこちらに手が届くであろう距離まで。

 

 

 こちらも、一旦マシンピストルのリロードを済ませる。

 しかし、これ以上使うつもりも無い。後は、"切り札"を使う気構えだけしておけばいい。

 

 

 いい塩梅の距離で、呂が再度突進してくる。

 

 ソレに対して、可能な限り素早く、マシンピストルを"手放し"、懐から"切り札"を片手で取り出す。

 

 

 六十口径を誇る、昔の銃器では最大級の火力を誇るリボルバー。

 本来は弱装弾を用いる代物だが、今回装填してある物はれっきとした通常弾。

 象でさえ殺しうる威力を持つ代物を、彼に向ける。

 

 

 腕を伸ばしているとはいえ、距離はもはやほぼ接射の距離といってもいいかも知れない。

 しかし、それでも彼にダメージを与える為には十分時間は"間に合ってる"。

 

 

 "最強"ともいえる火力を出すそのリボルバーが放つ銃弾は彼の胸に直撃し、反対方向に吹き飛ばした。

 

 

 呂は条件反射的に自分を防御したのだろう。しかし銃弾の慣性は魔法では殺しきれず、一命こそ取りとめてはいるが今この場での戦闘力はほぼ喪失していた。

 

 その彼を押さえ込み、首に注射を差し込む。

 

「安心しろ、唯の麻酔薬だ。本来は馬を眠らせるレベルの量だが、お前なら問題ないだろう。なぁに、一日眠るだけだ。心配するな」

 

 そう言って中身を彼の体内に押し込み、注射器を抜く。

 呂はしばし起き上がろうとしていたが、直ぐに麻酔が彼の意識を刈り取った。

 

「ふぅ・・・、腕がきつい。いくら俺が人外とはいえ流石にこの反動はきっついわあ・・・」

 

 そうぼやきながら、耳につけている無線機から先ほどの部下に連絡を取る。

 

『関本勲はヘリに乗せられたか?』

 

『完了しました。現在乗っていないのはご学友を確保している三名とそちらだけです』

 

『その肝心の三人の様子は?』

 

『押さえ込むのに苦労してたようですよ。どうするんです?』

 

『今から俺もそっちに行く。俺が一階に降りたら建物の確保の名目で部屋から出てヘリに向かわせろ』

 

『了解』

 

 連絡をつけ終えた後、今度は施設に備え付けられている端末から所長を呼び出し、呂剛虎の身柄の確保や"彼ら"の保護と言う名の足止めを言いつけ、一階に下りていく。

 それと同時に警備の応援も駆けつけてくる。恐らくはこれで残りの三名も簡単にこちらに向かえるだろう。

 

「嗚呼、疲れた。さっさと一服つけたいが、まずはこれが終わってからだな」

 

 今現在は好き勝手に煙草を吸えるだけの立場として来てはいない。残念ながら堪えるしかない。

 

 玄関から出て、既に離陸準備を整っているヘリに向かう。

 

「直ぐ飛び立てるか?」

 

「行けますよ!残り三人は置いてくんです?」

 

「そんな訳無いだろう!三人がこちらに乗り次第離陸させろ!」

 

「了解!」

 

 そのやり取りの後ヘリに乗り込み、快適性は皆無といっても言いヘリ内部の座席に座る。

 それと同時に、玄関から残りの三人が出てきた。

 

 

「さて、今回もひとまずは概ね良好な結果は残せたかね。呂に関しては勝手に何とかしてくれるとして、後は奴らの"本命"だけだな」

 

 "赤旗計画"。その裏にある、何か。それに関して関本から得られるとは思ってはいない。しかし、今回のことで恐らく大亜連合工作隊は少なくないダメージを追ったはずだ。それによりある程度の封殺は出来るはずだ。

 

 六人の工作員の無力化、そして呂剛虎を拘束され、更には存在まで把握される。

 後は適当に本部に殴りこみに行ってやればそれで終了だ。それに関しても"あの部隊"に任せれば問題はないだろう。

 

 

 取りあえずは一定の目処が立ったと安心する。

 それと同時に、ヘリは飛び立ち、八王子特殊鑑別所を後にした。

 

 




テンション上がりながら書いてたらこんな文字数になってしまいました。本当に申し訳ない。
なお個人的にSSを読むとしたら3000字以上が読み応えがあることは把握しています。しかし、自分の性分的に2500以上の文字を書くときは今回のようにやりたかったことを書くとき以外はきついです。勘弁してください。

とりあえずオリ主はこれで一定の目処は立った。懸念事項もあるけども、あとは達也たちがなんとかしてくれるだろうと安心します。ですが、横浜編はみんな前編の最後で終わったと思うんですよね。後は察してください。ここからが本番ですよ、本番。

なお、なんで某オーストリアから出てきた世界最強の拳銃を出したかと言うと、まぁ個人的にリボルバーを片手で構えたスーツ姿の男って様になるかなと思っただけです。それに象撃ち用レベルの代物でもない限り呂さんは止まらないでしょうし。なおあんなもん片手で撃てたのはオリ主がそもそも人間じゃないからです。物理的に。あんなもん片手で撃ったら腕の骨が粉々になること確実。よい子は真似しないで下さい。

次回、何が起こるか、お楽しみに。

【追記】誤字を一部修正しました

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